諸行無常な恋模様   作:サカキ様

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第1話 光

「由樹(ゆき)、光(ひかり)〜。ちょっと降りてきて」

 

 

一階から聞こえる母の声に俺は2階にある自室から出た。

その時ちょうど妹も部屋から出てきたようで一緒に階段を降りることになった。

 

 

「光。母さんなんの用だろうな?」

「わかんない。どうせしょうもないことでしょ」

 

 

俺には妹がいる。

妹の名前は入江(いりえ) 光(ひかり)。

高校一年生だ。

そして俺は光の兄、入江(いりえ) 由樹(ゆき)。

妹より一個年上の高校2年生だ。

母はシングルマザーで、幼い頃から今までの俺たちを女手一つで育ててくれた。

父のいない生活というのは少し寂しい思いもしたが、今の生活でも十分楽しく、母には俺たち兄妹共々感謝していた。

少し性格に難ありの妹だが、母の要望には四の五の言わず素直に従うのもその為だ。

 

 

「由樹、光。こっち来て」

 

 

そうして母に連れられ俺たちはリビングへと向かう。

リビングに入るため、ドアノブを下におろし、ゆっくりと開け、中へ入っていく。

 

 

「こんにちは」

「⋯」

 

 

リビングへ入るや否や男性の声が聞こえてきた。

その声の主は母と同年代くらいの男性で、その他に妹と同年代くらいの可愛らしい女の子がいた。

その女の子は何も言わずペコリと頭を下げてくる。

 

恥ずかしがり屋なのかな?

 

俺は反射的に会釈を仕返したが、光はただ立っているだけだった。

光は母にだけ従順で、他人に対して少し冷たい。

そんな奴だから兄としては母に向ける態度を他人にも向けてほしいと常日頃から切に願っている。

 

 

「ほら座って」

 

 

母に促され俺たちはテーブルを挟んでお客さんの対面に座った。

 

 

「いきなりだけどお母さんね、再婚しようと思うの」

「「えっ!?」」

 

 

母から放たれた衝撃の言葉に俺たちは驚きの声をあげ、表情を固くした。

 

 

「相手は目の前にいる男性よ」

「初めまして。由樹君、光ちゃん。佐々木 裕二といいます。僕自身シングルファザーで、偶然出会った佳子さんと意気投合してね。佳子さんといろいろ語り合ったんだ。それで、由樹君や光ちゃん、そして僕の子供である紗英(さえ)にとって再婚したほうがいいんじゃないかって」

「子供にとって親は二人いたほうがいいと考えたの。私達は再婚する方向だけど、一番大事なのは子供たちが受け入れてくれるかどうかだから、話し合う機会を作ろうって」

 

 

母と裕二さんの表情からどれだけ真剣なのかが見て取れた。

 

俺は母さんの幸せを優先したいから再婚には別に否定する気はないけど⋯光がな。

 

 

「何それ!! 意味わかんない」

「あ、光」

 

 

案の定、光は母の再婚を受け入れられずリビングを勢いよく出て、自室へと籠もってしまった。

 

 

「無理も、ないか」

「普通は、受け入れられないわよね」

「由樹君はいいのかい?」

「俺は母さんも幸せを優先したいんです。だから母さんの再婚には特に反対はしません」

「由樹⋯」

 

 

母の目には薄っすら涙が浮かんでいた。

 

 

「紗英さんだっけ、君はいいの?」

「⋯」

 

 

俺の問いかけに対し、少しおどおどしながらも無言で頷いた。

 

後は、光だけか。

 

 

「母さん。ちょっと光の様子見てくるよ」

「うん。お願い」

 

 

光、大丈夫かな。いきなり過ぎてそりゃ戸惑うよな。

 

光の心配をしつつ、俺は部屋に籠もっている妹の部屋へと向かうのだった。




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