艦隊これくしょん ー誰ガ為ノ戦争カー   作:霧雨鴉

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不屈の精神 二

その姿を、唐澤は見ているとおもむろにマイクを掴み長門へと連絡を入れる

 

 

「長門、応答しろ」

 

 

『何だ!提督!!』

 

 

長門は、磯風を布団に寝かせながらある民家に隠れていた

あの後直ぐに敵の艦載機達に襲われ、その攻撃を避けるために他の艦隊所属の戦艦達とは離れ離れになっていた

そして、磯風は長門達を襲う敵艦載機を撃破するために一人立ち向かったが向こうの感に触れたのか集中攻撃を受けてしまい

その際、左腕を被弾し服はボロボロになっており長門に抱えられながら逃げ、民家に共に隠れている

その左腕は、穴が空いておりそこから溢れ出る血液で真っ赤に染まっている

今は簡易的に治療を終え、腕には包帯が巻かれている

 

 

『今から説明することをよく聞け』

 

 

「あぁ、何だ!」

 

 

唐澤は、今起きている現状を説明すると長門は目を開きながら驚く

 

 

「何だと!?戦艦棲姫が沖縄に向けて進軍中!?」

 

 

その言葉に、磯風は起き上がり驚きながらも片腕を押さえる

 

 

『あぁ、だが現在小笠原鎮守府の第八艦隊が迎え撃っている』

 

 

「無茶だ!!そんなの勝てるわけがない!!」

 

 

『そうだ、無茶だ

勝てるわけがない誰が見てもな

だが、奴等は諦めてなんていない

だからこそ、長門そして連合艦隊への命令だ

多良間島の深海棲艦を掃討し、第八艦隊と合流

戦艦棲姫を撃破せよ』

 

 

「なっ!!!提督!!流石に無理が過ぎるぞ!!」

 

 

唐澤の無理難題を聞き長門は頭を悩ませる

現状、どこも大混乱状態

しかも仲間とは離れ離れ、砂浜の者達もどうなってるか分からない状態

この状況を打開出来るわけではない

 

 

『そうか、ならこの国は終わりだ

私もここで死ぬことになる 

繰り返すのか、あれを』

 

 

「!!!」

 

 

ただし、ここで諦めると言う選択は敗北を意味するそして佐渡の言う通り今回の戦艦棲姫の目的が島民だとすれば

 

 

「我々の……敗北…

そして……」

 

 

そう言うと長門は思い出し、拳を握り締め唇を噛む

大本宮襲撃事件を

彼女は、当時の数少ない生存者でありその敗北の全容を鮮明に覚えていた

逃げ惑う人々、蹂躙する深海棲艦、そして壊滅した自分の所属する艦隊の仲間達

助けて助けてという言葉を無視するように蹂躙され、多くの仲間が轟沈させられた

そして、長門はある化け物に会っていた

 

 

南方棲戦姫の歴戦種である  

 

 

彼女はたった一人で艦隊を壊滅させた

命乞いをする艦娘の頭を持ち上げ、空に投げると両手の艤装で的当ての様に楽しみ

逃げようとする者の脚を撃ち抜き、這いずる背中を踏みつけ頭を砕き

怯え戦う者に砲弾を弾きながらゆっくり近づき四肢を一つずつちぎる

その姿を鮮明に見ていた

泣き叫び、悶え苦しむ仲間達を嘲笑い

ボロボロの長門に見せ付けているその姿を

 

 

思い出した瞬間長門は凍りつく

あれを再び経験させられると思うと

 

 

『……悪い、だが思い出せあの屈辱を

絶望を』

 

 

「…そう……だな

敗北とはあれを言うのだな」

 

 

長門は立ち上がると、インカムの回線を全ての艦娘へと繋ぐ

 

 

「各艦隊諸君聞こえるか?」

 

 

『長門さん!!こちら瑞鶴砂浜に多数の深海棲艦!

何とか応戦してるけど、提督と通じないの!!

どうなってるの!?』

 

 

『長門さん!こちら榛名!!比叡が被弾しまして介護してるところです!!援軍を!!』

 

 

「各艦隊諸君、落ち着いて聞いてくれ

今、我々は劣勢だ

それに加え、どうやら本命の戦艦棲姫は沖縄鎮守府に向けて航行中だそうだ」

 

 

それを聞いた艦娘達は言葉を失う

そんな状態でも長門は続けて話す

 

 

「だが、今小笠原鎮守府の第八部隊の三人が迎え撃っている」

 

 

『『『!!!!』』』

 

 

『そんな!無茶よ!!

相手は歴戦の可能性が高いやつ何でしょ!』

 

 

『何でそんなことしてるのでち!』

 

 

とインカムからは、様々な声が聞こえるが長門は全て聞き流しながら用件だけを伝える

 

 

「そして、提督からの命令だ

我々は、何とかしてこの状況から深海棲艦を壊滅させ

第八部隊と合流、戦艦棲姫を撃破せよとのことだ」

 

 

 

『無理よ…そんなの無理無理!!』

 

 

『これを突破して更に戦艦棲姫も叩け?馬鹿じゃないの!?』

 

 

インカムから聞こえる否定的な意見を聞きながら、長門はすぅと息を吸い込む

 

 

「なら!我々より不利な状態でも戦いを挑んでいる!!第八部隊の三人は何だ!!

愚かでも!!馬鹿とでも言いたいのか貴様ら!!!」

 

 

 

『……』

 

 

その言葉に、インカムから聞こえてきていた否定的な言葉は一気に消え静かになる

 

 

「我々が頑張らなくてどうする!!

我々がここで負ければ全てを失うんだぞ!!

鎮守府も友人も提督も未来も!!

全て!!」

 

 

『で、でもよ?この戦いが全ての終わりだなんてよ……』

 

 

「戦艦棲姫の目的は、島民の捕獲だ

それを盾にされ沖縄を落とす予定らしい

沖縄が全て落とされた後どうなるか分かるか?

奴等が、他の歴戦種達が補給も全て完了させ、我等の本土を急襲してきたとしてもか?」

 

 

摩耶がインカム越しに意見するが長門の言葉に再び口をつぐむ

 

 

 

「正直、我々に勝機はほとんどない

だがな、ここで我々がこれを為せば勝機はある

戦艦棲姫の進軍を止めれば、沖縄は落とされない

そこで勝ちだ」

 

 

そこまで言うと長門は叫ぶ

 

 

「今こそ!!我等の意地を見せてやろうじゃないか!!!

奴等を殲滅し!!勝利を手にしようではないか!!

それともここで殺られるのを待つのか!?」

 

 

『……やりましょう』

 

 

『…やってやろうじゃねぇか!!』

 

 

『……やるっぽい!!』

 

 

『第八部隊の三人だけ何て心配よねぇ~

行かないとね~!』

 

 

長門はその返事を聞くと微笑み磯風の手を取る

 

 

「行けるさ、私もな

私の腕を取ったんだ、それぐらい報いを受けてもらおうじゃないか」

 

 

「すまないな、怪我してるなか」

 

 

磯風は立ち上がり、長門を見ると艤装を構える

 

 

 

「暁の水平線に」

 

 

 

『『『『『勝利を!!!』』』』』

 

 

それを合図に、隠れていた者達は静かに戦闘準備をし始め、砂浜の者達も無理矢理にでも海に出て応戦し、砂浜からは空母達が艦載機を飛ばしていく

 

 

 






長くなってしまい申し訳ないです……

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