「今日のゲストは巫女の1人ディアンサさんです」
「よろしくお願いします……って私一人なんだ」
「と言うと?」
「ローアインさんは3人だったし……てっきり5人1緒にやるものかと……」
「巫女は特別ということで」
ぶっちゃけ仲間として入ってるのはディアンサなのと、巫女稼業忙しいのに全員誘うのはきついというのと、5人もいたら絶対にまとまらないというグランの判断の元行われていることである。
「にしても……私一応祭司見習いということなんだけど、やって良かったの?」
「それ言ったらシロウやロボミも出てるからなぁ……あんまり気にしないでいけるって」
「だったらいいんだけど……」
「実際、ディアンサ1人だけやるならって感じだし……」
「あ、あはは……」
ディアンサ、元々ショチトル島の巫女の1人である。しかし、巫女はとある年齢を超えたら卒業するものであり、ディアンサも例外ではなかった。実際、卒業したのだが……その島の星晶獣ショロトルがディアンサを呼んではライブに参加させているのだ。
おかげで、ディアンサは巫女を卒業してもよく巫女をしているというよく分からないことになっている。
「いやぁ、ショロトルの事件は大変だったね」
「確かにあの事件は大変でしたね……」
「みんな仲良くしないとね、うん」
「そうですね」
「そういえばディアンサはクラリスと面識あったっけ?」
「クラリス? うん、友達付き合いしてくれてるよ」
ちなみに、ディアンサは今年のバレンタインの際にグランに『好き』だと伝えている。対してクラリスは、その気持ちを伝えることなく『デートしよう』で終わってしまっている。
ディアンサの方が遥か先をいっているのだが、グランは敢えてスルーしていた。そういう話は、受けたら負けな時があるのだ。
「そっか、まぁ仲良くやれているなら良かったよ」
「うん!」
「という訳で、お便りのコーナー。1通目から行きましょう『なんでヤンバルクイナなんですか』」
「アウギュステで見かけて……可愛いなぁって思ってて……それで、つい」
「ついであれを着せられてたのか俺」
ヤンバルクイナの衣装、というか着ぐるみ。不思議な技術によりヤンバルクイナとほぼ同サイズになる謎の着ぐるみ。確かに可愛いといえばそうなのだが、グランからしたらもっと何かあったのではないだろうか……と思えてしまってしょうがないのだ。
「すごい技術だよねあの着ぐるみ」
「すごいって言うか、あれ来てると自分がなんなのか問う時がある」
「でも団長さん」
「はい」
「他にもいろいろ着てるしそんなものなんじゃあ……」
「確かに」
壊獣になったり、他の人物に成り代わったりしてるので、よくよく考えてみたら確かにその通りなのだ。最近他の人物に完全になりきることを覚えたので、その点を言われるとグランは何も言えなくなってしまう。
「まぁあの服きて面白いことしちゃったけどさ」
「面白いこと……あ……もしかしてあれ? ベスちゃんと猫ちゃんと一緒に船の中を歩き回った……」
「そうそう」
拾ってきた猫、ベス、そしてヤンバルクイナを着込んだグランとディアンサの4人で、グランサイファー内を歩き回ったこともある。団員は微笑ましそうにみていたが、実際は猫とベスを除けば完全なディアンサとグランのデートである。
「団長さん的にはどうなの?」
「何が?」
「ヤンバルクイナ」
「いや、可愛いとは思うけどね? 可愛いとは思うけど、なんであの着ぐるみにしたのかだけすごく引っかかる。理由説明されてもまだなおひっかかる」
「そ、そんなに?」
「そんなに」
実際ヤンバルクイナじゃなくてもいいので、本気でグランは疑問に思っているのだ。疑問というか、違和感というかそのようなものである。
「ま、まぁいいや……これ以上話してるとヤンバルクイナで会話がループしそうだし……」
「そ、そうだね……」
「という訳で、ヤンバルクイナの話はここでおしまい! 2通目に行きましょう『船から巫女達のところに戻る頻度はどのくらいですか?』」
「あんまり多くないかなぁ……今はもう季節でのイベントの時だけだから……」
「夏、クリスマス、年明け……くらいかな?」
「だいたいそんな所かも……まぁ一応卒業した身だしね」
「まぁ、それもそうか……」
ショロトルが全てなので、ショロトルが認める限りは巫女であり続けられると言ったところだろう。どこかの企業の社長のようである。
「……社長型星晶獣ショロトル……」
「え、今何か言った?」
「いや何も言ってないよ」
「そ、そう……」
「そう言えば、巫女……というか歌って踊れる繋がりでリルルとよく絡んでるよね」
「お互いに刺激されることもあるから……」
リルル、ハーヴィンのアイドルである。そのアイドルとしての魅力は凄まじく、あまりアイドルに興味がなかったものでもその歌やダンスに魅了されてファンになることもしばしばあるという。
「他にそういう繋がりで喋ったりする人いる?」
「繋がり、というか……私もそういうのができるようになりたい! って子供達から言われることはあるよ」
「あぁ、そう言えばヤイアとかアルドラにそう言われてたっけ」
ヤイアはともかくとして、アルドラは父親のアギエルバがアイドルの道で反対するかどうか苦悶してたのがグランは印象的だった。
とは言ってもアイドルになったアルドラは可愛いけど、その可愛さを他の男に見られるのは断固反対という親心から来ているものなのだが。
「あぁ、リルルさんみたいなアイドルじゃなくて……エルタさんとかと一緒になることもあるよ」
「ん? どうして?」
「あの人達が弾いた曲に合わせて、私が歌う……と言ったものなんだけどね」
「あぁ、なるほど」
確かに、リルルやディアンサなら歌うには適しているだろう。イメージとしたらキャピキャピとした歌のイメージがあるかもしれないが、2人は1一応大人しいというかスローテンポの綺麗な歌も歌えるのだ。
「……アイドル、それを綺麗や可愛いと思う子供達、そして音楽隊……まぁ見事にアイドルに関係するものばかりだね」
「だ、駄目かな?」
「んにゃ、駄目じゃない。自分の特色を伸ばすのはとてもいい事だしね……これからもアイドルというか、巫女稼業頑張っていこう」
「は、はい!」
「という話のオチも着いたところで3通目『まだディアンサ派のイクニアさん達はいるんですか?』」
ショチトル島の巫女というのは、それぞれがファン……イクニアというものがある。それぞれ誰が推しかを感じ取り、ただひたすらにその少女を応援するというものである。
ライブの際には、トレピリというそれぞれの巫女の色に光る棒を振ったりして、自分が誰が推しなのかをアピールしたりする。因みに、自然と直感的に合いの手を入れられるようになったり、ダンスが練習もしてないのに一致団結したりとすることもあるので、チームワークがどこもかなりレベルが高かったりする。
「うん、まだ私を応援してくれて……すごく嬉しいよ」
「しかし……ふと思ったんだが」
「どうしたの?」
「今までは卒業したら新しい巫女が入ってきたわけで……けど今ディアンサがいるから、5人揃ったままなわけで……新しい巫女も告げられてない……大丈夫なのかなこれ」
「う、うーん……ショロトル様のお告げだから……」
やはりどこかの企業の社長なのだろうか、とグランは悶悶と考えていた。別にグランが考えることではないのだが、ディアンサ派のイクニア達も今では一応『元』のつく身である。
「まぁ……全てはショロトルの導きだし……そういうものか……」
「そういうものなんだよねぇ……」
「……でも確かショロトルって、細かいニュアンス伝えるのめっちゃ苦手じゃなかったっけ」
「そうだよ? 人の名前ならちゃんと言えるけど、他の言葉が苦手みたいで……私の時もデテケ、って言われたし……最近前みたいに実体化? してジオラとよく話してるみたい」
言葉を覚えたショロトル、流暢に話せるようになったショロトルと考えたら、妙に面白い光景になりそうな気がグランはしていた。
「え、ていうか教えてるのは本当なの?」
「う、うーん……本当だと思いたいけど……教えてるのは私も気になっちゃって」
「俺も気になる……今度見に行くか」
「えっ」
「今度見に行こう、決定。今はちょっと忙しい時期だからあれだけど、今度今度」
トントン拍子で決められて、トントン拍子で進んでいくショチトル島観光計画。思いがけない帰郷に、ディアンサは嬉しさと気まずさが妙に同居していた。
「……でも私も気になるし……」
ショロトルに言葉を教えてるのはどういう感じなのか、ディアンサもぶっちゃけ見てみたかったので、反対する理由はなかった。
「……まぁというわけで、今回はここまでです」
「あ、そうなんだ……」
「ここまでご視聴ありがとうございました、また次回この番組でお会いしましょう……さようなら」
「因みに団長さんは誰が推しなの?」
「ん? 5人の中でって事か?」
「んー……」
撮影が終わったあとに、ディアンサはなんとなく気になり聞いてみる。自分だったら嬉しいが、他の誰であっても別段気にしないので本当に興味本位で聞いているだけである。
「んー……特に決めてないんだよなぁ……全員推しみたいなもんだし」
「ぜ、全員?」
「みんな応援しなきゃダメでしょ」
そう言いながら全色のトレピリを取り出すグラン。誰が推しと言うよりかは、グラン的には全員応援しないといけないと考えているようだ。
ディアンサは、グランらしいと少しだけ苦笑しながらも結果に納得をしていた。
「でもそれじゃあ公演の時とかはどうするの?」
「いい感じに分身する」
「い、いい感じに分身……」
忘れていたが、グランはなんだかんだで常人のレベルを遥かに超えているのだ。分身なんて出来て当たり前と言わんばかりの話し方に、ディアンサは改めて認識し直していた。
「大丈夫、全員きっちり応援してきた俺に任せとけ」
「う、うん!」
しかしそれはそれこれはこれ、グランが応援しているという事実はディアンサにとっては間違いなく良い物になっていた。そう、グランがディアンサだけを見て応援してくれている時があると思い込むくらいには。
「じゃ、じゃあ私リルルさんとダンスや歌の練習してくるから!」
「おう、頑張っておいでよなぁ」
「━━━告白されたって本当?」
「後ろから殺気!!」
振り向いた瞬間、グランは距離を取っていた。そこに居たのは笑みを浮かべてはいるが、その目に光を宿していないクラリスだった。
「バレンタインの時に……ディアンサに……告白されたって……」
「ハハッ」
「……」
上ずって変な笑い声になったグラン。表情の変わらないクラリスは、そのまま腕を前に突き出してこう言うのだ。
「アルカヘッドスフィア!!」
「待って待って分解は本当に死ぬ!!」
この後、クラリスのグランへの追走劇は丸1日続いたという。
バレンタインキャラとして実装されたクラリスに勝つ女
偶には長編とか書いて欲しい
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はい(ギャグノリ)
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はい(シリアス)
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いいえ