「今日のゲストはリルルさんです」
「はーい! リルルです!」
リルル、ハーヴィンの少女である。アイドルをやっていて、自分のことに関してはとんでもなく厳しいし少女でもあり、とんでもなく大人びている一面がある。
ハーヴィンでは分かりづらい為に、大人びていると大人に見られがちだが彼女は一応13歳である。
「好物はラーメンだっけ?」
「はい! イッパツさんがいてくれて本当に助かりました! 本当に美味しいラーメンを研究してるので、作ってくれるんです!」
「イッパツのラーメンは本当に上手いからなぁ」
内心、13際の少女がラーメンを好物にしていると考えてグランは妙に世の中の世知辛さのようなものを感じていた。人気なことはいいことなのだが、そこまでラーメンが好きなのかと。
「けどラーメン食べると体重制限キツくない?」
「その分動き回ってるので大丈夫です!!」
「なるほど」
恐らく尋常ではない動き方をしないとダメだとグランは思ったのだが、ハーヴィンの体で動き回るというのはヒューマンやエルーンでは、そこまで実は体力を使わないのかもしれないと思い至る。
「でもまぁ……うん、ライブとかで動き回ってるし……そういうもんなのかな……?」
「そういうものです!」
「因みに最近食べた美味いラーメンの1番の決め手は?」
「1番最後に食べたラーメンは、麺のコシが違いましたね! チャーシューと煮卵も美味しかったです!」
「……後でラーメン食べに行くか」
「はい!!」
話を聞いていると、ラーメンの美味しさをまた味わいたいとグランは思うようになり、次の島へ着いたらラーメンを食べようと心に決めるのであった。
「というわけでそんなラーメン大好きアイドルリルルにも沢山お便りが届いています」
「アイドルだけどファンからのお手紙でお便り系はあまりなかったですね……」
「そんなアイドルさんでも大丈夫、1通目『既にラーメンアイドルとしての地位を獲得してませんか?』」
「ラーメンアイドル……」
アイドルなのもそうだが、それ以上にリルルのラーメン好きは知れ渡っている。それこそ、アイドルとして有名になったことでそれが広まったと言わんばかりに。一時期ラーメン系の仕事しか来なかったこともある。
「でも実際ラーメンの仕事多いもんねぇ」
「でもお仕事はお仕事です! それに、ラーメンは美味しいですから問題ありません!」
「美味しいラーメン食べれて?」
「実際すごく心が満たされてます……!」
仕事とは、楽しめている者が勝者なのだとグランは納得する。実際、ラーメンは未だこの空の世界では有名では無いものの、着実に広まってきているのだ。
無論、元は広まっていなかったものが急激に広まっているので味や製法がほとんど伝わっていなかったりするのだが、それでも美味しく作ろうとしている気持ちは本物のところが圧倒的に多いのだ。
「なんかこう……珍しいラーメンとか食べたことある?」
「珍しい……材料や作り方の話ではないんですけど、確かに珍しい所はありましたよ」
「例えば?」
「注文の仕方で自分好みのラーメンに出来たりするんですよ、その際に常連客にはある禁断の言葉があるんです」
「……禁断?」
一体どういう事なのか、グランはさっぱり分からなかった。しかしリルルは挑戦したことあるのかその顔はとても遠くを見つめていた。
「ニンニクチョモランマヤサイマシマシアブラカラメオオメ」
「……な、なんだそれどういうことだ……?」
「そのお店の最上級クラスのものです……これを食べきったあとにリルルは3日間食事は必要なかったです」
「そ、そんなになのか……」
グランはリルルのその表情から、凄まじいものだということだけを読み取れた。そして、同時に思ったのだ。『今度ルリア連れていこう』と。
「そのラーメンの特徴は?」
「量が凄まじい、にんにくも凄まじい、野菜も凄まじい、背脂も凄まじい、辛みとして入れる香辛料の量も凄まじい……全体的に凄まじいラーメンでした」
「……でも1回食べたくなるな……」
「私もまた今度食べに行きたいです」
「え、3日間食事は必要なかったです……って今言ったのに?」
「……なんと言うか、また食べたくなるんですよ。無性に……」
グランはこれ以上聞かない方がいいのだと判断した。別に危ない薬は使っていないのだろうが、味が濃くて美味しいものはその時飽きてもまた食べたくなってしまうものなのだ。
「……まぁ、とりあえず2通目。『ショチトル島の巫女達のことはどう思いますか?』」
「どう、思う……うーん……」
「一緒にダンスの特訓してるとか聞いてるけど」
「私は今まで1人でアイドルをしていたので、みんなで踊って歌うということが出来てるのはとてもすごいと思います。私が劣ってるだったり、あの人達が劣ってるなんて言うつもりはありません。
私はソロ、巫女さん達はチームで出来るように活動をしてるんですから」
「確かに……全部一人でやってきてるもんねリルルは」
ダンス、歌、衣装などなど……リルルは1人でこなせられるところは全て1人でこなしていた。そしてそのレベルはどれも高い水準となっている。
ショチトル島の巫女達は、サポートやチームメンバーがいる。役目を振り分けたらその分精度も上げられるが、チームワークというものがとても大切になってくる。
「チームワークというのは、鍛えられるものじゃないです。互いの信頼や信用、そして自分の実力……それらが高くて初めて成り立つもの」
「どれかひとつでも成り立たなかったら、ダメってことだね」
「そういう事です」
「チームワークって言うのはやっぱり大切だなぁ……」
「その分! 私はグランサイファーに入ってから、チームワークというものが少しは鍛え上げれてきたと自負しています」
確かに、とグランは頷いていた。リルルだけでは無いが、グランサイファーというひとつの家にいる以上、当然ながらチームワークというのは鍛えられる。
誰がいつゴミを出すか、だれが料理当番か……ある程度暮らしているとそのサイクルなどがそれなりに理解できるようになってくるのだ。
「ただ、ハーヴィンの体だとやれる事が少ないんですよね……」
「まぁ、そこはしょうがない」
ハーヴィンの体では、本当にやれることは少ない。ゴミ出しにしてもあまり大きかったり重いものだったりする場合そもそも持ち上げても引きずってしまう場合が多いのだ。
料理するにしても、足場が必要だったりと結構不便なことも多い。リルルはそれを嘆いているのだ。
「それに、チームワークを鍛える以上に自分自身に出来ないことを他のことで補おうとしてるリルルは凄いと思うよ」
「ありがとうございます!」
「さて、とりあえず3通目『イッパツさんとショチトル島の巫女さん達以外に関わってる人はいますか?』」
「そうです……ヴァンピィさんとかですかね」
「おや? 意外も意外」
「アイドルというものに興味があるようでして!」
確かに、ヴァンピィなら案外アイドルとしてもやっていけそうだとグランは感じていた。何せ、リアクションも見た目も服装も何もかもが可愛いのだ。グランからしてみれば、アイドル向きの可愛さを兼ね備えたヴァンピィはアイドルに興味を持つのもわかる気がしていた。
「それで、最近はダンスを一緒に練習してるんですよ!」
「へぇ、ダンスを」
「それに、ヴァンピィさんは可愛さと妖しさが同居してますし……ちょその気になれば、ミステリアスアイドルとして名を馳せる事が可能なはずです!」
「現役アイドルの『アイドルに向いてるっぽくない? 眼』は確実そうだ」
そんな能力はリルルには無いが、おそらく直感としてはヴァンピィがアイドルに向いているというのはあながち間違いではないだろう。但し、ヴァンパイアという一点を除けば……だが。
「それ以外で気になる人とかいる?」
「うーん……皆さん優しいですし、基本的に気になるというほどのこともないんですよね、仲良くしていないという訳では無いんですけど……」
「まぁ大体の人は聞いたら話してくれるしな……」
そこがグランサイファーの団員のいい所でもあり、悪いところでもある。善人すぎてみな隠し事すらあまりしてないのだ。理由としては、ただの感情ではなく友情なこと……その友情により腹を割って話し合うことも多い。そのために、みんな結構深いところで仲がいいのにも関わらずグランサイファー内での交流関係は皆同じくらいまでの広さとなっている。
「リルルも、皆さんとすごく仲良くしてますし……」
「気になる疑問も全部解決しちゃってると、確かに気になるというのはかなりありえないことになるのかもね」
疑問に思っていたことは、大抵本人が答えるか自分で察して疑問として無くすかの二択だ。グランサイファーではそれがかなりの確率で多いために、リルルも自然とそうなってしまったらしい。
「むしろ気になったことを聞いたら、自分達と同じような道に堕としてくるようなやつもいるし、グランサイファーは人がいいやつが多すぎる」
グランの脳内ではカリオストロとシロウがくしゃみをしていた。所謂沼に入れ込んでくる2人という扱いなのだ。グランの中では。
「そうですねぇ……あんまり専門知識が多い事だと、聞いておいて自分で気圧されるなんていう失礼な態度をとってしまいます」
シロウにメカのことを何気なく聞いた際に、断れないまま徹夜コースを味わった様な顔を浮かべたまま、リルルは遠い目をしていた。因みにカリオストロに聞いた際には、まず専門用語を覚えさせる基礎知識授業から始めてくれる。
「主にシロウとかだよね」
「わ、私からはなんとも言えないのですが……」
シロウは目を輝かせながら子供のようにはしゃいで説明するために断りづらいという理由もあり、そして前者であるカリオストロとも比べられて……『カリオストロは教えるのが上手い』という結論にされてしまっていた。いや、クラリスに錬金術の基礎をなんだかんだやってくれているため……案外間違ってはいないのがしれない。
「……っと、こんな時間になっちゃってたか」
「では私の出番はもう終わりですか?」
「まぁ少なくともしばらくは出番は無いだろうね、同じ人はやるかどうか不明なところあるから」
「でもまた出られるように、私は自分磨きをしておきます!」
ピシッと敬礼をとるリルル。そんな彼女を見るグランの目は、まるで孫を見る老人のようだと実は中から覗いていたルリアは語る。
「というわけで、同じ人に果たして出番は来るのか? そんな心配を私とリルルさんでしながらも、今回はここまでとさせていただきます。ご視聴ありがとうございます、また次回この番組でお会いしましょう……さようなら」
「きっと! 私は!! いつか!!! また!!!! 出ますから、ねぇぇぇぇぇえええええ!!」
その言葉を言い終える前に、カメラの電源は落とされるのであった。
とある事情により投稿遅れます
偶には長編とか書いて欲しい
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はい(ギャグノリ)
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はい(シリアス)
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いいえ