艦隊これくしょん ー誰ガ為ノ戦争カー   作:霧雨鴉

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天使の抱擁

「なっ!お前らどうやって入って来やがった!?」

 

 

「はぁ?あんた馬鹿じゃないの?

そんなのピッキングよ、私の技術嘗めないでよ?

にしても、へぇ……それが貴方が送られて来た理由ねぇ……へぇ…?」

 

 

エアはドアの鍵を閉めると長門をマジマジと見ながらゆっくりと近寄る

 

 

「っ!見ないでくれ!」

 

 

「嫌よ!だって綺麗なんだもん貴女の深海化

素晴らしいわ……ここまで綺麗な深海化はあんまり見れないもの……でも納得したわ貴女が正義にこだわる理由が

貴女もしかして、そうしてないと呑まれそう何じゃないの?」

 

 

「!!……どうしてそれを……」

 

 

「やっぱりね!となるとやっぱり深海化する原因は心って事ね……ふーん…やっぱりねぇ……『アイツ』の研究は正しかったのね」

 

 

エアは一人考え込んでいると叢雲が軽く頭をつつく

 

 

「ちょっとエア、少し黙りなさいよ

後で詳しく聞くからね」

 

 

「はいはーい」

 

 

三人は長門に近付くと微笑みながら長門の姿をマジマジと見る

 

 

「へぇ、これが深海化ね

正に深海棲艦みたいね

でも良いじゃない?」

 

 

「でしょ?まぁ下手をすれば意識を持ってかれないけどね」

 

 

「………何故だ、何故恐れない…

何故平気で居られるんだ!お前達!!」

 

 

長門が叫ぶと古鷹が長門に近付き頬を撫でる

 

 

「恐れませんよ、貴女は貴女ですから

私達はそんな事では恐れません」

 

 

「……私は…深海に堕ちかけているんだぞ?」

 

 

「…でしたら私達が貴女を深海から引っ張りあげます」

 

 

そう言うと長門の手を取ると強く引っ張り自分の身体に抱き寄せると頭を優しく撫でる

 

 

「……駄目だ私は君を…」

 

 

「知りません、私は貴女を助けたいですから」

 

 

半分強引に古鷹は長門を抱き締めると長門は静かに涙を流していく

 

 

「すまない………私は……貴女を殺そうと……」

 

 

「良いんです、長門さんは悪くありません

確かに殺そうとはしましたけど躊躇ってくれてたんですよね

あの時受けた痛みに貴女の砲撃はありませんでした

貴女はあの時早く処刑を終わらせ私を苦しみから解放しようとしてくれました

それは忘れられません」

 

 

「っ!気付いてたのか!?」

 

 

「えぇ、これでも戦場には出てましたから

貴女は優しい人であることは私が知ってます

真っ直ぐに戦い誰よりも前に進んできました

だから今だけは少しだけここで休んで行きませんか?

私達と共に」

 

 

長門は殺そうとしていた古鷹の優しさに触れるがそれでも自分がしてきたことを許せずに手を取れないでいるとと古鷹は優しくその手を取ろうとする

 

 

「私は貴女達に捨てられました

その事実は変わりません、でも私は二人に拾われた

希望を失い、気力を失い、仲間も生きる意味すら奪われた私なんかでも二人は必死に手を伸ばし私の手を取ってくれた

だから次は私が貴女の手を取ります

何度その手が空を切ろうとも何度手が離れても私は取り続けます」

 

 

 

「私は……私は………」

 

 

「大丈夫です、恐くありませんよ

この二人は佐渡さんと叢雲さんは必ず貴女を助けてくれます

私は二人に色々な物を貰いました

次は私が助けを求めている者達を救いたい

だから信じてください

私達を」

 

 

古鷹の説得に少しずつ心を開いていく長門だがやはり自分の心に決めている正義がそれを邪魔をする

 

 

「だが!やはり私には正義が!!!」

 

 

「私の正義は!仲間を守りそれを邪魔をする者達を必ず倒すことよ!!

戦艦長門!!」

 

 

不意に叢雲が自信満々にそう言うとエアも続けて長門を指差し自らの信念(正義)を言う

 

 

「私の正義は!艦娘を傷付けるものを始末し艦娘を救い出すこと!

どんな相手であろうが何処にいようが関係ないわ!!

必ずぶっ殺してやる!!」

 

 

エアが叫ぶと佐渡もそれに続けて笑みを浮かべながら叫ぶ

 

 

「俺の正義は!俺が正義であることだ!!

俺のやりたいようにやり!誰にも邪魔させねぇ!

助けたい奴を助け!救いたい奴を救う!

それが俺のやり方だ!!」

 

 

佐渡が叫ぶと古鷹は長門を強く抱き締め耳元で自らの正義を語る

 

 

「皆、みんな違うんです

信念も正義も多種多様です

それでも私達は共にそれを尊重し互いに認めあい生きて行きます

ここには居ませんが金剛さんも大井さんもイムヤさんもグラーフさんにも自らの正義があります

 

私の正義は

皆が笑顔で笑って過ごす事です

争い事も無くどんな人とでもこの鎮守府で小笠原の皆と佐渡さんと叢雲さんと楽しく過ごすことです

 

だから私は貴女とも楽しく過ごしたいです

一緒に暮らし貴女のそれを治しませんか?

私達は何でも協力します

私は貴女を救いたいです

長門さん」

 

 

「そうだ!長門!

お前はここで生きていけ!

暴走しようが深海化しようが必ずお前を止めてやる!

助けてやる!約束しよう!!」

 

 

「ま、どうせあんたが出来るのは陸上だけでしょ?

良いわ!私が水上であんたが暴走したら止めてやるわよ!

任せておきなさい!何人だろうが私は負けないんだからね!!」

 

 

「じゃ、私は二人が居ないときにでもアンタを止めようかしら?

あんたが苦しんでいる艦娘なら別よ助けてあげるわ!!

ま!あんたの深海化は私達の原因でもあるしね!」

 

 

佐渡も叢雲もエアも自信に満ち溢れた顔をしながら長門へ笑いかけていると長門の瞳から涙が溢れる

 

 

「何故だ………何故お前達は……」

 

 

「それが、この人達何ですよ

いつも自信に満ち溢れ絶対にやってくれる

信用できる人達何です

では聞きますよ?貴女の正義は何ですか?」

 

 

古鷹に言われると長門は涙を流しながら俯きながら答える

 

 

「分からない……私は…何が正義なのか…もう…」

 

 

「なら一緒に見付けましょう?私達とここ(小笠原)で皆で!」

 

 

古鷹に微笑みながら言われると長門はゆっくりと古鷹を抱き締めるながら胸元に顔を押し付けながら泣き始める

 

 

「私は……私は…生きていて…良いのか?

本当…迷惑にならないのか…?」

 

 

「はい!迷惑になんてなりませんよ!

任せてください!

私達が必ず貴女を治し救ってみせますよ」

 

 

その言葉を聞いた長門は古鷹の胸元で更に泣き始めてしまい服が涙と鼻水で濡れてしまう

 

 

「…ごめん……ごめんなさい…古鷹……私は…貴女に酷い事を……取り返しのつかないことを……」

 

 

「大丈夫ですよ、貴女は勤めを全うしただけですよ

大丈夫…大丈夫ですよ…疲れましたよね…大変でしたよね…ここでこの鎮守府と仲間達とゆっくり休んでいきましょうね…」

 

 

「うわぁぁぁぁぁん!!古鷹!古鷹ぁぁぁ!!!」

 

 

古鷹の優しさに耐えられなかったのかついには周りを気にしないほどに泣き始めてしまう

古鷹は顔だけを佐渡に向けると微笑みを返す

それに答える様に佐渡は笑みを浮かべ親指を立てる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寒い冬空の下

一年前佐渡は一人の少女を助けた

死を願い全てを諦めていた少女の手を取り命をかけて助け出した

 

 

その一年後同じ冬空の下

佐渡が助け出した少女はまた別の少女を助ける為に手を取ってくれた人と同じ様にまた手を取り助け出す

 

 

美しい満月の空の下

古鷹は優しく長門をあやしておりその姿を見た叢雲とエアも微笑み合う

 

そして佐渡は一瞬だが古鷹の背に美しく真っ白な羽が見えたと言う

 

まるでその姿は罪深き罪人へ手を差し伸べる天使と錯覚したらしい

 

 

 




次回

一年後君を救う

佐渡の届かない言葉を古鷹が代わり届け長門と和解する事に成功し二人は思い出の場所にて過去を振り返る
そして佐渡は古鷹を見て決断する


と言うわけで今回は古鷹さんに活躍して貰いました!
面倒見が良く優しいお姉さん的な古鷹さんです!(ある意味初めての活躍かも?)

そして次回から大演習会最後のフラグを回収します!

あ、それとアンケートありがとうございました!
長門戦は無しの方向で行こうと思います!
まさかあんなに投票来るとは思いませんでしたが本当にありがとうございます!


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