ぐらさい日記   作:長之助

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護国真龍、真龍の名伊達ではないぞ?

「今日のゲストはスカーサハさんです」

 

「よろしく頼む」

 

「こう見えてもスカーサハは俺らより年上なんでね。まぁセルエルとかノイシュよりも年上だけど」

 

「しかし、この姿の吾を敬うのもおかしかろう……今まで通りで構わん」

 

「やったぜ……というわけで、一つ気になっていたことが」

 

「何だ?」

 

 可愛らしいその顔を傾げながら、スカーサハはグランの顔を少しだけ見上げていた。ロリコンならば一撃で殺せる顔である、グランも今のはなかなか危なかった。

 

「今のその体、今だとこの船に乗ったりするための端末だとかなんとか……」

 

「あぁ、その通りだ。この体はヘルエスが自身の魔力で作ってくれたのだが……それがどうかしたか?」

 

「それってヘルエスがお母さんみたいなもの?」

 

「……ふむ、確かに。ヘルエスから生まれたのだから、吾はヘルエスの子か……いや正確にはこの体の時の吾、か」

 

「お父さんって誰になるのか」

 

 まるで雷でも落ちたかのような衝撃を受けるスカーサハ。そういうことを考えたこと無かったのか、冗談で言ったつもりなのに思っていた以上に真面目な受け取られてしまいグランは内心困惑してしまう。

 

「父親、か……確かにどうなるのだこれは……」

 

「ノイシュとか?」

 

「いや、あやつはヘルエスと契りを結んだなどということは出来まい。ヘルエスに対して忠義はあるが、恋愛対象としては見ておらんはずだ」

 

「じゃあセルエル」

 

「論外だろう、血縁関係のあるもの同士ではいくらあやつらとて遠慮してしまいかねん」

 

「じゃあ一体……」

 

「お前だろうな、グラン」

 

「ほう、俺が」

 

 グランは目を輝かせる。ヘルエスの伴侶に自分が選ばれるというのは、彼の中ではなかなかありえない話なのだが……しかし新妻ヘルエスという単語にどうも心が突き動かされてしまっていた。

 

「……ありだ」

 

「そうかそうか、気に入ってもらえて何よりだ」

 

「さて、俺の英気も養われたところで……質問便りのコーナー。1通目『ディアドラとスカーサハの関係を改めて教えて欲しい』」

 

「ふむ、仕方ないな。説明しよう」

 

「わーい」

 

 雰囲気を出すためか、スカーサハは足を組みかえてから話をし始める。小さいが、言葉遣いは大人のそれのために妙な色気が出ているがグランは自身を律していた。ここで本気でセクハラしたら死である。

 

「まず、今ここで起きている吾の意識は真龍ディアドラと同一だ。だが、真龍ディアドラが眠っている間のみ吾はここで起きていることが出来る……それは理解できるな?」

 

「まぁ精神が同一なら、同じ時間帯に起きてるなんて不可能だしね」

 

「そう、そして逆もまた然り……という訳だ」

 

「それって意識的にはずっと起きてるってこと?」

 

「そうなるな……しかしあまり問題ではない。吾の精神は普通の人間とは違う、永続的に起きていて精神が摩耗する……ということはあまりないからな」

 

「それすごいな……」

 

 真龍ディアドラが寝ればスカーサハが、スカーサハが寝れば真龍ディアドラが……と言ったふうに体だけが交代しているのだ。アイルスト王国で何かあった際は、これを使えばいきなりアイルストにつくようなものなのだから、ある意味で便利ではあるのだが。

 

「けど、そんなにポンポン体を変えて大丈夫なの?」

 

「何がだ?」

 

「急に体の操作が変わったりして、戸惑ったりしない?」

 

「ふ……それこそ杞憂よ。吾は既にこの体の操作を完全に把握している。まだ細かい操作を求めるものは難しいかもしれんが、一人暮らしなら既に可能となっている」

 

「へぇ、一人暮らし」

 

「そうだ」

 

 自信満々に告げるスカーサハだったが、それをヘルエス達が認めるとはグランは到底思えなかった。単純に真龍を1人にするというのは具の骨頂なのだが、それ以上に体裁が悪すぎるのだ。

 

「まぁやるにしても一定期間だけね」

 

「何だと!? それでは人の子の営みを理解出来んではないか!」

 

「営みを理解するのはいいけど、そのからだで怪我した場合一人暮らしだと、誰も気づけない可能性高いしね」

 

「怪我程度で喚かんぞ?」

 

「自分一人で治療が難しいものもあるしね……人間でも、一人暮らしって実はあんまり向かないような気がするよ」

 

「そういうものか……」

 

「案外、そういうものだったりするんだよ。人間っていうのは」

 

「ふむ、安易な一人暮らしは危険……か……」

 

 納得してるスカーサハだが、どちらにしても彼女が一人暮らしすることになったらヘルエスやノイシュが許すことはないだろう。セルエルはどっちでもいいと言いかねないが。

 

「話ズレてきたし2通目行こっか」

 

「そうだな」

 

「『ノイシュのことをどう思っているか』」

 

「……うーむ」

 

 少し考え始めるスカーサハ。スカーサハという立場にしては、おそらく好意的に見れるのであろうが、真龍ディアドラの立場であれば赦したとはいえノイシュに1度殺されているということもある。

 だからこそどう答えたらいいのか分からない……とグランはそう思って悩んでいるのだと考えていた。

 

「……やっぱり答えは複雑?」

 

「……いや、そうでも無い。しかし、どう言葉で表したらいいのかわからん」

 

「というと?」

 

「こう、一緒にいると安心する気持ちはあるが……落ち着く、と言うべきか?」

 

「……ドキドキとかは」

 

「ないな、ノイシュと一緒にいて動悸がすると言ったようなことは無い……だが、ノイシュが吾を放置して他の事をしていたら妙に腹が立つ」

 

 グランは確信した。『これ親扱いだな』と。まぁ仮にスカーサハがノイシュに惚れていたとしても、見た目年齢的な意味で付き合うのは難しいだろう。

 それに、ノイシュがスカーサハを異性としてみてくれるかどうか微妙なところだが。

 

「身内として認識してるんだね」

 

「……? まぁ、身内だからな」

 

「あぁいや、単純に親とか年上の兄弟とか……そういった家族みたいな関係に落ち着いているってこと」

 

「なるほど……確かに、寝食を共にしていれば吾も意識しないうちにそれなりに懐いてしまっていた……か……」

 

「そういう事そういう事」

 

 納得したのか、それとも出来ていないのかは分からないが、表情一つ変えないままスカーサハは返事をしていた。悪くは感じていないようだから、大丈夫だとグランは判断をしていた。

 

「では3通目『人間のその格好になって思ったこと』」

 

「スースーする」

 

「だろうね」

 

 スカーサハの人間としての体は、エルーンである。エルーンである以上脇と背中は見せる服装になるのだが……前部分しか布地が無いために、スカーサハの服装は実は結構危ないものになっている。

 それに加えて、真龍ディアドラとしての姿の時はそれはもうモッサモサなのだ。毛が大量にあるので、そこからいきなり人間の体……そして背中と脇と横腹を見せる服装ともなればスースーするだろう。

 

「だが……どうにもここを開けてないと落ち着かんのだ」

 

「もうそれはエルーンの性としか言いようがないから……我慢するしかない」

 

「だが、こんな格好をしていて大丈夫なのか?」

 

「何が?」

 

「世の中には、未成熟な子供に発情する人間がいるのだろう? 吾は気にせんが、エルーン族の幼子がみなこのような格好していては、そのような人物に餌を分け与えることになりかねんが」

 

「そういう人は秩序されるから大丈夫大丈夫」

 

 暇な時に本を読んでいて、そんな知識を身につけたのだろう。しかしよくよく考えてみれば、成熟してても背が小さいハーヴィンやドラフがいるのだから、そんな知識は案外身についてしまうのかもしれない。

 グランはそんなことは無いので特に考えようとはしないのだが。

 

「しかし、これでもヘルエスよりはマシ……なのだな」

 

「あれはもうある意味エルーンの極地だから」

 

 ユエルのもそうなんじゃね? という話なのだが、どっちも『どうやってその服くっついてんの』という人物なのだから、どちらでも問題は無いのだ。

 

「そうか、エルーンの極地なのか……吾も目指すべきか?」

 

「目指した途端多分俺かノイシュ当たりがリーシャに殺られる」

 

 そんなの目ざしてしまうと、恐らく色んなところで被害者が出るだろう。女性エルーンの服は、それだけ刺激的なのだ。特にユエルやヘルエスは目指しては行けない所である。

 

「さて、少し早いですが今日はもうまとめに入るとしましょう」

 

「む、もう終わりか」

 

「そういう事そういう事」

 

「致し方なし、か……」

 

「では皆さんご視聴ありがとうございました、また次回この番組でお会いしましょう。さようなら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば前から気になってたけど、身支度って誰がしてくれてるの」

 

「着替えはヘルエス、それ以外はノイシュだ。ノイシュには髪をといてもらっている」

 

 まぁそりゃあそうかと、グランは納得していた。自分である程度できるようだが、世話焼き2人で世話を焼いてくれているようだ。

 

「だが、ノイシュは髪を結ぶのはいいが吾を放置する時がある」

 

「放置?」

 

「吾が一緒に遊べと言っても、遊ばん時が多い……」

 

 子供みたいな嫉妬してるのが、グランはとても可愛いと思えた。ノイシュの時にも言っていた子供っぽさに引かれているというのは、あながち間違いではないのかもしれない。

 

「まぁまぁ、ノイシュだって忙しいわけだし」

 

「それは分かっておる、人間の事情も考えねばいけんというのは吾も理解している」

 

「けど感情は別?」

 

「うむ」

 

 知識を得まくってるけど、精神的には本当に子供のようだとグランは思っていた。いや、もしかしたら真龍ディアドラとしてのスカーサハも寂しいと思う時があったのかもしれない。

 

「……ま、甘えられるときに甘えたらいいと思うよ」

 

「……あぁ、分かっている」

 

 今でこそエルーンとしての体を得ているが、スカーサハの体はあくまでも真龍ディアドラの力が入っている。それ故に、成長もしなければ寿命で死ぬこともない。

 甘えられる今だからこそ、存分に甘えておかないと……グランもスカーサハもそう思っている。

 

「よし、今からノイシュのところに行こう」

 

「い、今からか?」

 

「善は急げと言うし! 行くぞ行くぞ!」

 

 グランはスカーサハを担いで猛ダッシュでノイシュの部屋へと向かっていく。スカーサハはされるがままだが、そのまま引っ張られていくことに、特に抵抗はしなかった。

 

「ノイシュー!」

 

「うわっ!? 団長殿!?」

 

「スカーサハと遊べ! 団長命令だ! 以上!」

 

 スカーサハを下ろして、軽く挨拶をして、グランは来た時と同じように高速で部屋から出ていく。残されたノイシュとスカーサハは少しの間黙りあいを続けていたが……

 

「ノイシュ、遊べ」

 

「……いや、別に構わないが……どうしたんだ急に」

 

「遊んで欲しいだけだ、遊べ」

 

「……全く、仕方ないな。少しだけだぞ?」

 

「あぁ!」

 

 こうしてスカーサハとノイシュは飯の間までずっと遊んでいることとなった。ちなみに、ちゃんとノイシュはやること終わらせていたのをグランは知っているので、なんら問題はなかったのである。




尊大美少女

偶には長編とか書いて欲しい

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