星蓮船の裏側をイメージして書きました。なるべく原作の流れに沿って書きましたが、オリ展開も少しあります。
では、楽しんでいただければ幸いです
ーーあらあら、とても怯えているようね。怪我をしているわ。
大丈夫、私はあなたの味方です。
私は、人間と妖怪の共存できる世界を目指しています。
あなたを救うことは私の悲願の一歩でもあるのです。
ですから、どうか、この手を取り、共に理想の世界を目指しませんかーー
夢を見ていたようだ。
あの時、私は妖獣として目覚めてまだ幼かった。無謀にも人里に降り、迫害されて傷ついたところに彼女が現れたのだ。
彼女の言葉は忘れたことがない。私はあの言葉に救われたのだ。彼女が、聖が、右も左もわからなかった私に、人間に追い詰められ、死にかけていた私に、生きる意味をくれた。
彼女を助けるためならどんな苦難も大したことではない。
そう思ってここまできた。
そう、あと一歩だ。今の私には仲間がいる。独りぼっちだったあの時とは違う。今度は私が貴女を助ける番だ。
だというのにーー
「なんだってぇ!?宝塔を失くした?いつ?どこで!?」
ナズーリンが半ば怒ったように問い詰めてくる。
村紗と一輪も呆れたような可笑しいような表情で見ている。
我ながらとんでもないことをしてしまったと思う。だから、えーと、もう少し手心を加えてくれませんか?
「お、恐らく、地底から飛び出した時の衝撃で落としたのだと思うのですが・・・」
私はしどろもどろになりながら、なんとか答える。
「まったく、私の能力が物を探す能力だったからよかったものの、そうじゃなかったらどうするつもりだったんだい?」
滅相もございません。
「仕方がない、私が探しに行くよ。村紗達は引き続き飛倉の破片を探しながら魔界を目指してくれ」
ナズーリンは急いで出かけていった。
やはり持つべきものはダウザーの友である。
一輪たちの視線が痛い。
「まあ、やっちゃったものは仕方がないし、私たちは私たちの仕事をしましょう。魔界に着く前にはナズーリンも追いつくはずよ」
村紗が笑いを堪えながら言う。
「そうね、済んだことを気にしてはいられないわ。飛倉もまだ集まってないし、できることをやっていきましょう」
一輪はため息まじりにそう言う。
「あの、本当に申し訳ありません。私のせいで、余計な手間をかけさせてしまって・・・」
本当に、情けなくて泣いてしまいそうだ。
「気にしなくても大丈夫だって!それと、その台詞はナズーリンに言いなよ。彼女が宝塔を持って帰って来た時にさ」
村紗はいつものような軽い調子で言う。
「それに、星の能力も飛倉を探すのに不可欠なんだ。十分役に立ってるんだから、落ち込むことはないよ」
そう言って貰えるとありがたい。
「わかりました。謝罪は聖を助けた後でたっぷりします。今はとにかく自分にできることを精一杯やります」
再び、飛倉を探して聖輦船は進む。
まったく、ご主人にも困ったものだ。
よく物を失くすのは癖だと思っていたが、そういう星の下に生まれただけなのかもしれない。
結局、いつも私が探す羽目になるのだが。
しかしまあ、こういう役回りも悪くはない。
私はいつからか、ご主人の役に立てることを嬉しく思うようになっている。
あの方はどんな者の声も聞き届ける誠実さと、それを可能な限り実現する有能さを併せ持ち、毘沙門天様の代理として、恩人を迫害した人々の希望となり、導いていく強い使命感も持っている。
結局のところ、私はあの方を尊敬し、敬愛しているのだろう。
「それにしても、一体どこを探せばいいのやら」
間欠泉は、物凄い勢いで吹き出し、まるで天まで届きそうなほどだった。あれで落としたというのなら、あの付近には落ちてはいないだろう。
どこへ行こうか考えを巡らせていると、聖輦船へと向かう一つの影が見えた。
なんだあれは?明らかに客人という雰囲気ではない。ちょっと確かめてみるか。
「狭い狭い幻想郷。そんなに急いでどこに行く?」
これが、私たちの長い、長い旅の、終わりの始まりだった。だが、その時私はそんなことなど、知る由もなかった。
飛倉集めは割と順調だ。
私の財宝が集まる程度の能力により、それほど労せずに見つけることができる。
以前より能力が強くなっている気がするが、まあいいだろう。
「これなら、ナズーリンが戻り次第、すぐにでも聖を助けることができそうですね」
もうすぐだ。もうすぐで悲願を達成できる。
「そうだね。でも、魔界では何が起こるかわからない。油断は禁物だよ」
そうだ、魔界は私たちにとって未知の領域だ。
最後まで何が起こっても不思議ではない。再び気を引き締める。
と、その時、船内が急に騒がしくなった。なにかあったのだろうか。
「何?侵入者?宝船がどうのと言って船内を荒らしている?この船にはそんなものないというのに、どこの馬鹿者だ、まったく・・・。それで?今は一輪が交戦中なのか。彼女は飛倉を保管している宝物庫の番をしていたはずだ。万が一あれが奪われてはまずい、私も応援に行こう。星はここで待機していてくれ」
やはり、すんなりとはいかせてくれないらしい。
だが、彼女たちに任せれば、大抵の相手ならなんとでもなるだろう。
私は私の役目に集中しよう。
一輪が戻ってきた。なんだかボロボロだ。まさか、やられたんじゃないだろうか。
「いやあ、あの人間、強いわ。雲山と私のコンビネーションが全く通じないなんて」
なんだって?
一輪ほどの実力者でも歯が立たないというのか。これは、村紗でも厳しいかもしれない。
私も出るしかないか。
「待って、あの人間はかなりの数の飛倉を持っていたわ。うまく利用して、封印を解く手助けをしてもらいましょう」
人間が飛倉を集めて、何が目的なのだろうか?
まあいい、向こうから持ってきてくれるなら、好都合だ。
あとは、ナズーリンが帰ってくるのを待つだけだ。
村紗も戻ってきた。
侵入者は、じきにここに来るという。
どうやら、一輪にうまく誘導するように頼まれていたらしい。
「まったく、世話をかけさせるご主人だよ」
ナズーリンが戻ってきた。
手には宝塔を持っている。
本当に優秀な部下である。
「ありがとうございます。貴女にはいつも助けられてばかりですね。本当になんと言ったらいいやら」
「まあ、それはいいとして、とんでもなく強い人間がこちらへ向かっているが、どうする?先程、宝塔の力を少し借りて相手をしたが、難なく突破されてしまった」
「彼女は飛倉の破片を持っています。魔界まで共に行き、封印を解く手伝いをしてもらいます」
しかし、宝塔の力を退けるほど強力なのか。
これは、気を引き締めなければ。
そして、私たちは魔界へと突入した。
ほどなくして、紅白の姿をした人間が現れる。
彼女は幻想郷の異変解決のプロである博麗の巫女だ。
なるほど、それならば強い力をもっているというのも頷ける。
「宝船だと思ったのに、中身は空っぽじゃない!」
どうやら、この船に宝が載っているものだと思い、乗り込んできたようだ。この船には宝など乗っていないのだが・・・
「じゃあ、あんた達を倒して行くわ!」
やれやれ、随分と好戦的なようだ。だが、飛倉には興味がないらしい。ならばなぜわざわざ集めているのか疑問だが・・・
まあいい、勝てば飛倉を奪えばいいし、負けても譲ってもらえるだろう。
「良いでしょう。私と戦うというのなら、相手になります。ただ、もし貴女が道を誤っているのであれば、魔界にありてなお輝き続けるこの法の光ーーこの毘沙門天の宝塔の前にひれ伏すことになるでしょう!」
戦闘が始まった。
私は最初から宝塔を掲げ、全力で攻撃する。
不規則な軌道を描く光線が巫女を貫くーー
と思ったが、紙一重で避けられる。
まさか、一発で対応されるとは思わなかった。 驚愕の表情を隠せない。
「どうしたの?この程度の弾幕、今までに何度も見てきたわ!」
どうやら、今までの相手とは別格らしい。
巫女が針を放つ。
刺さりはしなかったが、掠っただけでも結構痛い。封魔の力があるようだ。まともに食らえば何発も耐えられないだろう。
「くっ・・これならどうだ!」
宝塔を中心に四方八方へ光を放つ。
その光から新たな魔力弾が発生する。
だが、これも難なく避けてくる。恐ろしいまでの勘と身のこなしだ。
あっけにとられていると、目の前に針が迫る。避けようと身を翻す。だめだ、反応が遅れた分、何本かまともに食らってしまった。
全身に激痛が走る。
なんの、これくらい大したことじゃない。
「どうしたの?もう終わりかしら?」
息一つ乱れていない。このまま終われるか。
「毘沙門天より授かりし宝塔よ、今一度力をお貸しくださいーー!」
宝塔が光輝く、と同時に巫女を縦横からの光線が取り囲む。
さらに、先程と同じように光線から弾が発生する。しかし、密度はさっきより遥かに上だ。
「くっ、意外とやるじゃない!」
捉えた!今度こそ、逃げ場はない!
そう思った。だがーー
「スペルカード!夢符《対魔符乱舞》!!」
巫女の背後から大量の札が勢いよく放たれる。それらは、魔力弾も光線も貫いて一直線に私へ向かってくる。
ああ、これはだめだ。避けられない。ここまでかーーー
大きな音を立てて札弾が炸裂する。
私は後ろへ大きく弾き飛ばされる。
勝負はついた。
「流石ですね、飛倉を集めただけのことはある。しかし、私を倒してどうするというのです?」
「ほら、この玩具が必要なんでしょ?譲ってあげるわ」
私は目を丸くする。どういうつもりだろうか。
「封印されてる奴に興味が湧いたわ。どんな奴か確認してあげる。さっさと封印を解きなさい」
こちらとしては有難い申し出だ。当代の博麗の巫女は気まぐれだと聞いていたがここまでとは。行動がまるで読めない。それが彼女の強さの秘密なのだろうか。
「ありがとうございます。では、早速封印を解く準備にかかりましょう」
「ふん!その封印されてる奴も私が倒してあげるわ!」
うーむ、本当に大丈夫だろうか?
不安と期待が入り混じりながら作業をすすめる。
いよいよだ、ようやく報われる。多くの回り道をした。ここまで来るのに千年もの月日を要してしまった。
この封印の向こうに聖がいる。
もうすぐ、長かった旅も終わり、あの日常が戻ってくるはずだ。
封印を解く鍵が完成した。
大きな音を立てながら、封印が消滅していく。博麗の巫女は、もう待てないというかのように中へ飛び込んだ。
私たちも聖輦船で後を追う。
中はかなり広いが、宝塔が行くべき道を示してくれる。
あの巫女は大丈夫だろうか?
まあ、仮に迷ってたとしても助ける義理はないだろう。
宝塔の光が強くなる。目的地はもうすぐだ。
遠くの方で閃光が走る。
どうやら、もうおっ始めていたようだ。
聖は大丈夫だろうか。
ようやく閃光の元へたどり着く。
ああーーやはりーー彼女だ。
千年経とうとも変わらないその姿。
私を救ってくださった時と変わらぬ御姿。
長らく待ち望んだ者が、聖白蓮が、今、目の前にいる。
しかし、さすがといったところだろうか。聖はあの巫女と互角の勝負を繰り広げていた。
しかし、徐々に戦況が傾く。
聖の最後のスペルカードが発動する。
高密度の札弾が巫女を襲う。
だが、彼女はそれを全て紙一重で避けていく。
「これで終わりよ!」
巫女の体が光り出し、無数の光弾が発射される。それは周囲の弾を飲み込み、聖に向かって一点に収束する。
大きな爆発音が響く。
「聖!」
気がつけば飛び出していた。
聖はーーよかった、無事なようだ。
「星・・・来てくれたのですね。この千年、貴女には大変な思いをさせてしまったようですね」
「そんなことはありません!私は、ただ、あの時、貴女を救えなかったことが、許せなかった。貴女が封印されるのを、見ているしかできなかった!だから、貴女を助け出し、私のできうる限りの謝罪を、贖罪を行おうとーー」
聖の手が私の口を塞ぐ。随分と荒れた手だ。
彼女もまた、魔界で生きるのに必死だったのだろう。
「自分を責めてはいけません。それに、貴女は私のわがままを聞き、手を出さないでくれました。謝る必要はありません。よく我慢しましたね。ありがとう」
その言葉を聞いたとたん、私の中で様々な思いが溢れ出し、抑えきれずーー
「あ、ああ、うあああああああああ!!」
ーー涙となって流れ出した。
「お、おか、おかえり、なさい、聖」
「はい、ただいま、星」
しばらくして、聖輦船に戻った私たちは、飛倉が力を失ったことに気づいた。
しかし、聖が再び法力を込めることで、魔界を脱出する分のエネルギーは賄えるらしい。
相変わらずとんでもない力だ。
こうして、私たち+博麗の巫女は魔界を脱出し、幻想郷へ帰った。
とりあえず、星の旅はこれにて終了です。
ハッピーエンドですね パチパチ
原作のセリフをちょこちょこ入れるのが好きなんです。
後日談も投稿していきたいと思います。
ではまた。