ぎゃくてん! ~ブ男は異世界ではイケメンらしい~   作:リンゴリライオン号

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ぶっちゃけ読まなくてもいい回。


第二話

 詳しいことは俺にも分からないが、偉大な先人たちが磨き上げてきた古典物理学でも説明できない現象が世の中には星の数ほどあるという。特に原子や分子などの肉眼で見えないミクロな世界がそうであったらしい。そこで、二十世紀の科学者たちは量子力学という、ミクロな世界で起こる物理現象を観測し、説明するための新しい理論を完成させた。そしてこの量子力学ってやつは本当にすごい奴で、パソコンやスマートフォンに使われている半導体、DVDやCD、レーザーなどの微視的な世界で電子や磁力を扱うときにまず間違いなく必要になる。つまるところ、量子力学ってのは人類の発展に大きく貢献した訳だ。

 

 しかし、その物凄くスゴイ量子力学でも、恐らく今俺の取り巻く現象を説明することは出来ないだろう。

 

 例えば何の小細工もなしに指先から火を灯せる人がいたり、手を添えるだけで傷がたちどころにふさがったり、挙句の果てには異世界に転生してみたり。意味わからんやろ?

 

 さて、この世界が地球でないことに気づいたのが転生してからおよそ十年。まったく知らない言語を一から覚える事は非常に苦痛だったと記しておこう。あ、でも赤ん坊の時に第二のマイサンを誤射しまくった時の方がきつかったわ。あとその処理をされるのも。

 

 よく言えば素朴、悪く言えば質素。そんな小さな村に生まれた俺だが、両親はいない。思いっきり捨てられた。泣きながらなんか言ってたから許してやるけど、次はねぇかんな。

 

 森に捨てられた俺を拾って、代わりに育ててくれたのは当時療術師(旅するお医者さんみたいな感じ)だったレンナさんだった。現在は療術師を引退しており、俺のような身寄りのない子の面倒を見ている。しかもわざわざ孤児院を建ててまで。正直この場で語りつくせない程度には恩を感じているし、なんなら受けた恩は返したいと思っている。

 

 とはいえ、孤児院で一生を過ごす気もない。前世において夢半ばで倒れた俺からしてみれば、第二の人生は僥倖に他ならないからだ。過去のしこりもあるにはあるが、かわいい部下(女の子)助けて死んだんなら本望と言える。というかそういう後悔とか反省は、それこそ赤ん坊の時に泣きまくって清算したつもりだ。だから、うじうじするのは止めて、俺は前世からの夢を叶えることにした。

 

 ―――そう、それは彼女づくりだ。

 

 人生約三十年、彼女ゼロどころか交際経験ゼロ。我ながら女性に縁がない男だ、とは思わない。俺に彼女が出来なかったのは、ひとえに俺に至らないところがあったからだ。そしてそれが何であるかも、俺は知っている。

 

 ———そう、それはかわいい女の子とイチャラブしたいという貪欲さだ。

 

 前世では紳士的であろうとするあまり、本来の目的を忘れていた。なぜ紳士的になる必要があるのか。それは彼女が欲しかったからだろう? しかしそれは決して自分からアピールしないという意味ではない。ならば俺が目指すべき姿は紳士的でありながらも、恋愛には積極的な肉食系男子なのではないか。フィリップ・マーロウも言っていたではないか、「タフじゃなくては生きていけない。やさしくなくては、生きている資格がない」と。

 

 かくして俺はハードボイルドな男を目指すようになった。

 

 あ、でも子供の頃からマセてると逆にかっこ悪いんで素直に幼少期は過ごしたぞ。そんでもってこの世界、美醜が逆転してるらしいぜ。とどのつまり今世でもブ男、というか何故か知らんが前世と同じ容姿の俺はイケメンらしい。やったぜ。

 

 

 

 ★

 

 

 

 冒頭でやったぜとか抜かしたが、何にもよくないことに気づいた。

 

 美醜が逆転してる、それはつまりブサイクな女の子がここでは美女になっているという事だ。いや別に容姿で人を判断するつもりは毛頭ないが、それでも違和感は禁じ得ない。よく考えてみてほしい、自分が美人だと思う人が周囲からすればただのブスなのである。

 

 言われた本人だから分かる。何気ない一言が人を傷つけるものだ。そして加害者は割と軽い気持ちで言葉という名の刃を振り下ろしているのだ。

 

 この世界では、常日頃どこかで美人がおよよと泣いている。それを思うともう胸が締め付けられる。どうしてもっと早くに気が付かなかったのか、己の無能を呪いたくなる。

 

 しかし、だからと言って過去を悔やみ続けても仕方がない。いてもたってもいられないというやつだ。だから俺はレンナさんに相談してみた。

 

 「レンナさんみたいに旅しながら人助けしたいです」

 

 レンナさんの自室で、俺は率直に自分の意思を伝えた。軽い気持ちで言ってもNOと言われるのは目に見えていたからな。彼女は一息ついた後に、目を細めてこう言った。

 

 「それがどういうことか分かっているのかい?」

 

 「分かってるつもりです。でも、この(女の子と付き合いたいという)気持ちは間違いなんかじゃないと思います」

 

 この国、というかこの世界は日本と比べたら遥かに治安が悪いと言わざる得ない(日本の治安が良すぎるというのもあるが)。村と村を繋ぐ道はコンクリートでできているわけではないし、運が悪ければ野党や魔物に襲われることもあり得る。ましてや警察という組織がある訳でもなし、トラブルが起きたら自分で解決しなければならなくなるだろう。

 

 だが女の子のためならその程度の細事、苦心するまでもない。

 

 「……そうかい、なら好きにしなさいな」

 

 暫く無言だったレンナさんは微笑みながら言った。

 

 「そんなあっさり決めちゃって、いいんですか?」

 

 「あなたが決めた道じゃない。まぁ、いつかこういう日が来ると思っていたのさ」

 

 あっさりどころの話ではない。しかし許可は頂いたのだ。なら俺の言うべきことは決まってるだろう。

 

 

 

 「ありがとうございます。そして、行ってきます!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「え、今日出発するの?」




次回、嵌められた英雄。
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