艦隊これくしょん ー誰ガ為ノ戦争カー   作:霧雨鴉

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第十章 不沈ノ飛行場
脱獄


ここは太平洋のある島国

時刻は0300を回っており草木すら眠る真夜中だと言うのにも関わらずその島では多くの者達が慌ただしくしていた

至るところで警報が鳴り響き島中が起きていた

 

 

「脱獄者ガ出タ!!

捕虜ガ逃ゲタシダゾ!!」

 

 

深海棲艦の声が島中に響き渡り大勢の深海棲艦が島の中を探しだし一人の捕虜になっていた艦娘が逃げていた

 

 

「居タカ!?」

 

 

「駄目ダ!何処ニモ居ナイ!!」

 

 

「必ズ探シ出セ!

姫様ニ殺サレルゾ!!!」

 

 

そう、ここは深海棲艦の白地にしてある姫級が指揮する大艦隊の居住区

そして今そこに幽閉されていた捕虜が逃げ出し全員で探し回っていた

 

 

「今すぐ周辺海域を封鎖せよ!!

空母部隊!お前達は空から奴を探し出せ!

戦艦部隊!森を探せ!少しばかりの破壊は多めに見る!!

重巡部隊!犬を使え!奴の痕跡を追え!

駆逐、軽巡部隊!海に出て奴が逃げてないか探し出せ!!」

 

 

「「「「ハ、ハイ!!」」」」

 

 

「……にしても、やってくれましたね…

まさか脱獄とはね…艦娘!!」

 

 

指揮艦を務めているある深海棲艦が司令室兼モニタールームでそれぞれの部隊に指示を出し逃げ出した艦娘を確実に追い詰めていていこうとするがもう一人の艦娘を睨み付ける

 

 

 

「はは………意外と…ここの警備も甘いんだね……」

 

 

 

「…Z1(レーベヒト・マース)……貴様…どこだ!奴をどこに逃がしたんだ!!答えろ!!」

 

 

指揮する深海棲艦は両手を拘束されボロボロのレーベの首襟を掴み持ち上げると睨み付ける

 

 

「は……はは……言うわけ無いじゃ…ない…か……

マックスは……お前達に…つか…まらない…!!」

 

 

「クソ!!お前達!コイツをもう少し痛め付けておけ!!」

 

 

「「「ハッ!!」」」

 

 

「伝令!ドウヤラマックスハ艤装ヲ着用シテイル模様!!

艤装置キ場ヨリマックスノ艤装ガ失クナッテイルガ判明シマシタ!!」

 

 

「何だと!?クソ!クソクソクソ!!

やってくれたな駆逐艦風情が!!」

 

 

指揮する深海棲艦は島中を映し出しているモニターを睨み付けながら脱走したマックスを探す

 

 

「見付け出せ!奴はこの場所を知った!!

殺しても構わん!奴の死体か姿を私の前に持ってこいお前達!!」

 

 

「「「「了解!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ!!!ごめん!レーベ!ごめん!!」

 

 

その頃マックスは一人艤装を付けながら森を駆け抜け警報鳴り響く村から離れ海岸沿いを目指し走っていた

 

 

「見付ケ出セ!!」

 

 

「ドコイキヤガッタァ!?」

 

 

後ろからは戦艦ル級達の声が響き渡りマックスは少しずつ追い詰められていた

 

 

(マックス!僕が隙を作る、その隙に君は逃げるんだ!!)

 

 

(無理よ!艤装は使えないし、ここは絶海の孤島よ!?)

 

 

(艤装は僕がロックを解除しておいた、お願いだ!

君は僕より逃げ足が早い!この事を日本に伝えるんだ!

ドイツ方面に逃げても南方棲戦姫達がすぐに駆けつける!

だから必ず日本に逃げるんだ!

頼んだよ!!僕は…大丈夫だから!!)

 

 

 

「ごめん!レーベ!必ず応援を呼んで戻ってくるわ!!」

 

 

だが、最悪な事に走ってる間に真後ろから犬の吠える声が聞こえ深海棲艦達が叫ぶ

 

 

「居タゾ!アソコダ!!撃テ!撃テ!撃テ!!」

 

 

「ヤバイ!見付かった!!」

 

 

その言葉と共にマックスの周りの木々を深海棲艦達は撃ち抜いていき急いで森を抜ける

だが抜けた先は絶壁の崖になっており絶対絶命に陥る

 

 

「ど、どうする!?」

 

 

真後ろからは砲撃が止まず戦艦ル級やリ級達が全速力でマックスを捕まえようとしてきており壁際に走っても追い付かれる

 

 

「……えぇい!神様!!」

 

 

その瞬間マックスは壁から飛び降りるとその後ろ姿を確認したル級達は落ちていくマックスを崖上から覗く

落ちていったマックスは脚に激痛を感じるが何とか海上に着地することに成功しそのまま島の外へと全速力で航行していく

 

 

「逃ガスナ!!撃テ!撃テ!!!」

 

 

後ろからは戦艦ル級達から主砲を撃たれるが何とかその猛攻を避けていると今度は空から艦載機に狙われ身を屈めながら避けていく

 

 

「駆逐艦を!舐めないでよ!!」

 

 

「アノ人ニ報告ダ!!!急ゲ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様ら!!何をしている!?

マックスを見付けたのに海に逃げられただとぉ!?」

 

 

「モ、申シ訳アリマセン!!」

 

 

「全艦隊!すぐに艤装を着用し!マックスの追撃に当たれ!!

奴を必ずこの海域からーーーー」

 

 

指揮をしている深海棲艦が怒っていると他の深海棲艦も狼狽え動揺する

だがそれを打ち破るかの様に一人の姫がアクビをしながらモニター室に入ってくると指揮をしている深海棲艦以外はその姫に膝をつく

 

 

「騒がしいわよ、こんな夜更けに

何してるのよ貴女は」

 

 

「っ!!姫様!誠に申し訳ありませんでした

貴女様の眠りを妨げてしまい!」

 

 

「それはこの際どうでも良いわ

で、この騒ぎは何?」

 

 

指揮をしている深海棲艦も姫の登場に驚いていたが他の深海棲艦と同じ様に膝を付き現状を説明する

 

 

「実は捉えていた艦娘

Z3(マックスシュルツ)Z1(レーベヒト・マース)の力を借り先程我々の目を掻い潜り脱獄しまして現在再び捕縛しようとしているところであります」

 

 

「ふーん、で見付けたの?」

 

 

「はい、現在我々の島を離れ近海を航行中です

ご安心くださいませ!必ずや我々が再度捕縛してみせましょう!!!」

 

 

「ふーん……あ、そうだ」

 

 

姫は指揮をしている深海棲艦を退けるとマイクに向けてある指示を出す

 

 

「全艦隊、撤退せよ

Z3(マックスシュルツ)の捕縛を中止せよ

繰り返す、全艦隊速やかに元の配置に戻れ」

 

 

「ひ!姫様!何故にマックスの捕縛を!?」

 

 

「ねぇ、アイツはこの島の事をどこまで知ってるの?」

 

 

姫はモニタールームにある小窓を開けると夜の海を眺める

 

 

「え、えっと……ここが姫様の居住区であること……だけでは無いですかね?

それ以外は連れ回してませんので」

 

 

「ふーん、じゃあ『地下』には行かせてないのね?」

 

 

「は、はい!そもそもあそこは一部の者しか行けませんので誰も知るわけがありません!!」

 

 

「なら良いわ、ねぇちょっと賭けをして遊ばない?」

 

 

その姫の言葉に驚き深海棲艦達は顔を見合わせていると指揮をしていた深海棲艦が内容を聞き出す

 

 

「か、賭け……ですか?」

 

 

「えぇ、あの方向

恐らくあの艦娘は日本を目指しているわ

その間に何の海がある?」

 

 

「えっと……『夜海』『赤海』『白海』…ですかね?」

 

 

「そうよ、それに私の艦隊も日本に行くまでぶつかるわよね?

もし、あの艦娘が日本までたどり着ければあの娘の勝ち

もし、たどり着けなければあの娘の負けよ

貴女はどっちに賭ける?」

 

 

その言葉に指揮していた深海棲艦は意味が分かりニヤリと笑う

 

 

「成る程、中々趣味の悪いことをお考えになりますね……

分かりました、その賭けに乗りましょう

私はたどりつけないに賭けますよ」

 

 

「うふふ、貴女のその性格好きよ?

じゃあ私はその逆に賭けるわ

少し退屈してたしねぇ、遊び相手が欲しいのよ」

 

 

姫は窓を閉めるとモニタールームを去っていきアクビをする

 

 

「じゃあ後はよろしく頼んだわよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の右腕にして艦隊旗艦責任者 椿(ツバキ)

 

 

「はい、おまかせくださいませ姫様

貴女に頂いたこの名前に恥じぬ仕事を致しましょう」

 

 

指揮をしていた深海棲艦、改め椿は頬をニヤリと吊り上げながら笑い全艦隊に撤退命令と哨戒任務に出ている深海棲艦達に指示を出す

 

 

 

 

「お前達!!艦娘を見付けたら全力で潰しにかかれ!!」

 

 

 

(本当はもっと貴女を知りたかったけど仕方ないわよねぇ?マ ッ ク ス ちゃ ん?)

 

 

椿が不気味に笑うと周りの深海棲艦達はその恐ろしい笑いに背筋を凍らせる

 

 

 

 

 





次回

逃亡者

ある姫が住む島から脱出したマックス
だが彼女が進む道は決して楽ではなく苦の道であった
それでも、彼女は逃げる
自らを逃がしてくれた友の為に


因みにこの椿は古鷹過去編で出てきたツバキです
彼女が慕い従う姫の正体が明らかになります!
これがあのドイツ艦達が探していた二人になりますね!


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