「どうした大井」
「一応、ここ最近の近海以外の海域戦闘を調べました
その一つに興味深いのが見付かりました
これです」
大井から渡された資料には二日前の戦闘記録であるが内容が可笑しかった
「……何だ、この『濃霧の海域』での戦闘って」
「『濃霧の海域』、通称『死の海域』『不還の海』『亡霊の墓場』とも言われている大本営が危険指定している海域です
ここではコンパス、羅針盤や通信機等の電子機器が使えず一年中濃霧が立ち込める特殊海域です
この海域はかなり広く、『現在はフィリピン海を占領しています』」
大井の言葉に引っ掛かり、佐渡は聞き返す
「待て、今現在って言ったか?
そいつはどういう意味だ?」
「実は、この海域動くんです」
「はぁ?」
「だから、動くんですよこの海域
少しずつとか一気に動いたりとか一ヶ月にほんの少しとか動いてるんですよ
端を通るだけなら特に何の問題も無いですし、入らなければ無害の海域なんです
ですが、この海域を突っ切ろうとすると駄目なんです」
「何で?」
「『霧に喰われる』と言われて居ます」
「はぁ?霧が人を喰うのか?」
「はい、話によればこの海を通ろうとすると最後二度と外には出れないそうです
霧の中に何かが居るのか、それとも深海棲艦の亡霊か艦娘の亡霊があの世に連れていくだとか何とか言われてます」
「はぁ意味わかんね、だが知識には入れとくか
んでこれがなんなんだ?」
「ここ最近ではここでしか戦闘記録がありません」
「だが、親方さんは戦った形跡は無かったらしいぞ
艤装には」
「では違いますか……」
佐渡は渡された資料を見ていくと、襲われたのは横須賀行きの商船
護送していたのはアメリカの鎮守府所属
アイオワ
リットリオ
リベッチオ
ジャービス
マエストラーレ
ガンビア
以上であり、彼女達は一人残らず轟沈しており商船も行方不明だがその積み荷に重要な物が有り捜索をしようか検討中と記載されていた
「ん?アイオワ?
あれこれって……」
「はい……私の元仲間です…
非常に残念です…」
大井は悲しそうに顔を俯かせており、佐渡は優しく頭を撫でる
「にしても、一艦隊を沈めて更に商船すら行方不明って何だよ……
そんなにヤバイのが居るのかここには」
「はい……しかもアイオワさんは戦艦でしたし、かなり強かったはずなのに……」
「だが、今はそんなこと考えている場合じゃない
すまないが大井、お前海外艦の空母って知らないか?」
「海外の空母ですか……?」
「あぁ、親方が艤装から彼女は空母だと判明したんだ
だから知らないか?」
大井は悩んでいるが、分からずに電話を取り出す
「ちょっと北上さんに聞いてみます
あの人の方が知ってるはずですから
あともう少し調べてみます」
「すまん、頼む
俺も大淀さんにかけてみるよ」
佐渡と大井は別れ、佐渡は工厰前に居ながら大淀に電話を掛けると少しコールがあったが電話に出てくれる
次回
存在しない者
次回、彼女が誰か判明します!
皆さんは分かりましたでしょうか?