「では、失礼します」
古鷹は執務室を出ると深く溜め息を付くと胸を押さえる
やはり藤谷との対峙だけは覚悟してたが辛いものがあった
それでも古鷹の中にあるものは少しずつ小さくなっていた
(…これを完全に消さないと……)
そして廊下を見ると青葉が待っており古鷹が出てくるのを確認すると駆け寄ってくる
「古鷹さん!大丈夫ですか!?」
「うん、大丈夫だよ青葉
他の人達はどこにいるか分かる?」
「えっとですね、衣笠と加古は分かりませんが木曾さんは多分自室
日向さんは演習場見たいです!」
「そっか……じゃあまずは木曾さんからーーーー」
「古鷹………さ……ん?」
不意に後ろから声が聞こえ振り返ると一人の少女が書類を片手に立ち尽くしていた
「……久しぶりだね、浜風さん」
「……嘘…どうして……古鷹さん……」
古鷹の姿を見て呆然としていたが浜風は書類を投げ捨てると全速力で走りだし古鷹に抱き付くと顔を埋める
「古鷹さん!古鷹さん!!
無事だったんですね!!大丈夫何ですよね!?
古鷹さんですよね!!この鎮守府に居た古鷹さんなんですよね!?」
「うん、そうだよ
浜風さんも傷は大丈夫なの?」
「私の傷なんてものはどうでも良いんです!
ごめんなさいごめんなさい!!私達があの時奇襲を止められなかったから古鷹さんを………」
浜風は古鷹に顔を埋めていると古鷹は優しく浜風の頭を撫でる
「違うよ、あんな奇襲誰にも分からないし浜風さんは良くやったんだよ?
それよりも無事で良かった」
「う………うぅ……ごめんなさい…ごめんなさい…!古鷹さん!貴女に鎮守府を守って貰ったのに…私は何も出来なかった…!ごめんなさい!提督を止められなくて…貴女は無実なのに…!
ごめんなさい……ごめんなさい!!」
古鷹に助けられたのは浜風も同じである
あの時奇襲を止められずに鎮守府自体を破壊されその罪を古鷹に着せられていた為浜風には何の罪を着せられていなかった
「じゃあやっぱり皆」
「……はい、提督に対しかなり不信感が強いみたいなんです
その…古鷹さんを見捨てた事が原因で……
不知火さんと五月雨さんも頑張って何とかしてますが……」
鎮守府自体が可笑しいのは入ったときに感じていたがかなり深刻な問題であることを理解すると古鷹は立ち上がる
「良し!じゃあ私に任せて!
何とかして見せるね!!」
「で、でも!古鷹さんには関係ないですよ!!
だってこれは私達の……」
「だぁめ!一応これは私が出来なかった事なんだから!私がやらないといけないの!
それよりも浜風さんは他の艦娘達をお願いね?
……私は恐らくその元凶になってる人達を何とかするから」
「古鷹さん……ごめんなさい…いつも私達は貴女に頼ってばかりで……」
「良いの!私がやりたいからやってるんだから!
それと二人に日向さんと木曾さんを見つけてほしいんだ
多分二人も元凶何でしょ?」
古鷹が言うと青葉も浜風は顔を反らす
その意味を理解しているが二人の頭を撫でる
「お願い、二人とも
私はこの鎮守府を助けたい
確かに皆は私を捨てたけど私はそうはなりたくないから!」
「「古鷹さん……」」
古鷹の言葉に涙を溢しかける青葉は頬を叩き浜風は涙を拭い立ち上がる
「分かりました!青葉にお任せです!!」
「私の誇りとプライドにかけて見つけ出し説得して見せます!!!」
「そのいきだよ二人とも!
じゃあお願いね?」
「「はい!!」」
そう言うと二人は鎮守府の廊下を走りだし急いで二人を探しだそうとする
静かになった廊下で古鷹は深く息を吐くと叫ぶ
「居るんでしょ!衣笠!加古!
出てきなよ!!」
その声と共に古鷹は廊下の角を睨むとゆっくりと二人が姿を現す
「………古鷹…」
「…久しぶり、元気にはしてた見たいだけど
大分クマが酷いね加古」
「あ、あの古鷹さん……その…」
「分かってるよ、寝れてないんでしょ加古」
加古は眠そうな顔をしながら古鷹に向き合い衣笠は加古の様子を気遣っている
「ねぇ!何であの時あんな酷いことを言ったの!?
私達仲間だよね!友達だよね!加古に取っては古鷹さんはたった一人の姉何だよ!
それなのに青葉も古鷹さんも酷いよ!!」
「……そうだね、あの時私は二人に酷いことを言ったね
ごめん、そうでもしないと私は二人を殺しそうになってたから」
「何で!私達何かした!?
私達は提督を助けるために『嘘の証言』をしたんだよ!
古鷹さんは殺されないって提督が!!」
「そんなわけないよ、私はね処刑されかけたんだよ」
「でも、今目の前で生きてるじゃん!
それは!!」
「佐渡提督と叢雲に助けられてるから私は生きてるんだよ
処刑される寸前あの二人は私を助けてくれたの」
「嘘だ!あの二人は古鷹さんを奪ったって!!」
「……衣笠、もう辞めよう」
今まで黙って聞いていた加古が口を開くと衣笠から離れ古鷹に近づく
「何で!だって私達は!!」
「古鷹を捨てたんだよ、私達は」
「違う!!私達は!」
「衣笠……分かるだろあんな証言したら古鷹がどうなるか位
今こうして、古鷹が来てくれたのは私達の為なんだよ
……苦しくて嫌なのに来てくれたのはあの二人がそうしてくれたんだよ」
「で、でも加古!!」
「衣笠!いい加減にしろよ!!」
加古は未だに喚いている衣笠を殴ると眠気を我慢しながら古鷹に背を向け衣笠に怒る
「私達は!仲間を!大切な人を捨てたんだ!
あの時の言葉で分かるだろ!!私達を忘れたいんだよ古鷹は!
そりゃそうだよ!信じてきて!命を掛けて助けてくれたのに私達は古鷹を犯人に仕立て上げた!!
助けてくれなかった提督を尋問から救うために!私達は命の恩人を捨てたんだよ!!
いい加減目を覚ませよ!!」
「…うぅ…だって……だって………そうしないと……」
古鷹は驚いていた
何せ加古と衣笠はずっと現実逃避して自分の罪を理解出来ずに居るものだと思っていたのだから
だが、加古はあの時古鷹に言われた言葉を理解し目を覚ました
自分が何をしたのかを
自分達が犯した大罪を
「古鷹……私は古鷹を捨てた
それは提督の為であり私自身の為だったんだ
古鷹が捕まった後
提督もどこかに連れていかれて
私と衣笠、青葉、木曾、日向も大本営に連れていかれ尋問を受けてたんだ
毎日毎日同じ質問と同じ事の繰り返しをさせられていた
それが、辛かったんだ
逃げたかったんだ
でもな、尋問官が言ってきたんだ
『今、古鷹に関する虚偽でも証言をすれば提督を解放し君達の罪を無くそう』って
……あたしはそれに乗ってしまった
自分達の為に……提督の為と思い込ませて……
私達は悪くないって……思い込んで……
古鷹は命がけで私をあの化け物から助けてくれたのに……
私達を守ってくれたのに……ごめん…ごめん……
私達は…助ける相手を……裏切る相手を間違えたんだ……
ごめん…ごめんなさい……許されるとは思ってない……殺したいなら殺してくれても構わない…
私達は古鷹に救われたんだ…命を…それならその命を古鷹に奪われても構わない……」
拳を握り締めながら古鷹に向き合うことが出来ない加古に対し古鷹は無理矢理こちらを振り向かせ頬を思い切り叩く
「…………馬鹿、遅いよ」
「……ごめん、古鷹……私は古鷹の妹なのに……裏切ってごめん……だから古鷹に殺されたーーー」
加古が再び言おうとした瞬間古鷹はもう一度頬を叩くと胸ぐらを掴み睨み付ける
「……加古、それは違うよ
加古はまた私に罪を着せるつもり?」
「ち、違う!古鷹が気の済むようにしてほしいんだ!!
私達は取り返しのつかないことをしたんだ!だから!!」
「だから!私が貴女達を殺せば済むと思ってるの!?
そんな簡単に許すわけ無いでしょ!
辛かったんだよ!加古が尋問を受けている間!私は拷問も受けていたんだよ!
毎日毎日毎日!自白を強要され!まともに食事もあたえられずに!苦しみ!絶望してたんだよ!皆が助けてくれるって最後まで信じてたのに!
皆は私を裏切った!!
その意味が分かる!?加古!貴女一人の命で償える程安いものじゃないんだよ!!」
古鷹の怒りに触れてしまった加古は我慢していた涙を流しだし古鷹は加古を離すと崩れるように倒れてしまう
「じ、じゃあ!私達は!何をして償えば良いんだよ!!
死んでも!殺されても駄目ならどうすれば良いんだよ!
私は……私はもう古鷹に迷惑を掛けたくないんだよ!!
古鷹の重荷に成りたくないんだ!!
散々迷惑を掛けて!苦しませて!私は……私は!……どうすれば良いんだ……よ……古鷹ぁ……」
崩れた加古に見下ろしていると古鷹は座り込み加古の頭を撫でる
「じゃあ、私のお願いを聞いてくれない?」
「……!聞く!何でも聞く!だから!!」
「…皆をお願い
提督を、不知火さんを、五月雨さんを、木曾さんを、日向さんを、浜風さんを、青葉を、衣笠を助けてあげて」
「…………ぇ?」
泣き崩れている加古に微笑みかけながら古鷹は優しく頭を撫でる
「私ね、あの二人に付いていくんだ
ここには戻らないし戻れない
私、今やりたいことを見付けたの
それを今やっていきたいんだ
二人に出会って助けられてここにまた来れて皆に向き合うことが出来たの
だからここの事を加古に任せたいんだ」
「古………鷹……」
「私にいっぱい迷惑かけて
私を見捨てたんだよこれぐらいはしてほしいな
今、鎮守府は酷い状態なんでしょ?
だからこれが加古に与える罰です
私はもう側に居れないから加古がこの鎮守府を支えてあげて
私の『妹』なんだから出来るよね?」
そっと古鷹は加古に手を差し出す
古鷹の優しさに再び触れた加古の涙は止まり手を取り立ち上がると涙を拭う
「…分かったよ、古鷹
任せてくれよ…私…もっと強くなる…!
古鷹みたいに皆を守れる位強くなる…だから…」
「ふふ、もうしょうがない妹だなぁ
良いよ今日だけ特別にね?」
古鷹は手を広げると加古はその胸に飛び込み静かに涙を流しながら泣き始める
その後ろで衣笠も泣こうとしていると古鷹が静かに手招きをする
それを合図に衣笠も古鷹に抱き付き二人とも久しぶりに触れる事が出来た事、そしてその優しさに涙を流す
「ごめんなさい……ごめんなさい…古鷹さん…
私…貴女を……」
「良いんだよ……辛かったね…苦しかったね……
もう、終わったから大丈夫だよ…」
「古鷹……古鷹ぁぁ…ごめんなさい…ごめんなさい……!!」
「もう!加古も泣きすぎだよ!」
しばらくの間古鷹の胸の中で二人は泣き続けそれを優しく包み込むように頭を撫でていた
次回
過去との決別
そして共に歩いていく未来
浜風、加古と衣笠に縛りついている物を壊しながら古鷹は少しずつ過去に向き合っていく
そして、絶望から救われた少女は自らの意志で道を歩んでいく
どんな苦難も絶望も乗り越えて前に
書ききれなかった……ごめんなさい…
次回が本当のラストになります!