佐渡は、イムヤが去った防波堤で一人酒を飲みながら静かなその場で月を見ながら悩んでいた
それは親方に言われた『真実』である
「……確かにあれは言えないよな
『艦娘』には特にな」
佐渡は眼を閉じ、イーちゃんを検査に回したときの日の夜親方に呼び出されていた内容を思い出す
「親方さん?俺だけに用ってなんですか?」
「あぁ、おい誰も連れてきてないだろうな?」
親方は静かになった工厰の土台に座りながら佐渡に背を向けている
「えぇ、誰も」
「おい、お前ら外で見張ってろ」
「はいー」
「親方了解ー!」
妖精達は全員佐渡の横を抜け走り出していくと扉の向こう側で待機しているようだ
「それでそこまで警戒するのは何でですか?」
「………イーちゃんについて分かったことがある」
「何か分かったんですか!?」
「あぁ、落ち着いて聞いてくれ
俺も専門家じゃない艤装を扱う一人妖精として言うだけだ
信じてくれなくても構わない」
いつになく弱気の親方を変に思いながらも佐渡は返事を返す
「まさか?親方さんの言葉なら信じるよ」
「……そうか、実はなイーちゃんの主砲だが」
親方は渋るようにだが、決意したような感じになると話始める
「あれは、艦娘の装備12.7㎝連装砲だ」
「!!!!まさか!」
「いや、間違いはねぇ。
あれに関しては驚いた全く遜色ねぇ
誰の艤装までは分からないがあれは駆逐艦が持っている艤装だな」
「でも!そんなことあるんですか!?」
「分からねぇ……だがどっかの話では艦娘は轟沈すると深海棲艦になるって話を聞いたことがある
本当かは分からんけどな」
「じゃあ、イーちゃんは……」
「高確率で、『元』艦娘だ
だが、言語が使えず身体が縮小してるのは分からねぇ
だがあれは間違いない、あれに関しては良く整備させられてたからな……
後、イーちゃんの装甲に使われていたのもバルジ(強化装甲)は艦娘の奴を改良したもんだ
間違いない」
「そんな事って……」
「奴が何者かははっきりしてはいないが俺から言えるのはあいつは『元』艦娘の可能性が非常に高い
心当たりはないか提督、この鎮守府近海で駆逐艦が沈んだって話を」
「いや……聞いたことないや…
でも!この鎮守府が落とされたとき多くの艦娘が死んだって……」
「いや、あいつの主砲とバルジはほとんど消耗してなかった恐らくその後になった奴だからそれはあり得ない
下手をしなくてもここを攻略しに来た艦娘に撃沈させられるはずだからな……
すまない、提督こんなことしかできなくてな…」
「いえ!ありがとうございます!親方さん!」
そう言うと工厰から出ていくとそれからずっとその事が頭に引っ掛かっている
「なら俺達は……元艦娘を殺しているのか…?
分からねぇな…」
佐渡はそう呟くと酒をぐいっと飲み干す
深海棲艦 イ級編 end
次回
止まらない殺戮
次回は大本営での元帥と大淀の話になります