艦隊これくしょん ー誰ガ為ノ戦争カー   作:霧雨鴉

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絶望と最後の鎖 二

その姿は一年前佐渡と対峙した時に酷似しておりずっと心の奥底にしまい込んでいた

誰にも気付かれないように

誰にも気を使わせないようにするために

青葉達を避けていた

 

何故なら見ればその気持ちを

憎悪を

怒りを

殺意を

抑えられないと分かっていたから

 

 

確かに佐渡と叢雲は古鷹を死へと縛り付ける鎖は壊していた

だがこちらは壊せなかった

いや、壊すことは出来なかった

古鷹の明確なこの憎悪は青葉達にしか向けられないのだから

佐渡はそれを理解し、最後に青葉と向かい合わせた

 

 

それがどんな結果に成ろうとも知らずに

 

 

 

「ねぇ?青葉、覚えてる?

皆で色んな所に遊びに行ったよね?

遊園地、ゲームセンター、山、お祭りにも行ったよね?

青葉が覚えてなくても私は覚えてるよ

楽しかったよね

今でも覚えてるよ、皆の笑顔に私を慕ってくれていた事を」

 

 

「古鷹…さん…」

 

 

古鷹は思い出を語りながら感傷に浸りながら微笑んでいるが少しずつその微笑みが消えていく

そして

 

 

「でも、全部……全部全部全部全部全部全部全部!!

嘘だった!幻だった!偽物だった!!

そうだよね!!青葉ぁぁぁ!!!」

 

 

古鷹は頭を抱えながら叫ぶと青葉を睨み付ける

その瞳には明確な殺意と怒りそして憎悪が混じっていた

初めて向けられるその瞳に青葉は背筋を凍らせる

誰にでも優しくて、頼りがいのあり、笑顔を向けてくれていた憧れの人

 

 

だが、今その姿は無かった

今あるのは青葉達を殺そうとしている変わり果てた

 

 

古鷹(優しい人)だった

 

 

「ち、ちがーーーー」

 

 

青葉は咄嗟にそれを否定しようとするが古鷹は更に睨みを効かせ怒りのまま叫ぶ

 

 

 

「違う!?何が!何が違うの!?

私!皆に何かした!?

酷いことをしたの!?

してないよねぇ!!!答えてよぉ!!

青葉ぁぁぁ!!!」

 

 

それと同時に古鷹は青葉の首を掴みかかると睨み付ける

今まで優しくされてきていた人からの殺意ほど堪える物は無い

佐渡が言っていた覚悟であり古鷹の乗り越えないと行けないと言うことも分かる

だからこそ、青葉は古鷹を救うためには力と心を振り絞る

 

 

「………なにもしてません…古鷹さんは何も…」

 

 

「じゃあ!何で!何で何で何で何で何で何で!!

私を捨てたの!?

裏切ったの!?

私達は仲間じゃなかったの!?ねぇ!!」

 

 

「……私達は古鷹さんを捨てれば安全が保証されたんです

だから皆……貴女なら許してくれるとーーーー」

 

 

「……そう私は『優しい』からなのかな?

……ふざけるな……」

 

 

その言葉と共に古鷹の殺意が更に大きく膨れ上がり瞳が少しずつ赤く染まっていくと同時に青葉の首を強く握りしめる

 

 

「ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

私が!私がどんな目に合っていたのかも知らないくせに!!

私がどんな思いで苦しんでいたのかも知らないくせに!!

貴女達の考えを私に押し付けるなぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

そう叫ぶと古鷹は青葉を投げ飛ばす

投げ飛ばされた青葉は屋上に増設されたフェンスに当たると背中を強打し苦しみながらその場にうずくまる

 

 

「ねぇ、痛い?

私はねもっと痛い目に会ってたんだよ?

皆がのんびり平和に生きている中私はずっと苦しんでたんだよ

ねぇ?分かる青葉

貴女達に捨てられた私はずっと苦しんでたんだよ」

 

 

古鷹は青葉を見下ろしながらその脚を思い切り踏みつける

 

 

「うっ……!古鷹…さ……ん!」

 

 

「痛いよね?分かるよ?

でもね、私はね切り落とされたんだよこの脚を

何度も何度も何度も何度も繰り返し!!」

 

 

その言葉と共に青葉を睨み付けながら脚だけを持ち上げ反対側のフェンスにぶつける

 

 

「ガ…ハァ!…ふ……る…た……」

 

 

「アハハ!痛いよね!分かるよ!

でもね、でもねでもねでもね!!

私は毎日…毎日毎日毎日毎日毎日毎日ずっと同じ様に苦しめ続けられてたんだよ!!

身体に数えきれないほどの傷に!苦しみを与えられながら私は苦しんでたんだよ!!

ねぇ!青葉分かる!?

分からないよねぇ!!皆は拷問なんて受けてないもんね!!

分からない罪を認めるまで受けてきた心の痛みが分かる!?

 

 

ねぇ!青葉ぁぁぁぁ!!!」

 

 

その瞬間古鷹は踏み込むと一気に青葉に詰め寄りそのまま腹部を思いきり蹴り飛ばすと青葉は苦しみの余り胃酸を吐き出してしまう

 

 

「うぇ………おぇぇ……」

 

 

「青葉……ねぇ答えてよ…

何で来たの?ここに

分からなかったの?私はね皆を私を殺そうとした『オマエタチ』を恨んでるんだよ

殺したいんダヨ?分かラナいの?ねェ?」

 

 

古鷹の言葉が可笑しいし言動も怒りから来たものだと思っていた青葉であったが変に思い苦しみながら古鷹を見上げると恐怖する

 

 

「……ぇ………古……鷹……さ……ん…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古鷹の髪色は栗色から真っ白に変わり風が彼女の髪を撫でると瞳も真っ赤に染まっていた

両腕は真っ白な爪になり両脚も真っ白に変わっていた

その姿は普通の深海棲艦と変わらないほどに進行が進んでいた完全な深海化だった

 

 

 

「そうダヨ?オマエタチが裏切っタ古鷹だよ?

そして……コレガオマエタチの罪ダ」

 

 

 

 

 




次回

深海化


恨み怒り憎悪殺意
彼女の心をそれだけが支配する
心が蝕まれた古鷹は青葉へ殺意を向ける
物語は最悪の方向へ向かう

そして絶望の鎖は彼女を蝕み狂わせる



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