「叢雲ー!古鷹ちゃーん!
戻ったよ~」
「あら、司令官無事だったの?
てっきり死んだのかと」
「勝手に殺すな
ま、死にかけはしたけどな」
佐渡はのんびりとした様子で家具や遺骨を燃やしている叢雲達と合流し今後について話し始める
「とりあえず鎮守府の掃除なんだけどそれと同時に鎮守府を直さないとな……」
「まぁ砲撃による穴だらけだしね
これじゃ住めないわよ」
「うーん……一旦町に住むか?
と言っても無事な家があるとは思えないが」
鎮守府の廊下を掃除中に佐渡は街の様子を窓から見たがほとんど壊滅しておりとても人が住める状態ではなかった
「逆に町に行くのは危険じゃない?
野生動物とか居そうだしある意味危険よ」
「それもそうか
…じゃあ二階の部屋で寝泊まりしよっか?」
「……は?あの穴だらけや死体があった部屋で寝ろと言うのかしら?」
「いや、一つだけ無事な部屋があってな
そこならどうかなって」
佐渡は一つだけ気になる部屋があったかとりあえず荷物をそこに運ぶべく叢雲と協力しながら二階へ向かうとある部屋に入る
「……意外ねこんな部屋があったなんて」
「な?綺麗だろ?
何の部屋かは分からないけど」
叢雲は部屋に入るなり艤装を外しベッドへダイブするとゴロゴロと転がりながら枕に顔を伏せると匂いを嗅ぐ
「……しないわね血の匂い
でも少し海の匂いがするわ
ベッド柔らかい~♪」
「そいつは良かったよ
じゃあ古鷹さん呼んでくるからな」
叢雲が旅の疲れを休めていると佐渡は下に行くと古鷹が縁側で毛布にくるまりながら丸まっている
「古鷹ちゃん、こんなところに居ないで二階に行こ?
そこじゃ身体冷やしちゃうよ?」
「………………ほっといてください」
「断る!」
佐渡はそう言うと古鷹の隣に腰を下ろし座るとビクンッと古鷹は震え少し距離をとる
「…俺が恐いか?それとも人間が恐いか?」
「…………………はい」
「はは、すまない恐がらせてしまってたか」
しばらく二人は無言で隣に居合わせながら縁側に座りのんびりとしていた
ふと佐渡はココアシガレットと同時にライターを取り出し火を付けると古鷹の身体がビクンと震える
「……火が恐いか?」
「……………はい」
「そうか……って!何で俺ココアシガレットに火付けようとしてるの!?
煙草煙草……って辞めたんだったわ
忘れてた!!」
アハハハハと佐渡は笑っているが古鷹は縮こまりながら毛布にくるまったままでいる
「あ、そうだ古鷹ちゃんお腹空かない?
叢雲から聞いて食堂は無事らしいから何か作るよ?」
「…………大丈夫です」
「えぇーお腹空かないのー?
俺はお腹空いたんだけどなー?誰か可愛い女の子と一緒に食べたいなー?」
「……………叢雲さんと食べてはいかがですか?」
「アイツ食べる量半端無いんだよ……
だから君と食べたいんだけどなー?
安心してくれ流石に不味くは……無いと思う」
頬を掻きながらそっぽを向いているが古鷹は動じずやはりくるまったまま動かない
「そいや、古鷹ちゃんって何で捕まったの?」
その言葉に古鷹がビクンと反応を示すと佐渡は続ける
「何かとんでもないことやったんだって?
俺はそう思わないんだけどさ」
佐渡の何気ない言葉に古鷹は少しだけ反応すると顔だけを佐渡へ向ける
その顔は空を見上げながら笑みを浮かべていた
「まぁ、今の状態の君を見てと言う結果論何だけどさ
これでも俺はかなりの人間を見てきたんだ
でも君は犯罪者と言うよりはただのお人好しにしか見えないんだよね
俺の知ってる馬鹿共にそっくりだ
自分を犠牲にしてまで仲間や守りたいものがある
そんな娘にしか見えないんだ
間違ってたらごめんね?でも俺はそう思うよ?」
その言葉と共に佐渡は古鷹を見ないまま頭を撫でるが瞬間古鷹が震えるのが分かったが続ける
「大丈夫、安心しろここには俺達しか居ない
君を傷付ける者は居ないからな
怯えなくて良い、恐がらなくて良い
俺達は君を大切にする前任よりな!
それだけはどんなものにも誓って言えるからな!」
それだけを言うと佐渡は立ち上がり廊下へと歩いていくと古鷹へ振り返らずに手だけを振る
「シチューでも作ってくるよ!
ここは寒いからな!
二階の左にある部屋に叢雲が居る
早めにそこへ行きなそこは暖かいからね!」
佐渡は去っていくと一人残った古鷹は毛布にくるまりながら佐渡に撫でられた頭を触りながら先程の言葉を思い出す
『自分を犠牲にしてまで仲間や守りたいものがある
そんな娘にしか見えないんだ
間違ってたらごめんね?でも俺はそう思うよ?』
頭を押さえながら古鷹はその言葉を思いだし少しずつ泣き出してしまう
『大丈夫、安心しろここには俺達しか居ない
君を傷付ける者は居ないからな
怯えなくて良い、恐がらなくて良い
俺達は君を大切にする前任よりな!
それだけはどんなものにも誓って言えるからな!』
「嘘だよ………どうせ貴方も……裏切るんだ……」
信じられない
信じてきた物を全て裏切られてきた彼女にはまだその言葉は信じられなかった
そして古鷹は静かに声を圧し殺しながら泣いていた
壊された心には届かないはずの言葉であったが古鷹にはきちんとその優しい言葉は届き少しずつ彼女を癒していっていた
次回
食事
古鷹と叢雲の為に佐渡は暖かい料理を作ろうとしているとその前にある者達が立ち塞がる
佐渡の小さな戦いが幕を開ける