「ひっぐ…えぐ……」
金剛は鎮守府の食堂から逃げ出し、小笠原の港に座りながら泣いていた
辺りはすっかり夕暮れになっており日が水平線に沈みかけていた
今までもずっと変わらない景色、自分が不幸だけならまだ良い
でもそれを他の人に移し不幸にするのが彼女には耐えられないのだ
目を伏せればあの光景が浮かび上がる
「お前のせいだ!!お前の不幸が原因だ!!」
「あんたなんか!!居るんじゃないわよ!」
金剛に向けられた提督達の暴言の数々
「こんな奴と一緒の艦隊とか最悪ね…
運の尽きね」
「提督!!この人とは別にしてください!!
沈みたくありません!!」
艦娘達からの批判の声
「お前何て、金剛型の恥だ!!」
「あんたなんかとっとと死ねばいいのに!!」
触ろうとすると避けられる
「触らないで!!!あたしはあの娘みたいになりたくない!!」
「金剛、貴様は執務室に立ち入り禁止だ失せろ!!!」
(どうして……何で…私だけ…)
「あんたのせいで!!轟沈艦が出たんだけど!!」
「うぅ……何でよ…」
(ごめんなさい!ごめんなさい!!!)
「死ね!死ね!死ね!死ね!!!」
「ちゃっちゃと沈みなさいよ!!」
(ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!)
「この!!不幸を呼ぶ不幸高速艦が!!!」
(ごめんなさい……ごめんなさい………
解体……嫌……もう……殺して…)
「はぁ、はぁ、金剛!!こんなところに居たのか!?」
後ろから大声で名前を呼ばれ振り返るとそこには肩で息をしていた
「提……督…?」
「ふぅ……探したぞ、全く…
うちには空母が居ないから探すのに手間取るぜ……」
佐渡は息を整え、金剛に歩いていくと金剛は立ち上がり後ずさる
「こ、来ないで!!!」
金剛の言葉に一瞬足を止めると涙でぐしゃぐしゃの金剛を真っ直ぐ見ながら問う
「俺が嫌いか?それとも男苦手?」
「違います!!私に近付くと不幸が……」
「ふーん、じゃあやだ」
「……え?」
佐渡は再び歩み始め、金剛にゆっくり近付いていく
佐渡が来ると同時に金剛も後ずさるが後ろはもうコンクリートは無く後ろは波が打ち付けている
「辞めて!来ないでください!!」
「やーだー」
金剛は歩みを止めない佐渡に脅え、海を向くと飛び込もうとする
「逃がさん!!」
佐渡は一気に走りだし、金剛の手を掴み海へ入るのを辞めさせる
「!!!
離して!!私に触らないで!」
「暴れるなって!!落ちるか……」
そう言った瞬間、金剛は足を滑らせ真っ逆さまに落ちそうになるが佐渡が何とか止めるのだが、佐渡も足が滑り二人共海に投げ出される
「……ぷはぁ!!金剛!大丈夫か!?」
佐渡は落ちた後、何とか浮かび上がるが金剛の姿が見えない
まさかと思い海を覗くと金剛が足を押さえながら沈んでいく
恐らく足がつってしまい泳げないのだろう
息を整え、海に潜ると金剛を抱き抱えながら何とか岸まで泳いでたどり着く
「はぁぁ……疲れた…」
「ご、ごめんなさい…」
金剛は申し訳なさそうに座り込み、佐渡はその頭を撫でようとするとやはり逃げ出しそうになるが腕を捕まえる
「逃げんな!!」
「離してください!!じゃないと!!不幸が!!」
「うっるせぇ!!」
そう言うと、金剛を抱き締め逃がさないようにする
しばらく金剛は佐渡の胸の中で暴れるが諦めたのか大人しくなる
次回
不幸な高速戦艦と変態提督
ちょっと金剛の過去を書かせて頂きました
詳しくは……書くと大変なんでゆるしてくだせぇ