艦隊これくしょん ー誰ガ為ノ戦争カー   作:霧雨鴉

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第二幕、開幕です!!
後半からは深海棲艦と戦争の真実に迫っていきます!!





第十一章 砕かれたプライドと壊れた兵器  
深層ニテオ前ヲ待ツ


(ここは……どこ?……私は…………何で……沈んでるの………?)

 

 

叢雲はゆっくりと目を覚ますとそこは海中の様な場所でありとても心地よく感じていた

 

 

(気持ち良い…………でも沈んでる…………沈む程に身体が心地よく軽くなっていく…………)

 

 

そして再びゆっくりと目を閉じようとするが慌てて目を開ける

 

 

(……!!気持ち良いとかじゃなくて!!私沈んでる!!何で!!私は轟沈したの!?嘘でしょ!!!)

 

 

叢雲は周りを確認すると黒い手の様な物が叢雲を優しく掴んでいた

 

 

(放せ!!私は沈むわけには行かないのよ!!!)

 

 

掴んでいた手は案外簡単にほどくことが出来急いで海面を目指して泳いでいく

 

 

『私達ヲ置イテイクノ?叢雲チャン?』

 

 

後ろから聞こえる声に叢雲は泳ぐのを辞め、その場に止まってしまう

その声は叢雲が一番良く知り聞き馴れた声であり自分の過去であること

 

 

(…………ごめん、私は行かなくちゃ行けないの)

 

 

『置イテ行カナイデヨ!!!私達ヲ!!』

 

 

『ソウダヨ!私達モ連レテッテヨ!!!!』

 

 

声が増えその声も叢雲には聞き覚えがあった

それでも叢雲は振り返らずに海面を目指し浮上していく

 

 

(ごめん……ごめん…皆……いつか……いつか私もそこへ行くから………ごめん!!!)

 

 

叢雲は謝りながら浮上していくと身体に重圧が掛かっていくが何とか浮上する

 

 

「ゲホッゲホ!!こ、ここは!?」

 

 

浮上し周りを見るとそこは一面真っ暗な世界

辺りからは水が滴り落ちる音が聞こえ見渡しても光一つ見えない

そしてそれと同時に異常な程の渇きに襲われる

 

 

「あ………あぁ!喉が……!渇いて……!!」

 

 

『ホホウ?喉ガ渇イタカ?ナラコレヲ飲ムト良イ』

 

 

いきなり聞こえたノイズ掛かった声に黒い液体の入った物を渡されると叢雲は一気に飲み干す

 

 

「あ、甘い……美味しい…!染み渡る……身体に!!!もっと……もっともっともっともっと!!!!」

 

 

『ハハハハハハ!!ソノ程度デバ潤センカ

ナラバソコニアルデハナイカ?』

 

 

声の主は見えないが叢雲は自らが立っている海面?を見ると確かにそこには先程渡された黒い液体があった

 

 

「喉……渇いた……寄越せ…寄越せ寄越せ寄越せ!!!」

 

 

その言葉にそそのかされるように叢雲は海面?に口を付けて飲み始める

黒い液体は程よい甘さであり身体に染み渡るように叢雲の渇きを潤していく

それと同時に髪色が赤く染まっていき肌も白くなっていく

 

 

『ハハハ!ヤハリ墜チタカ艦娘

サァ飲ミタケレバ飲メ!!オ前ヲ満タシテクレルゾ?』

 

 

「美味しい!甘い!美味しい美味しい美味しい美味シイモットモットモットモット!!!!……?」

 

 

一心不乱にそれを飲んでいると頭の片隅に何かが過る

それはある男と交わした一つの約束

 

 

『必ず帰ってこいよ!!勝利なんかよりお前が無事なのが大切何だからな!!』

 

 

『分かってるわよ、ーー』

 

 

(ン?私……何シテルンダッケ?………渇イタ?……喉?……違ウ……ここでこんなことしてる場合じゃない!!!!!私は!!!)

 

 

だが、その瞬間叢雲は異常な嘔吐感に襲われると手を喉の奥に入れ無理矢理飲んでいた黒い液体を吐き出していく

 

 

「おえぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

『………ホホウ?ソレヲ吐キ出ストハ驚イタナ

素晴ラシイ精神ノ強サダ

大分貴様ハ奴ヲ信用シテルヨウダナ?』

 

 

嘔吐された黒い液体は海面に消えていき叢雲の体内から全て出ていくと同時に赤い髪の毛は銀色に戻り白い肌も元の綺麗な肌色に戻っていく

口の中には甘く美味しい蜜の味が残るが一滴残さずに吐き出す

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ………ここはどこ!?

私は戻らないと!!!」

 

 

『ソンナニ戦イタイノカ??駆逐艦叢雲』

 

 

その声に叢雲は初めて自分の目の前に居る何かに気付く

 

 

「………あんた誰?」

 

 

『ハハハハ!!今更我ノ存在二気付イタカ?馬鹿者メ!!

嫌、オ前ハ私ヲ知ッテルサ?ソウダロ小サキ勇者ヨ』

 

 

姿は見えず声も叢雲の耳型電探から聞こえておりしかもノイズが混じっていたその声に叢雲は聞き覚えがあった

 

 

「あ、あんた!まさか!!嫌!有り得ない!!!あんたはあの時!!!」

 

 

『思イ出シタカ、勇者ヨ』

 

 

その声に聞き覚えがあり叢雲は慌てて艤装を使おうとするが腰にあるはずの刃が無く主砲も無い

今叢雲は丸腰になっておりその事にやっと気づいた

 

 

「………何で」

 

 

『決マッテルダロ?ココハ我ノ深層ダカラナ』

 

 

姿が見えないがその巨体が動きだし叢雲の周りを回ろうとするが

 

 

『………フムゥ、コノ姿デハ大キイカ

仕方無イ『アレ』ヲ使ウカ』

 

 

姿が見えないその怪物は自らの身体を切り裂くとその傷口から大量の出血をするとその巨体が動かなくなると黒い人間の様な姿を現す

 

 

「っ!?」

 

 

『ふむ、こんなもんか

この姿は久しぶりになるからな少し違和感があるな』

 

 

「あ、あんた!何よその姿!!!」

 

 

黒い人間の様な姿をしたその化け物はまるで深海棲艦の姫級の様に女性の形をしていた

 

 

『我の『能力』で作った

人間型の姿だ

これで話しやすくなっただろう

あの巨体では動きずらいからな

それとあんたは辞めよ、我にも名がある』

 

 

「…………私はあんたの名を知らないわよ」

 

 

『ふむ?それもそうか貴様とは話すことがないと思ってたからな

そうだな、我が名はふ………嫌コードネームは辞めておこう

ウーム、ならば(ブラッド)と仮名付けておこう』

 

 

ブラッドは黒い姿をしているがその身体を軽快に動かし真っ暗な世界を歩いていく

 

 

「…………あんた…」

 

 

『ブラッドだ、あんたではない殺されたいのか?

あの巨体でまた踏み潰してやっても良いのだぞ?』

 

 

「…………ブラッド、何でここに居るの?

あんたはあの時…」

 

 

『あぁ、あれか

確かに痛かったな、身体の内部から破壊される痛みとは流石に味わったこと無かったからな?

まぁそれは良いとしよう、どうせお前には関係ない』

 

 

その瞬間ブラッドが空中にジャンプするとその姿が再び掻き消える

 

 

『良くもまぁ貴様は耐えられた物だあの激痛に

我の血を二度と受けて生きているとは思わなかったぞ駆逐艦叢雲』

 

 

「………私があんたの血を受けた?」

 

 

『そうさ、一度目は我がお前を助け

二度目はお前は力を追い求めた』

 

 

「はぁ?あんたと会うのは初めてよ!!」

 

 

『違うな、それは我がお前の記憶を弄ってるからだ』

 

 

「そんなわけ……!!」

 

 

叢雲はそこで思い出す今までの戦闘で起きた不思議な事

カナからの砲撃をまともに受けて立ち上がれたこと、木曾の刀を抜き振るうことが出来たこと、沸き上がる力、二度の激痛

 

 

「まさか……あれって……」

 

 

『そうだ、我の力だ

正確には我が与えた力だがな』

 

 

その力を叢雲はハッキリと覚えていた

だがそれでも

 

 

「私に…あんたとの記憶がない……」

 

 

『言ったであろう、その時の記憶は消しておるからな

お前は我の血液を身体に取り込み我の力の『一部』を使った』

 

 

「……ちょっと待って!一部!?あれが一部なの!?」

 

 

『あぁ、お前は我の力をほとんど使いこなせなかったからな

ほんの一部だ』

 

 

ブラッドは話をしながら叢雲の周りを歩いていく

 

 

『お前がさっき飲もうとしていたのは我の血液だ

お前の身体が既に我の血液に馴染みお前の身体がそれを欲している

それは一気に力を二回も使ったからだ

そしてその反動でお前は我の血液に溺れ求めそうになっていた

だが叢雲、お前はそれを精神的な物で跳ね返した』

 

 

「…………私は………深海化……してるの?」

 

 

『違うな、深海化はお前の潜在意識に深海の意識が入り込むことだ

つまりお前の人格が艦娘の人格、そして深海の人格に完全に別れること

それが深海化だ』

 

 

「……あんた何でそんなことを知ってるの?」

 

 

『決まっておろう、その研究は始原(ピース)と『ロキ』が解き明かした』

 

 

「っ!?待ちなさい!!ロキって誰よ!?」

 

 

叢雲は聞いたことがない名前に驚き聞き返すがブラッドは答えない

 

 

『お前には言う必要はない

いずれ会敵(エンチャント)するからな

 

だからこそお前が置かれている状況は深海化ではないのさ

何せ、私と言う完全に別の意識なのだからな

いずれ知るお前の置かれている状況を、お前がどうなっているのかをな

そして絶望する……確実にな』

 

 

ブラッドは叢雲の耳元で言うとその言葉の重さを理解する

そしてブラッドは再び歩き始める

 

 

『まぁ、とりあえずカナ討伐おめでとうだ

…お前はやはり繰り返すのだな』

 

 

「………何が言いたいの?」

 

 

『嫌?お前は我に『奪われた』はずなのに知らぬ者からまた『奪う』のだな

流石は人間の作った兵器艦娘だ』

 

 

「違……!!」

 

 

『違わないだろ?お前はカナからドレス島を…アイツの全てを奪った

仲間を、平和を、守るべき物を………命すらも』

 

 

 

「っ………」

 

 

『お前は最後の言葉を聞いたのだろ?

カナの願いを叶わぬはずの願いを』

 

 

「…………」

 

 

『どうだ?嬉しいか?楽しいか?誇らしいか?

ハハハハ!!!流石だよ!!艦娘!!!』

 

 

笑い声が響き渡ると叢雲は黙りこんでしまう

 

 

『どうした、艦娘浮かない顔だな?』

 

 

「……………私は……奪ったの?」

 

 

『ハハハ!何を今更言っているんだ?

あのドレス島は元々ピースが拠点として使っていた無人島さ

確かに近くに島はあったがあの島は完全に孤立した島として人間達に見向きもされてなかった島

だが、東雲はピースの秘密を知りたいが為にカナを探し殺そうとしていた

それは世界の為だと言っていたが恐らく自らの為だろうな

自分が『真実』に近付きたいが為に!!!お前達を利用したんだよ!!!』

 

 

叢雲はブラッドに言われて初めて気付いてしまう

自分達がやっていた事の意味を

 

 

『ハハハ!!笑えてくるな相変わらず!!!

お前達人間は勝手に自分達の物だと思い込み深海棲艦が住んでるだけで奪われたと勘違いする

ただ、他人の物が欲しいだけなのにな!!ハハハ!!!』

 

 

「っ………」

 

 

『どうした?言い返してみろ?お前達は自分達がやって来たことが『正義』であり『正しい』のだろう?

異種族が住んでる物を奪うのがお前達の正義なのだろ!?違うか!!!駆逐艦叢雲!!!』

 

 

「……………えぇ、その通りよ

あんたが合ってるわ」

 

 

『ほほう?認めるか駆逐艦叢雲

お前達はただ、奪っているだけだと』

 

 

「認めるわ、確かに私達は奪ってばかりね

あんた達の居場所を命を……ただ奪い続けている」

 

 

『ならお前も』

 

 

「だから、私はもう奪わない」

 

 

『……………は?』

 

 

叢雲の予想外の発言にブラッドは驚き目を丸くすると叢雲は続けて話を続けていく

 

 

「カナの願いを聞いて、カナの覚悟を、守る力を見て思ったのよ

私はもう誰からも奪わない!!!」

 

 

『……何を土地狂った言っておる?

お前達は奪い合うしかないだろう?それに深海棲艦もお前達を殺しに来ているんだぞ奪う以外の道なんてのは』

 

 

 

「まだよ!まだ私達に向かうべき道はある!!!

『和解』するって道が!!!」

 

 

その言葉にブラッドは黙りこむ

 

 

「だってあんた達にも話が出来るんでしょ!会話が出来るんでしょ!!それなら私達は話し合える!!分かり合うことが出来る!!!」

 

 

『………無理だな…お前達は我々と分かり合えない』

 

 

「そんなことない!!現にエアや他の深海棲艦と私は話し合えているだから!!!」

 

 

『不可能だ!!!お前達が分かり合う?馬鹿も休み休み言え雑魚共が!!!』

 

 

その瞬間叢雲の腹部に鈍痛が走ると勢い良く吹き飛ばされ海面を転がっていく

 

 

『まだ分からんのか!!もう既にそのやり方は破綻してるんだよ!お前達と我々は分かり合えない!!!』

 

 

「ゲホッゲホ!分かり…合える!!あってみせる!!!私とその仲間達がそれを成し遂げて見せる!!!」

 

 

『その願いを持つ者は過去にも居た!!だがそいつは優しすぎた故に殺された!!!種族が違う以上分かり合うなんて不可能なんだよ!!!』

 

 

「そんなことないわ!!!私達は分かり合えるはずよ!!!!だって現に私はこうして生きてる!!

あんたに助けられなかったら私は既にカナに殺されているんだから!!!」

 

 

二人の間に一時の静寂が訪れブラッドが口を開く

 

 

『……我がお前を助けた……だと?』

 

 

「そうよ!あんたがもし力を貸してくれなかったら!私はとっくに死んでいた!!違う!?」

 

 

『違うな!!我はお前に死んでもらっては困るからちょっとだけ力を貸したんだよ!!我は我の願いの為に力を貸したに過ぎない!!!』

 

 

「でも、その結果私は助かった!!!私達は必ず分かり合える!!人間嫌いだった!艦娘()人間(佐渡)が分かり合えたように!!!!」

 

 

『ほざくな!!艦娘風情が!!!』

 

 

その瞬間再び背中に鈍痛が走り叢雲は海面に叩き付けられる

 

 

『お前達が我々から奪ったのに!!綺麗事ばかり言うでないわ!!!餓鬼が!!!』

 

 

「それでも!それでも私はもう奪いたくない!!!

あんな気持ちを!!誰にもさせたくないから!!私が体験したあの気持ちを誰にもさせないために!!!」

 

 

叢雲の切なる願いにブラッドは歯軋りをすると自らの身体を溶かし再び巨体を動かす

 

 

『モウ良イ!!興ガ冷メタ!!!失セヨ!!!』

 

 

ブラッドが海面を思い切り叩くと叢雲の身体が宙に浮いていきブラッドを見下ろす

 

 

「ブラッド!!私は諦めないからね!!!

あんたとも分かりあってみせる!!!絶対に!!!」

 

 

しばらくすると叢雲は完全にその世界から消え失せブラッドは海中に潜ろうとする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『不可能ダ、何セソレハピースノ願イデアリオ前達ガ裏切ッタノダカラナ』

 

 

 

 

 

 




次回

戦争後

深層にて叢雲とブラッドは話し合い話は平行線のまま終わりを告げ再び記憶が消される
そして、叢雲は静かにベットの上で目が覚める


不味いなぁ……これ叢雲過去編やらないといけない気がすると思ってる作者ですはい()
次回からちょっとアンケート取りますかね!
あ、後何となくE6ボス殴りにいったら瑞鶴落ちました!!!やったぜ!!!
これで、鶴姉妹が揃ったぜ!!!







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