そして、ちょいと短いです。が、話は進みます。
定期試験も終わり夏休み。期末テストでは、勉強会の甲斐あってか、うちの部活生全員がどうにか赤点を回避することに成功したのであった。
夏休み、とはいっても特にやることは無く、学校から出された課題があるとはいえ、言ってしまえば暇である。
「おはよ、兄さん」
そうは言っても、健康は早寝早起き3食食べることであり、生活リズムというのは学校がある日と大抵変わりはない。
「おはよう。今日は友達とショッピングだったか?」
「うん。夕飯は食べてくるね」
他愛もない会話。テレビを見ながら朝食を撮る。今日は簡単に、トーストとハムエッグである。
番組を回りしていると、気になるニュースが流れていた。
『昨夜未明、30代男性が路上で重体を負った状態で発見されました。なお、男性は体を何か鋭利な爪のようなもので数度引き裂かれており、警察は動物の仕業であると判断しています。しかし、この街で熊のような危険な動物は今までに発見されておらず――』
何かに引き裂かれた跡。危険な動物。そんな単語から連想されるのは、学校の裏山で見たフェンリルであった。あれを見つけてから、特にこれといった被害は出ていなかったため、放置していたが、これはまずいことになっているのではないか。
「うわ、怖……この街、そんな危険な動物いたんだ……」
熊ならまだかわいい。だが、相手はそんな生易しいものでは無い。
「みたいだな。気をつけろよ。特に、うちの学校の裏山には近づくなよ」
フェンリルが根城にしているあの裏山。あそこに近づいて、身内がやられたなどあったら気が狂ってしまいそうである。
「兄さんの……? どうして?」
「いや、なんとなくだ。あそこ、熊とか居そうだろ?」
つい口が滑ってしまったが、今更訂正することは出来ないだろえ。魔物がいるから、とは言えない。適当に誤魔化す。
「確かに」
少し苦しい言い訳だったが、どうやら納得してくれたようだ。
「それじゃ、行ってきます」
桜を見送り、携帯を開き、雨と神崎にメールを送る。内容は、倉庫に集まって欲しいということ。どうやら、雨と神崎もニュースを見たようで、二つ返事で承諾のメールが帰ってきた。
「それで、どう思う?」
「どうもこうも、一番危険視していることが起こっている、と考えていいだろうな」
「そう、ですよね……」
フェンリルが人を襲う。これが一番危険視していたこと。今まで大人しくしていたというのに、何故このタイミングなのだろうか。
「ですが、おかしいんですよね。一応、遣いに裏山のフェンスの様子を見てきてもらったのですが、どこも壊されてはいなかったみたいなんです」
「あれは巨大ですから、乗り越えるということも可能でしょう。しかし、どうしましょう……」
フェンスを乗り越えるというのは、あの巨体であると簡単なことだろう。
それにしても実際問題、あれに勝てるというビジョンは見えない。戦車でもあれば別なのだろうが、ないものねだりだろう。
「打つ手無し、というのはこの事だな」
「せめて、この世界でも力が使えたら……」
それは、ないものねだりなのだろう。
「この世界で力がねぇ……この世界は魔力が少ないんだったか?」
「正確にはマナだね。ある程度の魔法は使えないこともないんだけど、どうもマナ不足で術式が打ち消されるんだ」
魔法を使ったことがないから、よくわからないが、元勇者が言っているから正しいことなのだろう。
「魔法も宛にできないか。神崎もそんな感じなのか?」
「はい。雨さんに教えてもらった攻撃魔法はほとんど機能しませんね」
やはり、同じ現象らしい。それにしても――
「補助魔法の方はいけるんだな」
この間、雨は普通に補助魔法を使っていた。なにか違いでもあるのだろうか。
「はい。補助魔法の方は問題なく機能しているみたいです。こちらは魔法陣の解析も出来てますし」
流石、中二病といったところなのか。普通そこまでするか?
「なるほどな……補助魔法で身体強化とかないのかよ?」
よくアニメとかである身体強化。それを使えば、どうにか出来るのではないかと考える。
「あるにはある。けど、それだけじゃ到底フェンリルには勝てないだろうね。強化したところで、地力が違いすぎる」
さすが、全盛期の勇者でも勝てないと言わしめただけある。補助魔法に頼るというのを、選択肢に含めるというのは難しいだろう。
「魔王なら、どうにか出来たのかな……」
「なんでそう思うんだよ」
また急な話である。
「魔王は、魔法無しで僕に勝っていたからね」
「魔王は魔法を使っていなかったんですか?」
「どうも、魔王には魔法適性がなかったらしくてね。だけど、強かったよ」
思い出に耽ける雨。だが、今はそんな話をしているときではない。
「とりあえず、俺たちに今できるのことを考えるしかない。最悪、自衛隊が出張ってくれるだろうが……」
それで、どうなるとも思えない。
「それでも、良くて全滅だろうね。核でも落とせば別なんだろうけど」
それ、なんて言う世紀末?
「もうこんな時間か……」
「結局、成果なしですね……」
気がつくと、倉庫を照らしていた日も沈んでいた。いくつかの意見は出たが、神崎の言う通り成果なし。お手上げ状態である。
また明日、集まることにしてとりあえず今日のところは解散となった。
「涼也、こんな時に悪いんだけど……魔物の気配だよ」
帰り道、雨が申し訳なさそうに言う。別に、こんな時だろうが、察知したものは仕方が無いだろう。
「行くぞ」
現在、武器になるようなものは持っていないが何とかするしかない。武器になるようなものを携行しておいた方が良いのだろうか。
「魔物の気配が消えた……?」
もう少しで現場というところで、雨の足が止まる。その顔からは困惑が見て取れる。
「そんなことあるのか?」
「うん。たまにこんなことがあるんだけど……」
どうやら、原因は不明のよう。
「もうすぐ近くだろ、消えた場所に急ぐぞ」
この場にいても仕方が無い。先んず、行ってみるに越したことはないだろう。
そして、現場。その場には、巫女服を着た女性が佇んでいた。巫女服だけでも、少し異常に感じるというのに、その手には日本刀を持っている。だが、そのシルエットには見覚えがあった。
「生徒会長……?」
「む? 鈴童に風鳴か。どうしたんだ、こんな時間に」
生徒会長は刀を鞘にしまい、問う。
「それはこっちのセリフだよ。なんすか、その刀」
どこの誰が見ても、銃刀法違反に引っかかるサイズだろう。
「うむ。見られてしまったからには説明せねばなるまい」
生徒会長からのお話を簡単に要約するとこうだ。生徒会長の家は代々陰陽師(おんようじ)の家系らしい。この街では魔物(生徒会長は妖と呼んでいた)が昔からよく集まる場所であり、ここら一体の治安を守っているとのこと。
雨は何度か魔物の気配が突然消えたと言っていたが、これまでも生徒会長が退治していたのだろう。
「さて、説明はした。そちらの説明もしてもらうぞ」
「なんのことっすか?」
現在、俺達は現場に居合わせてしまったただの一般人。言い逃れる術はいくらでもあるだろう。
「誤魔化そうとは思うな。ここらには人避けの結界を張っている。それなのに、ここにお前達が居るというのはおかしな話だろう?」
生徒会長の鋭い眼差しが俺たちを貫く。
え、何その有能な結界。陰陽師ってなんでもありなんっすね。これは観念するしかないだろう。
「分かりました……話します」
雨は話せることは全て話した。自分か転生者であるということ、魔物を倒して回っているということ。そして、他にも転生者がいないかということを探しているということを。
「なるほどな。それで、妖を追っていたと。この世には奇妙なことがあるものだ」
「同感ですね」
「しかし、転生者というのは聞いたことがないな。力になれなくて済まないな」
やはり、転生者というのは相当稀な存在であるらしい。これから先、見つけることは出来るのだろうか。
「別に構いませんよ。生徒会長は学校の裏山のことは?」
「気づいている。あれは神霊の類だ。手出し無用であるし、するにしても役不足だ」
そちらの専門家にしてみても、強力なものらしい。これは、本当に難題である。
「やはり、そうですか……」
「ともあれ、妖については私も協力する。本来なら、注意するところだろうが、事情は分かった。放ってはおけんからな」
それは嬉しい申し出であった。現状、2人ではいつ限界が来るかわからない。生徒会長はいわゆるプロであるため、心強い。
「そういえば、お前達はいつも、放課後に集まっているようだったな。何をしているのだ?」
誰にも話していないことだったが、生徒会長は生徒の動向には敏感らしい。
「表向きにはオカルト研究っすね」
「ほう、裏では?」
「魔物退治と転生者探しといったところです」
「なかなか面白そうだ」
生徒会長はニヒルに笑ったのであった。
夏休み、いいなぁ……
ゆっくりしたい(笑)
とりあえず、部活のメンバーはこれで揃いました!
次回お祭りです(・▽・)
それにしても、思った以上に書けてます。すぐ辞めるかなと思ってたんですけど(笑)
11話も続くなんて思ってもいませんでした…
それでは、感想・評価・指摘等受け付けてますので、お願いします!