艦隊これくしょん ー誰ガ為ノ戦争カー   作:霧雨鴉

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古鷹 十

古鷹が食事を出来るようになってから一週間

少しずつだが会話もまともに出来るようになってきており佐渡や叢雲との会話をするようになっていた

 

それは大きな進歩であり佐渡も嬉しく思っていた

食事も一日一回でスープ位しか取れてないがそれでも少しずつ前に進めていることを実感していた

そして佐渡は

 

 

「親方さーん!ここ錆びてますがどうしますかー?」

 

 

「あぁ!そしたら切り落としてくれ!」

 

 

親方に頼まれていた工廠の修繕を行っていた

屋根の大穴を直していたのだがやはり一人では難しく妖精達と協力していた

 

 

「にしてもこんなデカイ穴どうやってやったんですかねぇ……」

 

 

「敵空母による爆撃だ、しかも一発じゃなくて何発連続して受けてたからな

とりあえず今日はもう少し直したら終わりにしよう!」

 

 

「分かりましたー!」

 

 

佐渡はノコギリやハンマーを使い少しずつ工廠を直していくと妖精達が道具を持ってきてくれる

 

 

「提督ー!」

 

 

「釘だよー!」

 

 

「お、ありがと!」

 

 

しばらくすると、工廠の天井を直し終え佐渡は工廠前で一息つく

 

 

「ふう……夏が来る前には色々と直したいですね……」

 

 

「だな、穴が塞がればエアコンも使えるしな……」

 

 

二人は一緒に休憩を取っていると佐渡が不意に立ち上がり食堂へと向かっていく

 

 

「提督、もう行くのかい?」

 

 

「えぇ、すいません

今日も時間がかかりますので行かせて貰いますね!」

 

 

「そうか、まぁ頑張れよ」

 

 

気付けば外は夕暮れに染まっており佐渡も古鷹の為のスープ作りの時間になり食堂へ向かっていると入渠施設や壊れてる廊下の修理を行っている妖精達とすれ違う

 

 

「皆ー!そろそろご飯作るからキリの良い所で切り上げてねー!」

 

 

「「はーい!」」

 

 

しばらく歩いていき食堂の引き戸を開けると厨房で何か人影を見つけ溜め息をつく

 

 

「おいおい、叢雲~

何つまみぐいしてんだぁ?

もう少しなんだから我慢しろよ……」

 

 

そう話しているのだが一向に叢雲が顔を出さずに佐渡は疑問に思っていると厨房に入りその姿を確認する

 

 

「おーい、叢雲?何して……………ぇ?」

 

 

「…………………ごめんなさい……」

 

 

叢雲かと、思っていたその人影は叢雲ではなく何故か古鷹が厨房のキッチン下に隠れており混乱する

 

 

「………え?…ちょっと待ってね……え?

どうしたの?古鷹ちゃん?何かあった?

叢雲が何かしたの?それとも親方?

良し任せろぶん殴ってきて骨砕いてやるからな」

 

 

「ち!違うんです!違うんです!辞めてください!!」

 

 

混乱しながら佐渡が暴走しそうになっていると古鷹が佐渡の腕を掴み何とか止める

 

しばらくすると佐渡も落ち着き二人とも席に座る

 

 

「…うんごめん変な所見せちゃったね」

 

 

「い、いえ……私も悪かったのでごめんなさい…」

 

 

「そんで何してたの?厨房何かで?」

 

 

「そ……その……」

 

 

古鷹は持っていた林檎を見せると佐渡は首を傾げるがそれを回転させると納得する

 

 

「…………まさか、食べたの?」

 

 

驚きながら聞き返すと古鷹は頷き林檎を持ち上げ見返すのだが良く見ると古鷹の顔色がよろしくはない

 

 

「………吐いた?」

 

 

その言葉にビクンと反応しそっぽを向くのだが静かに頷くと佐渡は立ち上がり古鷹の頭を撫でる

 

 

「そうか、努力することは良いことだ

だがなこう言うのは俺に任せておけ

古鷹が食べれそうに調理してやるからな!」

 

 

そう言うと佐渡はゆっくりとその林檎を持ちながら厨房に入っていくとその後を古鷹も付いていく

 

 

「良し!じゃあ古鷹に特別メニューな!

皆には秘密だぞ?」

 

 

「は、はい!」

 

 

そう言うと佐渡は手際よく林檎を切っていきそれを鍋に入れると砂糖や甘味を入れていきゆっくりと煮込んでいく

 

 

「君が食事の出来ない理由はいくつかあるんだろうけど多分一番の理由はストレスじゃないかな?」

 

 

「!!」

 

 

佐渡の言葉に古鷹は心を鷲掴みにされる感覚に陥る

 

 

「でも俺達にはそれを和らげる位しか出来ない

君の心にあるその『何か』は俺達にはどうしようもない

だから俺達は君がその何かに立ち向かえるまで君を支える

どんな形でもどういったやり方でも君を支えるよ」

 

 

料理をしながら佐渡は話を続けていき古鷹は黙ってその話を聞いていた

 

 

「嬉しいんだ、君が俺の料理の為にご飯を食べようとしてくれているのが

でもね、無理をしてほしくない

だから頼ってほしいんだ俺達をね

良し!完成っと!」

 

 

佐渡は料理を完成させると鍋からそれを取り出し皿に盛り付けていく

それはやはりスープなのだが柔らかく煮込まれた林檎がその中に沈んでいた

 

 

「どうかな?最近少しずつ食べれるようになってきたから作ってみたんだけど……」

 

 

古鷹は皿を受け取るとスプーンでスープをすくうと口に運びその味をしっかりと堪能する

 

 

「……甘い…凄く…でも美味しい……」

 

 

「ふふ、良かった

林檎はどうかな?かなり柔らかく煮込んだんだけど………」

 

 

古鷹はその言葉を信じスプーンで林檎を小さくしようとすると簡単に切ることが出来驚きながら口に運ぶ

林檎は少しの力で噛みきることが出来柔らかい

そして、林檎の甘味と食感がとても心地いい

 

 

「美味しい……美味しいです!」

 

 

「はは!良かった食べれるようになったか!

これならそろそろお粥とかなら行けるかなぁ?」

 

 

佐渡は嬉しそうに喜んでいると不意に食堂の扉が開き二人が入ってくる

 

 

「あーお腹すいた~

司令官ご飯まーだー?」

 

 

「おーい、提督~

そろそろご飯……って何食べてるんだ!二人!!」

 

 

「あっちゃーバレちゃったか~!

古鷹ちゃんとの秘密……だったのに………」

 

 

 

その訪問に佐渡も笑って誤魔化そうとするのだがそれよりも一つに視線が集まり笑う事すら忘れてしまった

 

 

「アハハハハ!バレちゃいましたね佐渡さん

フフフ、二人きりの秘密の筈だったのに!」

 

 

笑っていた

今まで暗い顔しかしておらず目も真っ黒に染まっていた彼女の瞳は色を取り戻しており左の義眼も綺麗な金色に輝いていた

 

 

「アハハハ……てあれ?皆さん?どうかしましたか……?」

 

 

「いや…何でもねぇよ!なぁ叢雲!!」

 

 

「えぇ!何でもないわアハハハハ!!」

 

 

「そうだな!何でもないなアハハハハ!!!」

 

 

「………?」

 

 

その姿を見ながら佐渡達は笑いながら少しだけ涙を流し喜んでいた

古鷹に笑顔が戻った

少しずつだけど彼女が前と同じように戻ってくれていると実感できているそれだけが佐渡達を喜ばせていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やったなぁ……彼女を笑わせられたなぁ……

ハハ!進歩はしてるんだな!俺達は!」

 

 

皆が寝静まる中佐渡は一人屋上に出ており寒い夜空を見上げながら喜んでいた

今宵は満月、辺りを照らしながら佐渡は海を眺めながらのんびりとしていた

 

 

「………あ、そうだ!この事を大淀さんに…」

 

 

佐渡はその報告を大淀にしようとするとポケットから手紙が落ち渡されたことを思い出した

 

 

「これって確か大淀さんに渡された……」

 

 

その手紙は大淀に去り際に渡された手紙

可愛い便箋に後ろにはアルファベットで『A』とだけ書かれており中身を見ようとする

 

 

『必ず一人でお読みくださいと言われております!』

 

 

その言葉を思い出し周りを警戒するが誰も居るはずが無く月明かりの中その手紙の内容を確認する

 

 

「……………おい、どういうことがこいつは…

だが、コイツが本当なら…彼女は……」

 

 

手紙の内容と大淀に言われた言葉を思い出す

 

 

『彼女は嘘はつかないと思いますよ?』

 

 

「……となるとこれは真実なのか…じゃあアイツは古鷹は……」

 

 

その言葉と同時に佐渡は手紙を強く握り締める

その内容は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『初めまして佐渡提督さん

最初に古鷹さんを助けて頂きありがとうございます

私の名前は明かせませんが彼女を密かに大切に思っている者です

これから私が貴方に教える内容には嘘偽りはありません

保証します、もし嘘ならば私は貴方の前に出てどんな仕置きでも受ける覚悟です

 

 

古鷹さんは何の罪も働いていません

彼女は私達を守り、私達の為に動いてくれた優しいお方です

古鷹さんは藤谷提督と海軍上層部によって殺された艦娘何です

毎日拷問を受け心を磨り減らされそして心を壊された人なんです

お願いします、彼女を古鷹さんを助けてください!

私では彼女を助けられないんですごめんなさい

非力で情けなくて貴方に頼ることしか出来ない愚か者であることをお許しください

 

 

彼女の心を貴方が救ってほしい、私には出来なかったから貴方に頼ることをお許しください

お願いします……古鷹さんを助けて…

                密告者Aより』

 

 

 

手紙の後半は涙で濡れたのか端がくしゃくしゃになっており佐渡もそのAが古鷹を心配している事を理解する

 

 

「任せろ、何とかしてやるさ

だがいつかお前の事も救ってやろうじゃねえが

密告者Aさんよ」

 

 

 

 

 

 





次回

真実と絶望

古鷹に笑顔が戻り佐渡達の苦労が報われてきていた
だがそれと同時に佐渡は古鷹の真実を知り彼女を何としても救いたいと思う
だが彼女に縛り付けられた絶望の鎖はそう簡単には壊せない


凄い長文になってしまったごめんなさい!
そして不意にプリンツ欲しくなったのですが海外艦ドロップしてくれないかなぁ!イベント!!


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