ぎゃくてん! ~ブ男は異世界ではイケメンらしい~   作:リンゴリライオン号

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女の子といちゃいちゃする前に軽く世界観の説明がしたかった。だからヒロイン登場は次回に持ち越しです。すいません許してください!何でもしますから!


第三話

 男なら一度は憧れたであろう魔法。

 

 この世界ではソレが人類の発展を担っているらしい。ただし魔法を扱うにはお約束とでも言うべきか、魔力が必要である。そして魔力は人によって保有量が違うという。だからか幼少期に夢見た剣と魔法のファンタジーのように自由自在にソレを操ることが出来る人間は意外と少数で、大抵は国に仕える騎士や貴族などの特権階級であることが多い。

 

 しかし何事にも例外はある。

 

 中には国に縛られることのない身の上でありながらも魔法を扱える人間がいる。もちろんそうした人たちが多くないのは言うまでもないが、それでもいるにはいるのだ。例えば俺とか。

 

 「———癒しを」

 

 農奴のおっさんのごつごつした背中に手を添えながらそう唱える。すると淡い光がおっさんを包み込み、たっぷり二分ほどかけてから発光は収まった。

 

 「どうですか?」

 

 「ああ! いい具合にほぐれたよ。こりゃあいい」

 

 おっさんは肩をぐるぐる回して調子を確かめながら言った。そりゃあそうだ。レンナさん直々に教わった治療魔法だ、よく効くことだろうさ。

 

 「しかしいいんですかい? 療術師サマの魔法のお代が一宿だけでってんで」

 

 「お夕飯も頂けるのでしょう? なら十分ですよ。そんなに心配しないでください」

 

 まぁ逆に言えば俺には魔法ぐらいしかできる事がないからな。あんまり気にしないでほしい。魔力も全く消費してないし、むしろこんなマッサージ程度の魔法を有難く思ってもらえるだけでも十分だ。

 

 「じゃあ明日はあっしの腰をお願いしますよ。農作業してると重くてしかたねぇんです。もちろん食事も宿も用意しまっせ」

 

 俺の魔法を子供たちよりも珍しそうに眺めていた初老の男性が、そんなことを言った。おそらくだが、彼が村長なのだろう。村人たちが彼の事をさん付けしてたり長とか呼んでたりしていたからな。

 

 「もちろんです。まだまだ療術師として未熟ですが、それでも用立ててくれるなら幸いです」

 

 「はっはは! そんな謙遜しねぇでくださいや。この村に大したもんはありゃしませんが、採りたての野菜や魚はありやす。あっしらにアンタを歓迎させてくだせぇ」

 

 初老の男性がそういうと、他の村人たちもうんうんと頷いた。なんかちょっとこそばゆい。

 

 「ええ、ありがとうございます」

 

 でもね、実はちょっとだけ居づらい気もするんだ。というのもここの村人の半分程度の人たちが、実は美男美女なのである。魔法で治療した最初のおっさんだって、言葉遣いこそ若干荒いが渋い感じのナイスミドルだし(というかそれがイケメンっぽさを増長させてる感まである)、村長っぽい人だってクッソかっこいいナイスシルバーだ。

 

 周りを少し見渡してもイケメンとかわいこちゃんがそこそこ多いことが分かる。平凡な顔つきの人もいるが、この世界ではその人たちの方がどちらかと言うと美形な部類なわけでして。やっぱりどうかしてるぜこの世界。

 

 しかも、だ。自慢じゃないが俺は選りすぐりのブ男だ。つまりモテる(錯乱)。なんなら女性が色目使ってこっち見てるのも何となくわかるくらいだ。だから実のところ、初めての経験すぎてかえって居心地が悪かったりするのである。

 

 それでも愛想笑いを崩さないでいれたのは、サラリーマン時代の賜物だと思いたい。

 

 

 

 ★

 

 

 

 大体一か月半ほど先の村で過ごした。ついでに言うと初めて貞操の危機とやらも経験した。

 

 あの村は俺にとってあまりにも都合がよかった。俺を否定する奴はいなかったし、ちょっと魔法を唱えれば皆に喜ばれる。だからその気になれば俺の目標、すなわち彼女づくりはすぐに達成できただろう。

 

 しかしその場合、俺はあの村で一生を過ごさなければならなくなる。それは少しだけ、面白くない。

 

 俺が旅に出たのは何も彼女づくりのためだけではない。忘れてはいけないのが、俺は本当に療術師として人助けをしたいという事である。それが旅することを許してくれたレンナさんに対する恩返しだと勝手に思ってるし。

 

 しかし残念ながら、この国の常識は前世で平和な世を生きた俺にとって理解しがたいものが多い。容姿の優れない者が不当な扱いを受けることがあるのは分かる。それは日本でもあったことだし、何より俺自身が良く知っている。しかしそれを差し引いても、この世界の住民はあまりにも容姿の優れない人々に厳しい。

 

 ブサイクだから何をしてもいい、そういう意識があの村人たちにはあった。特に前述した平凡な顔立ちをしていた人たちは自身よりも容姿で劣る者たちを明らかに見下していた。俺の前ではそういう姿勢を見せないように努めていたのだろうが、それでも暴言と暴力というのは長い間隠し通せるものではない。

 

 はっきり言って幻滅した。あれだけ朗らかな雰囲気があった村に、そういう横暴があった事だけではない。そういう振舞いが許されている環境が、俺には信じられなかったのだ。

 

 しかし俺にできることはほとんどなかった。注意しても効果は薄く、俺の言うことにあまり耳を傾けなかったのである。それでも考えを改めるよう根気強く説得してみたが、今度は俺を疎み始めるようになった。

 

 恐らくは常識であり、文化なのだろう。容姿が優れている者は自分より容姿で劣っている者を詰るというのは。全くもって俺には理解はできないが。

 

 だが彼らはそうじゃない。彼らはソレが後ろめたい行為であると認めていても、ソレが血眼になってまで説教されるほど悪いことであるとは考えていない。ああ、だからソレは言ってしまえば娯楽みたいなものなのだ。

 

 そして一番性質が悪いのが、容姿で劣っている人々もその娯楽に付き合うだけの心の余裕があるという事だ。

 

 あの村での美形とブサイクの割合は半々だ。そして特定の誰かが不当な扱いを受け続けるという事があまりなく、ローテンションでイジメ(と呼称するしかない行為)が行われているらしい。だからか村ぐるみで一部の者たちの横暴を黙認している。それは決して良いことではないが、本人たちが納得してるのならこちらから強く言い出すことは出来ない。

 

 何故ならあの村人たちは自分たちの生活に不満はあっても、十分であると感じているのだから。

 

 ならあの村で彼女を作ったところで、この村から出たいと思う酔狂はいないだろう。それに俺も彼ら彼女らの文化を否定してまで、彼女を作って村から連れ出したいとは思わない。

 

 だから一人旅は続く。ほんの少しだけ、後味の悪い気持ちを残しながら。




なんかヘンテコな世界観だけど許してください。でもカルチャーショックって異世界なら起きて当然っしょ(自己弁護
次回こそ、嵌められた英雄!

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