辺りは住宅地至るところが燃え盛り崩壊している家や建物引っ切り無しに起きる車の爆発音や家の崩壊する音
『起きろ!何故俺の言うことを聞かなかった!?』
佐渡はある青年を抱き抱えながら家の家屋に隠れその男を介抱していた
青年は右腕が千切れており腹部に幾つかの弾痕が残り血が止まらずに吹き出している
服を破り近くの衣類で押し当て血管を圧迫するが止まる気配がない
『隊……長…あ…の……子は?』
『…貴様が命掛けで逃がした奴か、俺の制止も聞かずに勝手に走って逃げて倒壊する家屋に潰されたよ
だから言っただろ!!助けても無意味だと!!』
『……く…そ…助…け……たか…った…なぁ……ガハッ!!』
『もう、喋るな!!
これ以上喋ると傷口が更に開く!!
貴様しかもう部隊の仲間は居ないんだ!!
俺の『駒』がこれ以上勝手に死ぬことは許さん!!』
青年は最早、虫の息になっているが佐渡が賢明に生かそうと治療している
青年から流れ出た血は大きな血溜まりになっており佐渡の全身はその血で紅く染まっている
だがそんなことを気にせずポケットからあるものを取り出し佐渡に手渡す
『隊…長…こ…れを…』
『…はぁ?壊れてるじゃねぇか!!』
『で…も…投…げれ…ば』
『こんな使えない物渡しやがって!!お前が死ぬときは俺の最後に『捨て駒』として扱うときだけだ!!』
『あ…は…は、隊長…は酷…い……なぁ…』
佐渡が治療しているが正直助かる見込みはないのにも関わらずやり続けている
何故かは分からないでも、身体が勝手にそうさせているのだ
『隊……長…駄…目…だす…み…ま……せ…ん…ゴフッ』
『駄目だ!!貴様さえ失わなければいくらでも部隊は作れる!!だからーー』
『あ…は…は、嬉…し…い……な
隊…長……お…願い……し…て…も…良…い…で…すか?』
『辞めろ!!貴様!!俺を越えるんじゃないのかよ!!』
佐渡は叫ぶがその言葉を聞かずに青年は左指を佐渡の額に当てると
『貴方…は……強…い…だ…か……ら……助…け…て………あ…げて…く…だ…さ…い助け…を…求…める…人を…貴方…が…助け…られ…る…範囲で……構いま…せん…ので……』
『……分かった…約束しよう
この命に掛けて!俺の誇りに掛けて!!だから!!!』
『は…はは……あり…が…とう…隊長……
お願い……します…ね…
貴方は…俺達…の…自慢で…すか…ら…
本当……は…優し…い…隊…長………』
『おい!!しっかりしろ!
……クソ!!』
その言葉と共に血溜まりに腕が落ちると青年は息を引き取り佐渡は悔しそうに拳でコンクリートを叩くと外から砲撃の轟音と共に陸に上がってきている化け物が空に向かい咆哮を上げている
『……深海…棲艦…!!!』
佐渡は憎しみと怒りを込めながら咆哮をしているその陸に居る巨大な化け物を睨んでいると化け物は気付いたのかこちらに口を開け主砲を向ける
佐渡は、その瞬間に眼を覚まし周りを確認し警戒するがここは小笠原鎮守府先程まで見ていた化け物はいない
全身に冷や汗を掻いており服もべったりと身体に張り付いており息も上がっている
「夢か……クソ、最悪だ…」
携帯を見ると、時刻は0300外は真っ暗であり外からは月明かりが差し込み電気を付けなくてもそこそこには明るい
佐渡は起き上がり自分の棚を鍵を使い開けるとある写真を取り出す
その写真は佐渡が陸軍時代の物であり青年が撮ろうと言い無理矢理に撮ったものである
しかも、これは世界に一枚しか無く持っているのは佐渡一人だけだ
「………俺はお前を『演じられてる』かな
なぁ、お前が居たらここはもっと良くなってたんじゃないかって思うよ
俺は善人じゃない、そう演じてるだけなんだからな
お前と違ってな……教えてほしかったな…」
佐渡は自分の隣に元気な笑顔で写真に写る青年を触ると眼を閉じる
『助けてあげてください貴方が助けられる範囲で構いませんので』
その最後の言葉を思い出しながら胸を押さえる
「あぁ、やってやるさ
お前の意思を継いでやるとも俺のやり方でな
だから精々見ていろ
天国とやらでな」
そう呟くと窓から見える満点の星空を見ながら決意を固め服を脱ぐと部屋を後にする
その後、佐渡の部屋に一人エアがこっそりと入ってきており佐渡が持っていた写真を月明かりを頼りに見る
「………これが、あいつの過去…か」
月明かりに照らされた写真には六人の男女がおり五人は笑っているのに隊長格の男は間違いなく佐渡なのだが今と全く違う
冷めた目付き、適当な服、触られたくないような嫌悪の表情そして一人だけ笑っていない
今とは対極だ
だが、隣に居る青年は佐渡にそっくりな態度であり不思議に思う
「……明らかに今とは違う
あんたは、何なの?本当に」
次回 私は正義だ
今回で終わりになり、次回から新章です!
佐渡の過去はいずれ詳しく書いて…いこうかは悩み中です
次の章は、戦闘シーン多め、複雑な人間模様を書いていきたいと思います
そして、正直次も書きたかったんですよ!!