艦隊これくしょん ー誰ガ為ノ戦争カー   作:霧雨鴉

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夕張 過去編 四

「………医療…ポットですか?」

 

 

提督に呼ばれて執務室に来た私にある設計図を渡され言われた言葉である

 

 

「そうだ、お前らに言うほどでも無い事だがつい先日横須賀鎮守府が深海棲艦の強襲に会ってな

それを懸念した大本営からの指示だ

一週間以内に作れ」

 

 

渡された設計図と資料を見ながら考えており少し疑問に思った事を聞く

 

 

「あ、あの……提督一つよろしいですか?」

 

 

「………はぁ…何でお前は普通に聞いてくるかなぁ?

あれだけ殴ってるのによ……まぁいいや何だ?」

 

 

「えっと、この設計図通りに作らなくても良いですか?」

 

 

「……………はぁ?」

 

 

「あ、いえあれですよ?別に出来ないわけではないのですが無駄を省いたりするだけです

後、艤装開発に使う資材を頂ければ完璧な物を作りますよ?」

 

 

提督は深いため息を付きながら椅子にもたれかかるとお茶を飲む

 

 

「好きにしろ、お前の腕は認めてるからな

全く……工廠に着かせたのは適任だったみたいだな

どんな奴を着かせても半月と持たないからな」

 

 

「そうなんですか?仕事以外は良い場所ですよ?」

 

 

「………皮肉か?貴様?」

 

 

「…?」

 

 

私が首を傾げると提督は深く溜め息を付く

実を言うとこの提督と私は普通に会話が出来る仲ではある

そう言えば話によるとこの鎮守府で唯一成果を上げている私の事を唯一認めてるだとか冷血が言ってたっけ?

 

 

「まぁ、いい

とりあえずそれを作っとけ

いつもの作業と平行してな」

 

 

「え、そうすると二週間は掛かりますよ?」

 

 

「良いから作れ、作れなかったら解体……は辞めておこう

お前を無くすのは惜しい、そうだなその伸びた期日飯と風呂抜きだ」

 

 

「うへぇ……一週間徹夜じゃないですか……」

 

 

「ハハハ、出撃して死ぬよりはマシだろう」

 

 

提督が嘲笑っているとふと疑問に思ったことを聞く

 

 

「そう言えば、提督って何で艦娘達を物として扱うんですか?」

 

 

「あん?そんなの決まってるだろ?

お前達は代用が利くからだよ?」

 

 

「まぁ、確かに私達は作られてますが……各々人間と同じ思考し理解し感情があるって分かって言ってるんです?」

 

 

「………自棄に今日は言ってくれるな?夕張」

 

 

「久しぶりなので少し聞きたくて」

 

 

「…分かっては居る……嫌、分かりたいとは思ってる

だがまぁ、今は戦争中だし……なーんて言うこと言い訳だな

別に俺は成り上がりたいだけだよ、艦娘を使い潰しても許されるからそうしてるだけだ」

 

 

「へー……いつか艦娘に裏切られるって考えは無いの?」

 

 

「あいつらが?裏切る?

ハハハ!裏切ったところで居場所なんてないだろ!?

裏切りがバレたら海軍に消されるんだ!出来るわけねぇよ!!」

 

 

提督が大爆笑しながら顔を押さえているとその姿を見ながら溜め息を付く

 

 

「あ、それと最後に一つだけ聞きたいことがあったの」

 

 

「ハハハ……って何だ?

次で最後だぞ?」

 

 

「……あのさ、何で提督の秘書艦は『冷血』って呼ばれてるの?」

 

 

「あぁ?……あー…アイツか

まぁそりゃそうさ、何せアイツは血も涙も無い奴だしな」

 

 

そう言うと提督はお茶をすすりその理由を答えていく

 

 

「俺が艦娘を使い潰してもアイツは淡々と俺の指示をこなしていく

それが自分の姉妹艦や仲が良かった艦娘であろうと俺に楯突くこと無く従う

例え目の前で仲間が死んでも壊れても悲鳴を上げていても誰にも手を差し出すことはない

そんな奴さ、だから誰もアイツに逆らわない逆らえない

アイツは俺の半身みたいなもんだからな」

 

 

「……へー……冷血が…ね?」

 

 

その話を聞いても本当だとは思わなかった

でも提督が嘘を付くとは思えない

 

 

(……冷血って何でそうなっちゃったんだろ?)

 

 

ふとそう思っていると電話が鳴り出し提督が嫌な顔をする

 

 

「チッ、機嫌が良いときにまたかよ」

(あ、ヤバいここまで見たいね)

 

 

「では提督、私は失礼致します」

 

 

私の言葉に耳を貸さずに提督は電話に出ると苛立ちながら話し出す

 

 

「はいはい、何ですか如月大元帥?

……はぁ?轟沈数が多い?仕方無いだろ!ここは激戦区何だぞ!!!」

 

 

如月大元帥……良く提督から聞く単語

この人との電話だけの時は本当に機嫌が悪くなる

何度か話が終わった後殴られるから嫌

私は執務室を離れ廊下を歩いているとふと艦娘とすれ違いお辞儀をすると耳元で囁く

 

 

(報告書を渡したらすぐ退散した方が良いよ

提督かなり機嫌が悪くなるから)

 

 

「……え?」

 

 

振り返ること無く歩き工廠に着くと扉の向こう側で誰かが話している

 

 

『うん……うん…分かりました、ではお願いします

私が死んだら情報のみを送っておきます』

 

 

(……?この声は冷血?でも誰だろ?)

 

 

私が扉を開くと同時に冷血は黒い携帯電話を切りこちらに気付く

 

 

「あ、お帰り夕張

提督から何か押し付けられたの?」

 

 

「んー、まぁそんな感じ

誰かと電話してたの?」

 

 

「うん、ちょっと大本営の人とね

この前戦った深海棲艦の情報が知りたいらしくてね

私っていつ死ぬか分からないから死んだら情報だけでも送りますってね」

 

 

「へー、冷血って大本営とも連絡取ってるんだ?」

 

 

「まぁねー、これでも私コミュニケーション能力あるからね!」

 

 

冷血が威張っていると私は設計図を机に置き一言だけ告げる

 

 

「ねぇ、冷血

大本営と電話できるなら何でここの状態を伝えないの?」

 

 

私の言葉に冷血は固まり深く溜め息を付くと頭をガシガシと乱暴に撫でる

 

 

「え、ちょ、冷血?」

 

 

「貴女はそんなこと気にしなくて良いの!

ほら!提督から任された仕事があるんでしょ?」

 

 

「あー!そうだった!

よーし!また徹夜して頑張らないとなぁ!!

絶対に提督の助けになってやるー!」

 

 

私が気合いを入れると冷血はゆっくりとした足取りで工廠を後にしようとする

 

 

「あれ?行っちゃうの?」

 

 

「私が居たら邪魔でしょ?また来るよ!」

 

 

「そうでもないんだけど……分かった!じゃあね!冷血!」

 

 

私は冷血に手を降ると冷血は工廠を後にする

誰も居なくなった工廠で一人私は気合いを入れる

 

 

「よし!提督の為に頑張るぞ!

ついでにこれが完成したら冷血と外に出掛ける許可貰いたいし!

やるぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

工廠の扉にもたれ掛かる様に冷血は中の夕張の話を聞くと崩れるようにその場に座り込む

 

 

「……夕張……ごめんね…ごめんね……

でも…これしか方法が無いの…誰も助けてくれない…皆に託されたから…やるしかないの……」

 

 

座り込むと同時に冷血は枯らした筈の涙を流しながら声を殺しながら亡き始める

 

 

「……死にたくない…死にたくないよぉ……

もっと夕張と話したいよ…遊びたいよ……

でもこれは私達の罪…私達の罰……やらないと…いけないけど……辛いよぉ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、私は知らされた

提督から冷血が轟沈したと

 

 




次回

失っていく物

何かを得ようとする夕張に容赦なく襲い掛かる戦争の波
それともこれは仕組まれた事?

次回……彼女は…





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