艦隊これくしょん ー誰ガ為ノ戦争カー   作:霧雨鴉

161 / 594
 


潜水艦と重巡の二人 二

「本当に……ここでは何もないんですね…」

 

 

イムヤはそう呟くと今までの鎮守府での行動ややって来たことが頭をよぎる

そして静かに目を閉じると目の前にあの男顔が浮かび上がる

キツイ労働、痛み、苦しみ、救いの無い毎日

今目を開けるとそこにはそんなものは無く

綺麗な青空と外から聞こえるのは蝉の声近くに居る古鷹の飲み物を飲む音だけ

平和……本当にその物である

 

 

「何もない訳ではありませんが、ここは平和です」

 

 

「……私はここにいて良いんでしょうか?」

 

 

「それは、どういう意味ですか?」

 

 

イムヤは麦茶の入ったコップが汗をかきはじめておりそれを綺麗にするように手で取りながら水を見ている

 

 

「私は潜水艦です、確かに駆逐艦や軽巡位しか攻撃を受けません

ですが、私には雷撃しかありません

いつも戦えるわけではなくただの囮等に使っていた白鳥提督は間違ってないと思うんです

それに私達は兵器です

どう抗ってもそれは覆りません

だから……」

 

 

そこまで言うと古鷹がふふふと微笑みながら笑っている

 

 

「何か可笑しい……ですか?」

 

 

「いえ、可笑しくないですよ。確かに私達は兵器です

これは絶対に覆えらないでしょう

でしたら、私は兵器の仲間としてイムヤさんに質問します

貴女はどちらの鎮守府に居たいですか?

前の白鳥提督さんが指揮する鎮守府と

今の佐渡提督の指揮する鎮守府」

 

 

「どちらって……」

 

 

イムヤは悩む、私達は兵器だから何も貰えない

貰えるわけにはいけないんだ、でも

ここではそんなことがなかった

艦娘達は優しく、提督も優しいそれは紛い物なのかもしれない

それでも私には、イムヤには居心地が良い

そう感じている自分が居ることに気付く

 

 

「……ここが良いです、いえこちらが良いです…」

 

 

 

「ふふ、でしょう?でしたら貴女はここに居れば良いんですよ」

 

 

古鷹は麦茶を飲みながら、その水面を見つめながら微笑む

 

 

「それに、貴女はここの艦娘です

ここで生きていきましょう?

でも、どうしても嫌なら提督に言って頂ければ、あの人なら何とかしてくれるはずです」

 

 

「……あの!古鷹さんはどうして」

 

 

イムヤがそう言いかけた瞬間外から「へーい!」と大声が聞こえ二人は縁側に歩いていくと金剛が人の顔くらいの大きさの西瓜を持ちながらこちらに歩いてくる

 

 

「ふーるーたーかー!!一緒に西瓜食べませーんかー?やっと冷えたのがあるんデース!!」

 

 

「あ、良いですね!では、包丁持ってきますからお願いしますー!イムヤさんは待っててくださいね?」

 

 

「は、はい!」

 

 

イムヤは、縁側に座っていると金剛が西瓜を振り回しながら歩いてくるが小石に躓いたのか転びそうになる

 

 

「あっ」

 

 

「え?」

 

 

金剛は転ぶとそのまま振り回していた西瓜が真っ直ぐイムヤに飛んでいき腹部に直撃する

 

 

「ぐふっ!」

 

 

「ギャンッ!!いてて……何でこんなところに小石が…不幸ネー……ってあれ西瓜…あー!!イムヤー!!!」

 

 

西瓜はイムヤの腹部に思い切り直撃し痛みにイムヤは堪えている

金剛は慌ててイムヤを心配し駆け寄る

 

 

「イ、イムヤーー!!ごめんなさいー!!

な、何か…」

 

 

「だ、大丈夫……です…」

 

 

 

と急いで縁側に上がろうとした瞬間靴紐がブチッと音を立て切れると金剛が再び躓く

 

 

「あ」

 

 

「……え?」

 

 

そのままイムヤを押し倒すように倒れイムヤは金剛の下敷きになる

すると扉が開き古鷹が包丁を片手に入ってくる

 

 

「金剛さん?さっきの音は……」

 

 

古鷹が入ってくると目の前の光景に唖然とする

飛ばされた西瓜が転がりその隣では金剛がイムヤに倒れ込んでおりまるでアレをしているような感じになっていた

 

 

「………金剛さん?場所と時を改めましょうね?」

 

 

「ちちち、違うネ!!!これは不幸ね!!」

 

 

このあと、金剛から事情を聞いた古鷹は金剛を少し強目に怒ったそうだ

その途中で西瓜を切り分けてありイムヤはその西瓜を少しだけ食べながら痛むお腹を擦りながら縁側でのんびりとしていた

 

 

「……この西瓜、甘いわね…」

 

 

 

 




次回

イムヤと古鷹家事記録

今回はちょっとだけ真面目にそしてのんびりとした日常です
少しの間こんな感じですかね?


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。