艦隊これくしょん ー誰ガ為ノ戦争カー   作:霧雨鴉

438 / 594
今回も長くなってます!
ごめんなさい!!






一年の時を越えて

「………殺せないよ、やっぱり私には」

 

 

古鷹は震えながら崩れ落ちると深海化していた身体がボロボロと崩れていく

まるで鱗が剥がれ落ちていくかの様に落ちていき空に消えていく

 

 

「殺せないよ!!

憎いよ!青葉達が!!

私を殺そうとした皆が憎い!!

殺したいよ!私を裏切って!自分達はのうのうと生きてる皆が憎いの!!」

 

 

大粒の涙を流しながら古鷹は身体を抑えながら苦しむ

青葉は自分がどれ程軽率であったかを分からせる

自分達が裏切った人がこれほどまでに優しいとは思わなかったから

死ぬ覚悟は出来ていた

それでも

 

 

「何デよ!!何で!私ハコロセナイノ!?

青葉を!コノテデ殺しタイのに出来なイヨ!!」

 

 

でも青葉にはその理由が分かっていた

古鷹がここまで優しくあれたのは

 

 

「どうしてよ!!何で!何で!何で!何で!何で!!!!

 

殺そウトしても貴方ハ私を……助けるの…?

佐渡さん……

辛イヨ!!何デワタシを縛リツケルノ!?」

 

 

佐渡と叢雲が彼女を救いだしたからである

二人の事は聞いていた

古鷹に何をしてきたか

どうやって彼女を助けてきたのか

守ってきたのか

それが今古鷹のストッパーになっていると

彼女を堕ちきらないように優しさと言う鎖で縛り付け青葉を殺さないようにしていたということを

最後まで彼女を守ろうとしていると

 

 

『アイツを先に進めることが出来るのは

 

前に進み、過去を乗り越えさせる事が出来るのは

 

その傷を作った奴等だけなんだよ

 

俺達には出来ないんだよ

 

だから古鷹を救えるのは君だけだ』

 

 

佐渡から言われたことを思い出す

そして自分が出来ることを理解する

 

 

(私しか古鷹さんを前に進めさせることは出来ない

それ以外は佐渡さんがやってくれている

古鷹さんを最後に助け出せって言うのは

『私達が向き合う事』)

 

 

それを理解し青葉は微笑む

 

 

(……凄いな…佐渡提督

何でそこまで出来るんですか

更に興味持っちゃうじゃないですか

任せてください、古鷹さんは必ず私が助けます!!

貴方達がくれたチャンスを必ず物にしてみせます!)

 

 

「………古鷹さん」

 

 

「……ねぇ、青葉

何で、ここに来たの?

分からない、分からないよ

ここに来なかったら私はこうはならなかったんだよ?

こんなに悩まなくて苦しまなかったのにーーーー」

 

 

古鷹が話している最中に青葉は無言で古鷹を抱き締める

ボロボロと崩れているもののまだ身体には深海棲艦の表皮が残っている

 

 

「ごめんなさい古鷹さん

私は貴女を…見捨てました

助けられませんでした、私は佐渡さんに叢雲さんに託してしまった

貴女を助けられるのは私達だけなのに私達は貴女と向き合えてませんでした

ごめんなさい」

 

 

「………離してよ…私は貴女が憎いんだよ

殺そうとしたんだよ…?何回も蹴ったり…傷付けたんだよ……?

私達はもう、戻れないんだよ…?

私は……貴女が…青葉が嫌い」

 

 

確かに古鷹に傷つけられた所は痛い

落とされた事も忘れてない

死にかけた

古鷹にの心の声を聞いた

それでも青葉は

 

 

「……はい分かってます

青葉の事を嫌いでも構いません

憎くても構いません

傷付けても構いません

 

それほどの事を私は貴女にしてきました

何をされようと私は貴女にされても私は構いません」

 

 

「……何で…?青葉は…私が嫌い……何でしょ?」

 

 

古鷹の言葉に青葉は頭を横に振るいそれを否定する

 

 

「いいえ、私は貴女が大好きです

どんな人よりどんな物より大好きです

貴女の事を忘れたことはありません」

 

 

「じゃあ……何で…助けて……くれなかったの?」

 

 

「私は古鷹さんを助ける勇気と覚悟が無かったんです

全てを敵に回し捨てる勇気と覚悟が

あの時、私は見ていることしか出来なかったんです

笑ってください

けなしてください

罵ってください

 

口だけで貴女を助けられなかった哀れな艦娘だったんです

それに加え貴女を佐渡提督に任せ、私は少しは貴女の為になっていると勘違いしてました」

 

 

「……違うよ、青葉のやったことは二人の助けになってたんだよ?」

 

 

「いいえ、私の出来たことは貴女を『救えたと思い込む為に』やってたんです

貴女に向き合うことを恐れ、こうしてあの人の佐渡さんに言われなければ私はずっと貴女を避けてしまっていた

貴女が怒り、私を殴るのも蹴るのも殺そうとするのも無理ありません

結局誰かに背中を押されないと何も出来なかったんです

 

 

ごめんなさい、弱虫で臆病だった私を許してください」

 

 

二人は抱き締めあっていると少しずつ古鷹の深海化が解けていく

髪はゆっくりと栗色に戻り瞳からは怒りと殺意が消え初めていた

 

 

「違うよ……青葉は……」

 

 

「違いません、私はずっと貴女を『思うことしか出来なかった』

思っていれば良いと思いました

でもあの人は、佐渡さんは私にチャンスをくれた

他の誰でもない私に

 

 

貴女を救う最後のチャンスを」

 

 

青葉は力強く古鷹を抱き締めながら涙を溢していた

 

 

「ごめんなさい……ごめんなさい…古鷹さん…

私達が貴女を捨てなければ…貴女を助けていれば…死なせようとしなければ貴女を苦しませることも無かったのに……

貴女にしてもらったことは忘れません

いつも優しくて

誰よりも気が利いていて

頼りになって

強くて

命を掛けてでも私達を守っていてくれて

 

 

ありがとう……古鷹さん……苦しんでいても…生きていてくれて…ありがとう…

貴女が待っていてくれて……ありがとう

死ななくて良かった……

ごめんなさい……一年も貴女を待たせてしまって……ごめんなさい……

 

 

ありがとう…私達を助けてくれて

大好きですよ、古鷹さん

生きていてくれて…本当ありがとう

 

 

今度は私も貴女を守ります

命を掛けて絶対に」

 

 

青葉の言葉が古鷹の心に染み渡る

一年前藤谷と海軍によって破壊された心

絶望と死に囚われずっと死ぬことを願っていた心

今まで佐渡と叢雲に救われ守られていた心

 

 

そして今、青葉が命を掛けて古鷹を助けようとした

深海化してもどんなに嫌いと言われても

青葉は古鷹を思い続け向き合ってくれた

 

 

それが壊されていた古鷹の本当心が少しずつ治っていく

 

 

「……嘘だよね……青葉は私を………捨てたんだよ……ね?」

 

 

「はい!確かに貴女を捨てました!

でも青葉はもうそんなことしません!!

もう迷いません!覚悟を決めました!

どんな人からも提督からも貴女を守って見せます!!

絶対に!貴女を後悔させません!

誓います!古鷹さんは私が守ります!!!」

 

 

古鷹は震えながら青葉を抱き締めようとするがやはり躊躇ってしまう

 

 

「嘘だ……嘘だ……青葉は……」

 

 

「今は信じてくれなくても構いません!!

いつか貴女に!古鷹さんに信じてもらえるように頑張ります!

だから!私にチャンスをください!

古鷹さん!!

 

 

貴女を救うチャンスをください!!」

 

 

その言葉を待っていたかの様に古鷹は涙を少しずつ溢し青葉を突き放す

涙を溢しながら青葉を見ると自分の手を見る

深海化は解けかけているものの半分はまだ深海棲艦みたいになっている

 

 

「私は……化け物だよ?」

 

 

「関係ありません!!古鷹さんは古鷹さんです!!

私の大好きな!大切な人なんです!!」

 

 

「……嫌いだよ青葉が私は」

 

 

「それでも構いません!私は貴女が大好きです!」

 

 

「………また殺そうとするよ?」

 

 

「構いません!もし貴女が殺したいなら殺してください!!

貴女がそうしたいなら私は構いません!

こんな命を貴女に差し上げます!!」

 

 

「………………青葉………大嫌い」

 

 

「私は大好きです!

だから、一緒に…共に前に進みましょう!

古鷹さん!

過去は消えません!それでも未来は作っていけます!

青葉は古鷹さんが居る未来に行きたいです!!」

 

 

青葉は離れた古鷹に手を差し出す

その手を見ながら古鷹は震えながら手を取る

取った手をゆっくりと握り締め古鷹は涙を更に溢す

 

 

「………もう離さない?この手を?」

 

 

「離しません!二度と!絶対に!!

私は!青葉は貴女を守ります!

一緒に歩いてください!古鷹さん!!」

 

 

手を握り返され古鷹は実感する

あの時佐渡に取られた手もこうだった

優しくて強く握り締め

絶対に離さないように古鷹を包み込む

 

だからこそ古鷹は

 

 

「…………青葉ぁ……信じる……よ…」

 

 

予想外の言葉に青葉は驚く

信じてもらえないと思ってたから

手を取ってくれないと思ってたから

それでも古鷹は手を取ってくれた

古鷹を見ると大粒の涙を溢しながら深海化が完全に解けていた

そして、おもむろに青葉に抱き付く

 

 

「ごめんね!ごめんね!!青葉ぁ!

痛かったよね!苦しかったよね!ごめんね!

ごめんね!!」

 

 

「古……鷹…さん?」

 

 

「私ね知ってたの青葉がずっと私を気にしてくれていたのを!!

それでも許せなかったの!私を捨てたのを!助けたのに!命をかけて助けたのに私を助けてくれなかったのが!!

辛かったよ!苦しかったよ!!

皆が私の事を嫌いになったと思ったの!!

憎いよ!憎くてて仕方ないよ!

 

でもね……貴女を殺せないのは本当だよ…?

だって仲間だもん!大切で忘れられないもん!!

皆が!楽しかった日々が忘れらないよ!!」

 

 

青葉は古鷹の壊されていた心の声を聞く

忘れてなんかいなかった

古鷹の事を確かに思っていた青葉だったが古鷹も青葉達の事を思い続けたことを

 

 

「忘れらないよ!!二人に!皆に優しくしてもらって!楽しく鎮守府で生活していても忘れることなんて出来ないよ!!!

 

 

だって!皆!皆!私の大切な仲間なんだもん!!

どんなに裏切られても嫌われても私は大好きなんだもん!!

 

どんなことをされても殺せるわけないよ!!

大切で大好きな人達を!!」 

 

 

「あ………あぁ……」

 

 

古鷹は青葉達にどんなことをされても嫌っていなかった

優しいままの古鷹であった

それでも心はその思いとは別に彼女を狂わせていた

 

 

だが今青葉が向き合った事により古鷹の心は再び元に戻った

 

 

「さっきはごめんなさい!

青葉を殴って!蹴って!ボロボロにして!大嫌いって言ってごめんなさい……ごめんなさい!!

 

大好きだよ…青葉…

いつも皆を心配して優しくて思いやりのある青葉が大好きだよ」

 

 

「う……うぅ…古鷹ざぁぁぁぁん!!」

 

 

青葉は報われたと思った

佐渡に背中を押され

覚悟を決めて古鷹を救うと決めた

 

 

そして今古鷹の心は治り

救われた

 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!

見捨ててごめんなさい!!古鷹さんを助けられなくてごめんなさい!!

青葉が悪いんです!!青葉があの時止められなかったから!!」

 

 

 

「違うよ青葉、あんな状況じゃ誰も助けられないよ…?

それよりもありがとう…青葉…私に向き合ってくれて

佐渡さんに真実を伝えてくれて

私の事を思ってくれていて」

 

 

「うわぁぁぁぁん!!古鷹さん!古鷹さぁぁん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一年前、佐渡は古鷹を救いだした

そして死の鎖を壊し優しさと言う鎖で縛り付け

今日、彼女の過去である絶望の鎖を完全に破壊した

青葉と言う協力者と共に

 

 

「古鷹さぁぁん!!ごめんなさい!ごめんなさい!!」

 

 

「青葉…ごめんね……ありがとう…ありがとう!」

 

 

 

二人の泣き声と反省の言葉と感謝の言葉は交互に言い合いながら時は流れていく

一年、長く短い期間を埋めるかの様に二人は抱き締めあいながら自分達がようやく前に進めたことを理解する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、手のかかる重巡だったわね」

 

 

「かぁー何言ってんだお前が助けたいって言った艦娘だろうが」

 

 

「えぇ……ありがとう佐渡」

 

 

「はぁ?俺は何もしてねぇよ

二人が和解したのは二人が前を進む事を選んだからだ」

 

 

「……でも」

 

 

「……あぁ」

 

 

「「ミッションコンプリート(任務完了)」」

 

 

 

 

二人は屋上の扉に背を預けながら外の様子を聞いておりお互いの拳を合わせる

 

 

「んで、まぁ古鷹と青葉ちゃんが泣くのは良いんだ

……何でお前ら泣いてるの?」

 

 

「う…ひっぐ……ふるたかぁ……」

 

 

「良かったね……古鷹さん…良かったね…」

 

 

「過去と向き合い……前を進むか…良かったな…古鷹…うぅ…」

 

 

「そうですよ皆さん古鷹さん達は泣いていいですが私達は駄目ですよ…」

 

 

「と、言いながら大井も泣いてるじゃない?」

 

 

「ないでません!!」

 

 

「お前らなぁ……ハンカチ一つしか無いから各々で頼むぞ?」

 

 

 

いつの間にか屋上に金剛、大井、イムヤ、グラーフ、長門、エアが集まっており古鷹の事を見守っていた

 

 

「……佐渡提督、貴方はどこまでやるんだ?

…古鷹の過去を向き合わせるなんて……」

 

 

「どこまでも…かな、俺は出来ることをやるだけだ」

 

 

「…そうか…流石だな…古鷹…グスン」

 

 

ここに居るエアと佐渡と叢雲以外は全員泣いており佐渡と叢雲は溜め息をつく

 

 

「にしてもやるじゃない?佐渡

あの時の艦娘が今回の鍵だったわけね」

 

 

「まぁな、助かったよエア」

 

 

「あら?古鷹の為ならいくらでもやってやるわよ?

……私は艦娘の味方だからね!」

 

 

「全く、呆れたわ

……でも良い鎮守府になったわね」

 

 

「そうだなぁ……さぁてと後はこれだけかなぁ?」

 

 

佐渡は一枚の紙を取り出すとそれを見ようと全員がその紙へ視線が集中する

 

 

「何デース……か…それ?」

 

 

「…あれ?司令官……それ!?」

 

 

「あぁ、これがその仕上げだ

叢雲……良いな?」

 

 

「えぇ、始めから決めてたもんね

分かってるわよ?」

 

 

その紙を見ながら佐渡は微笑みながら叢雲の頭を撫でる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さってと、じゃあ古鷹の進むべき道を示そうか?」

 

 

 

 

 

 

 




次回

乗り越えた先へ


青葉と向き合い過去と決着を付けた古鷹
もう彼女を縛るものも苦しめるものも無い
そして佐渡は古鷹にあるものを渡す

台風遅いですねぇ……
早くどっかいってーな……


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。