艦隊これくしょん ー誰ガ為ノ戦争カー   作:霧雨鴉

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協力者 四

佐渡と大淀は再び座るとバインダーを取り出し佐渡達に向き直る

 

 

「正直、今の貴方達は裏切り者

つまり海軍からは爪弾きにされている状態です

それに加え、貴方は元々の位元帥への出世コースからも外れ正直出世はほぼ不可能に等しいです」

 

 

「ま、そうでしょうな

犯罪者を庇ったらそうなるでしょ!」

 

 

佐渡は楽観的に捉えているが大淀には古鷹を庇った事をこの後の二人に重い枷になることを伝える

 

 

「それに加え、貴方達二人は基本的に転属、転勤等はありません

特に佐渡提督、貴方は死ぬまで小笠原の勤務と言うことになります

海軍から抜け出すこと辞めることすら許されません」

 

 

「マジかぁ、ブラックだなぁ

海軍は」

 

 

「更に、大本営からの物資や資材の提供は不可能になります

よっぽどの事があれば……はあるかもしれませんが正直大本営は貴方達には非協力と言う態度を取る見たいです

結果論から言わせてもらえれば貴方達は全ての出世、立場を全て失っています」

 

 

「だってよ、叢雲」

 

 

「ま、仕方無いわね

それほどの事をしでかしたんだもん」

 

 

佐渡達の置かれている状況を伝えてるはずなのに二人は意外と楽観的に流しており大淀は疑問に思う

 

 

「……佐渡提督、貴方が東雲大元帥とした『取引』も無効になっているのによろしいんですか?」

 

 

「んー?良いんじゃね

と言うよりは俺は取引内容の一つだけは守ってもらったし欲しいものは手に入ったから別に?」

 

 

「分かってるんですか!

貴方の有能性は熟知していますし貴方はもっと評価されるべき人間なんです!なのに!何でこんなことを!!」

 

 

大淀は佐渡の事を大元帥や他の情報ルートから仕入れておりほとんど熟知している

だからこそ、今回の事件を重く見ているのに当の本人は楽観的なのが許せずに居た

だが、佐渡はそんなことをどうでも良いことの様に鼻で笑う

 

 

「なぁ、大淀さん

あんたは目の前で飢え死に仕掛けてる奴に自らが持ってる食い物をあげられるか?」

 

 

「え…?突然何を?」

 

 

「だから、自分はいつでも食べれるし金もある

それを持ってる状態で目の前に飢えで苦しんでる奴に食い物をあげれるのかって聞いてるんだ

どうだ?」

 

 

「そ、そんなのあげられますよ?

別にいつでも変わりなんて買えば良いじゃないですか?

その飢えで苦しんでる人は私とは違いますから……」

 

 

「ほほう?ならあんたなら俺が今何をしてるのか分かるだろ?

俺がやってることはそう言うことなんだよ」

 

 

「何を言って………」

 

 

佐渡は立ち上がると煙草を吸おうとするが明石さんに両手をバツに出され仕方無く煙草を噛むだけにする

 

 

「俺が持ってるもの、これから先を捨てるだけで彼女を古鷹ちゃんを救える

それなら俺は喜んで捨ててやりますよ

権力も地位も立場より俺は彼女の命を取ります

どんなことをしても人間や艦娘は変われる

まぁ変わらない奴も居るかもしれないその時は俺が責任を持って処理します

でも、俺は艦娘を信じたい

何故裏切ったのかは分からない、だから彼女を変えたいんです

 

 

だからこれは俺と叢雲のワガママだ

あの艦娘を古鷹ちゃんを助けたいと思い共に選んだ道です

これからどんなことが起きても俺達は古鷹ちゃんを助けたことに後悔は無いです」

 

 

「そうね、私達に後悔は無い

例え犯罪者であろうと私達は救える命は救いたいの

どんなものを犠牲にしようとも私達が死のうとも

救える命がそこにあると言うのであれば

私達は全力でその命を救うわ」

 

 

二人の硬い信念を見た三人は呆気に取られていると明石がその姿を見ながら笑いだす

 

 

「アハハ!凄いですね佐渡提督、叢雲さん!!

本当今の海軍にはこう言う人が居てくれるのは最高ですね!!」

 

 

「そうね、普通艦娘の為に権力とかを捨てる人なんて居ませんよ

本当に艦娘を大切に思ってるんですね」

 

 

「ま、俺の命はコイツがあってこそですからね!」

 

 

「ちょっと!司令官私の頭を撫でないでよ!!」

 

 

佐渡は叢雲の頭をぐしゃぐしゃにしていると叢雲もイラついてるけどその顔は嬉しそうにしておりその姿を見ながら明石と夕張は笑っていた

その光景を見ていると大淀は自らの提督の事を思い出す

彼も艦娘を大切にし、今でも古鷹を何とかしようとしたが出来なかった人を

 

 

「………………ふふ、凄いですね貴方は」

 

 

「凄くないですよ、ただバカなだけですよ俺達は」

 

 

「悪いわね、迷惑かけちゃって」

 

 

佐渡達の信念を聞いた大淀は確信する

この二人はいつかこの海軍を変えてくれると

 

 

「…分かりました!私も貴方達に協力します!

もし何かありましたら私にご連絡ください、出来るだけの事は貴方達を助けますよ!」

 

 

「本当ですか!?ありがとうございます!」

 

 

「良かったわね司令官」

 

 

大淀からの信頼を勝ち取り佐渡達は一旦工廠を後にする

そして、大淀に「三日後貴方達を小笠原鎮守府に送ります

私の指定する港に荷物をお持ちになりながら来てくださいね?」と言われ二人は地下を出て廊下を歩いていた

 

 

「いやー!意外と優しい人達も居るもんだな!」

 

 

「そうね、正直二人だけはキツいと思ってたしね」

 

 

だが、その二人の背後に誰かが近付き声をかける

 

 

「あ、あの!」

 

 

「んぁ?」

 

 

「なにかしら?」

 

 

二人は振り返るとそこには緊張した面持ちの提督らしき男と二人の女性が居た

 

 

「佐渡……提督ですよね?」

 

 

「あぁ、そうだよ?あんたは?」

 

 

「わ、私の名前は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

藤谷 淳一 古鷹の提督です」

 

 

 

 

 

 

 

 




 

次回

対峙

古鷹の治療を明石達に任せ大本営から去ろうとした二人の前に現れた藤谷
彼の目的とは?



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