艦隊これくしょん ー誰ガ為ノ戦争カー   作:霧雨鴉

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私が提督殺しよ

「んん……ここは?」

 

 

叢雲は小笠原鎮守府正面の砂浜にて毛布を掛けられた状態で眼を覚ました

辺りは明るくなっており、水平線の向こう側からは朝日が上がってきている

 

 

「……司令官!!」

 

 

その一瞬で意識が覚醒し、叢雲は鎮守府へ向けて走りだす

全身が少し怠いのだがそんなこと気にせず全速力で走ると鎮守府から古鷹がこちらに向かってきていた

 

 

「叢雲!!」

 

 

「古鷹!司令官は!?」

 

 

「それが……部屋の扉が開かなくてね

今大井さんが艤装を取ってきて無理矢理開けようとしているの!!」

 

 

そう聞くと嫌な予感をさせながら叢雲は佐渡の部屋に向けて走り出す

(司令官の事は信じてる、でもアイツがあの化け物が司令官や提督達に対する憎悪は普通じゃない!!)

捕まってる間、叢雲はヒソヒソと話し合う仲間の話を聞いていた

 

 

『なぁ、今回の相手って今までと違うよね?』

 

 

『確かに犯罪歴もない普通の提督だもんね

それなのに、殺すって珍しいですねあの人が』

 

 

『まぁ、でもあの人は提督殺しって呼ばれてますから

必ず殺すんじゃないですか?ゲームに勝とうが負けようが』

 

 

(お願い無事でいて!司令官!)

敵の仲間達が話している内容が如何にも怪しく嫌な予感しかせず叢雲は全速力で佐渡の部屋に走り出す

しばらく走っていると目の前から声が聞こえる

 

 

「提督!開けてくだサーイ!!」

 

 

「司令官!私よ!イムヤよ!!

お願い開けて!!」

 

 

「アトミラール!無事なのか!!

お願いだ返事をしてくれ!!」

 

 

金剛、イムヤ、グラーフがそれぞれ佐渡の寝室を叩いたり声を掛けたりしており叢雲も走る

 

 

「退いて!!!」

 

 

叢雲は三人を部屋の前に退けさせるとドアを思い切り蹴るがやはりびくともしない

佐渡の部屋は親方に新しく改装してもらったかなり硬い作りになっており艤装でも使わないと開けられないほどであった

 

 

「司令官!!私よ!分かるでしょ!今すぐ開けなさいよ!!」

 

 

「お待たせしました!!」

 

 

すると、大井が単装砲を持ちながら走ってきてドアの鍵穴に向けて撃つと鍵穴を撃ち抜きドアが開き全員で勢い良く佐渡の部屋に入る

 

 

「司令官!」

 

「提督!」

 

「無事ですか!?」

 

「提督ー!」

 

「司令官!」

 

「アトミラール!!」

 

 

全員が入るとその部屋は静まりかえっており辺りに血の匂いも死体も無く部屋の奥から「んんー?」と言う声が聞こえる

 

 

「何だぁ?砲撃音聞こえたぞぉ?朝にしては早すぎるだろぉお前らぁ……」

 

 

佐渡がベッドからゆっくりと起きているのを確認すると全員が安堵のため息をつくと同時に大井と叢雲が駆け寄る

 

 

「司令官!!提督殺しは!?」

 

 

「そうです!奴は何処に!?」

 

 

寝惚けた頭でのんびりとしながら佐渡は起きると叢雲の顔を見るとこくんと頷くとそれを理解したのか叢雲が微笑む

 

 

「あー…その話なんだけどな

悪い、俺と叢雲のおふざけだったんだわ」

 

 

「「「「「……はぁ!?」」」」」

 

 

全員が声を揃えて佐渡に驚きの声を出すと叢雲も佐渡のベッドに座ると理由を説明する

 

 

「いやー、悪かったわね

最近暇だったから何となくやってみたくなったんだけど、意外にも楽しくてね

ごめんなさいね」

 

 

それを聞いた四人は肩を震わせながら怒りを露にすると同時に大井に平手打ちを佐渡は食らう

 

 

「ばっかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

「いってぇ!?」

 

 

「貴方ねぇ!!貴方ねぇ!!!

私達がどれほど心配したのか!分かってるんですか!?」

 

 

「……あーすまん、心配掛けてしまったな」

 

 

大井は涙目になりながらも、佐渡を軽くだが何度も殴っておりその間から金剛が泣きながら飛び付いてくる

 

 

「提督ー!!冗談でよがっだよぉ!

本当に何にもないんデースよね!?提督殺しは居ないんですよねぇ!?」

 

 

「おう、悪かったな」

 

 

「ちょっと司令官!!貴方やっていいことと悪いことがあるのよ!

それぐらい弁えてよね!」

 

 

「あー、うんごめん」

 

 

「アトミラール!!貴方と言う人はっ!!

後で説教だからな!覚えておけ!!」

 

 

「ひぇ~……説教やだぁ…」

 

 

 

四人は佐渡に怒っており、叢雲は静かに離れると古鷹が叢雲に耳打ちをしてくる

 

 

「無事で良かったよ、叢雲

どこもいたくない?」

 

 

「えぇ、大丈夫よ

貴女はやっぱり気付いたのね」

 

 

「そりゃそうだよ、何たってここに来た初めての艦娘だもん」

 

 

だが、ここで異変に気付く抱き付いていた金剛が隣の布団が盛り上がっているのに気付きその何かを指差しながら佐渡の聞く

 

 

「………提督ー?

提督って寝るとき抱き枕でも使うんデースか?」

 

 

「……はい?いんや俺はそんなもの使ってーーー」

 

 

「なぁによぉ、うるさいわねぇ……

もう朝?」

 

 

「「「「「「!!!!????」」」」」」

 

 

その声にその場に居るもの全てが驚き顔を見合せるが誰の声でもなく金剛と大井は急いで佐渡の側を離れる

するとゆっくりとその何かは起き上がっていく

 

その何かは人の形をしており、髪は真っ白な白髪のサイドテールに後ろをロングで纏めてありその髪留めは星の形をしていた

真っ白な肌真っ赤な瞳をしており胸がかなり大きく衣類を着ておらず布団で胸を隠している

 

 

「あら、もう朝ね

全員お揃いじゃないの」

 

 

その言葉に全員唖然としながらも佐渡は指を指しながら驚く

 

 

「…………えっと、どちら様?」

 

 

「酷いこと言うのねぇ昨日あんなに熱く語り合ってそのまま………うふ」

 

 

「まさか!お前が!?」

 

 

佐渡が驚いてるのを他所に女性の言葉に二人以外が殺気を立てながら佐渡を睨み付ける

 

 

「提督ー?ナニをしていたんですかぁ?」

 

 

「待つんだ古鷹!!俺は何もしてない!無実だ!!」

 

 

「提督ー?私、お風呂すら一緒に入ってるのになーんで手を出さなくてそんな女を抱いたんデースーカー?」

 

 

「待てぇ!!そんなことしてない!!断じて!!」

 

 

「司令官さぁ……節操無さすぎない?魚雷撃つね?」

 

 

「やめろぉ!!そんなことしたら普通に死ぬから!!」

 

 

「アトミラール……これは説教だけで足りないな

拷問も追加だな…」

 

 

「グラーフさんんんん!

辞めてぇ!!拷問なんかしないでえ!!」

 

 

四人が佐渡を攻めていると叢雲は頭を押さえながらため息を付いているが隣にいる大井の様子が可笑しい

顔を青ざめ単装砲を構えながらガクガクと震えている

 

 

「は、離れろぉ!今すぐに!!」

 

 

「大井ー!!頼むからまだ殺さないでぇ!?」

 

 

「違います!!今すぐ私達の提督から離れろ!!化け物!!!」

 

 

「あら、やっぱり貴女にはバレちゃうか

なら尚更嫌ーよ離れたら貴女に撃たれるじゃない?」

 

 

そう言うと佐渡を盾にするように背中に隠れると裸の為胸を押し当てる

 

 

「おい!せめて服着てくれ!生殺し何ですけど!?」

 

 

「提督!!逃げてください!」

 

 

「大井!落ち着け!コイツはそんなにーー」

 

 

「早く!!そいつは……そいつの正体は…!!」

 

 

大井が震えを止めるとその女に睨み付けながら単装砲をしっかりと構える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そいつは!!歴戦種の空母棲姫です!!」

 

 

「「「「「………は?(え?)」」」」」

 

 

この場にいる大井以外は驚き全員の眼は裸の女性、空母棲姫へと向けられる

 

 

「はぁい、おはよう小笠原鎮守府の皆さん?

私の名前は『エア』

あんたたちは空母棲姫の歴戦種って呼んでるんだっけか?

よろしく~」

 

 

空母棲姫、もといエアは手をヒラヒラとしながら全員に挨拶をする

 

 

 

 





次回

歴戦種 空母棲姫エア

これで、前半は終わりになります!
後半はエアを混ぜた少しフラグ回収の話になっていきます



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