叢雲は屋根をゆっくりと歩いていくと電探の光をオフにし恐る恐る佐渡の隣に座る
「貴方は参加しないんですか?今回の功績は私だけじゃなくて貴方もあるんですよ?」
「笑わせるな、俺は今回なにもしてないさ
主役はお前だろ、あの化物を倒したのは間違いなくお前の功績だ」
「違いますよ、私の功績は全て貴方の功績です
それとそろそろ無くなると思ってこれを」
「ん」
そう呟くと持ってきていたワインビンを渡すと佐渡は受け取り開ける
「お前は持ってきてないのか?」
「私は別に…
先程好きに飲み食いさせて頂きましたから」
「相変わらず謙虚だな、お前は自由なんだぞ?
あと敬語は辞めろ、苦手なんだ」
「そうはいきませんよ、実際皆の手前と二人の時は違いますから」
「は、相変わらず強情な餓鬼だな
なら
「……わかりまし」
「あん?」
「……分かっ……たわ…」
「よろしい」
佐渡はいつもの雰囲気とは違い少し近寄れない感じになっており珍しく煙草を吸っていた
「平和だな、艦娘」
「そうで……そうね、平和
平和そのものね、ついこの間まであんなのと戦ってたとは思えない程に」
叢雲が下を向くとイムヤがゴーヤ達と騒いでたり長門と陸奥が楽しそうに談笑しているのを見え微笑む
「お前が望むのはこう言う世界か?」
「……えぇ、戦争なんて無い皆が平和な世界
深海棲艦も、艦娘も、人間も、皆が笑って楽しく生きていく世界
私が望むのはそれだけよ」
「ほう?まぁ、このまま行けば何とかなるのかもな」
「…そうね…ゲホッ」
叢雲は煙草の副流煙を吸い込んでしまいむせると直ぐ様佐渡は煙草を消す
「良いのに、今日位は吸ったら?」
「別にやることがないし癖で吸ってただけだ
お前の肺を汚す訳にはいかないからな」
「………相変わらずそう言うところは素なのよね貴方は」
「何か言ったか?」
「何も言ってないですよ!」
そう言うと佐渡は不意にグラスを取り出すとワインを注ぎ叢雲に渡す
「………突然何?」
「一人酒は気分が悪いんだ
付き合え」
「いや私お酒は」
「命令」
「………はい」
渋々受けとるとグラスの中にあるワインを軽く飲むと
「……?これって白葡萄ジュース?」
「炭酸入りのな、どうやらお前達を考慮してたみたいだな」
「なーんだ、じゃあ良いか」
「あ、そうだ艦娘……いや叢雲」
「なにかしら?」
佐渡の方を向くとグラスを差し出しており二人は静かに乾杯する
「我々の勝利に」
「乾杯」
静かな夜に二つのグラスが当たる音が響き渡りのんびりと下を見下ろす
「……時々思い出すの」
「何をだ?」
「…………もしも…もしもあの時私は貴方に出会わなかったら……どうなってたんだろうって」
「………さぁな」
グラスを持ちながら小さく縮み込むと少しだけ震える
「あの時……私は
今まで持っていたプライドも、価値観も、力も、全て
破壊され、蹂躙され、打ち砕かれた
そして……思い知らされた、
「…………」
「私は兵器よ、人間が扱う人の形をした兵器
だから割り切っていた、人間は私達が恐ろしいから虐げると
正直心の底から
私より弱い、ただの使い手だから
深海棲艦何かより私達が強いと
でもそうではなかった」
叢雲は震えながら怯えながらグラスに入った飲み物を飲む
「深海棲艦は私達より遥かに強かった
話に聞くよりずっと大きく危険な化け物だった
こんなの勝てるわけ無い
そう思った
だから私は動けなかった」
「は、何度聞いても笑わせるなクソガキ」
佐渡の方を見ると笑っておりグラスに残っている飲み物を飲み干す
「相変わらず精神は弱いままの様だな
技術や力、判断能力は向上しても中身は変わってない
とっとと成長しやがれ、がきんちょ」
「……はぁ、何であんたはアレを見ても怖じ気づかないのか今でも分からない
でもそんな貴方に私は憧れている
いつか貴方見たいになりたいわ」
「は、一生掛かっても無理なこった
お前じゃ不可能だっての」
「本当に相変わらず口は最悪に悪いわね
初めて会ったときから変わってない
そんなんだからあの娘に言われるのよ?」
「はは、何だ?またしごかれたいのか?」
「それは勘弁してください」
そんな雑談を交わしながら二人だけの時間を楽しんでいると不意に佐渡が言う
「まぁ、俺もあの時お前に会わなかったらここには居なかっただろうな
……こんな日の当たる世界にはさ」
「……でも貴方にとても似合うのよ
こっちの世界が」
「そうか?俺はどちらかとあっちの世界が似合うと思うんだけどな」
「そんなことないわ、いくら貴方が変わっても根本は変わってない
だから、貴方はこっちに来て正解なのよ」
「……ま、ただし
佐渡はそう言うと飲み物を飲み干し瓦を歩いていき窓に手をかける
「……ねぇ、考え直してくれない?
私は」
「駄目だ、俺はお前達とは歩めない
……既に
その言葉と共に飲んでいたグラスを屋根に投げるとそれがパーティー会場に落ちる
「うん?何で空からグラスが……あ、あー!!!
雷撃姫ー!お前何でそんなところに登ってるんだぁ!?」
落ちた先に猿橋が居たらしく音に気付き屋根に座っている叢雲だけを見付ける
「え、ちょ、司令官!?」
叢雲が振り返ると既に佐渡の姿は無くパーティー会場に居る人達の視線を集めてしまう
「あれ?叢雲ー何してるんデースか!?」
「ちょっと叢雲!貴女どこに乗ってるのよ!?」
「叢雲ー!危ないから降りてきなよー?」
「おい雷撃姫!!!貴様グラスを割りやがったな!?」
「え、ちょ、は?し、司令官!!!!!」
…この後、叢雲だけ東雲大元帥や古鷹達に怒られたがパーティーは楽しく進んでいく
パーティー会場が騒がしくなっている様子を佐渡は聞きながら一人月夜を見ながら飲み直していた
「……悪くないな、こう言う騒がしいのも
ま、参加はしないがな」
そう呟くとグラスを月に掲げた後に壊れた銃を側に置く
「…………俺はお前の代わりが出来ているか?
……俺はお前の様に立ち回れているか?
……俺はお前の様に正義感で動けているか?
……教えてほしい…唯一俺が分からなかった
お前が来るべきだったこの世界に俺は馴染めているのか
ここはうってかわり小笠原島
ソラ達が眠っている最中、一人カナが倒れていた海岸へと足を運んでいた
海には人の気配を察知したからか深海駆逐艦達が浮上し一人を見ていたがその姿を見た瞬間隠れる
「……ふーん?あんた達やはりここの深海棲艦では無いみたいね?」
海岸へと歩いていき海を見渡していると不意に真っ赤なスマホを取り出すとおもむろに電話をする
何回か長いコール音の後に一人の女性が電話に出る
『んー……誰だい、こんな時間に僕へ電話をする奴は?
僕が誰か知っててやってるのかい?』
「……えぇ、知ってやってるのよ
久しぶりね」
電話先に相手はエアの声を聞くと直ぐ様目を覚ます
『……へぇ、珍しいねエア
僕に電話を掛けてくるなんて、一体どんな風の吹き』
「分かるでしょ、カナをここに運ばせたのはあんたよね?」
『……何の事かな?』
「とぼけないで、研究施設を藻屑にしても良いのよ?」
『おー怖い怖い、それだけは勘弁してほしいねぇ
まぁその通りだよ、僕が彼女をそこに送った』
「…何のつもり?」
『何のつもりって別に
彼女は今までずっと働いてたからね、すこしばかりの休息見たいなものさ』
「へぇ?あんたがそんなことするとは思えないんだけど」
『ははは、今回だけは何の目論みもないよ
まぁ、ただ君の自由さを見習って欲しくて送っただけ』
エアが話していると深くため息をつく
「ふーん……まぁ良いわそれだけじゃあ」
『あ、それと一つ君に忠告ね』
「何よ?あんたからの忠告ってろくな」
エアが呆れた声で話していると相手はハッキリとした声で話す
『あまり肩入れしないことだよ
君は僕達よりそっちに近いんだから、特に提督と艦娘にはね』
「っ!!」
その言葉にビクンと身体が跳ねると勢いでスマホを切ってしまいしばらく硬直する
「……流石ね……電脳の支配者…私の素行もお見通しって訳ね…
ロキ」
エアがそう呟くと空から艦載機が一機近付いてきておりエアに何かを落とす
「…何かしら?恐らく監視者の艦載機だけど……」
その内容を見た瞬間今度は大きく溜め息を付く
「………まぁそうなるわよね
はぁ……仕方無いわ、行かないとね
ハワイ島に」
内容にはこう書かれていた
伝達
四方ノ提督、及ビ姫達二連絡
ハワイ島ニテ会議ヲ開ク
集マレタシ
監視者
「これはこれはまたまた波乱の予感がするねぇ……」
ロキは椅子に座りながらモニターを付けるとそこにはパーティーをする艦娘達の姿や溜め息を付くエアの姿が映し出されていた
「僕に隠し事は出来ないよ、ネットワークは全て掌握済みだからねぇ
でーも、僕の興味は今は君だけだよ」
ロキは全ての映像を一人の男に切り替える
「僕でも分からない君は何者だい?
ねぇ……小笠原鎮守府の提督、佐渡満さん」
佐渡の映った映像を眺め笑みを浮かべる
次回
温泉に行こう!
次回もカナ戦打ち上げ会です!因みにもう一つ話がありますので今回も長くなります…
自分事ですが、e6でフレッチャーが泥しました!!!
タシュケントと言い、今回のイベントは良くレアキャラが落ちてくれる……
後はe7でグラーフをお迎えしなくては……(使命感)