新曲を練習するポピパのメンバー。そして、ある理由から花咲川女子学園に入学した少年、成川翔。
練習中に休憩する彼女たちの話は、いつしか過去を回想するものへと変わっていく……。
これは、そんな彼女を見守る少年が、あの頃の少女に向けて送るメッセージ。
わざわざ先行して予告するなら、短編でもよくない?って思ったので。
時系列は2期前。そこに至るまでの時系列がよくわからないので、そこは独自解釈。
と言うか、予告したところで見ていただける人がいるのかどうかも怪しい……(泣)
「――夢の向こ〜うへ〜♪」
汗だくになりながらも演奏を終え、彼女たち――poppin'party(ポッピンパーティー)、通称ポピパは、その場に座り込む。
疲れもピークに達しているだろう。飲み物を渡しながら、俺は惜しみ無い拍手を送る。
「お疲れ、みんな。今日もよかったぞ」
「ありがと、なーくん……。あ〜っ、つっかれた〜!!」
俺の事をなーくんと呼ぶ彼女は、戸山香澄。ポピパを作り上げた中心的人物で、俺の幼なじみでもある。
そして俺は、成川翔。ポピパのみんなとは、高校に入学してからの付き合いだ。が、今に至るまでに色々あって、かなり親しい関係にはなっている。
そんな俺は、ポピパのみんなも通う女学校に通っている。と、ここでおかしいと思ったかもしれないが、もちろん俺は男で、普通なら入学なんてできるわけはない。
だが……俺には、とある事情があった。そのために、普通の男子高生の青春を全て投げうつことになってしまったが。
それが何なのかは……まぁ、今は話す事じゃない。
「ほい、タオルも。汗拭いておかないと、風邪引くぞ?」
「ありがとね、翔。けど、悪いね。私たちの練習に付き合わせちゃって」
「何言ってるんだよ、沙綾。どうせ暇だったんだし、俺たちの仲だ。断る理由なんて何もないよ」
今日は暇だったため、ポピパの練習に付き合うことにしている。新曲の練習で、最近力を入れているみたいだからな。
練習場所は、メンバーの1人、市ヶ谷有咲の蔵を使っている。結成当時から変わらない場所だ。
「りみ、さっきのところはよかったよ。私も弾きやすかった」
「ありがとう、おたえちゃん。あそこ難しかったから、めっちゃ練習してたんだ〜」
「有咲のキーボードは、少し遅かったかな。気持ち早めに弾いてもいいかも」
「げっ、マジか……。沙綾、教えてくれてサンキューな」
休憩中でも、話はさっきの演奏の指摘だ。俺はその様子を見て苦笑しながらも、同時にバンドに対する意識の高さに感心する。
「んで、香澄は全然ダメ!音は外してるし、1人で突っ走ってるだけ!合わせるこっちの身にもなれっつーの!」
「えぇ!?私、そんなにダメだった!?」
「あぁ。今のは、俺から見てもわかる。周りが上手く香澄についていっただけだな。そんなのだから、香澄のミスも目立っていたな」
いつもはもう少し落ち着いているんだけどな。先走る事はあっても、音は全体的にまとまった仕上がりになるし。
音を外すことも、ここしばらくは技術も上達して、全くと言っていいほどなかったはず。しかも聞く限り、初歩的な部分のミスだ。
こいつは何かある。ここまでぶっ飛んでいるのは、少しおかしい。確実に。
「そんな〜……。うぅ、有咲〜!」
「ちょ、止めろ香澄!暑いし、汗でベトベトする!」
……まぁ、いつもぶっ飛んでいることに変わりはないんだけどな。
「確かに、今日の香澄ちゃんは少し張り切りすぎかも」
「うん。ヒートアップしてたら、頭ハンバーグになっちゃうよ?」
「意味わかんねぇ事言うなよ、おたえ。香澄の頭はハンバーグじゃねぇだろ」
「え?香澄って、ハンバーグでできてるの?」
「何だこの話は」
たえの話は、どこに向かってるのかがわからない。香澄の演奏の話をしていたはずなんだが。
「アハハ……。さすがに私でも、何言ってるのかわかんない……」
「心配するな、沙綾。俺もだ……」
このやり取りにも、もうすっかり慣れたものだ。ポピパが結成した当時から、たえの天然ボケは始まっているからな……。
「けど香澄、この頃ちょっと変だぞ?ソワソワしてるって言うか、いつもよりも相手にしてて疲れるって言うか……」
「えっ、そうかな?」
「確かに。香澄ちゃん、新曲の練習が始まってから落ち着きがなくなったような……」
言われてみれば、確かにそうかもな。有沙やりみの言うとおり、最近の香澄はテンションが高い。もう少し静かにしてほしいとも思うが、それならそれで心配になるんだよな。
「だって、早くこの曲をみんなの前で披露したいんだもん!今から待ちきれなくて、もうワーってなっちゃう!」
目をキラキラと輝かせ、香澄は笑顔でそう話す。ワーっと言うのがよくわからないが、香澄特有の擬音語なので、何となく理解しておく。
けど……香澄の言うこともわかるな。やっぱり新曲は、早く歌いたいって思うよな。
「香澄の気持ちはわかるけど、冷静になるところはなってもらわないと、演奏にはならねぇぞ」
「わかってるよ、有咲!ちゃんとみんなの音聞いて、ミスしたら練習する!そうやって、ポピパのみんなと音を合わせるのが、私本当に楽しいんだ!」
香澄がいきなり恥ずかしいセリフを口走ったせいで、香澄以外のポピパのメンバーは、顔を赤く染める。てか、俺も恥ずかしいんだけど。
「……おま、よくもまぁ平気で言えるよな。そんなこと///」
「嬉しいけど、恥ずかしいね……///」
「あれ!?私、何か変なこと言ったかな!?」
言ってるんだよ、無自覚に。まぁ、それが香澄らしさでもあるんだけどな……。
「アハハ……。香澄は、本当に楽しそうだよね。ポピパのみんなで一緒にいる時さ」
「だって私、みんなと一緒だと……キラキラドキドキできるから!」
それは、何気ない一言。けど、このバンドに関しては、大きな意味を持っていた。
「……キラキラドキドキ、か」
「うん。あの時の事は、私の中から消えてなくなる事なんてないと思う」
キラキラドキドキ。それは、ポピパの原点とも言える言葉。幼いときに見た、満点の星空から感じた何かが、香澄の始まりだった。
「そうそう。私が無理矢理バンドに誘われた時も、そんな事言ってたな。ギターも盗まれそうになるし……」
「無理矢理じゃないよー!盗んでもない!」
「本当の事だろうが!」
んで、またこいつらは騒がしくし始めたな……。これもポピパが結成してから……いや、それ以前から見慣れた光景だ。
「けど、香澄がバンドやろうって言い始めて、みんなが集まり始めたよな。そこにはいつも、キラキラドキドキしたいって思いがあった。俺はそう思ってる」
葛藤や衝突もあったけど、こうして今ポピパとして集まることができているのは……他でもない香澄のおかげだ。
「そうだよね。香澄が私をバンドに誘ってくれて、世界が広がって……色んな事があったよね」
「私がポピパに入るきっかけだったクライブ。それに文化祭、SPACEのオーディションもあったよね」
「SPACEがなくなっちゃって、CIRCLEができてからも……他のバンドと合同ライブして、ガールズバンドパーティーもしたよね」
「だな。バースデーライブの歌作ったり、花火大会とかクリスマスも一緒だった。CIRCLE代表でライブ出たり、夏休み終わってから遊びに行って、商店街のテーマ曲も作ったな……」
「商店街のお祭りを止めさせないためにがんばったこともあったし、みんなが離ればなれになっちゃうこともあったけど……」
沙綾の発言を皮切りに、たえにりみ、有咲に香澄がこれまでの思い出を振り返る。言葉にすれば一瞬でも、記憶には永遠に残り続けている。
思えば、本当に色んな事があったな……。楽しかったことも、苦しかったことも。
全ては、今この瞬間につながっている。
「これからも、ポピパは5人……ううん。6人で走り続けようね!」
「って、俺もかよ」
「もちろん!正式なメンバーじゃないけど、なーくんだってポピパの一員だよ!!」
俺は、あの時の香澄に、走り始めたばかりの君に言ってやりたい。キラキラドキドキしたくて始めたバンドは、今立派に輝いているって。
思い通りに行く事ばかりじゃなかったけど、香澄は自分の進みたい道を走ることができているって。そしてこれからも、何も変わらずに走ることができるって。
そうすることができる仲間が、香澄にはいるんだって。
「……あぁ、そうだな」
「よ〜し、そうと決まれば、練習再開しよう!」
「「「「お〜っ!」」」」
香澄が勢いよく立ち上がり、それに続いて他の4人も立ち上がる。楽器に向かう5人の後ろ姿を見て、俺はふと思う。
ポッピンパーティーと言うバンドが生まれたこと、本当によかったって。
そして思い返していた。ポッピンパーティーが生まれるまでの事。それからの事も。俺は、こいつらの事を誰よりも近くで見てきたから。
また、音が奏でられる。香澄が歌い、りみと沙綾が音を作り、有咲とたえがそこに続く。
そんな音が生まれ、紡がれる奇跡を呼んだ、一夜の出来事。
全ては、あの瞬間から始まったんだ……。
これは、星に心奪われた少女の物語。
これは、星に誓いを立てた少年の物語。
交わるはずのない、両者の物語。
それらがもし、交わったとすれば?
「無理なんだよ!私には、誰かを勇気づけるだけの力なんてない!!」
もたらされた出会いが、二人を結ぶ糸になったとすれば?
「約束する。俺が、誰が何と言おうとも、最後までお前を信じて見せる」
繋いだ糸の交わる果て、そこに響くのは少女の嘆き。
それぞれの苦難を抱え、乗り越えた先、約束の地に少女たちが集う時……。
バラバラだった心をつなぐ、1つの音が紡がれる。
『BanG Dream! 澄み渡る空、翔け抜ける星』
2019年、1月始動――。
最初からこうすればよかった気がする(手遅れ感有り)