艦隊これくしょん ー誰ガ為ノ戦争カー   作:霧雨鴉

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晴れやかなる明日へ

佐世保鎮守府では一人の犠牲者が出ていた

その一人はその鎮守府では居なくてはいけない一人だった

だからこそ居なくなった鎮守府では活気が減り

信頼と信用も無くなっていた

それはその一人が『繋ぎ』の役割を成していた

 

 

自分達がその一人を裏切ったとしても

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「古……………鷹………」

 

 

突然現れたその裏切り捨てた艦娘

古鷹が藤谷達の鎮守府に現れた

それに驚き藤谷は立ち上がると椅子が倒れ同時に五月雨が腰を抜かす

 

 

「……古鷹さん………夢…?」

 

 

「もう、五月雨さん

資料は落としちゃダメですよ?」

 

 

古鷹は五月雨に近付くと呆然としている資料を拾うと手渡すと微笑み頭を撫で手を差し出す

 

 

「大丈夫ですか五月雨さん?」

 

 

「は、はい……」

 

 

「不知火さん、どうかされましたか?

と言うより資料!提督!何してるんですか!?」

 

 

微笑みながらテキパキとした動きで汚れている机を綺麗にし資料を片付けていくと再び藤谷の前に立つ

 

 

「全く、皆さん

確かに何も言わずに来ましたが驚きすぎです

もう少し気を付けてください

特に提督!貴方は前からですがーーーー」

 

 

何故か古鷹は藤谷に説教を始めておりその姿を見た青葉は完全に警戒を解いてしまい説教を始めた古鷹の肩を叩く

 

 

「何!青葉!今説教中だよ!」

 

 

「いや、その古鷹さん?

話をしに来たんじゃないですか?」

 

 

「…………あっ!ごめん青葉ありがとう!

お、おほん!」

 

 

古鷹は昔の癖を出してしまうがそんな姿を見て藤谷達は呆然としていた

 

 

「ごめんなさい、二人とも

少し提督とお話をしたいのでよろしいですか?」

 

 

「は、はい!古鷹さん!」

 

 

五月雨は古鷹に言われた通り出ていこうとするのだが

 

 

「……出来ません、私は…」

 

 

「いや、いい不知火出てくれないか?」

 

 

「ですが!」

 

 

「良いんだ、すまない」

 

 

 

不知火が反抗したのだがすぐに藤谷が命令を出し不知火は渋々青葉と共に三人は執務室を出ていく

しばらくの沈黙が続く中古鷹は微笑みながら藤谷に声をかける

 

 

「お久しぶりですね、提督」

 

 

「……あぁ、一年振りか

………なぁ古鷹、君は」

 

 

「ここには戻りませんよ

私には私の居場所があります」

 

 

「…あの男と艦娘か?」  

 

 

「はい、私を助けてくれた二人です」

 

 

藤谷は拳を握り締めると悔しそうに歯を食い縛る

 

 

「…なぁあの二人はそんなになのか?

君をあの鎮守府に縛り付けて…」

 

 

「……実は私小笠原鎮守府を追い出されそうになったんです」

 

 

「…………え、何でだ!?」

 

 

その衝撃的な事実に立ち上がり驚くと古鷹は執務室の窓から空を見ながら話を続ける

 

 

「……あの二人は私が過去に向き合い前に向け歩きだしたなら私を他の鎮守府に飛ばす予定だったらしいんです

元々、私はこの鎮守府所属で無理矢理連れてきたんだからって言う理由で」

 

 

「だったら!!」

 

 

「それでも私はここに戻りませんし、他の鎮守府に行くことはありません

それに私があそこを離れることはありません」

 

 

空を見ていると一羽の鳥が木々から飛び上がりそれを見ると古鷹は目を瞑りながら胸を押さえる

 

 

「…私はあの人達に救われました

貴方達に見捨てられ裏切られ

絶望し、全てを諦めていた私にあの二人は希望をくれた

生きていて欲しいと約束してくれた

それだけでも嬉しいのにあの二人は最後まで私の事を大切にしてくれました

その恩を返したい、そして共に生きていきたい

そう思うんです

 

…初めてでした、私が生きてきてあんなに優しくされ大切にし思ってくれる人達に出会ったのは

だから私はあの二人を裏切らない

こんな罪を着せられ拾っても特がない重巡を二人は拾ってくれた

それはこれから先も変わらない真実

私は小笠原で生きていきます」

 

 

古鷹の思いを聞いていた藤谷であったが悔しさなのか怒りなのか分からないが拳を机に叩き付ける

 

 

「嘘だ!あんな奴等が君を手放す訳がない!!

あんな!あんな野蛮な奴等が!!」

 

 

「……どうしてですか?」

 

 

「だってそうだろ!?あいつらは俺から君を奪い取り勝手に育て!その結果君は実力を得た!!

それだけには飽きたらず他の鎮守府からも艦娘を奪い育て上げている!!

そして、大演習会でその実力を見せ付け自慢している!!

君は騙されているんだ!!」

 

 

藤谷は入り交じった感情に押し潰されそうになるが静かに古鷹が告げる

 

 

「でしたら提督、お聞きします」

 

 

「……何だ?」

 

 

「貴方は全てを捨てることが出来ますか?」

 

 

「……は?どういうことだ?」

 

 

真っ直ぐ藤谷を捉えながら古鷹は話を続ける

それは自らが経験し小笠原で見てきた物

 

 

「小笠原鎮守府の艦娘は皆問題を抱えています

 

一人は全てに裏切られ捨てられた者

 

一人は友を助けるため海軍に楯突いた者

 

一人は自分の意思とは関係なく周りを不幸にする者

 

一人は満足に食事も出来ずに苦しむ者

 

一人は海軍の闇に触れ物として扱われた物

 

一人は怨念に囚われている者

 

一人は自らの罪を理解できず戦う事しか出来なかった者

 

 

貴方はこの人達を救えますか?

助けることが出来ますか?

手を……差し出すことが出来ますか?」

 

 

「……出来るさ」

 

 

「では、どうして私を助けてくれなかったんですか?」

 

 

その言葉にハッと思い出すと古鷹を見上げる

古鷹は怒ってもおらず微笑みながら続ける

 

 

「あの二人は他の誰とも違います

 

命を捨てようとした者に手を差し出し持っている物全てを犠牲にし助けだしました

 

友を助けた理由を見つけ出しそれを海軍に証拠を差し出し罪を消しました

 

自らが不幸になっても構わないと思いその娘に拒絶されても近付き不幸は無いと証明しました

 

食事が出来ない者には食べれる様になるまで奮闘し何回も挑戦を繰り返し共に寄り添いました

 

海軍の闇に触れた娘には最後まで共に居続け闇から引っ張り上げました

 

自らの罪を理解できなった娘には残酷ですが真実を伝え戦うその手を取り戦場から無理矢理下げさせました

 

そして、皆が楽しくそして疲れた心に安らぎを与えるためにあの二人は奔走しています

様々な人達から手放された手をあの二人は一人一人しっかりと手を取り手放さない

 

 

それが貴方に出来ますか?

一人ずつ、艦娘の為にやっていくことが貴方に」

 

 

「そ、それは………」

 

 

古鷹の言葉に藤谷は声を失う

出来ないと分かっていた

自分にはそんなこと出来る訳が無い

 

 

「あの二人はそれをやってみせています

すぐ側で私は見てきました

二人が苦悩しながら毎日頑張ってる姿を

私はその二人の助けになりたいんです」

 

 

「………………そうか」

 

 

「でも貴方が私を捨てたことは間違ってませんよ

多分私がその立場でも同じことをしていたかも知れません」

 

 

「え!?」

 

 

その言葉に驚くと古鷹は訳を話していく

 

 

「普通は出来ませんよ、あの二人みたいに覚悟を持って

貴方は良くやっていました

あの状況で私を捨てたの間違いでは無いと思います

それで皆が鎮守府が救われるなら私は本望ですよ」

 

 

「古鷹…………」

 

 

「だから、もう私の事で悩まないでください

私は大丈夫です」

 

 

 

 

古鷹に言われた優しい言葉と共に藤谷は崩れ落ち再び椅子に座ると頭を抱えながら声を押し殺して泣き始める

 

 

「……違う…俺が悪かったんだ…ごめん…ごめんな古鷹……俺は取り返しのつかない事をしたんだ…」

 

 

「良いんですよ、それが皆の為なら仕方ないことです」

 

 

「違う!!俺達は!!君が必要だったんだ!!

居なくなって良くわかった!!俺達には君が必要なんだ!!

だから頼むよ!古鷹!!戻ってきてくれ!!

 

何でもするから…この通り頼む……」

 

 

藤谷は立ち上がると古鷹の目の前で床を頭を押し付けながら土下座をする

古鷹はその頭を優しく撫でる

 

 

「……ごめんなさい、私は今守るべき物があるんです

あの二人は私が見てないと自分を省みずやり過ぎてしまうんです

だから私はここには戻れません

ごめんなさい、藤谷さん」

 

 

「…………ごめん、古鷹…俺達が君を捨てなければ

あの時親父何かの尋問に耐えていれば…

自分を優先させなければ……君は……」

 

 

「…そうですね、でもそれがあったからこそ今の私がありあの二人に出会えたんです

もう、思い悩まないでください

私は大丈夫です

だからお互い前を向いて歩いていきましょう?」

 

 

藤谷は涙を流しているが古鷹がその涙を拭き取りながら微笑むとしばらくの間藤谷は泣き続ける

 

 

「…俺は情けないな

いつまでも君に頼り続け土下座までして頼み込んでフラれるなんてな…

すまない、私達が君にしたことは許されない事だ

……俺を好きにしてほしい

いつか君に会えた時そうしようと思っていたんだ

煮るなり焼くなり好きにしてくれ 

それと佐渡提督にも今度会えたら謝ろう」

 

 

「はい、それが良いと思いますよ!

……でしたら鎮守府の皆をお願いします

そして、二度と私見たいな艦娘を作らないでください

私はあの二人に助けられました

でも私の様に前を向けるとは限りません

だからお願いします」

 

 

古鷹が頭を下げようとすると藤谷はそれを慌てて止め再び土下座をする   

 

 

「…約束しよう、この命に掛けて君の様に艦娘は捨てない

二度と…

約束するもし俺が破ったなら殺してくれても構わない

ここに誓う!!」

 

 

「も、もう!藤谷さん土下座ばかりしないでくださいよ!!」

 

 

藤谷の土下座を何とか古鷹は止めようとするのだが無理矢理にでもしており止められずに困惑していた

 

 

 

 

 

 




次回

過去に囚われた者達


藤谷と向き直り古鷹は執務室を後にする
そして佐世保鎮守府に残る古鷹が原因で前に進めない艦娘達と話を付ける為に歩き始める


書ききれなかったごめんなさい()
次回で一応古鷹編ラストになります!
ちょっと二話位エピローグがありますがそれはすぐに上げますね!
え?誰か忘れてないかって?誰ですかねぇ?


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