艦隊これくしょん ー誰ガ為ノ戦争カー   作:霧雨鴉

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処刑 三

全員が古鷹の姿を見る中各々の提督達は艦娘に指示を出すと古鷹に対し砲撃を開始する

だが、致命傷を負わせるだけで殺す気配はない

 

 

(痛い……そうだよね…痛いよぉ…)

 

 

砲弾が直撃するとその爆発が古鷹の体を更に酷いものにしていく

 

 

「まさか駆逐艦でもあんな良い的が居ると練習しがいがあるよね!!」

 

 

「だね!いつも棒切れとかばかりだけどこれなら敵の損傷とか分かるからやってて損は無いよね!」

 

 

その言葉は古鷹にも届いていた

古鷹に言われる言葉の数々が彼女の心を更に破壊し砕き苦しめていく

その姿を大本営の人間達はただ笑いながら見ていたりしていた

 

 

「っ!」

 

 

その姿を見ていられずに加古や衣笠は目を反らし

木曾や日向も拳を握り締めながら悔しがる

そして、安心していた彼女が犠牲になってくれていることが

 

 

「古鷹さん!!」

 

 

「駄目だ!青葉声を掛けるな!」

 

 

古鷹の名前を叫ぶ青葉の口元を藤谷は押さえ付け自分達には関係ないと言わんばかりに青葉を後ろに下げる

 

 

「提督、これの何の意味があるんだ?」

 

 

『大元帥からだ

最後に艤装のどの部分を撃てば敵を無力化出来るかって言う事らしい』

 

 

「……私は何故撃てない」

 

 

『長門はトドメを撃ってもらう

良いな?』

 

 

「あぁ、わかった」

 

 

長門はそれだけを言うとインカムをきると撃たれ続けている古鷹を睨み付ける

 

 

「ーーーと言うわけだ貴様にはこれから佐伯鎮守府に着任してもらう

向こうに着いたら前任者が居ないからマニュアルをキチンと読めよ」

 

 

「……なぁ、そんなことより妙に砲撃音が多くないか?」

 

 

「あぁ、窓から見てみろ

貴様に見せたかったんだ

艦娘の処刑だ」

 

 

その話が終わると大元帥は窓を開けその光景を二人に見せる

男は窓からその光景を見ながら溜め息をつく

 

 

「艦娘の処刑か

来たばっかりにとんでもないもん見せやがるな

随分とエグい方法だな?」

 

 

「貴様の所にもあっただろうこれぐらいのこと」

 

 

「ねぇ………とは言い切れないな」

 

 

男はその光景を見ながら溜め息をつくと廊下を歩いていこうとするのだが後ろに居る艦娘が窓を見たまま動かない

 

 

「どした、艦娘

あいつが気になるのか?」

 

 

「………司令官、私今貴方にお願いしたいことがあるの」

 

 

その言葉に男が反応すると艦娘は艤装を構えながら男に向き直る

 

 

「……お前、まさか?」

 

 

「……うん」

 

 

「……お前が言いたいことは分かるだがその覚悟はあるのか?」

 

 

「……あるわ!私はあの時死んでいった仲間に誓ったの!

だから、あの艦娘を助けたい!力を貸して!司令官!!」

 

 

男は覚悟を決めた艦娘の頭を撫でると不敵に笑いながら見下ろす

 

 

「…分かった

俺達の初任務だ!!

 

『叢雲!!』」

 

 

叢雲と呼ばれた艦娘は窓を大きく開くとその隙に男は廊下を歩いている大元帥に向けて言い放つ

 

 

「なぁ、東雲さんよ

あんた言ったよな

何でも一つ願いを叶えてくれるって?」

 

 

「……突然何だ?

確かに言ったが……」

 

 

「そうかい!それなら早速それを使わせてもらうぜ!!」

 

 

叢雲は艤装を展開しながら窓際に立つと男に向けて笑いかけると男も笑い合図を出す

 

 

「行くぞ!!!叢雲!!!」

 

 

「分かったわ!!司令官!!」

 

 

「おい!貴様ら!!何するつもりだ!?」

 

 

「なっ!貴女達!ここは三階ですよ!!」

 

 

先に叢雲が飛び降りるとその上から男が飛び降り叢雲に飛び乗りながら地面に降り立つと二人は処刑中の艦娘に目掛けて走り出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

痛い……熱い……

私の体が砲弾の熱と痛みに晒されている

艦娘達の怒りと笑い声が響き渡り私は身体を動かせずにいる

 

 

ここで理解してしまう

私は所詮使い捨ての道具

救われるわけがない存在

ただの兵器なのだと

 

 

目の前が真っ暗で何も見えない

目がないのは怖い

暗く何も見えない

光なんて無い

恐いよ……誰か助けてよ……

 

 

そう願っても私を助けてくれる人は居ない

だから死にたい

死んで楽になりたい

もうこんな世界に居たくない

 

 

「…提督もう良いだろう

そろそろコイツにトドメを」

 

 

『そうだな、良し長門トドメを刺せ』

 

 

「分かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……哀れだな艦娘古鷹

 

お前がやった罪は重い

 

私がもう貴様を殺してやろう」

 

 

 

「長門さんやっさしー!

 

犯罪者に情けなんて素晴らしいですね!」

 

 

その言葉が私に取って最後に聞く言葉何だと感じ

今までの事を思いだす

 

 

 

…………あれ?何だっけ?

分からないや、もう私は……壊れてるんだもんね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

口元を吊り上げ私は死を待つ

ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと待っていた死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く私を殺して!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でもその願いは無情にも砕かれる

甲高いまるで金属が擦れる様な音と爆発音で処刑を担当していた艦娘達が慌てている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近くに水上を走る音が聞こえる

こんな近距離で撃つの?

でもそれが確実かと思いながらその時を待つが来ない

そして私の両手足の拘束が切り落とされ抱き抱えられる

 

 

「大丈夫!?しっかりして!!」

 

 

…誰?私の事を死なせてくれないのは?

……近くに気配が二つ

一つは私を抱き抱えている艦娘

小さくて、でも力強く私を抱き抱えている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

分からない

私は殺されるはずなのに処刑されるはずなのに

何で………何で……貴方はそこにいるの?

もう一つの気配は私のすぐ目の前にある

電探は生きているから反応は分かる

私のすぐ目の前で大きく両手を広げている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして貴方は凶行に及んだんだよね

貴方の言葉は一生忘れない

闇に落ちかけた私に手を差し伸べてくれた

 

 

 

 

 

私の英雄(ヒーロー)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いけどこの艦娘の処刑は今この時を持って中止だ!!

こいつは俺達が貰っていくぜ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴方は……だぁれ?

 

 

 

 

 

 

 

 




次回

新人提督と初期艦

死を願う艦娘に手を差し伸べたのは仲間でもなく提督(藤谷)でもない
艦娘の願いに答えた一人の新人提督と初期艦だった



いやーやっと出てきてくれましたねぇ
因みにこの最後は長門過去編でもやってましたね
これがちょっとしたフラグにもなってます



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