艦隊これくしょん ー誰ガ為ノ戦争カー   作:霧雨鴉

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まず一言
古鷹提督の皆さんごめんなさい(土下座)





冬空の下 時を経て貴方を

古鷹は叢雲に背中を押され屋上へ向かい扉の前に立つと大きく深呼吸をし目を閉じる

 

 

(…うん…大丈夫…!私だって!!)

 

 

そしてゆっくりと屋上の扉をゆっくりと開けると風が吹き込み髪を撫でる目の前に一人屋上から海を見ている背中が見える

いつも見てきた、ずっと追いかけて見馴れた背中

 

 

その人影は入ってきた古鷹に気付くと振り返る

 

 

「ん?古鷹か、どうしたこんな時間に?」

 

 

「……貴方と話がしたいんです

提督……いえ、佐渡さん」

 

 

佐渡は首を傾げているとゆっくりと古鷹はその隣に行き佐渡と共に海を見下ろす

 

 

「…綺麗ですね、夜の海は」

 

 

「……あぁ、夜の海は月明かりに照らされて綺麗なんだよな

時々見に来るんだよ」

 

 

「……考え事ですか?」

 

 

「……ま、そんなところだ」

 

 

二人は静かになった鎮守府の屋上で冬空の下記憶に浸っていた

 

 

「…一年か、君を助けて」

 

 

「……はい、貴方に助けられて一年が立ちましたね」

 

 

「あんなに死にたいと願い俺を嫌い信じてなかった艦娘が今では俺の隣で海を眺めているとは一年前は思っても無かったな!」

 

 

「はい…私も思ってもませんでした

全てに裏切られ、捨てられ、絶望していたあの時

貴方に救われ、手を取られ、希望を貰い、一年後にはそれを奪われた全て取り返して…………

そんな…そんなこと……思ってもいませんでした……本当に……本当に……」

 

 

様子が少し可笑しい古鷹を気に掛け振り向くと古鷹が少し涙目になっていることに気付き頭を撫でる

 

 

「……すまん遅くなって」

 

 

「遅くなんて…無いですよ……貴方は約束を守ってくれました

嬉しいです

本当に感謝してもしきれません」

 

 

「………なぁ、古鷹

本当に良いのか?うちで」

 

 

「…どうしてそんなこと言うんですか?」

 

 

「いやー……ほら古鷹の実力なら他の鎮守府でも活躍出来るしさ?」

 

 

「…そうですね、今の私ならどこにいっても平気だと思います

何せ貴方達二人に鍛えられましたからね

 

でもそうじゃないですよね、佐渡さんが私を飛ばそうとしている理由って?」

 

 

古鷹が微笑みながら佐渡に言うと乾いた笑いをしながら頬を掻く

 

 

「……聞いても笑わない?」

 

 

「内容によります!」

 

 

「じゃあ言わない~」

 

 

「ふふ、嘘ですよ

笑いません」

 

 

「本当に?」

 

 

「嘘は嫌いですから

笑いませんよ」

 

 

佐渡は周りに誰も居ないことを確認し屋上の扉に鍵を掛けると古鷹の所に戻ると深く息を吐き

古鷹から顔を反らす

 

 

「あー…えっとだな……その……な?」

 

 

 

「…珍しいですね?佐渡さんが歯切れわるいなんて?

早く教えてくださいよ!」

 

 

「まぁ、その、だな?

もう、古鷹にカッコつけられないなぁって思ってな?」

 

 

「……………………………………へ?」

 

 

「い、嫌さ?古鷹がここに来てから俺なりに何とかしてきたつもりなんだよ?

そのせいかは分からないけどさ

どうしても君が居ると少しはかっこつけたくなっちゃうんだよね……

俺も男何だなぁとは思うし馬鹿だとも思うよ?

ここを出ていって他の鎮守府を見て欲しいってのもあるけどそれよりも古鷹にずっとカッコ付けてきたせいかさこれ以上醜態を晒したくないなぁと思ってね…ハハハ」

 

 

その意外すぎる発言に古鷹は呆然としながら聞いていると佐渡は恥ずかしいのか少し顔を赤らめそっぽを向く

 

 

「わ、悪かったな!!個人的な理由で!!

でも別に良いんだよ?ここにいても!」

 

 

「……えっと、佐渡さん?

私がここに居ると自分達の事に巻き込みたくないとか……そう言うのもあるんですよね?」

 

 

「ま、まぁそれもある

だがまぁ、私情の方が大きいのも確かだ……

どうせーーーー」

 

 

と佐渡が言いかけた瞬間古鷹が佐渡の胸に飛び込み驚きの余り声を失う

 

 

「……えっと、古鷹?どうした?寒かったか?」

 

 

「……………馬鹿」

 

 

「うん?」

 

 

「馬鹿……馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「ぐぼぉ!?」

 

 

古鷹は抱き付いたまま佐渡の腹部を殴り突然の痛みに変な声を出しながら倒れそうになるのだが古鷹ががっしり掴んでおり逃げられない

 

 

「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!

古鷹さん辞めて!?

めっちゃ痛い!めっちゃ痛いからぁ!」

 

 

「馬鹿……馬鹿ぁ……」

 

 

次第に殴る力が弱くなっていくと共に古鷹は佐渡の胸の中で泣いており頭を優しく撫でる

 

 

「……すまん、変な理由で」

 

 

「本当……ですよ…

言っておきますよ、佐渡さん

貴方カッコいいですよ、ずっとずっと…変わりませんよ……どんな事になってもどんなに酷くなっても…

佐渡さんはカッコいいです……」

 

 

「そ、そうか?

でも俺は古鷹に何も……」

 

 

すると古鷹は顔を上げ睨み付けるように強い眼差しで佐渡を見上げると秘めていた想いをぶつける

 

 

「ふざけないでください!!貴方が私になにもしてない!?

意味が分かりません!

貴方は私を地獄から絶望から助けてくれた!!

死を願い!生きることを諦め!何もかもを捨てようとした私の手を取ってくれた!!

それだけじゃない!

貴方は私と約束してくれた!幸せにするって!!

現にその約束を守ってくれている

私は幸せです!皆と笑い合い!平和で!私が失っていたものを貴方は私にくれる!!

しかも何ですか!?私の罪を消すって!!

私の心を読んでるんですか!?

青葉と仲直り出来たのは貴方のお陰なんです!!

青葉を殺さなかったのは貴方の言葉なんです!!

ずっと……ずっとずっとずっと!!

貴方は私を助けてくれている!!私こそ!この鎮守府を出ていった方が良いと思いました!!

だって貴方にこれ以上迷惑はかけられない!!」

 

 

「古鷹!俺はお前の事を迷惑だなんて思わない!

むしろ居て欲しいとーーー」

 

 

「なら!!二度と私を他の鎮守に異動させようなんて思わないでください!しないでください!!

私はここに居たい!!皆と居たいの!!

私の居場所はここしかない!どこにもないの!!

世界中探して私の居場所は!私が居たい場所は……

貴方の側だけなんです!!」

 

 

古鷹はそこまで言うと泣き崩れてしまい佐渡も同じ様に座り込み古鷹の頭を撫でる

 

 

「……私は皆だけを……私は貴方だけを信じてます

この世界で信じられるのはそれだけです

貴方の為ならば私はこの命惜しくありません

捨てられた命を拾ってくれた貴方に差し上げます

これは私の意思です、揺るぎません」

 

 

「…そいつは駄目だ古鷹

お前の命はお前のだ

俺に、俺達に何かに使うな」

 

 

佐渡は古鷹の顔を上げさせると涙でぐしゃぐしゃになっている顔をハンカチで拭きながら微笑む

 

 

「……俺達は確かに君を拾った

でもな、俺が望むことは君達が命を捨てずこの戦争を終わらせ生きていって欲しいんだ

皆で手を取り合って楽しく、幸せに生きて欲しい

俺が出来ることはそれだけだから

だから命を差し出すとかは辞めてくれ

その命は俺達が拾い君に返しただけなんだから」

 

 

佐渡の言葉に古鷹は更に涙を流すと再び顔を胸に埋めると服を握り締める

 

 

「何ですか……じゃあ私は……貴方に何を返せば良いんですか……

貰ってばかりで……助けて貰ってばかりで……

貴方に何も返せてない……

悔しいよぉ……私は何も貴方に返せない自分が………」

 

 

「何言ってるんだ?

古鷹は充分俺達に返してくれてるよ」

 

 

「……ぇ?」

 

 

古鷹は顔を上げると微笑みながら佐渡は頭を撫でる

 

 

「いつも俺達の方が君に頼りっきりだ

家事に戦闘に料理に皆の事

今の今まで古鷹が居なかったら上手く行かなかった

古鷹が居てくれたからこそ上手く行ってるんだよ?

それに俺は古鷹が生きてくれているだけでも俺達がやってきたことに間違いは無かったと理解させてくれる

 

だから何も古鷹は特段何もしなくて良いんだよ?

 

 

生きてくれてありがとう

俺の言葉を信じてくれてありがとう

俺に付いてきてくれてありがとう

古鷹」

 

 

佐渡がニカッと笑うと古鷹は更に泣き出しながら服を強く強く握り締める

 

 

「どこが……ですか…貴方は世界一カッコいいですよ…

私の英雄……佐渡さん…」

 

 

「はは、そいつは良かったよ」

 

 

しばらく古鷹は佐渡の胸で泣き

収まった頃には外も少しずつ明るくなってきていた

二人は水平線を眺めていると古鷹が不意に佐渡へ声をかける

 

 

「……佐渡さん」

 

 

「何だ?」

 

 

「手を……繋いでも良いですか?」

 

 

「……おう」

 

 

佐渡が手を出すと古鷹はゆっくりとその手を握り強く強く握り締める

 

 

「……この手が私を死から救ってくれた

貴方の言葉が私を絶望から救ってくれた

貴方の全てが私を救ってくれた

 

 

…この手を離さないでくれますか?」

 

 

「おう、約束だからな

絶体に離さないよ」

 

 

古鷹と手を繋ぎながら一年前を思い出す

あの時とは違い強く自らの手を掴んでくれているこの手を見ると佐渡は自分の選択が間違いでは無かったと確信する

 

 

「……佐渡さん、私は貴方が好きです」

 

 

「おう………ってはあ!?」

 

 

いきなりの告白に佐渡は驚きながら声荒げると古鷹の顔が真っ赤に染まっていることが分かるだが古鷹は微笑みながらその言葉を続ける

 

 

「貴方が好きです

優しくて強くて、料理が上手くて

誰よりも私達の事を考えてくれている貴方が大好きです

私を救ってくれて過去と向き合わせてくれて

ありがとうございます

貴方を世界一愛してますよ、佐渡さん」

 

 

「え、あ、えっと、ちょっと待ってな?

えっと?」

 

 

流石に突然の告白に驚き焦っていると古鷹が再び佐渡の胸に飛び込むと背中に手を回しながら抱き締める

 

 

「返事は良いんです、いつか……いつか聞かせてください

今は戦争中、話す気は無かったんですけど

どうしても抑えられませんでしたごめんなさい

私はいつまでも待ってます

断ってくれても構いません

でも受けてくれたら嬉しいです」

 

 

「古鷹………」

 

 

すると古鷹は佐渡から離れ少し強く押しながら顔を隠す

 

 

「じゃ、じゃあ!私はもう寝ますね!!

お休みなさい!佐渡さん!!」

 

 

「お、おう!お休み!!」

 

 

少し早歩きをしながら古鷹は歩いていくと屋上の扉を開けると一度振り返り佐渡へ叫ぶ

 

 

「わ、私!待ってますからね!佐渡さん!!

この想いだけは!誰にも負けるつもりはありませんから!!」

 

 

「へぁ!?

お、おう!!」

 

 

その言葉と共に古鷹は強く扉を閉めると早足で屋上からの階段を下りていき残された佐渡は手すりに寄りかかるとその場に座り込む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………おいおい……告白何て初めて…受けたぞ…おい

…どうすりゃ良いんだ……クソ、流石に分からねぇよ……」

 

 

座り込んでいた佐渡の顔は真っ赤に染まっており明日から古鷹とまともに顔を合わせられるか不安に駆られていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古鷹は一人走り周りに誰も居ないことを確認すると顔を真っ赤にしながらその場に座り込んでしまいながら顔を手でパタパタと冷やす

(言っちゃった言っちゃった言っちゃった言っちゃった言っちゃった言っちゃった言っちゃったぁぁぁぁぁ!!

提督に言っちゃったよぉ!!

私!明日から提督の顔見れるかなぁ!?

 

うぅ……恥ずかしいし顔が熱いよぉ!!

後悔は無いけど……ううぅぅぅぅ!!)

 

 

お互い明日からの鎮守府生活に不安を抱えながらも朝は来る

 

 

 

 

 




次回

佐世保鎮守府

佐渡へ想いを告げ古鷹は決意する
それ青葉以外の者達との決着をつけること
佐渡と叢雲と青葉を引き連れ自らの過去に
そして囚われている他の者達を助けようとする
それは古鷹が佐渡にしてもらったことを自分がするために


いやー、古鷹さんの可愛さと健気さを書けなかった気しかしないですがごめんなさい!駄文でごめんなさい!

古鷹編の重要人物、藤谷淳一との対峙です
古鷹は何を思い何を告げるのか…
また彼女は暴走するのか……
お楽しみに!



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