ハイスクールD×D 幻想の守り手 作:てんこ盛り大好きあかき
―――チヨチヨ……チヨチヨ……
小鳥の囀りを耳にしながら、ベッドから起き上がり体を伸ばす。
部屋の時計に目を向けると、針が八時を指していた。
「やれやれ、もう少し眠れると思っていたんだがな。
午後から依頼が来るだろう、支度しなくてはな」
ベットから降りると洗面台に向かい、顔を洗うと、部屋の真ん中で座禅を組み、瞑想を行う。
時間になると、慣れた動作で、普段着から外装と装備を着け、マントを羽織り、最後に狐の面を付け、部屋を出ると、BAR兼、はぐれ狩り専門ギルドへと向かう。
ガチャ
―――ガヤガヤ……ガヤガヤ……
店内に入ると、一般の客は二人位の入りようであったが、慣れた足取りで、更に店の奥にある鉄で出来たドアを開け中に入って行く。
中に入ると、そこにははぐれ狩りギルドのたまり場であった。
中には、男性だけではなく、鎧を着た女性や魔術的な防具を着た者が、酒や食事を摂っていたり、情報を交換や、達成した依頼内容を話していたりと様々だった。
すると、一つのグループが話しかけて来た。
「よう!‘‘死神’’の兄ちゃん!今日も、元気ですかい?」
グループの一人が話しかけ、持っているグラスを掲げると、同じテーブルに居る仲間や、周囲のグループが同様にこちらに向かってグラスで挨拶をしてきた。
『なんだ、‘‘死神’’というのは?俺の名は‘‘無銘’’だぞ?』
不意に首を傾ける真。
「なんだ知らねぇのか?兄ちゃんが噂になっているんだよ。あるはぐれ狩りは、面で決して姿は見せないが、討伐依頼を出せば、100%依頼を完了させ、目を付けられた相手は生きて返されない事から、‘‘死神’’には気をつけろ。なんて、噂が裏の社会に広まってんだ。」
『なんて、はた迷惑な話だ……あまり尾ヒレがつくのは困るんだがな……』
噂話を聞き、深い溜め息をつきながら、店内のカウンターへと向かって歩き出す。
『よぅ、マスター』
「よく来たな、無銘。今日はどうする?」
昨日夜遅くに会ったばかりのマスターに挨拶をし、カウンターに座ると、今日の予定を聞かれた。
『その前に昨日の報酬だが……』
「分かっている。いつも通り、報酬の半分を被害者にたいしての見舞金に、残り半分の報酬を半分ずつ、店とあんたに振り分けたよ」
『いつも手間を掛けるな』
「良いってことよ。しかし、お前も珍しい奴だな。報酬の半分を被害者とはいえ渡しちまうなんて、今まで居たはぐれ狩りの奴らからは想像つかないぜ」
『世の中にはそんな珍しいはぐれ狩りいるんだよ。それより、また奥のテーブルを借りるぞ』
そう言うと、店の奥のテーブルに指を指し確認する。
「構わねぇよ。あの場所を使うのはお前くらいだ。他に注文はあるかい?」
『では、紅茶をポットでくれ。ミルクなし、角砂糖二つで』
「分かった、後で持っていく。奥のテーブルで待っていな」
そう言うと、厨房の奥へ行ってしまい、準備に取り掛かった。
真はそれを見届けてから、奥のテーブルへ移動し、懐から持参してきた本を取り出し、読書に吹けた。
暫くすると、厨房からポットとティーカップを持ったマスターが現れ、真の目の前のテーブルに置くと、すぐに他のはぐれ狩りのテーブルから声が掛かり、その対応に向かって行った。
本にしおりを挟み、紅茶をティーカップに注ぎながら、香りを楽しんでいると、ギルドのたまり場のドアが突然バーン!と勢いよく開かれた。
突然の事でたまり場に居たはぐれ狩りの全員が音のした方へと目を向けると、赤と黒を強調した神父服に身を包んだ金髪の男性とそのすぐ後ろには、灰色のローブを身に包んだ茶髪のツインテールと青い髪でショートカットの少女二人が立っていた。
青い髪の少女の背中には、身の丈程の大きな布に包まれている物を背負っていた。
金髪の男はたまり場を見渡し、まるで品定めをする様な視線を向けると。
「フンッ。どいつもこいつもロクなのが居ないな、正直言ってガッカリだな」
鼻で笑い、小馬鹿にした様な台詞を吐きながら店内へと足を踏み入れた。
すると、その台詞を聞いたギルドメンバーは怒りに満ち、不快そうな顔を三人に向けていた。
「トネリ神父。あまりそのような言葉を大勢の場で言うのはどうかと思うのですが……」
「本当の事を言って何が悪い」
「で、ですが……」
「イリナ。この人に何を言っても無駄だ。自分勝手に物事を判断する御方なのだから」
ツインテールの少女がトネリと呼ばれている男性を宥めようとするが、青髪のショートカットの少女が肩に手を乗せ、呆れ顔でやめさせた。
そして三人がカウンターまで来るとマスターに金髪の男性が質問をした。
「マスター、此処に‘‘死神’’という人物がいると聞いたんだが何処にいる?」
「……そんな事を聞いてどうするんだ?依頼でも出すのか?」
「いや、こんな所に居るより、我々教会側に来て欲しいという、所謂スカウトってやつだよ」
「こんな所で悪かったな。そりゃあ彼奴が行きたいと言うんなら連れて行くといいさ」
「ああ、言い方が不適切だったな、そいつが行く行かない関係なく我々は‘‘死神’’を連れて行く」
金髪の男性の言葉を聞いた店内の全員が驚愕した表情を浮かべた。
「そいつはどう言うことだ?」
マスターはしかめた顔をして神父を睨む。
「何、簡単な事だ。彼の持つ力は危険だ。故に我々教会の人間が管理しなくてはならない存在だと判断したのですよ」
淡々と理由を述べていると、バンッ!とテーブルをたたく音がする。
「巫山戯るな!!兄ちゃんの何処が危険だと言うんだ!」
音かした方に振り向くと、店内に居た全員が三人に向かって睨んだ。
「……一人で複数のはぐれ悪魔を討伐出来る人物は危険ではないと?」
「ああ、そうだ!例えどんなに強力な力が有ろうと、兄ちゃんは一度も人を傷つけることはしていないし、犠牲を出した事もない!」
「だからと言って。このまま野放しにして置くわけにはいかない。彼は我々教会で管理する」
「それはそっちの勝手な都合だろうが!!」
「そう取っても構わないが、ならばどうするのだ?」
「決まってる!あんた等が兄ちゃんを無理矢理連れて行くっていうんなら、俺たちは力ずくでもそれを阻止してやるからな!」
そういうと、男は我慢の限界に達したのか立ち上がり、自分の得物である
「やれやれ、こちらとしては、穏便に済まそうとしたんだがな……」
明らかに挑発的な物言いなのに、自分には全く非がないといった態度が、さらに男の怒りを増長させる。
「この……巫山戯やがってえええぇぇ!!!」
あまりの態度に、我慢の限界だったのか、
「イリナ、ゼノヴィア彼奴を止めろ」
「「了解」」
ネロ神父に向かって行く、男の突進を目の前にして二人は落ち着いて行動した。
「ゼノヴィア頼んだわよ」
「ああ」
ゼノヴィアと呼ばれた少女は、背中に背負っていた布を取ると、
「俺と力で勝負か?上等だあああぁぁ!!!」
男は自身の得物である
それに対して、ゼノヴィアも自身が持つ大剣を振り上げ迎え撃った。
―――ガギーン!……バキッ……
折れたのは男の得物である
「何!!」
男は信じられないといった表情で呆然としていた。
その隙をイリナと呼ばれた少女は見逃さず、腕に巻いてある紐を解き、振うと、紐の長さが伸びて、天井の吹き抜けの柱を通し、男の腕に巻きつき、引っ張り吊り上げた。
「く、くそおおぉ!!」
男は吊り上げたままの状態で悔しさを露わにしたが、どうすることもできなかった。
その男に、トネリ神父は近づいて行った。
「どうですか?我々教会の力は。お前如きがいくら我々に挑もうと、こんな風に制圧できるんだよ。身の程を知れ雑魚が」
「なにを、自分は何もしてない癖に……」
「お前如き、僕の手を汚すまでもないと思ったからだよ。……ただお前の言うことにも一理ある。最後は僕自身の手で始末してあげよう」
そういうと、トネリ神父は、右手を軽く上げると、空間が歪み、そこから一振りの剣が出くる。
「光栄に思うんだな。貴様ごときがこの僕が持つ『聖剣』で断罪されるのだからな」
男の目の前に行き、薄ら笑みをきかせ、聖剣を振り上げ、そして……
「判決……死刑!!」
振り下ろした。
―――キィィィン!!!
男は目を瞑っていたが、いつまでたっても痛みがこない事に不思議に思い、目を開けると、そこには狐の面が近くにあり、刀で『聖剣』を受け止めていた。
『少し……やり過ぎだな……』
冷静な物言いではあるが、内心は怒気が含まれている口調に二人の少女と店内にいるギルドメンバーはたじろいだが、神父だけはそのことに気づいていなかった。
「何だね、君は?部外者は引っ込んでてくれないか?」
『俺は、お前が探している人物だが、何か問題があるか?』
その台詞と同時に神父の『聖剣』を弾き、後方に下がらせる。
「ああ、君がそうでしたか。では話が早い。僕たちと一緒に教会に来てください」
『断る』
「では仕方ない。力ずくでも連れて行かせてもらう。イリナ、ゼノヴィア。彼を捕えろ」
「「了解」」
そう言うと、吊り上げていた男から紐を解き、自分の手元に戻し、
『その前に、俺は先に受けたこの依頼を優先させるぞ。マスター、依頼番号37番∶魔物の山の討伐依頼を受領してくれ』
カウンターに居るマスターにそう告げると『わかった』と腕を挙げて答えた。
『話はまた後だ、じゃあ……』
「まて」
踵を返し、店内を出ていこうとしたときに、神父に呼び止められた。
「我々もその依頼に同行させてもらおうか」
『何故だ?』
「君の実力をこの目で見てみたいんだよ」
薄ら笑みを浮かべて
『……分かった。ただし、傍観しているだけにしろ。戦闘になったら此方の指示があるまで手を出さない事。それが条件だ』
「ああ、分かった」
『そっちの二人も、いいな?』
二人の少女から返事はなかったが、しっかり頷いていた。
『では、行くとしよう』
そう言うと、