艦隊これくしょん ー誰ガ為ノ戦争カー   作:霧雨鴉

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秘書艦任務 二

「アトミラール、ここが工厰か?」

 

 

「あぁ、お前の艤装はここにあるんだ」

 

 

佐渡とグラーフは二人で工厰に来ており、扉を開くと親方がグラーフの艤装を弄っていた

 

 

「親方さん、やっほー」

 

 

「お、提督来たのか

それと親方さんはそろそろ辞めてくれ

親方で良いさ」

 

 

親方は真っ黒になりながらも艤装を弄っていると隣に見慣れない艦娘を見ていると艤装に向き直る

 

 

「この娘か、この艤装の持ち主は」

 

 

「えぇ、ドイツの正規空母、グラーフツェッペリンさんです

グラーフ、この人はここの工厰の管理人親方さんだ」

 

 

「は、初めまして!グラーフツェッペリンです

よろしく頼む!」

 

 

「おう、よろしくなグラーフちゃん

所で、提督発信器は外したんだがもう少し弄っても良いか?

ドイツの艤装なんてあんまり弄れないから新鮮でな」

 

 

「えぇ、それに関しては別に大丈夫ですよ

グラーフ、良いか?」

 

 

「あぁ、構わない

どうせここでは出撃が少ないのだろ?」

 

 

「皮肉かな?まぁ、そうだな

グラーフ、ちょっと待ってな

俺は他の妖精に用があるからな」

 

 

「分かった」

 

 

佐渡はそう言うと、工厰の奥へと歩いていくとグラーフと親方の二人になってしまう

 

 

「なぁ、グラーフちゃん

話は聞いたよ」

 

 

「っ!な、何の話だ?」

 

 

「んー?あんた、霧の海域から流れてこれた艦娘何だろ?

霧の海域は俺も知ってるがあそこは本当ヤバイからな

良くあそこから生還出来たもんだな」

 

 

グラーフはそちらの事かと安堵の溜め息をつくがやけに霧の海域について親方が驚かすので聞いてみたくなる

 

 

「何だ、そんなに凄いのか私は」

 

 

「あぁ、ぶっちゃけあり得ないほどにな

あそこは不還の海と呼ばれ入れば最後誰も出てこれない

前の提督が言ってたが、連合艦隊で行っても全員壊滅したって話を聞いたからなあそこは

正に艦娘の墓場だよ」

 

 

「何だと……私はそんなところから?」

 

 

「そうだぜ、あそこから出てこれたものは居ない

だからこそ大本営もどうすれば良いのか分からないらしい

あそこで、海外艦のビスマルク、ウォースパイト、プリンツオイゲンも沈んだって話を聞いたな

 

 

「え……ビスマルクとプリンツも…?」

 

 

「前の提督曰くだかな、危険海域、誰も通っては行けない、当時は『死にたい艦が行く場所』とさえ呼ばれていた

そこから帰還したんだあんたはすげぇよ」

 

 

ビスマルク、プリンツオイゲンその名前を聞くと身体が震えるグラーフと同じドイツが誇る艦にして戦艦と重巡それが沈められたと言うのだからあれはそれほどに強いのだろう

 

 

「……だが、彼女達も本望だろう

海の上で再び死ぬことができて…」

 

 

「そんなわけないだろ

と言うより、死なせたのは間接的に俺達が原因だ」

 

 

「…え?」

 

 

親方は艤装弄りを止めグラーフに向き直ると真っ直ぐに見ている

 

 

「海の上で死ぬのが再び死ぬのが本望?馬鹿言うな

それは俺達が整備している艤装がその娘達を守れなかったと言うことだ

悲しいさ、だから俺はどんなときでも整備を辞めない

死んでほしくないから、また無事に帰ってきてくれる事を願ってな

お前達がどんな扱いを受けているのは知ってる

前の提督がそうだったからな

何か悩みがあるなら言え聞いてやることは出来る

だから、死なないでまた無事にここに帰ってきて艤装を見せてくれ

完璧に直して、お前達が戦果を上げるのを楽しみにしてるんだからな」

 

 

親方が真面目に話すと、再び艤装を弄り始めグラーフは黙ってしまう

 

 

「ここは、確かに出撃は少ない

あいつは戦うのが嫌いだからな

だか、やるときはやる男だ

それに」

 

 

「……何だ?」

 

 

「俺は、お前達が戦果を上げても欲しいけどな

お前達と共に平和に生きていく方が楽しいよ

ここではそれが出来るようになった俺はそれが嬉しいのさ

あいつに感謝すらしてる」

 

 

「そう……か…」

 

 

グラーフは再び黙ってしまうと佐渡が奥から戻ってくる

 

 

「グラーフお待たせ~ってどしたの?」

 

 

「いや、何でもない……」

 

 

「ちょっと親方ー?何か言ったのー?」

 

 

「おいおい、提督俺は大したことは言ってねぇぞ?

勘弁してくれよ」

 

 

「ま、いっか

親方、艤装弄りも程ほどにね?」

 

 

「あいよー」

 

 

 

「時間か」と佐渡はつぶやくと時計を見るとグラーフを連れて工厰を後にする

 

 

 

 

 

 





次回

古鷹達と家事手伝い

今回少し親方が真面目に話してましたねぇ
親方さんもここで何人もの艦娘を見送ってますからね


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