艦隊これくしょん ー誰ガ為ノ戦争カー   作:霧雨鴉

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雫滴る水底へ

 

 

カナの砲撃に撃ち抜かれた叢雲は瓦礫に埋もれながらも辛うじて生きており何とか起き上がろうとする

(艤装は………生きて……る…腹部に…だけ……当たった……か…魚雷に……誘爆…しなかった……のは…せめて……もの……救い…ね……)

 

 

身体を動かそうとするが床に広がる生暖かい液体を口の中にも感じながら辺りを確認する

(建……物?…あの……カナ達…の……居住…スペース……かな…?

立た……な…い……と…戦わ……ない…と……)

 

 

身体を床に這いずると腹部に焼ける痛みと激痛が走り震える手で触るとそれは真っ赤に染まり腹部から流れ続け止まる様子がない

(馬…鹿……こんな…所で……倒れて…られ……ない…のよ……まだ…私……は)

 

 

必死に物に掴まり立ち上がろうとするが全く力が出ずに激痛と出血のしすぎにより意識を失う

(ヤバい………意識…………が……

みん……な…………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ暗な世界、前に一度叢雲は同じ様な事を長門戦の時に経験していた

そう、それは意識の奥底にある自分だけの世界

その中で叢雲は一人うつ伏せで倒れていたが今回は違った

辺り一面から雫が滴り落ちる音が聞こえる

 

 

(……ここは……意識の深層?…また気絶しちゃったか……

でも……この前と…違う……?

佐渡に怒られる前に……動かないと……っ!?)

 

 

起き上がろうとする叢雲の背中と頭を何かが踏みつける

それも自分より遥かにデカイ何か

見ようとしても身体が全く動かない

頭だけでも振り向き見ようとしても首ごと押さえ付けられ動かすことも出来ない

 

 

(な、何!?何なの!!

私を何が押さえ付けてるの!?)

 

 

そして叢雲の艤装が全て勝手に外されると目の前に耳型の艤装が転がり真っ黒に変わるとノイズが聞こえる

 

 

(ノイズ……?さっきので壊れてーーー)

 

 

だがそのノイズの中から少しずつ、だが確実に声が聞こえるがその声は明らかに人の声でもない

かと、言って人形の深海棲艦が話す声でもない

何か機械が無理矢理話しているようなノイズ掛かった謎の声

 

 

『マ……ダ、……戦ウ……ノカ…艦娘』

 

 

(っ!!、な、何!?

と言うよりなにこの声!!!こんな声聞いたことない!!)

 

 

『ホウ?…忘レテル…ミタイダナ

マァ、ソレハ……ドウデモイイ

マダ戦ウノカト……聞イテイル』

 

 

謎の声に質問され困惑するがそれに答えていく

 

 

(戦うわ!!まだ私は負けてない!!!)

 

 

『ハハハ、自ラノ実力モ図レナイ愚カ者メ

マダ分カラナイノカ

オ前ハ負ケテイルンダヨ

戦イタイナラ動イテミヨ、艦娘』

 

 

叢雲は謎の声に言われムカつき動こうとするが全く身動きが出来ない

 

 

(っ!!離しなさいよ!!あんたが押さえつけてるから動けないのよ!!)

 

 

『違ウナ、我ガ押サエツケテイルノハ頭と背中ダケダ

…ソレ以外ハ触ッテオラヌ』

 

 

(っ!!)

 

 

そこで叢雲は気付く背中にある重みは頭と背中だけ、いつもなら転がってでも這いずってでも抜け出せる筈

だが、身体の損傷が酷すぎて言うことを聞いてくれない

 

 

(…………クソ……何でよ!動いてよ!!)

 

 

『ソレガ答エダオ前ハ負ケタンダ

アノ化ケ物二撃チ抜カレテナ

諦メロ、オ前ガ挑メル相手ジャナインダヨ

イクラ足掻イテモ勝テヤシナイ』

 

 

その謎の声は確かにまともであり的を得ている

身体は全く動かないし全身に焼ける痛み、腹部からは血を流し瀕死であることは確かだった

 

 

(…………じゃあ、何であんたはここに出てきたの

何が目的?)

 

 

叢雲が話した瞬間謎の声が笑い出す

そして、叢雲を踏みつける力が更に強くなっていく

 

 

『ソノ身体ヲ我二寄越セ

ソウスレバコノ海域カラ逃ガシテヤル

オ前ダケヲナ』

 

 

(ぐぅ!……どういう……意味よ!!)

 

 

『我ナラアノ姫カナカラ逃ゲラレルト言ッテイル

アレニ挑ムノハ早スギダ

モット経験ヲーーー』

 

 

(お断……りよ!!)

 

 

『………ホホゥ?ナラココデ死ヲ選ブノカ?』

 

 

そして叢雲は痛む身体軋む艤装を動かそうと身体に力を加える

その瞬間的傷口から血が吹き出し激痛が走る

 

 

(そんなわけ……無い!……でしょう…が!)

 

 

『マサカ、アレヲ倒スノカ?

愚カ者メ、勝チ目ナンテノハ無イゾ』

 

 

(それでも……私…は…戦う!!)

 

 

『アノ男ノ為カ?

艦娘ハ面白イナ、提督トヤラノ為二命ヲ掛ケテ戦イ、ソシテ死ンデイク

奴等ハ指揮ヲシテイルダケナノニ

ナノニオ前達ハアレヲ仲間ト言ウ

戦友ト言ウ

オ前達ガソノ気二ナレバ世界スラ滅ボセル力ヲ持ッテイルノニ

滑稽ダナ、愚カダナ、惨メダナ艦娘よ

オ前達ガ深海棲艦ト組メバ全テヲ手二入レラレルト言ウノニ』

 

 

(……要らないわ、私はアイツと仲間だけが居れば良い)

 

 

『ハハハハ!笑ワセルナ!!

ソンナワケ無イダロ!!オ前達ハ人間ト変ワラヌ!!

……ソウダ!良イ考エガアルオ前ノ欲シイモノヲ言ッテミロ

我ガ貴様ノ身体ヲ使イ手ニイレテ見セヨウ

ソノ代ワリ貴様ノ身体ヲ寄越セ

悪クハナイ取引ダロ?』

 

 

叢雲を踏みつける力を少しだけ緩めながらその声は叢雲に問い掛け交渉を持ち込む

 

 

(……無いわ、私は……皆と仲間と……平和に…楽しく過ごす……世界が欲しい!!!)

 

 

『マダ言ウカ!!コノ小娘ハ!!』

 

 

その瞬間更に踏みつける力が増し叢雲は黒い床に押し付けられギリギリと踏み潰そうとしてくる

 

 

『ココデ貴様ヲ殺シ、意識ヲ奪ッテモ良イノダゾ!!

イイ加減本性ヲ見セロ!!欲深キ者ヨ!!!』

 

 

(……私は何も要らないし求めない……だって…アイツは……そんなことしなくても与えてくれるんだから……!!)

 

 

『………ドウイウ意味ダ?』

 

 

叢雲は踏み潰されながら両手を使いその力に反発しながらも力強く動こうとする

 

 

(私は力が欲しかった!!だからアイツは自分の技術を私にくれた!!

私はワガママを聞いて欲しかった!!だからアイツはそれに付き合ってくれた!!

私は艦娘を助けたかった!!だからアイツは私と共に全てを捨てても良いと言ってくれた!!

私は戦いたかった!!だからアイツは戦うことを許可してくれて私は今ここで戦わせてくれている!!!

 

誰よりも仲間を失うのを恐れているのに恐くて仕方ない筈なのに!!!

それでもアイツは私に全てを与えてくれる!!

そんな奴に私は出来ることを返したいのよ!!!!

私に出来ることはアイツの障害を破壊すること!

アイツが戦えない代わりに!!私が戦う!

この命捨ててでも!!

お前なんかに求めるもの何てものは何一つとしてない!!)

 

 

叢雲の声にしばらく謎の声は黙りそして少しだけ踏みつける力を緩める

 

 

『……ソノ為二命ヲ掛ケルノカ、馬鹿馬鹿シイ

本当二愚カデ、滑稽デ、惨メナ生キ物ダナ

貴様ハ』

 

 

(私の気持ちが分からない……なんて……可哀想ね……)

 

 

『分カリタクモナイ……ダガ貴様ノ行ク末ガ見テミタクナッタ』

 

 

謎の声は完全に叢雲を踏みつけるのを止め仰向けにすると暗闇だけが続いている

だが、何も居ない筈なのに真っ赤な瞳が二つ鋭く叢雲を見下ろしている

 

 

『面白イ、私ガ今マデ見テキタ艦娘ヤ人間トハ違ウ様ダナ

ソノ覚悟トヤラ

ダガ、最後ノ質問二答エテモラオウカ?艦娘』

 

 

(な、なによ……?)

 

 

ノイズ掛かっていた声は消えハッキリとその言葉だけが聞こえ

 

 

『オ前ハ何ヲ目指ス?艦娘ト人間達ガ勝利スル奪イ取ッタ未来カ?

ソレトモアノ方ガ目指シタ皆ガ手ヲ取リ合ウ終ワリノ未来カ?

答エヨ艦娘』

 

 

その質問に叢雲はクスッと笑いながら当然の如く答える

 

 

「どちらでもないわ、私は佐渡が連れてくる娘達を守るだけよ

それが深海棲艦だろうと艦娘だろうと化物だろうと関係無い

私は佐渡の歩む道を共に目指すだけよ」

 

 

『貴様ニハ艦娘モ深海棲艦モ関係無イト言ウノカ……ソウカ』

 

 

 

叢雲の答えに謎の声は大声で笑いだす

そしてその声は暗闇の世界に響き渡り見えているのは瞳だけではあるがとても楽しそうにしていた

 

 

『ハッハッハッハ!!!面白イナ貴様ハ!!

ココマデアノ男二依存シテイルトハナ!笑エテクル

良イダロウ、貴様ノ身体ハ一先ズ乗ッ取ラナイデオイテヤロウ

ココマデ無様二滑稽二戦ウ貴様ノ行ク末ヲ傍観シテヤロウ!!』

 

 

その声は叢雲の艤装から響き渡りそして瞳が叢雲の目の前まで迫ると再び腹部を踏みつけられている感覚がする

 

 

『ダカラコソ、今ホンノ少シダケ我ノ力ヲ貸シテヤロウ(・・・・・・)

 

 

言われた瞬間叢雲の口を無理矢理何かの力で開けさせると叢雲の目の前に巨大で大きな爪が現れ何か黒い雫の様な物を口に入れようとしていた

 

 

(あ、あんた!一体何をするつもり!?)

 

 

『ナァニ我ノ力ヲホンノ少シダケ貸シテヤルダケダ

タダシコレハ万能デハナイアレヲ倒シタイノナラソノ身ヲ捨テル覚悟デ行ケ

効果時間モ長クナイ早メニ決着ヲツケヨ』

 

 

その言葉と共に叢雲の口の中にも黒い雫が一滴だけ垂らされると全身に再び激痛が走り焼けるような痛みに襲われる

 

 

(あぁぁぁぁぁぁぁ!!!

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!

焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける!!!!!

身体が!焼ける!!熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!!!!)

 

 

『耐エテ見セヨ愚カナ艦娘ヨ

サァ、起キ上ガリ行クガヨイ』

 

 

叢雲は激痛に苦しみながらまるで水面に上がっていくかの様な感覚に襲われながらもその床から離れ浮上していきながら下を見下ろすとそこには二つの赤い瞳と一瞬だけ自分より遥かにデカイ影が見えた

 

 

(待ちなさ……い!あんたは……一体!!)

 

 

聞こうとした瞬間その真っ暗な世界がどんどん遠くなっていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ソノ一雫ハ貴様ノ希望カ、絶望カ

オ前ノ行ク末ヲ我ハコノ深層ニテ見サセテモラウゾ

艦娘、叢雲ヨ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…………何か…夢を…見……てい…た?

覚えて……無い…けど)

 

 

叢雲は再び目を覚ますと辺りを確認すると破壊された瓦礫の山だけがあり先程の倒れていた場所から動いていなかった

だが、腹部に手を伸ばすと先程まで酷くは無く少しだけ焼け焦げているだけであり流血も止まっていた

 

 

(身体は……動く………でも痛い……それでも……)

 

 

何かを物に掴まり何とか立ち上がるとその場からゆっくり、だが確実に動きだし吹き飛ばされた先に居るカナを睨み付ける

 

 

(アレヲ……倒さないと……!!)

 

 

 

叢雲の左目は真っ赤に染まっていたが少しずつその色は元の色に戻っていることに叢雲は気付くことは無かった

 

 

 

 

 




次回

淡い期待

椿とカナの二人はその勢いを増し一気に長門達連合艦隊を潰そうとしており敗北の言葉が頭を過っていた

アズレンのアニメ見てきたのですが……その…
ぶっちゃけ声が……嫌いと言う訳では無いんですよ?
正直、うーん…みたいな感じと何故に空母が空に対空出来るんだ!?とかツッコミががが……
後、2話最後の瑞鶴が若干棒読みなのが……
結論、プリンツとエンタープライスが可愛い
ゲームをやろうか本気で悩む(やってるのが多すぎてですね……)

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