この鎮守府では、戦艦、空母等は重宝される
だがその反面、軽巡と駆逐艦は基本的には運用されない
兵器としてではなく、ただの肉壁として
通常なら、資材が足りなくなる為に、遠征任務を酷使するはずなのにここではそれをしない
何故かは分からない
でも、決まって『誰かが轟沈すると資材が増える』
恐らく、轟沈するかしないのギリギリで活躍して、資材を受け取っていると大井は思っていた
この時は、そんなことより北上の事で頭が一杯だったのだから
「あ、大井っち私行かないと」
「え?北上さん何かあるんですか?」
大井は不思議がっていた、何せ木原との取引で北上を守っているはずだからなのに何故?
と考えていると北上から予想外の返事が来る
「実はさー、今日海軍のお偉いさんが来るんだって~
だから、そのお出迎えを頼むだってさ
しかも、海から来るらしいからこのあと戦艦達と迎えにいくんだ~」
「そ、そうなんですか……
気を付けてくださいね!」
北上の久しぶりの出撃に応援を入れると、北上はうんーと言いながらのんびりとしながら別方向に歩いていく
「じゃ、またね大井っち~」
「はい!また後で!」
階段の所で、大井と北上は別れ、別々に歩いていくと大井の目の前に見馴れない戦艦がこちらに向かってあるいてくる
大井は、廊下の端に避け頭を下げる
ここでは、これが普通なのだ
戦艦や空母が廊下を歩いていたら、端に立ち頭を下げる
ではないと、戦艦達に殴られるから
決まって同じ台詞を吐いて
「貴様ら程度の兵器が、我々の歩く道の眼に入るな目障りだ」
だがその戦艦は歩いていたが、大井のその状態を可笑しく思ったのか大井の横で立ち止まる
「HEY?そこのyou?何故貴女も頭を下げてるんデスカー?」
半分英語混じりで喋るこの方は、恐らくアメリカ艦の戦艦なのだろうと大井は思いながらも、頭を下げるを辞めない
「いえ、戦艦様が歩く道を邪魔したくないからでございます」
「oh…
何か、ここに居る子達は皆同じことを言いマスねぇ……
では、えっとyou、nameは?」
大井は、何故こんなにも私(軽巡)なんかと話をされているのか?と思いながらも質問に答える
「球磨型 四番艦 大井です」
「大井ですか!meはIowa(アイオワ)です
どうぞよろしく!!」
戦艦、アイオワは大井に手を差しのべるが、大井は手をとらない
…いや、取れない。
とれば、恐らくそのまま、他の戦艦に撃たれる可能性があるからである
「むぅ……meと握手もしてくれませんか…」
「はい、誠に申し訳ありませんが」
アイオワは難しい顔をするが、無理矢理大井の両手を取り、ブンブンと握手をする
「よろしくーネ!!」
手を取られた大井は、他所を向いているがアイオワは満面の笑みだ
アイオワは手を離すと、大井の頭に口を近付け頬を吊り上げ怪しく微笑みながら小さく呟く
「二一〇〇(ふたいちまるまる)に、執務室にGOよ」
その囁きは何を意味する?