「失礼致します」
大井は提督室の扉をノックし、扉を開き中に居る起きたばかりの木原に声をかける
「おはようございます提督」
「おぉ、おはよう大井ちゃん?
では早速だけど部屋の掃除を頼むわ」
「はい、分かりました」
ここでの大井の仕事は、雑務と執務がメインであり、木原の身の回りの世話も全てこなしていた
不意に部屋の布団を畳んでいた、大井の胸を後ろから木原は触りだす
「相変わらず良い胸だなぁ?
何でこの胸部装甲で軽巡何だかねぇ?」
「さぁ、どうしてでしょうか?」
大井は、必死に表の顔で笑顔を作りながら木原のセクハラに耐えていた
その触られてる間、大井は嫌悪感しか覚えずに吐き気を催す
だが、気付かれてはいけない、気付かれれば北上は…
「へへ、大井は従順だなぁ?
まぁ抵抗すれば北上を……」
「あの人には手を出さないで!!!」
「おっと大丈夫だっての
お前が大人しく俺の身の回りを全部やれば手を出さねぇよ」
大井の胸を離すと木原は、驚きながらもテレビの電源とゲーム機を付け、ごろんと寝転がるといつも通り、大井に指示をだす
「んじゃ、いつも通り、執務と資材庫の掃除
あと、飯も頼むわ」
「はい、失礼致します」
部屋を後にすると、トイレの個室に駆け込み胃酸を必死にはいてしまう
我慢しないと……じゃないと北上さんが…
大井が、こうなってるのも実は理由がある
つい一週間前に、大井と北上がこの鎮守府に同時に配属されたのだが、その二日後に二人は空母達の壁として使われた
それにろくに食事も与えられず、入渠もされずに
それでも、二人は何とかお互いを慰め合いながらやっていた
いつか、こんな生活が終わるものだと思い
そして、廊下を一人で歩いていた大井は聞いてしまった
木原とある秘書艦の話を
「あー、何て言ったっけ。
あの軽巡、大井と北上だっけか?」
「それがどうした?」
「二人とも盾にも使えねぇけど、大井は使い道があるけど北上は駄目だなありゃ
解体も申請書書くの面倒だし、『取引』で轟沈させるか」
それを聞いた大井は、脚を止める
大事な仲間を、友人を死なせるわけにいかない
その瞬間大井は、扉を開け言っていた
「お願いします!!!
北上さんを轟沈させないでください!!!
私があの人の変わりに何でもやりますから!!」
そして、今に至る
北上に手を出さない、轟沈させないを条件に大井は、嫌いな男であり、提督の身の回りを世話をしている
トイレから出てくると、顔を洗い、髪と服装を整え執務室に向かう
今日も北上さんの為に頑張ると胸に誓い
「大井っちー!」
後ろから、愛しの北上の声が聞こえ、振り替えるとこちらに向かい手をふる北上の姿があった
北上を待つために歩みを止め、二人で歩いていく
この時間が大井にとって、至福の時だった
「おはようございます!北上さん!
怪我はもう大丈夫なの?」
「うん、北上様だよ~?
このくらい何ともないさ!」
二人が仲良く歩いていると、目の前からフラフラと歩く小さな影が北上に当たってしまう
「おぉー?大丈夫か?駆逐艦?」
北上は、その駆逐艦の肩を掴むとその瞬間に彼女は北上の手を払い廊下に土下座をする
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「おー、落ち着けー」
「そうよ?私達は軽巡よ?」
駆逐艦の少女は、顔を上げると二人の顔を見て安心して、立ち上がり、そのまま再びフラフラと歩きだす
傷だらけの身体で
この鎮守府では、あんなのが当たり前だ
これが、当たり前なのが普通なのか、分からないが、みんなあんなもんだ