転生勇者と中二姫 ちなみに俺は一般人   作:朎〜Rea〜

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皆様、こんばんわ。昔の祭り編は削除致しました。
海編を終わらせ、祭編を書き上げられそうで、とりあえず一息です




本祭

「あいつ、どこまで行ったんだ……」

 

 可憐を追って走ったが、とうとう祭り会場の端まで来た。

 

 この辺りにもまだ人は多いが、中央に比べればだいぶ少ない。

 

「さすがに、ここまで来るとは思えないんだけどな……」

 

 周囲を見回す。

 

 屋台の明かりも、ここまで来るとまばらになっている。

 

 少し外れた方へ歩いていくと、次第に人の姿も少なくなっていった。

 

 それに合わせるように、祭りの喧騒も少しずつ遠のいていく。

 

「……この先は森だったろ」

 

 ここから少し先には、祭りの明かりが届かない場所がある。その向こうには、木々が連なっていた。

 

 普段の可憐であれば、あんなところまで行くとは思えない。

 

 しかし、あいつは眼帯が外れた途端、あんなに取り乱して逃げていった。

 

 もしかすると、俺が思っているより遠くまで行っているのかもしれない。

 

「……」

 

 途中で見逃した、という可能性もある。

 

 それでも、どうにも胸騒ぎがする。

 

「……まさかな」

 

 ここまで来た以上、確認しておいた方がいいだろう。

 

 俺は森へ向かって歩き出した。

 

 森へ入ると、先程まで聞こえていた祭りの喧騒がさらに遠くなった。

 

 木々の隙間から僅かに見えていた明かりも、すぐに見えなくなる。

 

「……思ったより、深いな」

 

 足元に気をつけながら、木々の間を進んでいく。

 

「可憐ー!」

 

 返事はない。

 

「おーい、可憐!」

 

 やはり、返事は返ってこない。

 

 少し歩いたところで、開けた場所に出た。

 

「……ん?」

 

 木々の向こうに、何かが見える。

 

 近づいてみると、そこにあったのは小さな社だった。

 

 周囲を木々に囲まれた社は、長い間人の手が入っていないように見えた。

 

 鳥居はところどころ塗装が剥がれ、柱には苔が張り付いている。参道らしき道も草に覆われ、ところどころ土が剥き出しになっていた。

 

 それでも、完全に朽ちているわけではない。

 

 社殿の屋根には枯れ葉が積もっているものの、崩れている様子はなく、軒先には古びた鈴が一つだけ残っている。

 

「こんなところに……」

 

 誰かが今でも使っているのか、それとも昔からここにあるだけなのか。

 

 そんなことを考えながら、社の前まで歩み寄る。

 

 脇には、古びた石碑が立っていた。

 

 表面には苔が張り付いているが、その中央だけは文字が読める程度に残っている。

 

 ────鹽見社。

 

「……なんだ、これ」

 

 文字を目で追ってみるが、読み方が分からない。

 

 こんな森の中に、こんな社があったなんて聞いたこともなかった。

 

「……可憐、ここには来てないのか?」

 

 祭りの会場からほぼ一直線に来たが、ここまで来る途中に他の道は見当たらなかった。

 

 可憐も同じように逃げてきたのなら、ここに辿り着いていてもおかしくはない。

 

 社の周囲を見回す。

 

 草を踏み分けた跡でもないかと探すが、それらしいものは見つからない。

 

 その時だった。

 

「──きゃあっ!」

 

「可憐!?」

 

 反射的に声のした方へ走る。

 

 社の裏手へ回ると、木々の間に人影が見えた。

 

「可憐!」

 

 そこにいたのは、間違いなく可憐だった。

 

 だが、その前には──

 

「……なんだ、あれ」

 

 人の形をした何かが立っていた。

 

 それは、人間に似ていた。

 

 けれど、人間ではない。

 

 肌は死人のように青白く、身体は異様なほど痩せ細っている。手足も人間のものとは思えないほど長く、こちらを向いた顔には生気というものがまるで感じられなかった。

 

「可憐! こっちへ来い!」

「せ、先輩……?! あ、足が……」

 

 可憐はその場にへたりこんだまま、動けないでいた。

 

 その瞬間、ソイツが動いた。

 

「──っ!」

 

 俺は咄嗟に可憐の前へ出た。

 

 振り下ろされた腕を受け流し、腹あたりを思いっきり蹴り飛ばす。

 

「なんなんだこいつは……」

 

 確かな手応えがあった。

 

 だが、ソイツは数歩後ろへよろめいただけだった。

 

「……効いてない?」

 

 ソイツは何事もなかったかのように、ゆっくりとこちらへ向き直る。

 

「嘘だろ……」

 

 これは、俺ひとりでどうにかできる相手では無さそうだ。

 

 本来なら、逃げるべきなのだろうが、可憐が動けないでいる。

 

 それなら、やることはひとつ。

 

 俺は、再び拳を握り込む。

 

 ソイツがこちらへ向かってくる。

 

 今度は先ほどよりも、その動きがよく見えた。

 

 振り下ろされた腕を横へ避け、そのまま懐へ潜り込む。脇腹へ拳を叩き込むと、確かな手応えがあった。

 

「っ……!」

 

 だが、ソイツは僅かに身体を揺らしただけだった。

 

「やっぱ効かないのかよ……!」

 

 反撃を受け流し、足を払う。

 

 ソイツは僅かによろめいた。

 

 ──いける。

 

 そう思ったのも束の間、何事もなかったかのように立ち上がる。

 

「……しぶといな」

 

 こんなに殴っても、蹴っても、止まらない。

 

 普通の人間なら、とっくに動けなくなっているはずだ。

 

 俺が考えている間にも、ソイツの腕が迫る。

 

 身を屈めて避ける。

 

 ──間に合わない。

 

「ぐっ……!」

 

 肩を掠め、服が裂ける。その下からじわりと血が滲む。

 

「先輩……! 血が……」

「大丈夫だ!」

 

 そう答えたが、肩は思った以上に痛んでいた。

 

 追撃がくる。

 

 今度は正面から拳を受け止め、腕を絡めてその勢いを殺す。そのまま身体を捻り、地面へ叩きつけようとする。

 

 ────が、持ち上がらない。

 

 逆に腕を振り払われ、身体が吹き飛ばされる。

 

「ぐっ……!」

 

 背中から地面に叩きつけられ、息が詰まった。

 

 一瞬、何も見えなくなる。

 

 それでも、すぐに身体を起こした。

 

 ソイツの視線が、その先にいる可憐へ向いている。

 

「……させるか」

 

 足に力を入れる。

 

 痛い。だが、まだ動ける。

 

 再び可憐の前へ出る。

 

 迫る腕を受け流し、腹へ蹴りを叩き込む。

 

 ソイツはよろめく。だが、それでも止まらない。

 

「……くそっ」

 

 息が荒くなる。拳が痛い。肩も痛む。脇腹も、さっきからずっと痛みが残っている。

 

 それでも、目の前のソイツはほとんど変わっていない。

 

 可憐の方を見る。

 

 彼女は、何も言わずに俺を見ていた。

 

 ソイツがまた動く。

 

 今度は避けきれなかった。

 

「──っ!」

 

 腹に衝撃が走る。

 

 身体が浮き、そのまま地面を転がった。

 

「先輩!」

「来るな!」

 

 思わず怒鳴る。

 

 可憐がびくりと身体を震わせた。

 

 俺はゆっくりと立ち上がる。足元が少しふらついた。

 

 それでも、ソイツから目を逸らさない。

 

「……なんで」

 

 可憐の声が聞こえた。

 

「なんで、そこまで……」

 

 勝てる気がしない。

 

 それでも──

 

 後ろにいる可憐を置いて逃げるなんて、できるわけがない。

 

 ソイツがゆっくりとこちらへ歩いてくる。

 

 俺は拳を構え直した。

 

 ソイツが腕を振り上げた。

 

 俺も踏み込む。

 

 拳と拳がぶつかり、こちらの腕が痺れる。

 

 そのまま身体を捻って蹴りを入れるが、倒れない。

 

「……はぁ、はぁ……」

 

 息が苦しい。視界が少し揺れる。

 

 それでも、立っている。

 

 俺の後ろには可憐がいる。

 

「先輩……」

 

 背後から、小さな声が聞こえた。

 

「もう……やめてください……逃げてください!」

 

 振り返ると、少女は今にも泣きそうな顔をしていた。

 

「何言ってんだ。お前を置いて行けるわけないだろうが」

「いいんです……」

 

 可憐の声が震える。

 

「私には、なんにもない!! 堕天使の力なんてなければ、ダークウィングとなんて戦ってない!! ただ、先輩が傷つくのを見ることしか出来ない!!」

 

 可憐の目から涙が零れる。

 

「私なんかのために傷つかないでください……だから、お願いです……逃げてください……」

 

 俺は一度、目の前のソイツを見る。そして、可憐を見る。

 

「断る」

「……っ!? どうして──」

「それは、俺が俺を許せなくなる」

 

 ソイツが動いた。今までとは比べものにならない勢いだった。

 

「──っ!」

 

 まずい──避けられない。

 

 そう思った瞬間だった。

 

 振り下ろされた腕が、俺の目の前で止まった。

 

 誰かが、その腕を受け止めていた。

 

「遅いぞ、雨……」

 

「すまない。これでも気配がしたから、とばしてきたんだ。なんせ距離があったからね」

 

 雨はソイツを押し返すと、ちらりと可憐を見る。

 

「それと、可憐嬢。失礼」

「え……?」

 

 次の瞬間、可憐の身体から力が抜けた。

 

「お、おい……!」

「睡眠魔法だよ。涼也、彼女を安全なところに」

「……任された」

 

 俺は倒れかけた可憐を抱き止め、そのまま社の階段まで運んで座らせる。

 

 そして、再び雨の元へ戻った。

 

 雨は木刀を構え、ソイツと向き合っている。

 

 何度か木刀を叩き込んでいるが、やはりダメージが入っているようには見えない。

 

 俺は雨の隣に立ち、拳を構える。

 

「おい、あいつなんなんだよ」

「あれはグールだね。魔物だよ」

 

 雨はソイツの攻撃をいなし、木刀を縦に振り下ろした。

 

「わかっているとは思うけど、見ての通り物理攻撃はほとんど効かない。本来有効である攻撃魔法も、この世界ではほとんど使えない。さて──」

 

 雨がグールを見る。

 

「どうしようか……」

 

 




このベタ展開どうする主人公!?

呼んでくれる人が増えてて、我感激!
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