艦隊これくしょん ー誰ガ為ノ戦争カー   作:霧雨鴉

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潜水艦と重巡の二人 五

「ふぅ……」

 

 

「気持ちいいですね…」

 

 

古鷹とイムヤは共にお風呂に入っておりのんびりとしていた

 

 

「イムヤさん、いかがでしたか?

この鎮守府で生活してみて」

 

 

「………私は、ここに居ても良いんですよね?」

 

 

「はい、ここは新しい貴女の居場所ですよ?」

 

 

「………そう、何ですね…」

 

 

イムヤは天井を見上げながらのんびりと体を湯に浮かせている

 

 

「私は、ずっと思ってたんです

何でこんな潜水艦に生まれちゃったんだろうって」

 

 

「はい」

 

 

「……19見たいに雷撃火力が高いわけでもない

ゴーヤ見たいに相手に上手く当てるわけでもない

はっちゃん見たいに頭が良いわけでもない

……だから私はこうなんだって自分の運命を、この扱いを受け止めて諦めていたの

どうせ、私は使われるだけでも嬉しいのだから

でもここで教えられた、休息が大事な事

食べること、生きる意味もね…

だから、私はここで、この鎮守府で生きていきたい

もし、轟沈するならこの鎮守府の為に沈みたい…」

 

 

 

「駄目ですよそれは」

 

 

「え?」

 

 

古鷹は湯に浮いているイムヤの両頬を掴みじっと顔を見る

 

 

「貴女は沈ませません

海では私が、叢雲が、金剛さんが、大井さんが絶対に貴女を守ります

そして、陸では提督が守ってくれます

だから貴女はこの戦争が終わるまでここにいてください

そして、誰一人かけることなくこの戦争を迎えるんです

大手を振って未来を生きていきましょう?」

 

 

古鷹の真剣な瞳に頷くと微笑みながら頬を放す

 

 

「提督が、貴女を私に任せた意味が分かった気がします」

 

 

「え?」

 

 

「貴女と私は似ているんです

境遇がですけどね、でも家事が上手いことも似てますよ?

だから任せたんだと思います」

 

 

「そう…何ですか…」

 

 

古鷹の表情を見ると少し悲しそうに過去を見ている様な感じをしており見ていられなくなる

 

 

「私も、最初来たとき提督も信用できなかったんです」

 

 

「……え?古鷹さんが?」

 

 

「はい、私はここに来たときここには今ほど物は無かったですし最初は叢雲と提督だけでした

それこそ、家事も無かったでしたしもっと悲惨な状態でした

提督なんてどうせ私達を物にしか見てないって当時思っていました

でも、あの人は佐渡提督は違った

私達、艦娘に寄り添い笑い合い決して見捨てない

私はそれを見せてもらいました

嬉しかったとても、だから私もそれに答えたいと思ったんです」

 

 

古鷹さんの横顔を見ると嬉しそうにいつもの明るい古鷹の表情をしており少し安堵する 

 

 

「だから、イムヤさんもあの人を信用してあげてください

貴女を決して見捨てませんよ」

 

 

「………うん!ありがとう!古鷹さん!」

 

 

イムヤは、湯船から立ち上がるとそそくさと脱衣場に向かう

 

 

「提督なら今防波堤に居ますよ」

 

 

「…ありがとう!古鷹さん!!」

 

 

イムヤは元気一杯に返事を返すと古鷹は微笑みながら手を振りそれを見送ると湯船から両肩をだして縁に身体を預ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう……私と同じ……でも…無いのかな 

羨ましいな、失うものが無かった人は」

 

 

誰も居ない風呂場で一言だけ呟いた

 

 




次回

今を生きていけ

次回でこのイムヤ編は終わりです
え?古鷹さんは初期艦じゃないのかって?
誰がそんなこと言いましたっけ?
彼女の物語はまだ先です…そうまだ…ね?


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