佐渡率いる第八艦隊が、戦艦棲姫と戦闘を始め連合艦隊が多良間島で接戦を繰り広げている中沖縄鎮守府提督石澤は廊下でベンチに座り頭を抱えていた
自分のミスで、こんなことになってしまった
何故もっとうまく出来なかったんだと自分を攻め続けていた
そうでもなければこんなことには……
ふと、外を見ると警報が鳴り響き元帥の声が聞こえてくる
『ただいま、この沖縄に深海棲艦 戦艦棲姫と言う怪物がこちらに進行しております
現在我々、海軍の艦娘達が食い止めております
ですが、万が一と言うこともありますので皆様には避難を呼び掛けております
海軍の者達の指示に従い順次避難をお願い致します』
外では、海軍所属の軍人達が沖縄の島民を港へと案内している
そこには、大和や大淀も参加し艦娘の力を生かして老体等を運んでいる
石澤は自分の不甲斐なさに、警戒の低さに怒りを覚え石の壁を殴り頭も打ち付ける
「すまない……すまない…」
誰に言うわけでもないだが、謝りながらズルズルと壁に頭を打ちながら床に座り込み涙を流していた
「提督」
不意に、声がするとそこには入渠しているはずの阿武隈が立っており全身に艤装を纏わせているが服は所々破け、右腕には擦り傷、魚雷発射菅に関してはほとんど駄目になっており両手の艤装は腰に付けていた
「阿武……隈…」
「こんなところでどうしたんですか?
またお仕事サボりですか?」
阿武隈は、石澤の手を取り立ち上がらせると優しく微笑む唖然とする石澤は直ぐ様涙を袖で拭う
「そんなことより!!お前達は逃げろ!!
ここに戦艦棲姫が……」
「知ってます、先程大淀さんにあって状況を聞きました
そして、提督にお願いがあります」
その言葉に、石澤は察し阿武隈の両肩を掴み声を荒くする
「駄目だ!!そんなことさせられない!!!
君達は充分に頑張った!!だから…」
そこで言葉が止まりつぐんでしまう
その姿を見て阿武隈は、外を眺めながら潮風に髪を揺らしている
「提督、私ねここが大好きなの
いつも提督がお仕事サボって妙高さんや那智さんに怒られるからって一緒に逃げて
お昼は皆でご飯食べて、海に遊びに行って、釣りしたりご近所さん達と雑談したり子供達と鬼ごっこしたりしてね
たまに喧嘩もするけど、すぐ仲直りして
妙高さんも瑞鶴さんもみんな頑張ってるのに私だけ逃げるなんて嫌」
「阿武隈……」
「だから」
阿武隈は、振り返り石澤を真っ直ぐみて決意を話す
「私の大切で大好きなこの場所を守りたい!
あんな奴何かに島民の皆の居場所を大切な物を奪われたくない!!
こんな私でも役に立てるのであればやりたいの!!」
決意の言葉を聞いた、石澤は頭を悩ませながら口を開こうとするがまたつぐんでしまう
「馬鹿者、一人で行かせるわけないだろ」
その声に驚き、石澤が振り返るとそこには
那智、龍驤、朧が艤装を纏わせながら立っていた
「お前達……」
「この鎮守府を島を深海棲艦なんぞに渡してたまるものか」
「ウチの飛行甲板はまだ使えるで!あの野郎に目にもの見せてやるさかい!!」
「私達の居場所を渡さない」
各々の決意を聞くが、やはり石澤は頷くことはない
「クソ提督……」
その声に驚き声の主を見るとそこには潮に抱えられながら脚を引きずりながらもこちらに歩いてくる曙の姿だった
「曙!!どうして!!!」
「ごめんなさい提督!!曙ちゃんがどうしてもって……」
曙の状態は変わっておらず、右腕は傷だらけであり左脚は少しだけ治っており、脹ら脛の半分は治ってきているが一人で歩くのは困難な状態だ
曙は痛みに耐えながら、歩いていくと石澤の事を指差す
「高速…修復材…頂戴
お金は天引きで良いから……」
「!!」
曙から言われた高速修復材とは傷付いた艦娘達をたちまち治すことの出来る万能薬
ただし、使いすぎればその副作用により廃人になりかねない危険な物でもある
そして、更に言うとこれは大破艦達にはもうひとつのリスクがある
それは治すと言っても再生機能を向上させるだけのため、欠損したものなどには通常では耐えられないほどの苦痛を味わう事になる
「だが……あれは…」
「クソ提督!!しっかりしなさいよ!!
私達は艦娘よ!!兵器なの!!でもね!こんな駆逐艦にも守りたいものがあるのよ!!
こんな!どこ言っても皮肉しか言えない駄目な駆逐艦でもあんたやこの鎮守府は迎えてくれた!!
だから!!私にも守らせなさいよ!!
ここをみんなの居場所を!!」
曙はそこまで言うと、痛みに耐えきれず苦痛に顔が歪む
石澤は皆の顔を見渡すと皆決意とやる気に満ちており、少し息を吐くと自分の頬を殴る
「提督?」
そして、大きく深呼吸をするとみんなに指示を出す
「では!お前達に命ずる!!宮古島近辺で戦闘を行っている第八艦隊と合流!!戦艦棲姫を迎撃せよ!!
曙には高速修復材の使用を許可する!!
我々の家を!!島を守るぞ!!!」
その命令に、阿武隈や那智達は微笑み敬礼をする
「「「「「「了解!!」」」」」」
『はぁい、もしもし私よ
《ユリ》に早くその三人を仕留めないと沖縄の援軍が来るわよって伝えて~?』
「そうか、ご苦労
《エア》」
多良間島の沖に立ち黒い煙をあげている島を見ながらその深海棲艦は腰の滑走路から艦載機を発艦させると持っていた杖を思い切り海上に叩き付ける
「足掻いて見せよ
艦娘共」