艦隊これくしょん ー誰ガ為ノ戦争カー   作:霧雨鴉

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絶望と最後の鎖 三

青葉は咄嗟にその姿を見て恐れを抱く

噂には聞いていた

艦娘の深海化

一部の艦娘に現れる最悪の状態

この状態になった艦娘はすぐに解体処分にされるか雷撃処分することが軍の規約に含まれている

 

だが、滅多になることでもないし噂程度に思っていた

それが目の前で、助けるべき、救うべき相手である古鷹がなっていることに絶望する

 

 

助けられない、私には何も出来ない

 

 

頭にその言葉が過ると古鷹は青葉を見下ろすと頭を持ち上げる

 

 

「ハハ!ドウシタの?青葉……私ガ恐イ?そうだよね?

分かルよ?

優しくて頼りがいのアル私がこうなっテルんだもんね!!

デモねこれはオマエタチのせいなんだよ!!」

 

 

古鷹は青葉を投げ飛ばす

投げ飛ばされた青葉は身体から打ち付けられ血を流しその場に再びうずくまるとゆっくりと近付いていく

 

 

「……頭ノ中でコエガ聞こエルんだ

 

『ワタシカラ奪ッタ者ヲコロセ』てね

 

殺しタクないヨ?

でも抑エルのも大変ナンだぁ!!」

 

 

「ガハッ!グフッ!ウブッ!」

 

 

 

そのままうずくまる青葉の腹部を蹴りながら古鷹は笑っていた

深海化した古鷹は普通では無かった

頭の中に聞こえる声に支配され殺意を剥き出しにし青葉を確実に殺そうとしている

青葉もその事には気付いていた

それでも逃げなかった逃げようとしなかった

これが自分が彼女にした罪なのだから

これを直せるのは自分達しか居ないのだから

 

 

「古……鷹…さ……ん!」

 

 

「ワタシの名前ヲ呼ぶナァ!!」

 

 

一際強く蹴り飛ばすと深海化した腕で首を掴むと青葉を睨み付ける

 

 

「お前ガ裏切らカッタラ!

ワタシはコウならナカった!!

違ウカ!?青葉!!」

 

 

「……そう…です……私は貴女を裏切りました…

弁明もなにもしません

私は……」

 

 

 

「……何でなの?青葉」

 

 

ほんの一瞬古鷹の様子が変わったのが分かった青葉は古鷹を見るがやはり姿は変わってない

でも、優しい古鷹であることは分かる

 

 

「……佐渡さんニ真実を伝えたンでしょ?」

 

 

「っ!?……どうして…それを…?」

 

 

古鷹は深海化した腕で掴んでいた青葉を離す

青葉はそのままコンクリートに落下し苦しかったのかゲホゲホと咳をする

 

 

「……見ちゃったんだ、あの人の部屋を掃除してるとき

密告者A……青葉からの手紙を

ワタシの事を提督に伝えてくれたのは貴女だったって

筆跡で分かるよ、だって仲間だったもん

……それに貴女は最後まで私の事を庇ってくれてたんだよね

あの時ビデオテープに青葉は居なかったもんね

……尋問辛くなかった?」

 

 

古鷹は分かっていた

青葉が他の人達と違うことを

佐渡に真実を伝え古鷹を託し

そして、尋問に耐えながら古鷹を売ろうとしなかった

他の誰もが古鷹を捨てることにしたとしても

青葉だけは捨てようとしなかったのを

 

 

「……ごめんね、青葉

私を最後まで庇ってくれてたんだよね

助けようとしてくれてんだよね」

 

 

「……違います、私はそれしか出来なかったんです

古鷹さんを捨てるなんて見捨てるなんて出来ません!

だって貴女は私の恩人なんですよ!」

 

 

「そっか……そうだよね

青葉はそう言う娘だったもんね

ありがとう」

 

 

 

青葉のその言葉に古鷹は再び微笑みを返してくれ青葉は古鷹が戻ってきてくれたと思い込む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが

 

 

「デモ、お前ハそれしかシナカッタヨナ?」

 

 

古鷹は再び青葉の首を持ち上げると片手でフェンスを切り裂き青葉を屋上の外へと出す

 

 

「う……ふる……たか…さん……」

 

 

「アハハ!許シタと思っタ!?

馬鹿ジャないの!?

許すワケないダロう?

オマエタチを私は許サナい!!

絶対ニ!絶対に!!

殺しテヤる!!お前を殺シテ!私ハ前に進む!!」

 

 

古鷹に首だけで支えられ身体を屋上の外に出されており下を見ると恐怖で身体がこおばらせ何とか戻ろうと足掻いていると古鷹が笑う

 

 

「恐い?怖い?そウダよね!!

お前ガ死ネバ私ハ乗り越えラレる!!

オマエタチ居るカラ私は前ニ進めナイんだよ!!」

 

 

古鷹の瞳は真っ赤に染まりその中にある殺意を見ていると青葉は足掻きを辞め古鷹へ笑いかける

 

 

「何が可笑シイ?」

 

 

「……いえ、私が古鷹さんへ出来ることがまだ残ってたんですね

青葉嬉しいです」

 

 

古鷹の殺意を見ながら青葉は涙を溢す

 

 

「私は……ずっと後悔してました…

貴女を救い出せなかった事に……確かに最後まで…私は粘ってました…それでも……実はギリギリだったんです……

貴女を渡せば良いんじゃないかって思ったこともありました……

だから……解放されたとき…少し安心したんです

やっと終わったって

 

でもそれは古鷹さんを捨てた事だって事を後から知り怒りました

それでもそれしか出来なかった……

あの二人見たいに私は貴女を救い出せなかった

動けなかった、見ていることしか出来なかった

二人に嫉妬しました…古鷹さんを助けだし…大元帥に喧嘩を売って…古鷹さんを追撃してきた長門さんを見てることしか出来なかった……

私に出来たのはほんの少しの情報提供と憲兵を呼ぶ事だけでした…

 

古鷹さんの言う通りなんです

私は裏切り者です、情けない貴女の事を思うことしか出来ないどうしようもない娘何です

 

 

ごめんなさい……ごめんなさい…私達が貴女を助けていれば……あの時全てを失ってでも助けていればこうはならなかった

古鷹さんを苦しませることも無かった……

古鷹さんが深海化することも無かった…

ごめんなさい……ごめんなさい…古鷹さん……」

 

 

「……今更……遅インだよ」

 

 

それと同時に古鷹は青葉の首を離し屋上から落とす

古鷹は落ちる青葉を見ているとその顔が怖がってもなく泣いても居なかった事に驚いた

 

 

笑っていた落とされているのに殺されかけているのに

青葉は笑いながら古鷹へ最後の言葉を託す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「古鷹さん……幸せになってください…

あの二人なら貴女を絶対に幸せにしてくれますから

さようなら………前を向いて歩いてください……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

落ちる青葉を見ていると昔を思い出す

自分も同じ様に落ちて死のうとしたことを

そして一年後因縁の相手を突き落とし全てを終わらせようとする

何故か苦しく胸を抑える

だがそれと同時に頭にある人の言葉が過る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それが本当にお前がしたいことなのか?

 

古鷹

 

後悔はないか?仲間を殺して満足か?

 

お前は繰り返すのか?同じことを

 

自分がされたことをまたその娘に』

 

 

その言葉が頭に響くと私は自然と身体を動かしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(アハハ……やっぱりこうなるよね…でも最後に古鷹さんに何か出来たのなら良かったのかな……)

 

 

青葉は古鷹に落とされながらそう思いながら落ちているといきなり誰かに手を掴まれガクンと身体が揺れる

 

 

「…………………え……?」

 

 

突然誰かに手を握られ驚いているとその手を握っている人を見上げると更に驚く

 

 

「古………鷹さん?」

 

 

「……………………」

 

 

深海化している古鷹は脚を壁に突き刺し青葉の手を掴んでいた

そして、その状態から壁を蹴り飛ばすと青葉の手を掴みながら飛び上がると再び屋上へ戻る

 

 

「………私……生きてる……?」

 

 

「………そウダよ、青葉」 

 

 

深海化した古鷹の身体能力も充分可笑しいがそんなことより自分の事を殺そうとした古鷹が何故助けてくれたの意味が分からなかった

 

 

「………どうして…?」

 

 

 

 

 

 





次回

この手を二度と離さない


憎悪に支配されているはずの古鷹は殺そうとした青葉を助け出した
自分を殺すほど憎んでいたはずの古鷹に困惑する
絶望と死の鎖とは別に古鷹を縛り付けていた物とは?


ちょっと古鷹さんが暴走していましたがこれには訳があります
それは少し先に話していきたいと思います!



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