艦隊これくしょん ー誰ガ為ノ戦争カー   作:霧雨鴉

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消えない怨恨 四

詰め寄られているエアは明石を見上げると特に気にせずにのんびりとお茶を飲んでいる

 

 

「えぇ、別に貴女達艦娘には興味ないし

正直、戦争にも興味ないわ」

 

 

「じゃあ!!どうして貴女達は人間達と戦争なんてしているんですか!?」

 

 

「さぁ?少なくとも私は知らないわよ

クイーンにでも聞いたら?」

 

 

「貴女は歴戦の姫級じゃないんですか!?

貴女が全ての深海棲艦に命じればこの戦争が終わるんじゃないですか!?」

 

 

「あのねぇ、確かに私は位としては上よ?

でも始元や監視者見たいな事は出来ないの

それに、多分無理よ」

 

 

「どうして!?」

 

 

「深海棲艦は貴女達人間を艦娘を憎んでいるわ

そりゃそうよ貴女達は私達の敵で、貴女達は何度も仲間を殺してるんだもん

中には貴女達に仲間を奪われ憎んでいる者も居る

少なくともあんた達が歩み寄る事をしない限りはね

こんな風に自分より弱い奴に命じられて動くやつなんて居るかしら?」

 

 

「だったら…!私達が歩み寄れば良いのですか!?」

 

 

「まぁ、分からないけど改善は出来るんじゃない?

少なくとも私はコイツなら居ても良いとは思ったし」

 

 

エアは佐渡の頬を人差し指でグリグリと押し付けるとムカついた佐渡に頭を殴られる

 

 

「いたっ!何するのよ!?」

 

 

「お前が先にやったんだろうが!!頬をグリグリすんな!!」

 

 

「一々煩いわねぇ!!あんたそれでも男なの!?」

 

 

 

二人が口喧嘩を始めていると明石は拳を握り締めながら怒りを露にしているとエアがそれに気付き佐渡との喧嘩を抑え溜め息をつく

 

 

「まぁ、貴女が怒る気持ちは分かるわよ

そりゃそうよね、大事な提督が意識不明の重体なんですものね」

 

 

「え……?」

 

 

「本当?明石?」

 

 

大淀も知らなかった事実をエアによって告げられ明石は更に怒りを溜め込みながら話を続ける

 

 

「そうです…私の提督…五十嵐さんは今植物状態で病院に入院しています…

あの事件の時私を庇って艦載機の攻撃をまともに受けてしまったんです…」

 

 

「私は見ていたけど、素晴らしいと思ったわよ?

艦娘はいくらでも替えは居るのにあの提督は自らを盾にすることで彼女を庇ったんだもん

本当、コイツとそっくりでね」

 

 

「えぇ…確かに佐渡提督にそのところはそっくりです…

あの人も艦娘を大事にし、優しく時に厳しい方でした…

だからこそ!!貴女が許せない!!お前達深海棲艦が憎い!!自分が憎い!!どうしてあの時私は動けなかったのか!どうしてあの人は私を助けたのか!!

どうして……私が犠牲になれなかったのかを…

あの時私が死んでいれば!!

きっと…五十嵐さんも私を憎んでるはずですよ…

せっかくの工作艦だから守らなくてはいけないって…仕方ないって…」

 

 

明石はそこまで言うと目に涙を溜めそれを袖で拭うと佐渡がそれを否定する

 

 

「明石さんそれは違うんじゃないですかね?」

 

 

「え……?」

 

 

「俺は五十嵐さんなんて知りませんが、多分俺と同じなら明石さんを守れたのを誇らしく思ってますよ」

 

 

そう言うと叢雲を見ながら自分の背中を触る

 

 

「俺も一度そう言う事がありましてね

どっかの駆逐艦を守るために自らの命を捨てようとしました

でも、それを後悔したことは無いですよ

守りたいものが守れたんですから、誇りに思いますよ

まぁその後、すっごい怒られましたけどね」

 

 

「本当にねぇ、心臓に悪いわよあんなの

二度としないでよね?本当に怖かったんだから」

 

 

「ごめんって、次は上手くやるからさ?」

 

 

「そう言う問題じゃないわよ!このお馬鹿!!」

 

 

「あいたぁ!?」

 

 

佐渡に対しクッションを投げ付けると真ん中のエアが避け見事に佐渡の顔面に直撃し二人とも笑っているとエアが明石に言う

 

 

「あんたの提督は自分の意思であんたを守ったんじゃない?少なくとも私はこれを見てそれを確信したわよ」

 

 

エアはポケットからあるものを取り出すとそれを明石に差し出す

 

 

「!!

これって!」

 

 

「五十嵐とやらのでしょ

クイーンが踏み潰そうとしていてね

先に拾っておいたの

いつか貴女達に返すために

悪かったわね遅くなって、渡す機会が無くてね」

 

 

エアから渡されたのは銀の懐中時計それは五十嵐がいつも身に付けていた明石からのプレゼントだった

時計を開けると時計は壊れており襲撃された時間二時四五分を示していた

 

 

「なんで……」

 

 

「別に最初は興味本意よ綺麗だったし直せば使えるしね?

でも、その裏を見て気が変わったの」

 

 

「裏……?」

 

 

エアは立ち上がり明石の持っている懐中時計の裏を見せ蓋を開けると一つの写真が入っていた

 

 

「!!

これ……」

 

 

「貴方達のこんなのを見せられたら返すしか無いじゃない

こんな笑顔で楽しそうな写真が合ったらさ?」

 

 

その写真とは桜の木の下で明石と五十嵐が笑い合いながら二人でピースをしている写真だった

それを見た瞬間明石は涙を流しながらその懐中時計を強く握り締める

 

 

「良かったわね、素晴らしい人間で

こんな人達が全鎮守府の提督になれば良いのにね」

 

 

「……ごめんなさい!失礼します!!」

 

 

明石は涙を流しながら外に出ていくと大淀が心配そうにしているのを見ており佐渡へ向き直る

 

 

「行って上げてください

大淀さん」

 

 

「……はい!」

 

 

大淀が急いで追い掛け部屋を後にすると廊下から明石の泣き声が聞こえているがエアは気にせずソファに座り直す

 

 

「へぇ?良いことするデースネ?深海棲艦?」

 

 

「別に?返すものを返してやっただけよ

それに」

 

 

エアは佐渡へ向き直ると再び頬をグリグリと触る

 

 

「こいつみたいな提督は殺す気は起きないのよ!!」

 

 

「だから痛いから辞めろって言ってんだろうが!!」

 

 

 

 

 





次回

難題

次回から少し難しい話になります
エアは艦娘の味方ですからねぇ


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