「でも何で……ここには誰も居ないんじゃ」
「分からない
だがここに飛ばされてきてあの深海棲艦の防衛網を突破して何とかたどり着いたって事じゃないか?」
佐渡は腰から銃を取り出しゆっくり扉を開くと中から悪臭と共に血の匂いがする
「酷い臭い……」
「二年以上も放置されてる鎮守府だからな
まぁ仕方ないさ」
二人は中腰になりながら血の後を辿っていくと一つの部屋に辿り着き佐渡が止まれの合図と共に声を抑える
(……叢雲、ここで待機
俺が先に突入する)
(馬鹿!相手は深海棲艦かもしれないのよ!?)
(こういうのは馴れてるし負傷してるなら問題ない
お前が被弾してもここでは治せないから待ってろ
良いな?)
佐渡の指示を仕方無く聞くとゆっくり佐渡は部屋の扉に手をかけドアノブを回し銃で少しだけ扉を開けていく
(気配はあるな
だが、妙に静かだ……
寝てる……のか?)
それと同時に立ち上がり佐渡は扉を蹴り飛ばすと銃を部屋に居る何かに突きつける
「動くな!お前は………」
だがその何かを見た瞬間佐渡は銃をしまいその何かに近付きながら叢雲に指示を出す
「叢雲、どうやら杞憂だったらしい
外で待っててくれないか?」
「はぁ?あんた何言って……」
と言いながら叢雲が部屋に入ろうとすると
「入るな!!お前が見て良い物じゃない!!」
佐渡に怒号を飛ばされ一瞬たじろうが叢雲は意を決して部屋に入ると絶句する
「………………ねぇ、その娘……」
「チッ、だから入るなって言っただろ?
……艦娘だ、もう手遅れのな」
部屋の中に続いていた血痕は壁まで伸びておりそこにはピンク色の髪に小さな身体をした少女が壁にもたれ掛かるように死んでいた
足を失いながらどうやら引きずってこの中に入り絶命したらしい
「恐らくこの鎮守府に流された艦娘だ
死後1日って所だ………クソ!!」
佐渡は悔しそうに床を殴り付け艦娘の頭を撫でる
潮風に晒された後に乾いたせいか髪には塩が吹いており顔は苦しそうにしながら眠っていた
損傷が酷く死因は出血死
そしてこの場所にもう少し早く来れなかった自分を悔しく思う
「……助けられたかも知れないのに…俺は…」
すると叢雲がその横を通り抜け艦娘に抱き付き血液が身体に付くが気にせず彼女を抱き締めると頭をゆっくりと撫でる
「ごめんなさい……私達がもう少し早く来ていれば貴女を死なせずに済んだのに……ごめんね」
叢雲は艦娘の遺体を抱き締めながら身体を震わせ涙を流す
「叢雲、俺は彼女を海に流してくる
すまないが少し待っててくれないか?」
「嫌よ、私も行くわ」
「ばかやろ、古鷹を見ていてくれ
この島に何が居るか分からない以上彼女を危険に晒すわけに行かない」
「………分かったわ」
叢雲は渋々その意見を聞くと佐渡は微笑みながら頭を撫でる
「安心しろ、これ以上死人は出さない
この娘で最後だ
ここでの死人はな」
「……分かってるわよ
じゃあ、お願いね」
佐渡は部屋にいる艦娘の遺体を持ち上げゆっくりと歩いていくと鎮守府の外に出ていきボートへ艦娘を乗せると少しだけ航行する
「……すまない、君を一人海に流すことを許してくれ
もし寂しかったら幽霊でも構わない
鎮守府に来てくれ、私達はいつでも歓迎するからな」
そう言うと遺体を海に静かに付けると手を放す
艦娘はゆっくりと海に浸かりながら沈んでいく
深い深い海の底に
佐渡はその姿を見ながら手を合わせ祈りを捧げながら決意と誓いをする
「もう、誰であろうと俺の前で死なせないからな
そう君に誓おう
俺の全てを尽くしてでも」
次回
崩壊した鎮守府
艦娘の遺体に佐渡は誓い鎮守府に戻る
だが、荒廃していた小笠原鎮守府は予想以上に酷い有り様だった
この死んでしまった艦娘は誰か分かりますか?
答えは今後の作中に出てきます!