艦隊これくしょん ー誰ガ為ノ戦争カー   作:霧雨鴉

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二度目の選択 ー選べ歩む道をー 十

「……え?」

 

 

予想外過ぎる大淀の話しに、困惑しているが大淀はそんなことをお構い無しに話を続ける

 

 

「大井さん、確認したい点がいくつかございます

質問をいくつかよろしいでしょうか?」

 

 

「は、はい!」

 

 

大淀の話しに大井は立ち上がり、佐渡の机の前に移動し、大淀からの質問を待つ

 

 

「貴女は、あの鎮守府でどのような扱いを受けておりましたか?」

 

 

「私は……」

 

 

言いかけると、口をつぐんでしまう

どうせ、何を言っても意味がない……

そう思っていると、叢雲と古鷹が大井の肩を叩く

 

 

「大丈夫よ」

 

 

「提督と大淀さんを信じてください、大井さん」

 

 

二人の言葉に、勇気を貰い大井は佐世保鎮守府の全てを話し出す

木原の行っていたこと、海軍上司との癒着、食事体制全てを

 

 

「……以上になります」

 

 

「…そうですか、ありがとうございます

お辛かったでしょう、証言ありがとうございます」

 

 

大淀は、そう言うと下ろしていた片手を持ち上げ、持っていた物を机に置く

 

 

「だそうです、元帥。

いかがでしたでしょうか?」

 

 

「えっ?」

 

 

持っていたものは携帯だった、どうやらハンズフリーにしていたらしく先程の会話を全てを元帥に聞かれていた

 

 

 

「成る程、可笑しいですね?

木原中佐、私が聞いていた話の違いますね?

それと、郷田(ごうだ)大将、桐沢(きりさわ)大将

貴方達との話しとも食い違います

これはどういう事でしょうか?」

 

 

 

元帥の執務室には、三人が座り右から車椅子の木原、郷田、桐沢の順に座っており、後ろには憲兵が待ち構えている

 

 

一番最初に声を上げたのは、郷田である

 

 

「ち、違う!!私はこんな男と癒着なんぞしとらん!!

こんな奴等知らん!!」

 

 

「なっ!!郷田さん!!」

 

 

「黙れ!!貴様なんぞ知らん!!

私は帰る!!」

 

 

郷田は、椅子から立ち上がり、逃げようとするがその前には憲兵が立ち塞がる

 

 

「退け!!邪魔だ!」

 

 

と郷田が、憲兵の一人の肩を掴んだ瞬間憲兵はその腕を取り郷田を投げ付ける

 

 

 

「郷田、桐沢、木原

諸君達を艦娘保護法及び、鎮守府運営違反により逮捕する」

 

 

「連れていってください」

 

 

「は、放せ!!」

 

 

「話しは留置場で、聞かせてもらおうか?

行くぞ」

 

 

ハンズフリーの携帯からは、木原と郷田と桐沢の叫び声が聞こえるがそんなことをお構いなしに元帥は話をし始める

 

 

『これが、真実かい?佐渡君?』

 

 

「えぇ、ありがとうございます元帥」

 

 

『そうか、なら後は大淀、頼んだぞ』

 

 

「はい、元帥」

 

 

話し終わるとハンズフリーを解除し、電話を切る

その光景を聞いていた、大井は終始唖然としていた

すると佐渡は大声で笑う

 

 

 

「アハハハ!!いやー傑作だわ……

あ、そう言えば、そろそろ入ってきなよ

北上さん?」

 

 

 

「え?…北上…さん?」

 

 

その言葉に大井は、恐る恐る後ろを振り返ると扉がゆっくりと開きその影から北上が姿を現す

 

 

「実はですね、今回一番の功労者は北上さんなんですよ?」

 

 

「え?」

 

 

大淀は、自慢げに眼鏡を上げ書類を大井に見せる

 

 

「今回の事件ですが、どうやら他の艦娘全員にあの郷田と桐沢が『何もない』と言えと恐喝していたそうなんです

ですが、彼女はそれに反旗を翻し、私に伝えてくれたんです

そして、それとほぼ同時期に佐渡さんからの話で今回の計画に至ったのです」

 

 

北上は、顔を伏せながら大井に近付き抱き付く

 

 

「ごめんね……

大井っち…

実は知ってたんだ、大井っちがあいつの言いなりになってたの……」

 

 

「!!」

 

 

その発言に驚きを、隠せずに全身から冷や汗が止まらない

それでも、北上を抱く力を緩めない

 

 

「だから、あいつに言ったんだ

これ以上大井っちを苦しめないでって

そしたら、アイツが」

 

 

 

『ほう?ならお前が大井の代わりになるか?

それなら、もうやめてやる』

 

 

その話を聞いた、大井は怒りに震える

拳を握りしめ、唇を噛み、自分は何て無力だったんだろうと思いながら

 

 

「でも、あの時大井っちが来てくれた時

嬉しかったんだ……

でもね…でもね……」

 

 

北上の声が段々と小さくなっていき、静かに泣き出しながらも必死に声を出す

 

 

「ごめんね……

大井っち………

辛かったよね…

苦しかったよね………

ごめん……ごめん………

 

 

あの時、助けを……求めて……ごめんなさい……」

 

 

その言葉に、大井は北上を抱き締めるのを更に強くしながらも少しずつ眼に涙を溜めながらこちらも必死になる

 

 

「…大井っ…ち…?」

 

 

 

「違います!北上さんは悪くありません!!

私は、貴女を助けたかったからやってたの!!

貴女が笑顔を見たかったの!!

だから!!謝らないでください!!

あの時!私に助けを求めてくれて嬉しかった!!

だから!!っ……だから……」

 

 

大井は、抱き締めるのを辞め北上に向き直る

その顔は、いつも以上に眼を真っ赤にしながら、鼻水も足らしながら必死になっていた

その姿を見ながら北上は無理矢理にでも微笑み

 

「うん……

ありがとう……

大井っち……

 

大井っちが無事で……良かったよ……」

 

 

「き、北上さぁぁぁん!!!!」

 

 

それと同時に、二人は提督室で抱き合いしばらく泣いていた

見た目の歳相応見たいに泣きじゃくり、顔をぐしゃぐしゃにしながらみっともなく

 

 

その光景を見ていた叢雲は眼を閉じ、古鷹は微かに出た涙を袖で拭い

大淀は、微笑みながら佐渡を見ていた 

 

 

「ありがとうございます、佐渡提督」

 

 

「それはこっちの台詞だよ、大淀さん

ありがとうね、俺と北上さんを信じてくれて」

 

 

 

「貴方は、信頼できるお方ですからね」

 

 

 

夕暮れの提督室、太陽が沈みかけ窓から入る光が二人を照らしていた

 

 

 

 






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