最近この小説を読む機会がありまして、創作意欲に芽生えてしまいました。
本来ここは夏祭り編だったのですが、それ以前にやりたい話ができたので、追加です。夏祭り編はこの後やるので、残してはおきますが、多分色々変わるかと思います
海に行こう。夏休みの中盤、いつものように倉庫に集まっていた俺たちに突撃訪問してきた生徒会長の発言だった。
「か、会長……? どうしたんですか、こんな所に?」
俺と雨含め、全員で固まっていると、神崎が言葉を発する。
「うむ、事情は風鳴と鈴童から聞いてある。私もこの部活に参加するとしよう」
そういえば、生徒会長のことを神崎に話すのを忘れていた。ジト目を向けられる。
「どういう意味でしょう……」
神崎はなにか裏があるのではないか、と勘ぐっている様子である。
「なに、他意はない。ついでに、ここを学校の部活として認可しよう。顧問は……そうだな、特別顧問を招いているということででっちあげれば何とかなるだろう」
「そのメリットは……?」
そう。わざわざ部活と認定されなくても今まで活動してきている。今更、部活動と認可されたところで、メリットもないだろう。
「部費が出るぞ?」
「え?」
どや顔の生徒会長に素っ頓狂な声を上げる神崎。これは完全に予想外であった。
「この部はオカルト研究部だ。部費でオカルトの類を集めることも可能だろう。ここら一体の言い伝えなんかも集めやすくなるだろう、というのは表向きだ」
表向き、というのならば裏に何かあるのだろう。会長は続ける。
「それなりの金が入るのならば、妖と戦うための武器になるようなものを仕入れることが出来る。部費の使用状況については明細を書かなければならないが、その辺は私がなんとかしよう」
会長がやってくれるとあれば話は早いだろう。もはや言うことはあるまい。
「で、ですが、この部は危険なんですよ!?」
しかし、神崎はどこか気に入らないらしく、首を縦に振ろうとはしない。自分の聖地(中二病の)が侵されるとでも思っているのだろう。
「案ずるな、私はこれでも巫女だ。自分の身は自分で守れるさ。生徒会長と兼任がゆえ、さほどここには来れないだろうがな」
「それなら……」
結局、神崎は渋々折れた。
「ところで、急に海なんてどうしたんですか?」
「ただの下心だ」
「はい?」
下心? どういうことだ?
まさか、海で妖でも退治させるつもりじゃないだろうな?
「なに、うちの親戚が海の家をやっていてな。夏は毎年、人手不足で困っている。どうだ? バイトをしないか?」
なるほど、バイトの募集か
「あの、うちの高校バイト禁止ではなかったですか?」
神崎が手を挙げ質問する。
「そうだぞ。そのせいで我の懐事情も厳しいのだ!!」
可憐は胸を張ってそういうが、厨二グッズの買いすぎだろう。
「合宿先の手伝いとすれば問題なかろう。申請書の書きようなど、いくらでもある」
誰だよ、この人を生徒会長にしたのは……
「合宿、ですか?」
「うむ、部活らしくてよかろう」
別に部活をしたい訳では無いのだが……
「うん、いいんじゃないかな? 楽しそうだし。困っている人を放ってはおけないしね」
さすがは勇者様。クエストは全てこなしていくスタイルらしい。
「合宿という名目なら、部活動としては理にかなってますし……」
神崎は渋々頷き、可憐は後ろで「海だ! 海だ!」と盛り上がり始めた。
結局俺たちは海へ行くこととなった。
「そういえば、あの海には人魚の伝承があってな」
「……はい?」
なんかとんでもないことを言い出したぞ、この人……
「毎年、何人か海に連れていかれるという噂だ。あくまで噂だがな」
「それ、先に言うべきことじゃないですか!?」
神崎の言い分はもっともである。
「なに、海というのは古くからの伝承も多い。妖の一匹や二匹いてもおかしくはないだろう?」
おかしいだろ。可憐なんか妖と聞いた途端、ひとりでさらに盛り上がり始めたぞ。
海行きが決まったばかりだというのに、俺の胃は早くも痛くなり始めていた。
翌日
「悪いね。買い物に付き合わせて」
申し訳なさそうに雨は言う。
「暇だったから問題ない。俺も買わないといけないものがあるしな」
唐突すぎる海の話で、まず水着が無い。恐らく、雨も同じなのだろう。
「お、そこにいるのは先輩達ではないかっ!!」
デパートを散策していると、ふと聞き覚えのある声がした。声の持ち主の方を見てみると、可憐と神崎が立っていた。
「姫と可憐嬢ではないですか」
「お前たちも買い物か?」
俺たちは2人の方へ歩み寄る。
「ええ、既にメインの買い物は済ませたので、ウィンドウショッピングをしていました」
「中々良き買い物であった!」
可憐は得意気に買い物袋を掲げた。隣の神崎も微笑みながら小さく頷いた。
「雨さん達も買い物ですか?」
「はい。お恥ずかしながら、水着を持ち合わせていないため、買いに来た次第です」
「ならば、我が選んでやろうではないか!」
「いや、別にいらん……男の水着なんて適当でいいしな」
雨は知らんが、俺のは安くて良い。
「海という戦場に赴くのだ。装備選びは重要だぞ!」
「折角ですし、付き合いますよ」
可憐は当然のように言い、神崎も頷いた。
「こっちの黒はどうだ! まるで闇に紛れる暗殺者のようではないか!」
可憐が指さすのはダイバースーツ。こんなので海に行ったら目立ってしょうがない。
「海で暗殺者になる予定はない」
「む……ならば、こちらの赤はどうだ?」
今度は真っ赤なブーメランパンツ。雨と神崎は苦笑いをしている。
「却下だ」
「なぜ!?」
食い下がってくる可憐。本当にこんなのを着せたいのか?
「俺は戦隊ヒーローじゃねぇんだよ。いいか、可憐。男物の水着なんて基本的に似たようなもんだから、適当でいいんだよ」
結局、俺と雨は数分もかからず無難なものを選んだ。
そして、昼食。俺たちは、フードコートのテーブルに腰掛けていた。
「そういえば、生徒会長が言っていた人魚だけど、僕は詳しくは知らないんだ。みんなは人魚がどういうものか知ってるかい?」
「我は知っているぞ? アンデルセンの人魚姫だろ?」
ドヤ顔の可憐だが、行方不明者が出ている時点で御伽噺のそれとは違うだろう。
「多分違うな。毎年行方不明者が出てるって話なら、御伽噺みたいな綺麗な話じゃないだろ」
「はい。アンデルセンの人魚姫は綺麗な話ではないのですが……話が逸れるのでこの話は置いておきましょう」
神崎は続ける。
「人魚は世界中で伝承があるのですが、日本ではその血肉を食べると不老不死になると言われている半人半魚の生物です」
こういった伝承の類になると、神崎は淀みなく知識が出てくる。
「不老不死か……それが本当ならろくな事にならないだろうな……」
「あくまで日本の妖怪の話ですけどね」
「他の国では違うのかい?」
「他国ではセイレーンと同列に扱われることもありますね。もっとも、日本の人魚とセイレーンは別物ですが」
「セイレーンっていうと歌声で船乗りを海へ誘い込むっていう、あれか?」
行方不明者が出てることを考えるとそっちの方がそれっぽくはある。
「はい。ちなみに、セイレーンは元々半人半鳥だったと言われていて──」
「神崎、ストップだ。情報が多すぎてついていけなくなる」
「あ、すみません……つい……」
恥ずかしそうに頬を掻く神崎。こういう伝承の話になると、本当に饒舌になる。
「ふむ。つまり、人魚には不老不死の伝承があり、セイレーンには人を惑わす伝承があるということだな?」
可憐にしては、やけに物分りがいい。
「ざっくり言えば、そんなところですね」
「どちらにせよ、ろくでもない予感しかしないんだが……」
こうして、俺たちの海は開かれるのであった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
久しぶりの小説推敲で、かなり時間がかかりました(笑)
設定も忘れかけていたので、1から練り直し、矛盾がないように1話から修正を行いました。
とりあえず、短くてもこの小説を完結させようと思います。再出発となりますのでよろしくお願いします。