艦隊これくしょん ー誰ガ為ノ戦争カー   作:霧雨鴉

447 / 594
一言だけ言います
詰め込みました()







晴れやかなる明日へ 三

「じゃあ、衣笠

加古をよろしくね?」

 

 

古鷹と和解した二人だったのだが、加古は安心したのかいつの間にか寝てしまっており現在衣笠の膝枕で寝ていた

 

 

「う、うん

でも古鷹さん、あの二人は……」

 

 

「……大体分かるよ、それでも助けられるのは私だけだから」

 

 

「……ごめんなさい、最後まで古鷹さんに頼ってしまって……」

 

 

「良いよ!これぐらいしか私には出来ないからね」

 

 

古鷹は微笑みながら廊下を歩いていこうとすると

 

 

「ねぇ、古鷹さん

強く…なったね

ここに居た時より遥かに

心も実力も」

 

 

後ろから衣笠に言われると古鷹は笑いながらいつもの言葉を掛ける

 

 

「強くないよ!強くありたいの、私は!

あの二人の様に!またね!衣笠!」

 

 

そう言うと古鷹は廊下を歩いていき姿が見えなくなると衣笠は呟く

 

 

「……そっかあの二人は…そんなに強いんだ…

そうだよね…古鷹さんをあんな絶望から救いだすほどだもんね……凄い…な…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さってと、じゃあどっちに行こうかな……」

 

 

「ふ、古鷹さーん!!」

 

 

 

古鷹は鎮守府内を歩いていると目の前から血相変えた青葉が走ってくる

 

 

「どしたの?青葉?」

 

 

「じ、実は日向さんを見付けたんですけど!」

 

 

「何処に居るの!?」

 

 

「演習場です!ですがあの人!」

 

 

「分かった!ありがと!」   

 

 

古鷹はその言葉を聞いて演習場に走り出すと青葉を置いてきぼりにしてしまう

 

 

「ま、待ってぇ……古鷹さぁぁん……」

 

 

 

しばらく、走った後に演習場に着くのだが他の艦娘達がざわざわとしながらその演習場を覗いている

 

 

「どうしたんだろ?何か……!!」

 

 

そのざわざわしていた意味を理解する

演習場には日向が一人立っておりその身体は全身から血を吹き出しながら膝をついていた

その光景は普通の様で普通ではない

何せ演習には専用の模擬弾が使用される為艦娘は傷付かないようになっている

なのに日向は全身から血を流し他の艦娘達が日向に砲を向けていた

 

 

「日向さん!それ以上は駄目だよ!」

 

 

「そうだよ!いくら日向さんでも!」

 

 

「うるさい!!もっとだ!もっと私を撃て!!

殺す気でも構わない!今回の大演習会で負けたのは私が原因だ!

早く撃て!!」

 

 

不味い!!と古鷹は直感で理解し走り出し艤装置き場を見ると自分の所だけ鍵が空いているが青葉の文字で「触るな禁止!」と言う札が張ってあり開けて仲間を見ると綺麗に整備された艤装が入っていた

(青葉……ありがとう!)

 

 

直ぐ様自分の艤装を付けると演習場に走り出し日向の後ろから近付くと他の艦娘達はそれに気付き砲を下ろそうとするのだが

 

 

「撃て!お前達!!」

 

 

「「は、はい!!」」

 

 

日向の剣幕に驚き主砲を撃ってしまうが

今の古鷹には力がある

艤装の主砲を使い放たれた砲弾を全て撃ち落とすと爆煙に包まれ日向の目の前に立ち塞がる

 

 

「貴女達!演習場での実弾の使用は禁止されているのを知ってますよね!?

何をしてるんですか!ましては仲間を!!」

 

 

古鷹の声に気付いた日向は顔を上げその背中を見る

そして爆煙を切り裂き古鷹は砲を構えている艦娘達を睨み付ける

 

 

「だ、だって……」

 

 

「日向さんが…やれって……」

 

 

「関係ありません!貴女達は規則違反をしているんですよ!!

きちんと提督の許可を得ないとこの様な事をしていい理由にはなりません!

今すぐに戻りなさい!!

それとも私が相手になりましょうか!?」

 

 

古鷹は怒りながら睨み付けていると艦娘達は怯えながらその場をそそくさと去っていくのを確認すると深く息を吐き振り返り日向に手を差し出す

 

 

「大丈夫ですか、日向さん

あまり無茶をしてはいけませんよ?」

 

 

「古………鷹……

すまない……私は…」

 

 

差し出された手を無視し逃げようとするが古鷹は強引に手を取る

 

 

「駄目ですよ、どうせ皆資格が無いだとか言うんですから

ほら!行きますよ?」

 

 

「………すまない…」

 

 

日向の手を取りながらゆっくりと航行し二人は艤装置き場に到着するや否や日向がいきなり倒れてしまう

 

 

「日向さん!」

 

 

倒れてしまった日向を介抱しながら古鷹は日向の艤装を外し片付けていると日向が口を開く

 

 

「………何をしに来たんだ古鷹

君がここに来る理由は無いだろ?」

 

 

「皆の様子を見に来たんです

私が居ない佐世保鎮守府はどうなのかなと思いまして

それで、どうですか?」

 

 

「………悲惨だよ

艦娘達は皆誰に従いどう戦えば良いか分からず

戦う意味すら分からず、ただ生きてるってだけでな

…………私達が君を裏切った…からな…」

 

 

日向は顔を反らしながら拳を握り締めており古鷹はその頭を撫でる

 

 

「…日向さんは抵抗したんですよね

あの話に」

 

 

「…加古か?それとも青葉か?…どうでもいいな

……そうだ…だって君は私何かより気高かった

自らの実力とやることを理解し立ち向かい救いだした……

なのに……尋問官共は君を売れと言ってきた…

もちろん断ったさ

だがな奴等は……『私がそれを認めないと姉妹に迷惑がかかる』と言われたんだ……」

 

 

「まさか!伊勢さんを!?」

 

 

悔しさで唇を思い切り噛んだのか口から血を流しながらその時の事を話し出す

 

 

「……あぁ、奴等は伊勢に手を出そうとしたんだ…

だから…………いや、だからと言って君を捨てる理由にはならないな……情けない話だ

戦艦なのに、皆よりしっかりしないといけないのに……

私は……何も出来なかった…君が処刑される時…私は見てるだけだった……

すまない……ろくでもない(戦艦)で…

すまない…謝って許される…とは思ってない……殺してくれても構わない…我々は……君を見捨てたんだ……

己の為に……自分勝手に…」

 

 

血を流しながら日向は泣いていた

古鷹に会って再び助けてもらい、何も出来ずに自分勝手にやってきたことを後悔する

仲間一人すら救えない自分(戦艦)

 

 

その姿を見ながら古鷹は微笑み再び頭を撫でると涙と血ををハンカチで拭う

 

 

「いいえ、貴女はよくやっていますよ日向さん」

 

 

「…違う!私は何も出来てない!!

古鷹見たいに優しくも無いし!仲間の為に命を張ることも出来ない!

何が戦艦だ!私は古鷹何かより遥かに劣っている!!

だから……だから…」

 

 

「だからあんなことを?

もしかして、いつもやってたんですか?」

 

 

「…あぁ、敗北は私の責任だ

私が皆を戦闘で守らなくてはならない

君の代わりに……君が守った仲間を私がやらなくちゃいけない…だから……」

 

 

日向が落ち込んでいると古鷹はため息を付くがその顔は微笑み嬉しそうにしていたが日向に構える

 

 

「えい!」

 

 

「痛っ!……何を…?」

 

 

日向のデコにデコピンを食らわせるとそのまま優しく頭を撫でる

 

 

「もう、気負い過ぎですよ日向さん

全く変わってないですね、正義感の強さも実は気が弱いのもあの時から」

 

 

「だって…私は……」

 

 

言い訳をしようとする日向を古鷹は優しく抱き締めると頭を撫でる

 

 

「少しは周りを頼りましょう?

貴方は戦艦ではありますが完璧に強いわけではありません

私だって強くないんですから」

 

 

「違う!君は!」

 

 

「強くないんです

これでもこの鎮守府に居た頃から影で泣いたり苦しんだりしてました

ここでエースと呼ばれ影で毎日砲撃の演習をこなしたりしてましたから」

 

 

「そんな……君が?」

 

 

「はい、正直誰にも頼りたくても頼れなくて私がしっかりしなきゃって思ってた

迷惑をかけたら悪いってね

ずっとずっと

でも、今は違うの私を救ってくれたある二人が私に仲間の本当の意味を教えてくれた

お互い事を理解したいから迷惑をかける

お互い事を知りたいから頼る

あの二人はずっと一人だった私にあの二人は手を差し述べてくれたんだ

だから日向さんも皆を頼ってみたらどうかな?」

 

 

 

「………私は……」

 

 

「日向さんは確かに戦艦だよ?

私より強いけど心が強い訳じゃないんだよ

それは皆分かってくれるから

絶対に、大丈夫だから私が保証するよ

…もし駄目なら私が貴女の手を取るから安心して?」

 

 

日向は傷だらけではあるが古鷹の強さと優しさを見て思わず古鷹を強く抱き締める

 

 

「……すまない…私が君を頼るなんて……そんな…事……許される訳…」

 

 

「良いんですよ、私はあの二人が助けてくれました

だからもう大丈夫です

頼ってください貴女は一人じゃありません」

 

 

「……うぅ…ごめん……ごめん……古鷹…私は…君になりたかった…んだ……でも…無理だよぉ………

君の代わりなんて……」

 

 

「はい、日向さんは日向さんなりに守っていけば良いんですよ……

安心してください……」

 

 

古鷹の胸の中で日向は久しぶりの安心感と優しさに静かに涙を流しながら自分のやってきたことを後悔した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、日向さん

かならず入渠してくださいね?」

 

 

「あぁ、分かってる……そのすまなかった……

みっともない姿をーーー」

 

 

日向が言おうとした瞬間古鷹は人差し指を口に当てると微笑む

 

 

「私と日向さんの秘密にしておきますからこれ以上は駄目ですよ?

では私は行きますね」

 

 

「……あぁ、すまなかった

ありがとう古鷹」

 

 

そう言うと古鷹は日向を置いて艤装置き場を後にすると最後の一人木曾へと向かって歩いていく

 

 

古鷹が去った艤装置き場で日向は一人項垂れながら古鷹の艤装が入ったロッカーを開きその艤装を触れる

 

 

「……あぁ…私は……また君に守られたのか…

…敵わないな…今も昔も…君は私の憧れであり…目指すべき艦娘だ……必ず君の様になってみせよう…

ここに誓う…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の一人木曾を古鷹は探していた

だが、それは案外早く見付かった

 

 

「……久しぶりですね、木曾さん」

 

 

「……あぁ、古鷹

久しぶりだな」

 

 

古鷹が廊下を歩いていた時目の前から木曾が向かってきており浜風から話を聞いているらしく来た意味を理解していた

 

 

「…変わって無いみたいですね」

 

 

「……そうでもないぜ、お前が居なくなってからは変わったよ

古鷹が居なくてせいせいしたよ

でも何でまたここに来たんだよ」

 

 

「…私が嫌いだったんですか?」

 

 

「………あぁ、嫌いだったよ

この鎮守府で一番強くて優しくて誰にも弱味を見せずに戦い続けてたお前がな」

 

 

木曾は拳を握り締めながら話していると古鷹を睨み付けながら話し出す

 

 

「だから!何でここに来たんだよ!

俺達はお前を裏切ったんだぞ!見捨てたんだ!

放っておいてくれ!!俺達にもうーー」

 

 

「私は要らない?」

 

 

「…っ…そうだよ!俺達にはお前なんか要らないんだ!!

だから!」

 

 

「ならよかった、私ねこの鎮守府には戻らないんだ

小笠原に居る二人の所で戦うって決めたの

あの二人に付いていきたい

だから今お別れを言いに来たの」

 

 

その古鷹の言葉に木曾は身体をビクンと震わせる

 

 

「なら……早くいっちまえよ…俺達にお前は必要ない!!

早く行けよ!!!」

 

 

「………優しいね、木曾さんは」

 

 

「っ!何の事だよ!俺達は!!」

 

 

「ここでの辛い思い出を思い出させないようにって事でしょ?

後は自分の為

皆に弱さを見せないため、気を張って来たんだよね

皆をまとめるために」

 

 

古鷹が木曾に近付いていくと木曾は少しずつ後ずさりをする

 

 

「来るなよ!」

 

 

「嫌だよ、貴女をこのままにしておくと危ないから」

 

 

木曾は後ずさりをしていると足下にあった石に躓きそのまま後ろに倒れる

 

 

「辞めろ!来るな!来るな!来るな!来るな!!!」

 

 

先程の威勢が失くなり古鷹が近付き木曾に手を出そうとした瞬間木曾は縮こまりながら震える

 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

 

 

古鷹はその姿を見て変わってないと感じながら木曾の頭を優しく撫でると木曾はビクンと跳ねながら古鷹を見上げる

 

 

「ふふ、やっぱり変わってないね

木曾さん大丈夫だよ、怒ってないから」

 

 

「………………何で……何で来たんだ

俺達を殺しに来たのか?」

 

 

「違うよ、お別れを言いに来たんだよ

皆を助けると同時にね」

 

 

「………………何で……俺達を……助けるんだよ…

だって俺達は……古鷹を…見捨てたんだぞ?」

 

 

「そうだね、分かってるよ

それでも助けたいと思うんだ」

 

 

木曾は震えながら縮こまり古鷹を恐怖の眼差しで見続ける

 

 

「………なぁ、俺だけで許してくれないか?

…俺だけを殺して皆を許してくれないか?

………俺が一番最初に裏切ったんだ!だから!!」

 

 

「もう!殺さないってば!いい加減信じてよ!

さっき提督と皆と話してきたんだ

木曾さんも人質を取られてたんでしょ?」

 

 

「………そうだ、でも理由にならない…

俺達は古鷹を捨てた理由には……」

 

 

そんな弱気な事ばかり言ってる皆を見てきて古鷹は呆れたのか木曾の頬を引っ張る

 

 

「さっき私が嫌いって言わなかったっけかなぁ?

この口はぁ?」

 

 

ひはいひはい!ごめんなさひ(痛い痛い!ごめんなさい)

 

 

「私に出ていけとか言わなかったっけかなぁ?

うーん?」

 

 

ごめんさひごめんさひ!!ゆるひて!(ごめんなさいごめんなさい!!ゆるして!)

 

 

「駄目です!人の事裏切っといてそんなこと言う人は知りません!」

 

 

ほ、ほんなぁ~!(そ、そんなぁ~!)

 

 

だが木曾の変な顔を見た古鷹は笑ってしまいその手を放すと木曾に一つお願い事をする

 

 

「じゃあ、許してあげる変わりに私のお願いを聞いてくれない?」

 

 

「な、なんだ!何でも言ってくれ!

俺はーー」

 

 

「皆をお願い、私はここに居られないから

日向さんと、加古と衣笠と不知火さんと五月雨さんとこの鎮守府を守ってあげて?」

 

 

木曾はその願いに再び顔を伏せてしまうと古鷹の手を取る

 

 

「…………こんな願いを言う資格は無いのは分かる

でも……でも…古鷹……ここに居てくれないのか?」

 

 

「…ごめんね、ここには戻れない

私にはあの二人が待ってるから、待ってる人達を置いてはいけないの」

 

 

「……………そう……だよな…ごめん…

頑張るよ……古鷹の分まで…私達」

 

 

歯を食い縛り涙を堪えていると古鷹はそっと優しく木曾を抱き締める

 

 

「ごめんね、皆を置いていく見たいになって

私ねあの鎮守府であの二人と共に歩んでいきたいの

ここの皆も大切だよ?それでもね私はあの二人と歩んでいきたい

あの二人は私が居ないとブレーキ効かずに一直線に走りすぎちゃうと思うから」

 

 

「…うん……ごめん古鷹」

 

 

「……またね…優しい木曾さん

私が居なくなってもーー」

 

 

と古鷹が言い終わろうとした瞬間木曾は古鷹の身体を強く強く抱き締める

 

 

「…………やだ」

 

 

「…木曾さん?」

 

 

「やだやだやだやだやだぁぁ!!

離れないでよ!!古鷹ぁぁぁぁ!!

古鷹が居ないと私!私!!」

 

 

「ふふ、やっぱりまだ甘えんぼさんですね…

でも駄目ですよ?いい加減私離れしてください?」

 

 

「やだよぉ!古鷹の事捨てたのに!やっぱり忘れられないよぉ!

ごめんなさい!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」

 

 

しばらく古鷹の胸の中で駄々をこねながら泣いている木曾を見ながらこれからのこの鎮守府は大丈夫なのだろうかと少し心配になった古鷹であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着きましたか?」

 

 

「……………ごめん、またやったな…

本当にごめん…古鷹……」

 

 

顔を真っ赤にしながら廊下に座り込んでいる木曾の頭を撫でていた

 

 

「まぁ、私が木曾さんの育成係だったからだけど……

そろそろ私が居なくても大丈夫な様に…育ってほしいな?」

 

 

「………頑張ります」

 

 

「ふふふ、じゃあね木曾さん」

 

 

古鷹は立ち上がり歩いていこうとするのを木曾は止めようとするがその手をぐっと押さえる

 

 

「あ、そうだ忘れてた」

 

 

そう言うと古鷹は振り返り木曾に笑顔を向けると手を振るう

 

 

「今までありがとう木曾ちゃん

忘れないからね、皆をよろしく

私のお弟子さん」

 

 

「あ…………うん……頑張る……よ…古鷹さん…

それとごめんなさい!!貴女を裏切って!見捨てて!ごめんなさい!!」

 

 

「良いよ!でも二度と皆にやらないでね!

約束だよ!!」

 

 

「うん!約束する!!古鷹さんみたいに強くなって!皆を守って見せる!!」

 

 

木曾は涙を堪えながら手を振るうと古鷹は廊下を歩きながら佐渡達の居る場所に向かう

(皆に挨拶は終わったかな?じゃあ私も……)

 

 

そして階段を下りると玄関に青葉と浜風が待っていたのだが最後の二人が古鷹を待ち受けていた

 

 

「………何かご用ですか、不知火さん、五月雨さん」

 

 

「え、えっと…古…鷹…さん……」

 

 

「……いいえ、私達は貴女の帰宅を見届けに来ただけです」

 

 

「そっか」

 

 

古鷹はゆっくりと歩いていき玄関に向かっていき二人の間を通り抜けすれ違うと不知火が呟く

 

 

「……もし貴女が復讐の為に私達を殺しに来たのだったら『司令』だけを逃がしそれ以外は貴女の好きにさせるつもりでした」

 

 

「…………そんなことはしないよ

今はね」

 

 

「……司令と我々が貴女にした罪は消えません

何をしようとどう償おうとそれは変わらない

私はこの命で償えるなら差し出しますよ」

 

 

「…相変わらず真面目だね

要らないよ、そんなの」

 

 

「……何故ですか、私達は貴女を裏切った

この鎮守府で最も大切な一人なのに

この鎮守府で最も活躍した人なのに

この鎮守府を最も愛していたのに

 

……私達は司令の自分勝手と他の者達のわがままで貴女を殺したのに」

 

 

「それでもだよ

私はこの道を選んだの

誰も殺さず、苦しんでいる人達を助ける道を」

 

 

その言葉に不知火は歯を食い縛る

 

 

「…貴女は…何故そんなに強いんだ…

いい加減怒ったらどうですか!?

貴女を理不尽に捨て!私達は貴女を踏み台にしたと言うのに他の者達は貴女にすがっていた!

司令も木曾も日向も青葉も浜風も加古も衣笠もそうだ!!

自分勝手に貴女を捨てたと言うのに貴女に救われている!!

意味が分からない!何故貴女はそこまで出来る!!

憎いんでしょ!苦しいんでしょ!

なら殺したらどうなの!古鷹!!!」

 

 

古鷹の優しすぎる行為に不知火は変わりに怒りに震えていた

そう、佐世保鎮守府全員が古鷹を理不尽に捨てたと言うのにすがっていた

古鷹の優しさに甘えそしてすがっている

それに答える様に古鷹が怒らずそれを癒していることに不知火は怒りを感じていた

 

 

「…………そうだね、多分あの二人に会わないで生きていたら……多分皆を殺してたよ

どんなに命乞いをしても許すを乞うても私は……皆殺しにしていた

地の果てまで追い掛けて一人残らず……ね」

 

 

「だったら!やれば良い!!私達の覚悟は出来ている!!

貴女に殺されても文句を言うものはここには居ない!!

貴女に救われた奴も居る!だから殺しなさいよ!!」

 

 

「ううん、やらないよ

私にはそんなこと必要ないから」

 

 

「どうして!?」

 

 

「……今、私は皆を憎んでないからだよ

私はねあの二人に、叢雲と佐渡さんに全部奪われちゃったんだ

憎しみも怒りも悲しみも苦しみも全部…全部……」

 

 

不知火は怒りながらも古鷹に振り返ると古鷹は不知火に微笑みかける

 

 

「今の私はあの二人に全てを奪われたからあるの

私がここに来たのは理由は優しさじゃない

私の過去に決着を付けて貴女達を前に向かせること

そして、皆を救うこと

それは私が最後にやり残したことだったから

だから私が皆の過去を奪います

苦しみも悲しみも私が奪い皆を前に向いてもらい戦ってもらうことなの」

 

 

「……なら、貴女は私達を許すと言うの?

私達は貴女を陥れ殺そうとしたのに」

 

 

「…はい」

 

 

「ずっとずっと優しくしてもらって色んな物を与えてもらってたのに私達は奪った

貴女の全てを」

 

 

「…そうだね」

 

 

「……貴女を死なせようとしたのに!?

私達は!貴女を!!!」

 

 

「それでもだよ不知火

私は許しちゃうの、あの二人はその佐世保鎮守府から受けた苦しみも絶望も憎しみも奪ってくれたから

そして……私に生きる希望をくれたから

私は貴女達に繋ぎます

佐渡さんと叢雲がくれたものを貴女達に繋いでいくの」

 

 

微笑みながらその言葉を聞いた不知火は昔を思い出す

昔、初めてこの場所に来た古鷹の姿を

あの時から優しそうな姿をし、微笑みが可愛らしい古鷹が今不知火達にさようならを言うためにここにいる

 

 

「……貴女は……何故…そこまで……」

 

 

「私はあの二人がしてきたことをしてるだけ

叢雲が与えてくれた強さで

佐渡がくれた優しさで貴女を救っただけだよ」

 

 

不知火にそう微笑んでいると不知火は一瞬錯覚をしたかの様に古鷹の背中に大きな天使の様な羽を見た

いや、錯覚ではないのであろう

奪われていた

希望を

強さを

優しさを

佐渡と叢雲が与え古鷹をここに来させてくれた

その事に不知火は感謝した

 

 

紛れもなくこの人は古鷹は天使のそのものなのだろうと

そして自らが行った事を後悔すると同時に不知火は泣き崩れる

 

 

「ごめんなさい……ごめんなさい!

私が…司令を止められなかった……貴女ではない…皆を取って……ごめんなさい……ごめんなさい!!」

 

 

「…良いよ、不知火も大変だったね」

 

 

不知火が泣き崩れていると隣に居る五月雨も古鷹に土下座をしながら泣き始めてしまう

 

 

 

「古鷹さん……ごめんなさい…ごめんなさい……ごめんなさい…ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」

 

 

「うん、大丈夫だよ

私は……もう大丈夫だから!」

 

 

そう言うと古鷹は一人佐世保鎮守府を出て歩いていくと目の前で佐渡と叢雲が古鷹を待っていた

 

 

「お待たせ致しました、佐渡さん、叢雲」

 

 

「……おう、もう良いのか?」

 

 

「はい!皆これで大丈夫だと思います

皆強い娘ですから」

 

 

「そう、なら行きましょう」

 

 

古鷹を連れて佐渡達は歩いていくとその後ろから何人かの足音が聞こえ佐渡と叢雲は振り返ると笑う

 

 

「……はは、古鷹どうやらお前はかなり愛されてた見たいだな」

 

 

「……ふふ、そうみたいね

人望はあったみたいよ

全く何でそんな人を裏切ったのかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「古鷹ー!ありがとう!!

それとごめんなさい!!」」」」」

 

 

古鷹が後ろを振り向くとそこには先程まで話していた

青葉、浜風、加古、衣笠、日向、木曾、不知火、五月雨が手を振っていた

 

 

「古鷹ー!私!絶対強くなるから!!

お姉ちゃん見たいに!強くなるから!!絶対!!」

 

 

「ごめんなさい!古鷹さん!!

もう二度と仲間を見捨てないから!!

貴女の様な人を二度と作らないから!!」

 

 

「古鷹!私は貴女の様に気高く強い戦艦になる!!

二度と君に頼らないように!!私は強くなる!!」

 

 

「古鷹さんー!!俺!強くなるよ!古鷹さんに甘えないで入れるように強くなる!!だから!だから!見ていてくれよ!!」

 

 

「貴女を裏切ってしまい本当にごめんなさい!!

私達は貴女が居なくてもやれるように頑張ります!!」

 

 

「古鷹さーん!!貴女が居なくても私達はやっていけるように頑張ります!!だから!!」

 

 

一人ずつ思いを告げると全員は息を吸うと一斉に叫ぶ

 

 

「「「「「行ってらっしゃい!!古鷹(さん)!!

そして!助けてくれて!救ってくれて

私達は貴女から貰ったものを他の艦娘達に繋げていきます!!

佐渡さん!叢雲さん!古鷹さんを!お願い致します!!」」」」」

 

 

その光景に古鷹は涙を溢しそうになるがぐっと我慢するが佐渡が頭を軽く叩き叢雲が肩を叩くと我慢をやめて泣きながら全員に手を振るう

 

 

「行ってきます!!皆!元気でね!!

今までありがとう!!!」

 

 

「おう!任せとけ!」

 

 

「守って見せるわよ!あんた達何かよりね!!」

 

 

佐渡達は手を振るいながら佐世保鎮守府を離れて行くと古鷹は涙を拭い前を向いて歩いていく

 

 

 

「本当に良かったのか?古鷹、お前の大切な仲間何だろ?」

 

 

「はい!それでも私はこの道を選びます、駄目とは言わせませんよ?」

 

 

「だってよ、佐渡

残念だったわねぇ~わざわざ他の鎮守府に話したってのに」

 

 

「全くだ、俺の苦労がまた空振ーーー」

 

 

「ちょ、ちょっと君達!」

 

 

「ここから先は!!」

 

 

三人が歩いていくと目の前にある門で憲兵達が誰かを押さ込んでおり疑問に思っていると

 

 

「あ!!提督デース!!」

 

 

「古鷹さん!?ちょっと退きなさい!!」

 

 

「すまないが!ここを開けてもらうぞ!!」

 

 

その人影は門を無理矢理こじ開けると憲兵達を押し倒し佐渡達へ走ってくる

 

 

「はい?何だなんだ!?」

 

 

「提督ー!!バーニングラーブ!!」

 

 

「古鷹さーん!大丈夫?何かされてない!?」

 

 

「あんた達……何でここに居るのよ?」

 

 

その憲兵達を押し倒したのは小笠原で待っているはずの大井達であり何故か佐世保まで来ていた

 

 

「いや!お前ら何で居るんだよ!

留守番頼んだよなぁ!?」

 

 

「んー!提督に会いたかったんデース!!」

 

 

「理由になってねぇ!?」

 

 

「仕方ないわよ、古鷹がいきなり佐世保何かに行くなんて言うから皆心配で来ちゃったのよ」

 

 

金剛に抱き付かれながら佐渡が焦っていると擬態したエアが冷静に話その後ろから長門や大井達も歩いてくる

 

 

「何でエアまで居るんだよ!?

と言うか!グラーフ!大井!長門!

何で止めなかったんだよ!!」

 

 

「い、嫌止めはしたんだがな……」

 

 

「私は、一応警告しましたよ?

提督に怒られるって」

 

 

「すまん、佐渡提督私には止められない!

古鷹の危機ならば行かなくてはと思ったんだ!!」

 

 

「長門は真っ直ぐだなおい!!

許す!!」

 

 

「佐渡一応行っとけど大井もグラーフも乗り乗りだったわよ」

 

 

「ちょ!エア!?」

 

 

「な、何を言ってるんだ!?」

 

 

「お前らぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

佐渡が怒鳴っているとその光景を見ながら叢雲は呆れ古鷹は乾いた笑いをしている

 

 

「貴女はこの道で良いの?古鷹」

 

 

「うん、私はこの道を選ぶよ

私が選びたいんだ皆と笑い合いたいんだ」

 

 

「そう、ならもう言わないわ」

 

 

叢雲がそう言うと怒っている佐渡の脚を蹴ると無理矢理静かにさせる

 

 

「うるさいわよあんた、来ちゃったんだから諦めなさい」

 

 

「……それもそうか全く…良し!飯でも食いに行くかぁ!!」

 

 

「「「「「「賛成!!!」」」」」」

 

 

いきなり来た全員を見ながらため息を付いていると佐渡の隣に古鷹が立つ

 

 

「…古鷹、お前は後悔しないか?

この選択に」

 

 

「はい!私は皆と小笠原と歩いていきたいんです!」

 

 

「そうか、じゃあ行くか!」

 

 

佐渡がそう言うと全員が佐世保鎮守府から離れて行くと佐渡は古鷹の手を取ると微笑む

 

 

「なぁ、古鷹

俺は君の良いことに成れてるか?」

 

 

「…はい!!貴方は私の良いことですよ!

私に勿体ないくらいに!」

 

 

「そうか!約束は守れてるみたいだな」

 

 

「あー!!古鷹ずるいデース!!

何で提督と手を繋いでるデースか!?」

 

 

金剛の言葉に全員振り向き佐渡に飛びかかり佐渡の手を取ろうとするが古鷹を繋いだ手だけは離さずに金剛達に捕まりながら歩いていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……俺もああなれるだろうか」

 

 

鎮守府の窓から古鷹を見送っていた藤谷は去っていく小笠原の全員を見ながら呟く

 

 

「…彼等はこれからもどんな障害であろうが壁であろうか壊して前に進むんだろうな…

俺には出来ない…でも目指すことは出来る……

古鷹…俺は君を愛していたのは本当だ……

でも君は…彼が好きなんだね……

お幸せに、私の愛しい(艦娘)

 

 

一人持っていた指輪をゴミ箱に投げ入れると空を見上げると最後に一言だけ呟く

 

 

 

「……進め、晴れやかなる明日へ……」

 

 

その日の天気は雲一つ無い晴天

そして佐世保鎮守府に残っていた古鷹の過去と言う雲は晴れ全員が前を進み出す

 

 

 

明るい未来へと

 

 

 

 

 

 

 

 

         天使の罪 古鷹編end




次回

エピローグ 二人の英雄(ヒーロー)

エピローグ もう一人


古鷹編完結!
いやー長かった!特に最後凄い無理矢理詰め込みましたね……
ぶっちゃけ三話位に分けた方が良いかなと思いましたが書き続けてしまいましたごめんなさい!!

因みに今回だけ二話の特別なエピローグが存在します
投稿は一気にやりますが一応古鷹編の後日談見たいな物です!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。