ぐらさい日記   作:長之助

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モーターディテクティブ、俺の推理を聞くか?

「わからん!!!!」

 

「どうしたんだよ今日のゲストの探偵バロワさん」

 

「前のシャノワールの時の問題の答えだ!!」

 

 机を叩いて本気で悩んでいるバロワ。それを見ながら、冷静に対処していくグラン。前のシャノワール……その時に出したクイズ『グランはなにを奪われたのか』というクイズである。

 ヒントは『バウタオーダって、あの格好で指鳴らせるのかな』である。このヒントで理解した者も入れば理解しない者もいる。バロワは後者だったようである。

 

「しょうがないなぁ……まぁ直接言うのはアレだし、もう一個ヒント出そうか」

 

「頼む!!」

 

「というわけで、今から行うことが大ヒントです」

 

 そう言いながら、グランは篭手を付けた手を取り出して指を鳴らそうと動かすが……ただ鉄と鉄がぶつかる音が響くだけであり、指を鳴らすことは出来ていなかった。

 

「……何をしているんだ?」

 

「これがヒント、さて俺はシャノワールといた時に指を鳴らすことは出来ていたかな」

 

「……確か、指は慣らしていたな……うむ。その時にはちゃんと鳴らせていたのを俺は覚えているが……あぁっ!?」

 

 ようやく理解出来たのか、バロワは大声を出しながら机を叩く。元軍人かつドラフの男性ということもあり、そろそろ机が潰れるんじゃないかと思えてくるグランだったが、そんなことも無く机はいまだ無事だった。

 

「篭手か!!」

 

「はい正解、あの時奪われていたのは篭手でした。そもそもあの時の俺の格好ごっちゃごちゃしてただろ? 鎧とか武器とかで」

 

「確かに……そう言えばそうだ……! あれは篭手に意識を向けさせないための心理戦だったか!!」

 

『ぶっちゃけそこまで意識していない』とは言いにくく、グランは笑って誤魔化した。ごちゃごちゃしていたのは確かにそうだが、別に意識を逸らさせようとかは一切考えていなかった。

 

「まぁシャノワールの盗みの技術は確かに凄かったよ、取られるの計画したの俺だけど、取られたタイミング分かんなかったしな」

 

「そうだ! あいつはそういう誰にも気づかれないタイミングで盗むのだ!!」

 

 シャノワールの話になると問答無用でヒートアップするバロワを見て、グランはただ静かに見つめるだけだった。正反対の2人だが、特になんら問題もなく進行されていく。

 

「さて、そんなシャノワールと宿敵であるバロワにもお便りがいっぱい届いております」

 

「ほう! この探偵バロワにかかればどんな些細なことでも解決してみせよう!」

 

「1通目『推理と言う割には腕力を行使してばっかりな気がしますけど』」

 

「何を言う! そんなことは無いぞ!!」

 

「ほう、では色々確かめてみよう」

 

 そう言ってグランは知恵の輪、ルービックキューブ、そしてパズルを取り出していく。そして最初に知恵の輪をバロワの方に投げて、ただ一言だけ告げる。

 

「これ番組内でクリアしてみせて」

 

「ふんっ!」

 

 そして大きな金属音と共に破壊された知恵の輪がグランに投げ返されていた。バロワの顔はとても満足気だったという。グランは知恵の輪とバロワを交互に見ることしか出来なかった。

 

「どうだ、出来たぞ!」

 

「バロワ、知恵の輪を砕くのは知恵の輪を解除したって言わないんだぞ」

 

「なんだと……!? 」

 

「そこまで驚かれると俺の方が間違ってたのかとさえ思えてくる」

 

 焦るバロワ、冷静に見るグラン。バロワはそのままルービックキューブを手に取って、片手で砕く。

 

「これはルービックキューブを解決したんじゃないのか!?」

 

「それただ壊してるだけだよね、マジで?」

 

 思ってた以上の脳筋っぷりを発揮しながら、バロワは驚いていた。グランはもはやドン引きしていた。元軍人とはいえ、明らかに脳筋過ぎるのだが本人は一応探偵業で稼げているのだから世界は分からない。

 

「……なんという事だ……」

 

「……まぁ、うん。探偵にも力技が必要な時だってあるよ」

 

「やはりそう思うか!?」

 

「実際それで助かっていること多いから、本当にそう思えてくる」

 

 パワーオブパワーというのは、このことだろう。一緒に謎解きしている時ほど、バロワのパワーに助けられたことも少なくないのだ。だからこそ、グランは複雑な思いを抱いてしまっている。

 

「もうちょっと頭使ってくれたらかっこいいんだけどなぁ……」

 

「もっと褒めてくれてもいいからな!」

 

「……まぁ、いいや。2通目『怖いものってありますか?』」

 

「ふっ……怖いものなんて探偵には━━━」

 

「前にあった昆虫大天国の島の話でもする?」

 

「待ってくれ」

 

 グランが冷静に言い、バロワが即座に止める。昆虫大天国の島というのはグランが勝手に呼んでるだけだが、その島でシャノワールと関わったことがあるのだ。

 その際に、トラップの一つに幽霊を出したりゾンビを出したり……もちろんただの細工なのだが、それで驚かすには十分な時もあった。それでびびったバロワだったが、その際に下着が1枚ダメになってしまっているのだ。

 

「どうしたの?」

 

「その話はやめてくれ」

 

「しょうがないなぁ……正直にいえばいいよ」

 

「む、むぅ……おば……じゃ無いな……非科学的なものとかが怖いな……特にそれを信じてしまっているという人物とかな!!」

 

 グランは少し考えて、それでいいかとスルーした。別段驚かす気もないし、正直に答えてくれればいいと思っていたので言い方は問題ではないのだ。

 

「まぁ、間違ってないからいいか……でも大の大人があれはやばいよ」

 

「言わないで欲しい……」

 

「俺が女の子だったら本当に悲惨なことになってたよ」

 

 因みにその時一緒にいたのは、ルリアとビィは勿論マリーとフェリの2人がいたのだ。因みに、お化けやゾンビに見せかけたトラップに対してフェリは本気で怖がっていたのをグランはよく覚えている。なんだったら、写真まで撮ってみたかった程である。

 

「そんな仮定の話をしてもな……」

 

「仮定は大事だぞ? ハーヴィンの若い子とか男か女かたまにはっきりしない時があるからな……」

 

「……そういう……」

 

 微妙に共感出来たのか、バロワも否定せずにそのまま納得の表情を浮かべていた。流石の探偵でも、ハーヴィンの男女の区別がつきづらい時があるようである。

 

「じゃあ3通目『サーヤのことをどう思っているか』」

 

「随分と曖昧な質問だな」

 

「で、実際どうなの」

 

「実に優秀な女性だと思っている、俺の推理を先に言ってくれたりするんだからな」

 

 サーヤ、バロワの探偵事務所で働く女性である。頭脳明晰とは彼女のことを指しており、バロワ探偵事務所の稼ぎ頭でもある。仕事熱心というべきだろうか。

 因みに趣味は読書である。

 

「ほー……」

 

「だが、戦闘面はやはりどうしても苦手らしくてな。最低限の格闘術だけ教えている」

 

「格闘術だけ……って、人間相手?」

 

「あぁ、犯人を捕まえるときに逆上されて襲われては敵わんからな。軍役時代の格闘術は徹底的に教えこんでいる」

 

「確かに、それは大事だ」

 

 犯人という未知数の危険人物と関わる以上、そういった技術も確かに大事なのだ。ただ推理して犯人当てした所で、それに素直に従って降伏してくれるわけはないのだから。

 

「まぁ、さすがに俺レベルになれとは言わんがな」

 

「そもそもバロワに対して襲いかかるのって相当勇気いると思う」

 

 肉弾戦慣れしていないドラフの男性に会ったことがないため、グランは判別しにくいが……くそ太い腕や足を持つ相手に対して、軍人レベルの格闘術まで身につけていれば基本的に負けることはないだろう。

 相手が相当の強者でなければの話だが。

 

「やはりそう思うか?」

 

「でかい男相手にするのってなかなか勇気がいる、単純に大きさっていうのは相手に威圧感を与えるのにピッタリだし」

 

 グランも良くあることのために、ほのぼのとして語るが……探偵をやってるバロワが過去の軍隊時代を踏まえてもそこまで大きな敵と戦っていたかは定かではない。

 

「ふむ……俺も大きな相手に対して戦える術を身につけておくか……?」

 

「いやぁ、別にやらなくていいんじゃないかな」

 

 もはやその大きさの相手は魔物くらいしか居ないだろうし、そもそもそんな大きな魔物に対して格闘術で戦えるのは、十天衆クラスの使い手のみだろう。

 

「そうか?」

 

「そうだよ、探偵なんだから人しか相手しないでしょ……」

 

「いやぁ、分からんぞ? 人相手とはいえ、その相手が大きな機械に乗るかもしれん」

 

「それを格闘術だけで倒そうとしているって言うのは、多分勇気を通り越してただの無謀になっていると思うよ」

 

「無茶と無謀は履き違えんさ!!」

 

「バロワにしてみればちょっとした無茶程度に収まるってわけか……」

 

 改めて、バロワの脳筋っぷりをグランは認識し直すのであった。そして、し直したところで時間が迫っていることに気づく。

 

「と言うわけで、ご視聴ありがとうございます。また次回この番組でお会いしましょう、さようなら」

 

「難事件はいつでも解決! 探偵バロワに解けない謎などない!!」

 

 考えていたのか、はたまた前から会ったのか。キャッチコピーらしきものを叫びながら、バロワは決めポーズのままカメラに向かっているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「因みにパズルはどうやって解くの」

 

「ふ……パズルなんて御茶の子さいさいさ」

 

 きっと腕力に任せて解くんだろうなぁ、とグランはしみじみ予想していたが……結果は全く別のものへと成り果てていた。

 

「まず角が直角の物を探すんだ。そしてちゃんと枠との絵柄が一致する場所を探す。そうしたら今度は、1部分が直線のパーツを探して……これも絵柄が会うところを探していく。

 そして外周が埋まれば……後は絵柄と形をみながら当て嵌めていくだけだ、簡単だろう?」

 

「誰だお前!?」

 

「なっ!?」

 

 バロワが腕力にものを言わさずにクリアしたことを踏まえて、グランはつい叫んでしまっていた。バロワもまさか自分の正体が疑われると思っていなかったのか面食らっていた。

 

「そうかシャノワールだな!? 身長がだいぶ違うけど案外なんとかなるだろうがよ!!」

 

「こうやって自分がシャノワールに疑われるのを見ると、少し心が痛いな……」

 

「よーし暴いてやる!! お前の正体を!!」

 

「私はシャノワールではなく本物のバロワだ!! 信じてくれ!!」

 

「そういう奴ほど偽物だったりするんだ!! 覚悟しろ!!」

 

 こうして、急遽バロワとグランの正体当てゲームが開催されてしまった。なおやることは『バロワだけが知っていること』をひたすらに聞いていきグランが確信をもてるだけ続けていくのだ。

 尚、例の昆虫大天国の島の話を持ち出してその時シャノワールだけが知りえないことを聞いた時にすぐに確信が持てたため、グランのこのゲームは開始数秒で幕を下ろしたのであった。




本当はもっと理知的です
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