辺りはすっかり暗くなる夜大淀と明石は艤装に着替え防波堤にて全員に見送られていた
「では、佐渡提督くれぐれもご注意を」
「はい、本日はありがとうございました」
「佐渡提督、先程の話忘れないでくださいね?」
先程の話とは結局エアは小笠原で一時的に預かると言うものであったのだが深海棲艦しかも歴戦の姫級と言うことで彼女を月に一度だけ明石が検査をすると言う事で落ち着いた
因みにイーちゃんも同行させてほしいとの事である
「はい、分かってますよ」
「それでは私達は、帰らせて頂きますね」
「佐渡提督ー?皆へのセクハラは程々にしてくださいね?」
「あはは……はい」
大淀と明石はゆっくりと動き始めると全員で手を振りながら見送る
「大淀さんー!また来てくださいね~!」
「お元気でーデース!」
「明石さんもまた来てねー!!」
大井達の声に反応した大淀達は手を振り返しゆっくりと夜の水平線へと消えていく
二人の姿が完全に消えた後全員はエアを見つめる
「……何よ?」
「嫌さ、どうするかなとな?」
「別に普通にしていれば?」
「嫌、あんたって本当に敵なの?
やけに馴れ馴れしいし敵意全く無いじゃない?」
「そう言う深海棲艦も居ても良いんじゃない?
あー!佐渡お腹空いたー!
晩ご飯食べたいんだけどー?」
エアはそう言うとのんびりとした足取りで鎮守府へ向かっていくと叢雲もその後を付けていく
「いやー、にしてもまさかあんたの言う通りバレるとは思わなかったわ」
「ふふん、私の司令官が私とあんたを間違えるわけ無いでしょ?」
叢雲が得意気に胸を張るがエアはそれに苛ついたのか叢雲を両手で脇を持ち上げながらくすぐる
「そのドヤ顔ムカつくんだけど~!」
「あはは!!辞めなさいよ!」
「このこの~!」
「辞めて!くすぐったい!あはは!!」
叢雲とエアはじゃれており佐渡はその姿を見ると微笑みながら溜め息をつくと大井に横腹をつつかれる
「提督、彼女をーー」
「なぁ、大井
お前は深海棲艦をどう思う?」
大井の言葉を遮り質問すると大井は驚きながらも思考を巡らせる
「……敵、ですかね?私達の海を支配し、人間の害となる存在です」
「そうだな、深海棲艦は敵だ
でもな俺はそんな奴でも分かり合えたら良いなと思っているんだよ」
「……提督、貴方は殺されかけたのですよ
それでもですか?」
「それでもだ、あいつはエアは俺の思いに答えてくれた
だからな俺はアイツを守りたい
せめて、この手が届く範囲で守れる物は守りたいからなそれにさ?」
佐渡はエア達を見るように大井へ促すと目の前で叢雲や古鷹達とじゃれて遊んでいるエアを見ると眼を見開き驚きながらも微笑む
「あんな『未来』があっても良いんじゃないか?
深海棲艦と人間と艦娘が手を取り合って笑い合う世界があってもさ?」
「……そうですね、この戦争が終わったらああいう風になれていたら良いですよね」
二人が微笑んで居るとエアはニヤニヤしながら佐渡達を見ており指を指しながら叫ぶ
「あー!!大井が佐渡を口説いてるー!
やっと素直になれたのかなぁー!?」
「なっ!!何でたらめ言ってるんですか!」
「えー?でもこの前ーー」
「あー!!またそうやって人の秘密を暴露する~!!
待ちなさい!!エア!!」
大井が全速力で走っていきエアの口を塞ごうとするがエアはそれを避け大井を含めて艦娘達とエアはじゃれて遊んでいる
「全く……騒がしいのが増えたな
ま、こんな毎日も悪くないな
……………なぁ、『相棒』」
佐渡はそう呟くとポケットから弾が込められていない壊れた銃を取り出すと昔を思い出しながら月に向けてそれを構える
「これで良かったんだよな
『お前はこう選択するはずだよな我が弟子よ』
バァン」
そう言うと佐渡は月に向けて引き金を引くが弾が込められて居ないためか銃は反応せず再びポケットにしまう
「ちょっとー!佐渡ごーはーん!!」
「司令官ーはーやーくー!!」
「はいはい!今行くよ!!」
佐渡は満天の星
空を見上げながら微笑むと騒がしい仲間達へと向かって歩いていく
提督ヲ狩ル者 空母棲姫 エア end
次回
俺は善人じゃない
もう少しだけ続きますお許しを…
ちょっとだけ佐渡の過去と闇のお話になります