「古鷹さん、本当に来るんですか!?」
「うん、青葉案内よろしくね?」
古鷹と青葉が仲直りし佐渡達はある場所に向かっていた
それは古鷹にとっては因縁の場所でありもっとも行きたくない場所
「古鷹、無理してないか?」
「そうよ、別にここに来なくても貴女は……」
「良いの!私が行きたいから何だから気にしないで!
それに……向き合いたいの
あの人に」
叢雲と佐渡が心配する中四人は歩いていくのだが佐渡と古鷹は顔を合わせると突然お互い顔を反らしてしまう
「……ほーう?古鷹さーん?何かありましたねぇ!?」
「え!?な、何が!?」
「佐渡……あんた古鷹に何したの!」
「ま、待て!俺は何もしてない!」
その様子を怪しんだ青葉と叢雲に茶化されながら四人が向かっていくと大きな門が見えてきておりその前には二人の憲兵が厳重に警備していた
「そこで止まれ!」
「お前達!この先は立ち入り……っと青葉さん
お疲れ様です!」
二人の憲兵は佐渡達を見て警戒するが青葉を見た瞬間に敬礼し青葉も敬礼を返す
「お疲れ様です、憲兵さん」
「あの、青葉さんこちらは?」
「あぁ、えっとこちら小笠原鎮守府提督 佐渡 満さん
こっちが小笠原鎮守府所属 『雷撃姫』叢雲さん
そして小笠原鎮守府所属 古鷹さんです」
「「これは!失礼致しました!!」」
憲兵は急いで四人の行く手を開けるのだが
「……この先はつい先日まで大本営の監査が入っておりました故にまだ憲兵が居ますが貴殿方はお気に為さらずに」
「佐渡提督、お気をつけください
この先は貴方に怒りや妬みと言う感情を持っている艦娘も居ます
お気をつけを」
「ご忠告ありがとうございます」
「大丈夫よ、なんかあったら私がやるわ」
叢雲は微笑みながら言うとその横を四人は通ろうとするのだが何故か二人の憲兵が叢雲の行く手を塞ぐ
「待ってください叢雲さん」
「申し訳ありません叢雲さん」
「……何よ、私だけ駄目なのかしら?」
それに驚いた佐渡達は構えるのだが
「「握手してください!!」」
「「「「……はい?」」」」
いきなりの事に驚いた四人は唖然としていると二人の憲兵が土下座をしながら頼み込んでくる
「憲兵の身でありながらこんなことを頼むのは駄目だと分かっているんです!!
ですがお願いします!!」
「俺達!貴女のファン何です!!
古鷹さんもですがあの大演習での戦いお見事でした!!
駆逐艦でありながらあの戦艦長門に一歩も引かずに戦う姿は我々憲兵にも心打たれる物がありました!!
御願いします!どうかどうか握手をしていただきたく!!」
「ちょ、ちょっと辞めてよ!
握手するから!お願いだからそう言うのは辞めて!!」
突然の事に叢雲は驚き慌てて二人の土下座を辞めさせようとしていると佐渡達は顔を見合わせ笑う
「にしてもお前のファンだとはな」
「流石に驚いたわ……私特になにもしてないのに……」
先程絡まれていた憲兵達と握手やら写真やらを撮られ若干叢雲はぐったりとしながら目的地に向かっていた
「ま、そんなこんなしてたら着いたみたいだな」
「久しぶりにここに来ましたね」
佐渡達はそう言うと目の前にある鎮守府を見上げる
「ここが、古鷹の『元所属していた鎮守府』ね」
佐世保鎮守府
現藤谷淳一が指揮する鎮守府にして元古鷹が所属していた鎮守府
鎮守府内にはまだ幾人かの憲兵と事情聴取を受けている艦娘がおり古鷹は一人歩き始める
「古鷹……」
「大丈夫ですよ、提督
待っててください決着をつけてきますね」
古鷹は微笑みながら歩いていくとその後ろを青葉が付いていこうとすると佐渡へお辞儀をする
そして古鷹の後ろを付いていく
「……大丈夫…なのか古鷹」
「ばーか、あんたが信じなくてどうするのよ
信じましょ古鷹を」
青葉と古鷹はゆっくりとした足取りで佐世保鎮守府を歩いていく
途中何人かとすれ違うがそのすれ違う様に全員が古鷹に振り返るが青葉が睨みを効かせるとそっぽを向いてしまう
「青葉、大丈夫だから」
「駄目です!もし古鷹さんに何かあったら困るんですから!!」
「もう……相変わらず心配性なんだから……」
古鷹と青葉が歩いていると後ろから誰か二人が走ってきておりそれに気付くと振り返る
「古鷹!!」
「古鷹さん!!」
「……久しぶりだね、加古、衣笠」
走ってきたのは衣笠と加古であった
他の艦娘から話を聞いたからであるか分からないが汗を掻きながら全速力で走ってきた様だった
「やっぱり……古鷹だよな!戻ってーー」
「加古さんそれ以上古鷹さんに近寄らないでください!!」
加古が古鷹に近寄ろうとするがそれを青葉が睨み付けながら阻止すると衣笠が詰め寄ろうとする
「な、何でよ青葉!?
だって古鷹さんは!!」
「うん、ごめんね
後でまた話はするから待っててね二人とも」
古鷹は先に歩きだそうとするとその後ろを加古が着いていこうとする
「待ってくれ古鷹ーーー」
「近寄るな、古鷹さんには手を出させない」
青葉が先程より強く睨み付けるとそれに加古は萎縮してしまい青葉はゆっくりと下がり古鷹の後ろを付いていく
「こら、青葉
駄目だよ?二人に酷いことしちゃ」
「で、でも古鷹さんを守らないと……」
「だからってやりすぎは駄目だよ?」
「……はーい…」
古鷹に怒られた青葉がシュンとしていると頭を優しく撫でる
「でも、ありがとう
二人から守ってくれて」
「!…はい!青葉にお任せです!」
撫でられた青葉は笑顔を取り戻し再び二人は藤谷の居る執務室に向かう
久しぶりの鎮守府
ずっと私が生活してきた場所
そして、皆に裏切られ来れなくなった場所
今までなら来れなかった
行こうともしなかった
行けば全てを壊しそうだったから
今も私の中に居る『ソレ』は鳴動し訴えかける
『壊セ裏切ラレタ物全テ』と
それでも今は大丈夫
佐渡さんが、叢雲が、皆が私の背中を押してくれる
だから私は
古鷹と青葉は藤谷が居る執務室に着くと中から女の子の声が二つと藤谷の声が聞こえると古鷹の心臓は高鳴るが深く息を吐いて落ち着く
(大丈夫……私には…二人が付いてる
皆が…青葉が居る
佐渡さん………貴方に貰った勇気を使わせてもらいます)
落ち着くと古鷹はゆっくりと執務室の扉を叩く
連絡は取っていない
だからこそ誰がノックしているから中の三人は分からない
『あぁ!すまん少し待ってくれ
二人ともちょっと待っててな
……どうぞ』
「失礼します」
古鷹は扉を開けると一年前と見馴れた光景
小笠原鎮守府より大きな執務室
そして真ん中の椅子に座りながら不知火と五月雨に板挟みにされ頭を抱えている藤谷
「あぁ、すまないまた……せ…………」
執務室に入ってきた人物を見るなり藤谷は持っていた珈琲を執務室の机に落とす
白い資料に黒く染み渡って行くが藤谷はそんなことより入ってきた人物に釘付けになる
「司令!何をしているんですか!?」
「そうですよ!提督一体どうし………………ぇ………」
入ってきた人物を見るや否や五月雨も持っていた資料を床にばら蒔く
口を押さえ驚いていると後ろに後退りをする
「突然、申し訳ありません藤谷提督
下手に連絡をすると逃げるかもしれないと思いましたのでご連絡無しで来させて頂きました
お久しぶりです、五月雨さん不知火さん」
その声を聞いた瞬間不知火も持っていたタオルを落とし勢いよく振り返ると古鷹に視線が釘付けになりながら驚く
「……貴女…………どうして……」
三人が驚いている中青葉は睨みを効かせていると古鷹が微笑む
「決着を付けに来ました
藤谷さん」
終わらせよう
私の過去に
貴方の過去に
縛り付けているそれを壊しに来ましたよ
貴方の為に
私の為に
貴方を助けに来ました
藤谷さん
今、恩を返します
次回
進むべき道を貴方に
古鷹は立ち向かう過去に自らを壊した者達に
誰にも手を取られず絶望し失った
それでも古鷹の手を取った者達が居た
その者たちに胸を張って行けるように
藤谷に立ち向かう
古鷹編実質ラストです!
でもあれですよ?藤谷を殺すとかは無いですからね?
そして、エアが何故彼を生かし追い詰めなかったかも分かります