艦隊これくしょん ー誰ガ為ノ戦争カー   作:霧雨鴉

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大演習会 後日談 六

時は流れいつの間にか夜になっており叢雲は病室を抜け出し屋上にて一人夜空を見上げながら珈琲を飲んでいた

 

 

「抜け出して良いのかしら?叢雲」

 

 

不意に声を掛けられ振り返るとそこには擬態を解いたエアが扉に背中を預けながら一人空を見上げる叢雲を心配していた

 

 

「あんたこそ、擬態解いて平気なの?」

 

 

「ふふ、バレたらそいつを始末すれば良いのよ」

 

 

エアは冗談半分に言うと扉の鍵を閉めると硝子に黒いスプレーで見えないようにするとゆっくりと叢雲に近付いていく

 

 

「何か用?」

 

 

「まぁね、はいこれ

差し入れの羊羮よ」

 

 

「ん、ありがと」

 

 

エアは隣に立つと叢雲に間宮羊羮を渡すと自分の分も取り出し二人で食べ始める

 

 

「ねぇ、叢雲」

 

 

「何よ?」

 

 

「あんたは佐渡をどう思う?」

 

 

「は?唐突に何よ?」

 

 

「良いから答えてよ?」

 

 

エアによる唐突の質問の意図も分からないが叢雲は淡々と答えていく

 

 

「そうね、掛け替えのない物かな

今の私はアイツが居なかったらこうにはなってなかったから」

 

 

「逆に言えばあんたは佐渡に会わなかったらそんな無茶しなくて済んだんじゃないの?」

 

 

「そうね、否定はしないわ」

 

 

叢雲は間宮羊羮を再び食べると微笑みながらその答えを話していく

 

 

「もしかしたら今より楽で楽しい日常はあったのかも知れない

こんなに傷付いてボロボロになって自らの寿命を削ってないと思う

でもね

アイツが居なかったらあんたとこんな風に話せてないし

あんなに信頼できる仲間も司令官も居なかったと思うわ

だから、私は良かったと思うわよ」

 

 

叢雲の言葉が本心であり本当に思っているとエアは横顔を見るだけで分かる

少しだけしか付き合いは無いのに叢雲が真っ直ぐに佐渡の事を思っているのを少し羨ましく思う

 

 

「そうね、ここで貴女と話すことも無かったのかもね

だから私もアイツに感謝しないとね

だって」

 

 

するとエアは左手から主砲を取り出し叢雲の頭に押し付ける

 

 

「貴女と言う化け物を見付けられなかったのだから」

 

 

「………何のつもりエア?」

 

 

流石に叢雲も不意を突かれ全く動けずに居るとエアは片手で羊羮をを食べながら真顔になりながら答える

 

 

「大会を見ていた目的はね

お前達の実力を見るため

今の長門と対峙するにはかなり危険を要するからね

大会でその実力を見たかった

でも、私はそこであれよりも危険な艦娘

雷撃姫叢雲 貴女の実力を見てしまった

どんな状況でも諦めず不屈の心と身体を持つ貴女は私達にとってかなりの脅威になる

貴女を今のうちに仕留めておかないとこちらの不利になると判断したまでよ」

 

 

「………私を殺す気?」

 

 

「えぇ、貴女を殺しておかないと正直不味いからね

安心して一撃で仕留めてあげるし貴女の遺体は綺麗にして佐渡に送っといてあげる」

 

 

エアが冗談で言っているわけではなく自分の立場として言ってることを理解した叢雲は目を閉じながら微笑む

 

 

「そう、なら良いわ

やりなさいエア」

 

 

「あら?随分と素直じゃないの

正直ここで一戦やる覚悟を持って来たんだけど空振りに終わったわね

じゃあ遠慮なくーーー」

 

 

「貴女が本当にそう思ってしたいなら、ね」

 

 

叢雲の言葉にエアは眉間にシワを寄せながら間宮羊羮を更に強く握りしめる

 

 

「………どういう意味?」

 

 

 

「別に、あんたが今無理をしているように思ったからよ」

 

 

叢雲に言われエアが撃つのを迷っていると羊羮を食べきりエアの持つ主砲を自らのおでこに当てると握り締める

 

 

 

「今のあんたはいつものエアじゃないわ

深海棲艦として私を殺そうとしている

悪いのだけれど深海棲艦には殺されてやる気は無いけど

あんたになら殺されても良いって言ってるのよ」

 

 

「………馬鹿なの?私は姫よ?

空母棲姫

あんた達の敵なの

これは変えようがないわ」

 

 

「そうね、でも今私の前にいるのは深海棲艦の姫級空母棲姫じゃない

エアと言う一人の女性よ

私はエアと言う一人の女性になら殺されてやっても良いと言ってるの」

 

 

ここでエアは気付く叢雲は自分の事を深海棲艦として認識しておらず一人の女性エアとして扱っていると言うことを

 

 

「………あんた『も』私を信じるの?」

 

 

「えぇ、イタズラ好きで優しくて世話好きのエアを信じるわ」

 

 

 

二人の間に静寂が訪れるとエアは微笑み主砲を空に放つとパァン!とクラッカーの様な音と共に紙吹雪が叢雲を包むと唖然とする

 

 

「ふふ!騙されたわね!叢雲!!

冗談よ、貴女を殺すわけないでしょ!

貴女を殺すと後々めんどくさいんだから」

 

 

エアはそう言うと主砲を捨てのんびりとした足取りで叢雲の元を去っていくと同時にゆっくりと自らの姿を変えていく

 

 

「あんたねぇ……そう言うのは辞めてよね

一応深海棲艦の見た目してるんだからビックリしたわよ……」

 

 

叢雲は安堵の溜め息を付くと胸に手を当てながら微笑む

 

 

 

「ごめんごめん、ちょっと驚かせたくなってね!

じゃ私はそろそろ佐渡の部屋に戻るわね~」

 

 

エアが扉に辿り着くと同時に完全に佐渡の妹みたいな姿を擬態させると笑顔を叢雲に向けると手を降る

 

 

「あんまり司令官をからかうんじゃないわよ~?

アイツ今日はかなり多忙だったみたいだしー」

 

 

「はいはーい、そこそこにしておくわよ~」

 

 

エアは扉を開けるとゆっくりとした足取りで屋上を後にすると辺りに誰も居ないことを確認すると不意に見付けた鏡を見ながら自らの顔に触れる

 

 

「………深海棲艦としてじゃなくて(エア)なら殺されても良い…か…

本当にアイツとそっくりな事言っちゃって……」

 

 

すると隠し持っている方の携帯のバイブレーションが鳴り出し取り出すと表記に『深海』と書かれており電話に出ようとするが

 

 

(今のあんたが無理してるように思ったからよ)

 

 

叢雲に言われた何気無い一言が心に突き刺さり胸を押さえると携帯の電源を落とす

 

 

「……別に良いわよね、ずっと仕事してきたんだもん

少しは休暇位貰っても」

 

 

 

そう呟きながら微笑むとエアは隠し持っていた携帯をナイフで突き刺すと穴が空き火花を飛ばす

そしてそのまま滅多刺しにすると近くのゴミ箱に捨てる

 

 

「もう少し、このままで居させてもらうわよ

小笠原鎮守府

覚悟しておきなさい?」

 

 

 

 

 

 




次回

これからの道を選べ

東雲によって全員の罪や行いが無かったことになり再び佐渡は選択を迫る
このまま小笠原に残るかそれとも他の鎮守府に行くのかを

イベントでタシュケントが来てくれると聞いて本気を出してやらなくてはと心に決めた提督がこちら
同士が欲しいのだぁ!!



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