「グランがもうすぐ誕生日な訳だが」
カリオストロのその一言は、グランサイファーのほとんどの女性陣に伝えられていた。無論、共通点は『グランを異性としてみている』事である。
「お前ら、何をプレゼントする気だ?」
その言葉で、各々がプレゼントを語る。積極的な女性は『自分』と答えることが多く、それ以外はものを渡す女性が多かった。当たり前だが、自分と答えたところでリーシャが隠せかけていたのだがそれはまた別の話。
「そうだな、俺も自分をプレゼントにしたいところだが……趣向を変えて、ミニカリオストロでもプレゼントしようという話になった」
「待って師匠、ミニカリオストロって何」
「あ? そりゃあお前俺様が作るゴーレムでの俺様だ」
「……ウチは……どうしよう」
「お前は……あー……廃棄予定の武器達でも処分してやったらどうだ、喜ぶぞ」
「ウチだけなんか違くない!?」
目の前の錬金術師コンビの会話に多少置いていかれながらも、女性達の会話は進んでいく。ちなみに本日は特に目立った依頼もない日なので、特に問題は無いのだ。
今回の話は、1部の女性たちのものを抜粋したものである。よって出番がなくても忘れている訳では無いのでご勘弁を。
というわけで、錬金術師組の話である。
「え? 誕生日?」
「う、うん! な、なにか欲しいものだったり……して欲しいことってある!?」
「あー……うーん……」
グランは悩んでいた。今欲しいものも、してもらいたいことも無いのだ。何かをくれるというのなら、喜んでもらうが……グラン個人としては今欲しいものは明確に存在していない。
「……そうだなぁ、せめてこの後に行く依頼の人手が欲しいからそれに参加してくれたら嬉しいかなって」
「じゃあウチそれについて行くよ!!」
「助かるよ」
「……おいグラン、俺様を無視するのは頂けねぇな」
「いや、無視してるわけじゃないけど……」
「まぁいい。で? その依頼って言うのは何をするんだ? 参加させるのはいいが、せめてこいつができることにしてくれよ?」
優しさ故の言葉なのだが、クラリスとしては内心少し複雑だった。女性なので、基本腕力は期待しない方がいいとされる。そしてクラリスはカリオストロとは違って、分解の極地の錬金術しか行えない。それ故、カリオストロのような万能性にも期待できないのだ。
「ししょー……ちょっと酷いよー……」
「事実だろうが、無茶してこいつに迷惑かかるよりよっぽどマシだろうが」
「うぅ……!」
正論を言われて、クラリスはしょげる。グランはそれをしばらく眺めた後に、依頼の内容を話始める。
「やるのは魔物退治だよ、異常発生してるみたいだから数を減らすための依頼」
「……? そんなに数がいるほどの異常発生なのか?」
「うん、結構な異常発生。小さい島だけど、島中で避難勧告が出るレベル」
「おいおい……そりゃまた物騒な事だな」
「だよね、俺もそう思う」
呑気な会話を繰り広げるグランとカリオストロ。その光景を、クラリスは少し羨ましそうにみていた。
「……」
「あ? どうしたクラリス」
「ししょーはいいなぁって……」
「……ったく、オレ様は世界一美少女錬金術師だ。だから俺には俺のやり方があんだよ……お前はお前らしい方法があるんだし、その点で攻めていけばいいだろうが」
「……なるほど……!」
やる気を出すクラリス。それを見てグランは首を傾げていたが、しかし特に問題もなさそうなのでこのままクラリスには、依頼を一緒に行ってもらうことになったのであった。
「……それで、グラン?」
「どうしたんだいクラリス」
依頼に出てから、グランはクラリスに詰め寄られていた。甘い雰囲気もなく、熱っぽい雰囲気もなく……クラリスはちょっと目から光がない感じの雰囲気を出しながら、グランに詰め寄っていた。理由は明白なのだ。
「なんで女の子ばっかりなの?」
「い、いやぁ……人手応募してたら……なんかこうなった」
「他の男の人達は?」
「みんな用事があるとかでどっか行った……」
今まさにグランは、ハーレム状態なのだ。しかもその規模はなかなか見ないレベルのそれである。何せ、100人近い人数の女性を引連れているのだから当たり前である。しかも、そのほとんどがグランに好意を持っているという状況……はっきりいえば少しおかしいレベルだと言わざるを得ない。それは、女性陣のほとんどがそう思っている。因みに男性陣は男ならそれくらいいけ派と、1人に絞れ派、好きにしろ派の3つに別れている。
「全く……グランは女たらしだよね……」
「面目次第も……」
「……ところで、グランはウチと師匠の二人と一緒に来るの?」
「ああ、2人はいわゆる広域殲滅型だからさ。先手必勝で2人が錬金術ぶち込んでから俺が切り込んでいくって感じで」
「おっけー! ケガしないように注意してよね!!」
「モチのロンの任せんしゃい」
とりあえず、一旦グラン達は依頼をこなす為に意識を切りかえていくのであった。
その後、依頼が終わったあとグランサイファーに帰宅した一同。そんな中で、クラリスはある1部のメンバーを集めて話し合いを初めていた。
「ディアンサとククルとアンナはグランに何あげるの?」
「私は……歌をあげようかなって」
「私は特製の銃かなぁ」
ほぼ同年代の女子達を何人か集めての、グランに何を送るかをお互いに聞きあっていた。
クラリスも自分のプレゼントの参考にしようと、なんとかメモをとりながら考えていた。
「アンナは?」
「ぼ、僕は……お弁当……かな……」
その時、クラリスに電流走る。お弁当、今のクラリスにとってはとても甘美な響きである。作って渡すだけで、カップル感を飛び越して夫婦感が産まれるからだ。
「お弁当、か……」
「お? クラリスはグランにお弁当を送るのかな?」
「んー……被るのはなるべく避けたいんだよね……」
同じお弁当では、アンナに失礼だろう。そう考えたクラリスの頭の中で出した結論は『手作りの何か』という案に至った。但し、チョコはバレンタインのものなのでその系統は使えない手である。
「……ところで、エッセルとかってなにか上げるの?」
「ん……私は……街のみんなで作ったペンダント……あげようかなって」
エッセル、十天衆が1人。銃の使い手の少女である。同じく十天衆が1人カトルは弟であり、同じ星屑の街で育ったストリートチルドレンである。
年齢はグランとほぼ同じなのだが、育った環境のせいかお姉さんの立ち位置にいることがよくある。因みに服の露出度が凄まじかったりする。
「……グラン、受け取るかな?」
「わかんない……遠慮しちゃうかも……」
団全員、勿論グランもエッセル達の境遇は理解している。理解しているからこそ、そのペンダントを受け取りづらいとなる時がある。
何せ、星屑の街は子供しかいない街でありその為生活するのもなかなか一苦労しているのだ。
その苦しさを知っているからこそ、グランが受け取るかどうかわからないのだ。
「受け取るか、受け取らないか……私は受け取ると思うけどねぇ」
「そうだと、嬉しいな……」
「グランが優しさを見せるのは当たり前だけど、その優しさがどこに向かうのかは分からないもんね……ウチも受け取るとは思うけど……」
「グランの場合……倍どころか10倍くらいにして即座に返してきそうだし……」
「やりかねないよね……」
グランがやりそうなことに、全員苦笑していた。しかし、それをされたら恐らく女性陣のほとんどが羨むだろう。何せ、グランからの直々のプレゼントなのだから。
「……そういえば、さ。クムユちゃんとシルヴァさんはなにを渡すつもりか聞いた?」
「クムユは特製の弾丸、シルヴァ姉は……聞いたらはぐらかされちゃった」
「うーん……」
「あ、あの……」
「アンナ? どしたの?」
おずおずと手を挙げたアンナ、クラリス達は全員アンナに視線を向ける。
「ぼ、僕じゃないんだけど……あの、ヘルエスさんのことで……」
「へ?」
「ヘルエスさん……? 急にどうしたの?」
別の人のプレゼントの話題に入ったためか、恐らくアンナが聞いたのであろう事を、ディアンサが優しく聞き始める。何せ、ヘルエスはグランのことを好意的に見ている女性陣の中でも、その積極性がトップに近いレベルなのだ。故に、皆聞きたがってしまう。
「……じ、自分にリボンを巻くって……」
「それって……」
「つまり……」
「自分がプレゼントって事!?」
クラリスが大声を出す。当たり前だ、リーシャがいる中でそんなギリギリのことはなかなか決行出来はしない。許されていても、恥ずかしさが勝りかねない。因みにクラリスは自分がそんなこと出来そうにないことを自覚してしまっている。
「う、うぅ……それはずるいよ……!」
「自分がプレゼント……体にリボンなんて巻いて、そんなこと言ったら……絶対手を出すよ……」
「滅茶苦茶スタイルいいもんね……」
グランのことを考えて、全員が思ったこと。それはまず許されている状況ならば、絶対に手を出すということ。そして、グランサイファー以外でなら、リーシャも中々防ぐことがしづらいなどという事もある。
「……いっその事、リーシャさんに後を追わせる?」
「そ、それはそれで……」
「プレゼントを渡す……って行為そのものは邪魔したくないんだよね……自分がプレゼントとはいえ……ヘルエスさんだって、グランに喜んでもらいたくてしてる訳だし……」
止めたいが、止めるとしても他人のプレゼントの妨害は良くないとクラリス達も怖気付く。風紀を乱すのはリーシャ的にも良くないが、それがグランを喜ばせるための誕生日プレゼントということもあってか、それはとめたくないという矛盾した思考が生まれてしまってる。
「……よし!」
「お、なんか名案が浮かんだ感じ?」
「ウ、ウチも自分をプレゼントにする!!」
クラリスのその言葉に、全員が言葉を失っていた。驚いたというのもあるが、それ以上に呆れているのだ。『できないことは無理にしない方がいい』といった感じで。
「……クラリス、お姉ちゃんと一緒にもうちょっとプレゼント考えよ?」
「え、なんでウチが適当にプレゼント考えたみたいに……?」
「そうだよ……流石にまだ早いよ? もうちょっと段階踏まないと……」
「ディアンサまで……?」
「ぼ、僕も手伝う……から……」
「ア、アンナ……?」
全員が呆れ、そして同情的なセリフを投げかけていく中でクラリスは困惑していた。彼女的にはさんざん悩んだ末の答えなのだから。だが、おそらく他に言っても同じような答えが返ってくることは、間違いがないだろう。
「う、ウチだって一生懸命考えてるのにぃ!!」
そして、クラリスは顔を真っ赤にしながら飛び出していくのであった。
「……多分、しようとしても箱の中でずっと体育座りしてそうなんだよねぇ」
「わかる……」
「う、うん……」
……グランサイファー内でのクラリスの評価は『いざと言う時にヘタってしまう』という物なのだが、クラリスだけがそれを知らないのであった。
偶には長編とか書いて欲しい
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はい(ギャグノリ)
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はい(シリアス)
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いいえ