艦隊これくしょん ー誰ガ為ノ戦争カー   作:霧雨鴉

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提督(佐渡)艦娘(叢雲) 三

「あんた!私の話を聞いていた!?

私はもう大丈夫だってーーー」

 

 

「聞いてたよ、だがなお前が大丈夫でもな

俺が駄目なんだよ」

 

 

「…………は?」

 

 

佐渡は小さく折れそうな叢雲の身体を強く抱き締めながら自らの内を吐露する

 

 

「今の俺はお前と共に歩み過ごしてきた

さっきお前が居ないことを考えたよ

でもなお前が居ないと俺は多分何にも手を付けられないほどに駄目になると思ったんだ」

 

 

「あんた……それ下手したら告白よ?」

 

 

「そう捉えても構わない

だが、俺にはお前が必要なんだよ

一緒に歩み、絆を結び、そして困難に打ち勝ってきた

他の艦娘では俺の相棒(バディ)は務まらない

お前だけだ、お前だけが俺の相棒(バディ)なんだよ」

 

 

叢雲はその言葉が嬉しく佐渡を強く抱き締める

 

 

「でも良いの?長門を助けなくて」

 

 

「お前が嫌と言うなら俺はそれに従う

お前を失う位ならあんな奴助ける必要はない」

 

 

 

「……そう」

 

 

そう呟くと叢雲は嬉しい半分悲しくなった自分が佐渡を縛り付けていると思い強く抱き締める

 

 

「……ごめんね私が貴方の枷になってて」

 

 

「違う、俺がお前に依存してるだけだ気にするな

こっちこそごめんお前に依存していて」

 

 

「ううん、嬉しいのよ貴方がここまで私を信用し共に居てくれる

ごめんね、弱くて本当は貴方とずっと一緒に居たいと願ってしまって」

 

 

「良いんだ、俺もお前と共にありたいからな」

 

 

二人は強く抱き締めあうが叢雲は気付いていた佐渡自身の為ではなく自分達の為に言っていると

(本当にごめんね……

貴方を縛り付ける鎖になってる私を…

いつか貴方が完全に必要無いと思えるほどに成長するから……)

 

 

 

「さてと、それじゃ戻るか叢雲」

 

 

「……えぇ」

 

 

「後は俺が何とかしておくからお前はいつも通りにしてろよ?」

 

 

「…分かったわ」

 

 

佐渡は先頭を歩きその後ろから付いていくがその後ろ姿だけは本当に大きく見えた

自分よりも大きな物を一人で背負い込むその姿を見ながらいつかこの人の隣に立ちたいと思いながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(すまんな、叢雲

お前を失う事は『今は』出来ないんだよ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言うわけなんだ」

 

 

佐渡は全員を食堂に集め食事を取りながら長門の今後に関して話していた

 

 

「……そうか…分かった」

 

 

「すまないな、長門

我々は叢雲を失う訳にはいかないんだ…」

 

 

「いや、こちらこそすまない

突然押し掛けて救ってくれなど旨すぎる話だったんだ

私から唐澤さんに言っておく」

 

 

「いや長門は悪くないさ

それとその報告はしなくていい

俺もちょっとあの人と話を付けなくてはいけなくてな……」

 

 

 

 

 

佐渡の決定した長門をこちらで引き取らないと言う話に大井達は納得がいかないが佐渡が決定した事には逆らえずしぶしぶ納得する

 

 

「まぁ、叢雲がそう思うなら仕方無いデースね

長門一緒には居れないデスが何かあったら頼っても良いデースよ?」

 

 

「………え?」

 

 

金剛の予想外の発言に驚き長門は金剛を見るとニヤニヤと笑いながら長門を見ている

 

 

「別にここに居れなくても貴女の力になってあげマース

どうせ私みたいに甘えるのは出来ないと思いマースし」

 

 

「そうね、別にここで一緒に暮らさなくてもできない訳じゃないしね」

 

 

「良い…のか?だって私は…」

 

 

「まぁ、私達も同じ様な境遇だったからな

それくらいは手を貸すさ」

 

 

「ありがとう……本当にすまない……」

 

 

金剛達が長門の暴走を治すために改めて協力を扇ぎそれで話を付けてこの話は終わりのはずだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、叢雲が考えているよりある一人の艦娘にはかなり大きな負荷となっているとも今この時誰も気付いていなかった

 

 

 

 

 

 

 





次回

ほんの少しの異変

叢雲の意向により長門を小笠原には置かない事にするがそれでも一人の艦娘を何かが蝕んでいく


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